Medal of Honor Silver Star   作:機甲の拳を突き上げる

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10話 経過

バリアス砂漠からの激戦から帰ってきた第3中隊の各小隊は整備をしていた。その中で頭を悩ませる整備兵がいた

 

「これは……どうしましょう」

 

エイプラムスを見たクライスがそう呟く。エイプラムスの前面装甲は砲撃の食らった跡がくっきりと残っていた。ケルビム相手に囮役を徹していただけであって、340mmラグナイト砲の直撃を食らっていた

 

その衝撃はエイプラムス内が激しく揺れ、戦車長は死を覚悟したほどだった。だが、エイプラムスの装甲はそれを耐えてみせた。これを目の当たりにしていたケルビムの砲手に報告を聞いた車長とマクシミリアンは声がでなかった

 

その1発意外は掠り後があるものの、直撃弾はなかった。しかし、掠っただけでも側面装甲の傷の跡が大きく残っているあたりその威力の凄まじさが伺えた

 

「この戦車の前面装甲をここまで傷つけるなんて……いったい相手はどんな兵器をつかってきたのですか?」

 

クライスが隣にいるエイプラムスの車長に聞くと

 

「馬鹿でかい戦車だった。あれは動く要塞って方がいいかもしれん」

 

ケルビムの大きさは全長が20mを超え、エイプラムスの2倍以上の大きさであった

 

「……これはもうダメだな」

 

車長が言うとクライスは驚いた顔をした

 

「なぜですか!確かに損傷を負っているものの、前面装甲はまだ帝国戦車の砲撃に耐えられるはずです」

 

実際エイプラムスの複合装甲は帝国戦車の主砲である76mm砲では弾き返すことができ、損傷しているエイプラムスでも弾き返すことはできる

 

「確かに装甲は修理と改修すればなんとかできるかもしれんが、内部機器はそうはいかん」

 

それにクライスはハッ!となった。エイプラムスの制御は全てコンピュータであり、精密機械の塊である

 

「あれの直撃でかなり衝撃があった。俺は戦車の中で一瞬気を失った、それだけの衝撃をくらって内部機器が無事であるとは思っていた。ここにある部品では完全修理はむりだろしな」

 

エイプラムスの内部を整備しようにも、専門の整備兵がおらず部品も規格が違い、作ろうにも技術力が違い過ぎてほぼ不可能なレベルである

 

「で、でも!まだ壊れたと決まったわけじゃ……」

 

クラウスがそれでもと食いつくが

 

「いや、さっきダメージチェックをした時に壊れたと箇所が見つかった。射撃統制装置(FCS)等の戦闘の時に必要となる箇所は無事だったが、壊れた箇所がある物に乗って戦うことはできない」

 

そうきっぱりと車長が言うと、クラウスは自分の拳を強く握りしめた。自分の力の無さを感じてかは分からないが、指が白くなるまで握り締めていた

 

「お前には感謝してるよ」

 

突然の言葉にクラウスは顔を上げた

 

「お前がもう一人の坊主と夜中までこいつ(エイプラムス)の整備と改修に尽力を注いでくれていたのはしっている」

 

車長の顔は怒りや悲しみの表情ではなく、穏やかな表情をしていた

 

「正直ここまでもってくれるとは思っていなかった。ここにきて何時までこいつに乗れるか不安だったが、お前達のおかげで今まで乗ってこられた」

 

その言葉は感謝の言葉。整備をしてくれたクラウスに対しての心からの礼だった。だが、それでもクラウスの表情は晴れなかった。クラウスの心は戦車を直すことの出来ない自分の不甲斐無さに嘆いていた

 

「そんな顔をするな。最後まで戦場で戦えたんだ、文句はない。それに、無事な部品を他の戦車に使って修理することができる。こいつは無駄になる訳じゃないんだ」

 

そう笑いながら車長はクラウスの背中を叩いた。前面・側面装甲や内部機器に損傷はあるものの、無事な部品も多々あるので他の戦車が損傷を負った時に共食い修理をすることができる、これは重要なことだと考えていた

 

「その悔しさは次に生かしてくれ、こんだけの部品があればちょっとしたある程度の損傷は修理できるはずだ」

 

