六花の勇者 短編集   作:雨冠

7 / 10
意外と、フレミーの恋心に深くツッコむ人が誰もいないので、ナッシェにお願いしてみました。ナッシェはキャラが濃いので、めっちゃ書きやすい!時系列的には4巻です。


心に触れる

 ナッシェタニアは退屈だった。自分以外は皆寝ているのか、とても静かだ。目の前には見張りを終えたフレミーが、自分に背を向けて眠っている。ナッシェタニアは自分を抱えているゴルドフに、一人で休むように言った。ゴルドフは渋々、彼女から少し離れたところに座り、目を閉じたようだ。

「フレミーさん、起きていますか?」

 返事はない。ナッシェタニアは、諦めて自分も寝ようかと横になった。

「……何?」

 あまりにも小さな声だったので聞き逃しそうだったが、ナッシェタニアには確かにフレミーの声が聞こえた。

「起こしてしまったのならごめんなさい……たまには、七人目のこともテグネウのことも忘れて、話しませんか? あ、寝たくなったら、そのまま寝てもらって構わないですから」

「何を企んでいるの?」

 フレミーは話しはしているものの、ナッシェタニアに背を向けたままだ。ナッシェタニアには、やはりフレミーが、こんなどうでもいい話に付き合ってくれるとは思わなかった。

「どう言えばいいんでしょうか……私は生来、お喋りが好きなんです。こういう状況でなければ、女性同士で恋の話でもしたいなあ、なんて」

「恋? あなた、よくその体でそんな話をする余裕があるわねえ……ロロニアかモーラとすればいいじゃない。それとも、からかっているの?」

「いえ、そういうつもりは全くありません。フレミーさんと話がしたいのです……ダメですか? フレミーさんは、アドレットさんと仲良さそうですし」

「アドレットが、しつこく付きまとってきているだけよ」

「……私が六花の敵でなければ、アドレットさんのことを好きになっていたかもしれませんよ。アドレットさん、面白いですし」

 ナッシェタニアがそう言った瞬間、フレミーが音も立てずに動いた。ナッシェタニアには何が起こったのか解らなかったが、気付いた時には、目の前に銃口が向けられていた。

「ひゃっ! ちょ……ちょっと待ってください。とりあえず、銃を下ろしてもらえませんか?」

 ゴルドフが二人の間に割って入ろうとしたが、ナッシェタニアに制された。しばらくナッシェタニアを睨んだ後、フレミーはゆっくりと銃を下ろした。

「私は純粋に、フレミーさんがアドレットさんのことを、どう思っているのか知りたいだけなんですよ」

 ナッシェタニアは最早、どんな言い方をしても、フレミーにはからかっているように聞こえるかもしれない、と思った。ナッシェタニアは、これでフレミーが答えてくれなければ諦めることにした。フレミーの表情からは、何かを考えているのか疎ましく思っているのかは解らなかった。

「ごめんなさい、自分でもよく解らないの……」

 考えてくれていたようだ。だが、ナッシェタニアが望んだ答えは返ってこなかった。

「そうですか……では、質問を変えます。フレミーさんは、アドレットさんには生きていてほしいと思いますか?」

「仲間だから、死んでもらっては困るわ。魔神を倒すためには、なるべく戦力は多い方がいい」

 話が噛み合っていなかった。ナッシェタニアは、顎に手を当てながら唸った。

「私が聞きたいのは、一人の人間として、アドレットさんに生きていてほしいのかどうかです」

 そう言うと、フレミーは眉間に皺を寄せながら考えだした。

「それは……」

「あ、無理して言わなくても結構です! フレミーさんを、混乱させてしまったのなら謝ります」

 ナッシェタニアは、思い詰めているフレミーを見かねて、それ以上は聞こうとは思わなかった。

「いえ、そんなことはないわ。謝らなくても大丈夫よ」

 ナッシェタニアは驚いた。まさか、彼女から優しい言葉が返ってくるとは思ってもいなかった。

「私はあなた達とは違って、そういう感情を知らずに育ってきたから、それが良いのか悪いのかも解らないの。普通の人間にとって、それがとても大事なことなら、人間の血が通っている私にも、大事なことなのかもしれないわね」

 ナッシェタニアは、フレミーの少女のような顔を見た気がした。ほんの一瞬だったが、彼女のこんな表情を見るのは初めてだった。

「フレミーさん、そんなに難しく考えなくても大丈夫ですよ! 愛情は理屈ではないですから。頭で考えるより先に、体が動き出してしまったら、それが愛情です」

 フレミーはまた、何かを考え始めているようだった。

「もし、そういう気持ちに気付いてしまったら、また話しましょう。その時が、私とフレミーさんが闘わなくてはならない状況じゃなければ、ですが。つまらない話に付き合ってくれて、ありがとうございました」

 そう言いながら小さく頭を下げると、ナッシェタニアは横になり、フレミーに背を向けた。

『私は……』

 ナッシェタニアは、フレミーが何か言おうとしたように見えたが、今はこれで良かった。きっと彼女はいつか、自分と楽しく話をしてくれるだろう。自分が彼女の敵として出会わなければ――そんなことを考えながら、ナッシェタニアは眠りに就いた。




後半、自分で書いててなんか恥ずかしくなりました…フレミーがナッシェのおもちゃみたいになってますが、からかってるつもりはないんです。ナッシェはハンスとは違う意味で、人の気持ちに敏感やと思ってます。敵じゃなかったら、フレミーといい友達になれたと思ってるんですが…無理かなあ。
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