アドレットは、頭に何かが触れている感触がして目を覚ました。その感触を確かめるために、わざと寝た振りをしながら薄目を開けると、モーラが自分の頭を撫でていた。
「……何やってんだ?」
「おっ、起きておったのか」
アドレットは体を起こしモーラの顔を見ると、いつもの精悍な表情ではあるのだが、恥ずかしいような焦っているような、落ち着かない様子だった。取り乱す彼女は珍しい。
「頭は怪我していなかったと思うが」
「それはそうなのじゃが……」
アドレットは、口ごもるモーラに首を傾げた。
「そういえば、チャモにも同じことして嫌がられていたな」
「……恥ずかしい話なのじゃが、いつも娘にしているものじゃから、癖になってしまっていたようじゃ。お主らは、もう頭を撫でられて喜ぶ歳でもなかろうにな」
自分の頭を撫でていた理由は癖なのかと、なんとなく納得したアドレットは、笑いながら話すモーラを見て、どこか寂しそうだと思った。
「母親っていうのはどうなんだ? いつも、子供の傍にいてやりたいもんなのか?」
「私は娘が可愛くて仕方がないのう。夫にもよく、甘いと言われていたものじゃ」
「意外だな。モーラはもっと、子供に厳しくしているもんだと思っていたぜ」
「私も家庭では、どこにでもいる母親と変わらぬよ……」
遠くを見つめるような目でそう言うと、モーラは立ち上がり、振り返った。
「起こしてしまったのはすまないと思っている。もう邪魔はせん。私も寝るから、お主もまた寝るといい」「あ、あのさぁ……」
「なんじゃ?」
「また、頭撫でてくれねえか?」
モーラはアドレットの意図が解らなかった。チャモもフレミーも、子供扱いするなと嫌がっていた。彼は最初は怪訝そうにしていたのに、自分から撫でてくれとはどういうことなのか。
「お主がそんなことを言うとはな。急に子供に戻ったのか?」
「いや、俺が起きたから止めたんだろ? 見られるのが嫌なら寝た振りしとくから、するならしてもいいぜ」
アドレットはその場に寝転がって目を閉じると、モーラは彼の傍まで戻って腰を下ろし、またアドレットの頭を撫でた。
(お主にはお見通しなのかもしれぬな……)
モーラはアドレットの頭を撫でながら、娘のシェニーラのことを思い出していた。気付けば、寝た振りをすると言っていた彼が、寝息を立てて寝てしまった。
「ふっ……本当に仲間想いな奴じゃのう」
モーラは頭を撫でるのを止めると、その後少し申し訳ない気持ちになりながら、しばらくアドレットの寝顔を見つめていた。自分も寝ようかとその場を立ち上がる前に、起こさないように、彼の頭を2、3度撫でた。
この話、普通に書くとアド君とおばちゃんがイチャついてるようにしかならなかったので、大半の時間がその修正です。投稿はしたものの、やっぱりイチャついてたらごめんなさい。