格納庫に鎮座しているエイプラムスを見ながら車長が言った

 

「……はい」

 

クラウスは声に力が無かったが、目指すものが見つかったような目をしていた

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

戦車で出来事の最中、射撃場に各部隊長達がいた。彼等が手に取って直に確かめているものがあった……それは銃弾である

 

「やっと完成したのか」

 

ホーキンス中尉がそう言いながら目の前にあるM4やM16に使われる規格、5.56×45mm弾を確かめていた

 

「既にクラウスが実射試験をして確認してるッス!80発試射した所、暴発は0、銃を借りて試したところも弾詰まりはなかったッス!」

 

リオンが説明すると、試射を試して問題が無かった事にホッとしていた。目の前に並んでいるのは5.56㎜以外に7.62mmと12.7㎜もあった

 

「この2つも試したのか?」

 

フォード少尉は2つの銃弾を手に取り聞くと

 

「そっちも大丈夫ッス。試射数は少ないですが動作に問題は出てないッス。あと、ご希望通りその3つは徹甲弾となっているッス」

 

それを聞いてフォード少尉は満足そうに頷いた。7.62mmと12.7mm、一部の5・56mm弾を徹甲弾とした理由は、この世界では重装歩兵がまだ存在しており、通常弾では弾かれる恐れがあるのと、装甲車や戦車に対抗するためである

 

装甲車はともかく戦車には決定打とはならないが、ダメージを与えることができる。さらにラジエータを破壊する際に使う弾数を軽減できるのも強みであった

 

「でも、砲弾はまだ少し時間が掛るッス。上層部の人達が作製の許可をだしたそうなんですが、一部がまだ反対してるみたいなんス」

 

彼等は溜息を吐いた。その一部と聞いて彼等には思い当たる人物は1人だけだった。ガリア中部方面総司令官のダモン将軍である。肩書きなら実に素晴しいが、中身は腐った無能であった

 

下手に権力を持ち、無能の癖にプライドは誰よりも高いと救いようのない馬鹿であるダモンが邪魔しているのだろうと誰もが思った。大半の人間がダモンにおべっかを使う中、義勇軍のバーロット大尉と独立遊撃隊(アメリカ軍)がダモンに従わないのがよっぽど気に食わないのだろう

 

「まさかここまで邪魔をしてくるとは……あいつを甘く見過ぎたか?」

 

マザーがそう溜息を吐きながら言う。本来なら不敬罪や上官侮辱罪なんかが適応されそうだが、誰の事を指しているのかを隠しているのと、ここには信頼の置ける人物しか入れない基地内なので問題なかった

 

「銃弾は生産されるようになり、砲弾も時期に生産されるだろう。問題は今回の戦闘で被害を被った戦車だ」

 

パンサーがそう言うと、他のメンバーの顔を真剣な表情になる

 

「ケルビムから食らった砲撃は340mmラグナイト砲だった。あれ程の直撃を食らって動いて反撃したのは驚いたが、どこかに重大な損傷を負った可能性が高い」

 

340mm……戦艦の主砲並かよ、と呟く声が聞こえる中、その直撃を食らったエイプラムスが動いたことの驚きと、戦力低下が免れないことに頭を抱えた

 

「あの砲撃から生き残って反撃するほどの彼等が死ななかったのは幸運だった。もし戦車に損傷が見つかった場合は、共食い修理用に残し、無傷の戦車を使用しようと考えている」

パンサーの提案は実に理に適っている。壊れた戦車は無事な所だけを取り出し、他の戦車の修理部品にあてることは此処で朽ち果てるわけにはいかない彼らにとって最善の手段と言ってよかった

 

「だが、トマホーク1の乗員はどうするんだ?」

 

トマホーク1、損傷した戦車のコールサインだ。マザーがそう尋ねると

 

「予備の乗員にする。戦車を借りるのも考えたが、あれほどロートルの戦車を動かすにも訓練が必要だ。それに、エイプラムスと同じ感覚で動いて死ぬ恐れがある」

 

エイプラムスの高機動性と重装甲に慣れてしまっているのが大きな問題だった。仮に重戦車に乗ったとしてもエイプラムスの装甲も機動力も無く、対戦車兵にやられる可能性が大きかった

 

パンサーも今だ死人が出てないこの奇跡に近い状況をなんとかして維持する為の決断だった

 

「俺は問題ないと思う、なんだったら戦車兵同士でローテーションするのもありかもしれない」

 

賛同の声を上げるホーキンス中尉。彼も死人を成るべく出さないように思っており、これはこの場全員が言えることだった

 

「では、戦車に重大な損傷が見つかった場合は共食い修理用の部品とする」

 

その決定案に皆が頷いてる中、話についていけないリオンは1人銃弾を弄っていた

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

大きな黒いトラックと隊舎が見えるこの場所には正規軍の青の戦闘服ではなく、黒の戦闘服に数字が書いてあるワッペンが特徴の兵士、ネームレスがいた

 

その場所へと一人歩みを進める者がいた

 

「すまない」

 

声を掛けられたのは肩にNo.6と書かれた黒髪の男だった

 

「……何の用だ?」

 

明らかにガリアの正規軍と毛色が違うと感じたが、肩の星条旗と服装で独立遊撃隊(アメリカ軍)の人間であると悟った

 

「No.7がどこにいるかしらないか?」

 

声を掛けた人物はダスティだった。クルトを探しに来たと言うと

 

「……うちの隊長においそれと合せるわけにはいかないんだ」

 

No.6……グスルグが明らかに警戒しながらダスティを睨みつける。その様子から周りのネームレスが集まってきた

 

「なら、こう伝えてくれ。チェスの続きはまた今度だと」

 

ダスティの言葉にグスルグは不審に思いながらも

 

「……ここで待っていろ」

 

そういいグスルグはクルトのいる場所へと向かう。その間ダスティはネームレスに囲まれたままだった

 

「クルト」

 

クルトの部屋のドアがノックされ、グスルグが入ってきた

 

「どうかしたのか?」

 

机の上で手動の粉挽き機でスパイスを調合していたクルトがグスルグの方を向いた、そのベッドの上にはリエラが座っていたが

 

「いや、お前に会いたいと言う人物がきている」

 

それにクルトは疑問に感じた、自分に会いに来る人物なんて心当たりが全くないからだ

 

「だれだ?」

 

一体誰が来たのかと聞くと

 

「遊撃隊の人間だ。『チェスの続きはまた今度だ』と言えば分かると言っていたが……」

 

その言葉に該当する人物がいた。遊撃隊の人間でチェスをした人物なぞ1人しかいないからだ

 

「今どこにいるんだ?」

 

クルトが机の上を片付けて、椅子から立ち上がる

 

「あ、あぁ。入り口の方だが」

 

それを聞くとクルトは部屋から出ていく。その後をグスルグとリエラが慌てて追いかけた。クルトが入り口の方に向かうと人だかりができていた

 

「よう、No.7」

 

その人だかりからお目当ての人物が見つけ、声を掛ける。それと同時に囲んでいたネームレス達がクルトの方を向いた

 

「なんの用だ?」

 

クルトがダスティの方に歩くと、人だかりは海が割れたかのように道が出来ていた

 

「バリアス砂漠での戦闘についてだ、少々お前の意見が聞きたくてな」

 

ここに来た要件を言うと

 

「……こっちだ」

 

クルトがついて来るようにジェスチャーし、それにダスティが付いて行く

 

付いて行った場所はネームレスの食堂であり、その入り口にはネームレス達が中の様子を窺っていた

 

「意見と言うのは、あの女兵士についてか?」

 

あの戦闘で態々ネームレスの本拠地まで来て尋ねたいことと言ったら、クルトはあおのことしか思いつかなかった

 

「そうだ、あの銀髪の女兵士だ。お前はアレをどう見る?」

 

ダスティは単刀直入に聞く

 

「……正直分からない。あれが帝国の探していたモノなのか、そうでないのか」

 

少し考えた後に正直な感想を言う

 

「あの女を最初に目撃したのは古代ヴァルキュリア遺跡の奥でだと聞いた。見た時はあんな青い炎を纏ってはいなく、敵総司令官であるマクシミリアンと一緒にいたそうだ」

 

女兵士……セルベリアに付いてダスティが情報を公開していく

 

「うちのチームが2人を拘束し、連れ帰ろうとして遺跡出口に付いた瞬間にあの状態になったそうだ。その後はお前の見たとおりだ、銃弾が効かないは、ランチャーも効かない、30mmの掃射にも無傷でいると化け物みたいな女だ」

 

そう笑いながら言うと、クルトは口に手を当て考え始める

 

「……彼女がヴァルキュリア人……とでもいいたいのか?」

 

古代ヴァルキュリア人の遺跡から出てき、銀髪で赤目、青い炎を身に纏い、手には螺旋状の槍を手にしている。まるで伝承通りの姿だとクルトは思った

 

「俺達もヴァルキュリア人関係の書物を調べたが、見事に姿形が一緒であるのとは思った。が、それに行きつくのはまだ早計だと考えている」

 

ダスティの言葉をクルトは真剣に聞く

 

「もし彼女が伝説のヴァルキュリア人なのだとすると、余りにも噂が無さすぎる。あれ程の容姿と力だ、戦場に多々出没しているのならもっと正規軍の中に噂が流れていなければ可笑しい、それに帝国側も士気向上のプロパガンダとして宣伝するはずだ」

 

それにクルトは同意できる部分もあった。あれ程の力を持ちながら噂が少なすぎ、帝国側にも大々的に存在をアピールしていないことは不自然と取れた

 

「……あの遺跡で何かしらの切っ掛けを見つけ、初めて覚醒したのではないか?」

 

ヴァルキュリアの力を目覚めたのがバリアス砂漠の遺跡ならばこの不自然差にも辻褄が合うとクルトは考えた

 

「俺達もそれを考えたが、それにしては妙に力の制御が上手過ぎないかと思っている」

 

もし初めて力を使ったのがバリアス砂漠の戦場ならば、もっとバカスカとレーザーを撃ってきてもおかしくないのだが、力をセーブして接近戦に挑んだり、あまりレーザーを撃たなかったりと制御が出来ていることから今回が初めてという考えに否定的だった

 

「……もしかしたら、使いたくても使えないのではないだろうか?」

 

ふと、クルトがそう言う

 

「マクシミリアンは王族で準皇太子だ。もしヴァルキュリアの力を持っていると知られると本国に持って行かれると考えているかもしれない。あれ程の力を手放すのはかなりの痛手となる、だから使いたくても使えない状況なのではないか?」

 

その言葉にダスティは考えさせられる。クルトの言うことは的外れではなく、むしろ的を射た回答なのかもしれない。あれ程の戦力を本国に取られるのは避けたい事項のはず、大々的な戦闘ではなく局地的な戦闘でしか投入できない。それならば不自然差の辻褄も合う

 

「ふむ……ありがとう参考になった。戻って調べるとする」

 

ダスティが席を立とうとすると

 

「待ってくれ、聞きたいことがある」

 

クルトが席を立とうとしているダスティを止める。それにダスティは再び席に座った

 

「あの巨大戦車を撃破した、飛行兵器……あれはいったい何なんだ」

 

飛行兵器……きっとヘリの事を指しているに違いないと考える

 

「あれはヘリコプターという航空機だ。その中で戦闘様に特化したのがお前の見たやつだ」

 

説明を聞き、クルトの頬に冷や汗が流れる。彼等が飛行兵器を持っているのは聞いていたが、あそこまでの戦闘能力を持っているとは夢にも思っていなかった。空からロケット弾や機関砲を装備し、その力は巨大戦車や増援部隊を一蹴りにするほどである。下手するとまだ力を隠している可能性すらある

 

「……あれは人が造った物なのか」

 

クルトは絞り出したように聞くと

 

「そうだ、それにあれは量産モデルだ」

 

それを聞き、クルトは目を見開く。あれがワンオフ機ではなく量産型だと言うのだからだ

 

「それじゃ、また来させてもらうぞ」

 

ダスティが席を立ち、ネームレスの食堂から出ていくと、飴を噛み砕くような音が食堂に響いた

 

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