横浜とある公園
俺は、昨日稼いだお金を公園でホームレスや失業者達に配っていた。少しのお金との明日のパンツさえあれば、生きていける。何故か最近そういった思考になってきた。それに服の趣味も変わった気がする。ちなみに、俺が今着ているのはエスニック調の服だ。お金を配り終わると、一人の少女が近づいてきた。
「ごめん、今日はもうお終いなんだ。また明日来てくれるかな。」
俺はお金を受け取りに来た子だと思い、優しくそう言った。
「嫌ですね、違いますよ。私が欲しいのは…。」
言い終わる前に彼女は、自分の目の前まで来ていた。そして、
「チュッ。」
キスをしてきた。その瞬間、頭から何かが抜けていくのを感じた。しかも凄いスピードで。彼女がキスを終えた瞬間その場に倒れ込んだ。
「思い出ですよ。まあ、もう聞こえてないでしょうけど。それにしても、凄い思い出の量ですね。この分だとミカの分の思い出はすぐにたまるでしょう。」
そう言って、次の相手を探しにガリィはその場を去っていった。
数時間後、昴は起き上がった。
「何だったんだ、あの子は。痛っ。頭が痛い。」
昴は最初に転生する前の記憶をほとんど持っていかれていた。しかし、昴は何度も転生を繰り返してきた。そのおかげで、普通の人の何倍もの思い出を有している。そのおかげで助かったのだ。ちなみに女神に会う以前の記憶は完全に無くなっている。
「あー頭痛っ。くそっ。」
昴は頭を押さえながら、寝泊まりしているテントに戻っていった。
深夜の公園
昴は夜まで全然動けなかった。しかし、もうすぐ野外コンサートの時間だ。
「休む訳にはいかないよな。」
すでに観客は沢山来ていた。昴は重たい体を引きずりながら、ステージに向かった。
今日、歌うのはGot to keep it realとRide on Right timeだ。
そのころ、公園の近くには立花響と小日向未来がいた。
「ごめんね、気晴らしの散歩に付き合ってくれて。」
「気にしなくていいよ響。」
眠れない響は気晴らしに近くの公園に散歩に来ていた。
(この手で人を傷つけるのが怖い。だけど、私の弱さがみんなを危険に巻き込んだ。どうしたらいいんだろう。)
響は今日の出来事で悩んでいた。未来はそんな響のことを心配している。そんな時、二人の耳に誰かが歌う声が聞こえてきた。
「一体何だろう響。」
「行ってみよう。」
二人は歌声が聞こえてくる場所に向かった。するとそこのは多くの人が一人の歌う歌に熱狂していた。
(凄いこの人。)
響はステージで歌う男の歌声に聞きほれていた。
(特別な力がなくても、歌でこんなに多くの人を幸せにできるんだ。)
二人はその歌声に聞き入っていた。コンサートが終わっても二人はしばらく熱が冷めぬ様子でその場に居た。
「おい、どうしたんだ。コンサートはもう終わったぞ。」
そんな二人に話しかけてくる人がいた。それは、ステージで歌っていた男の昴だった。
「今日のコンサート本当に最高でした。」
「ちょ、ちょっと響落ち着いて。」
響はものすごい勢いでまくしたててきた。そんな響を未来がなだめる。
「ありがとう、そう言われると嬉しいよ。」
そう言い微笑む。その笑顔を見て、二人は赤くなっていた。
(うわー、とってもかっこいい人だ。)
(その笑顔は反則ですよ。)
そんな二人の様子に気づかず再び話しかける。
「俺の名前は黒木昴、それで君達の名前は?」
「私は立花響です。」
「小日向未来です。」
「響ちゃんに未来ちゃんか。それで、二人は何でこんな所に居るんだ。君達みたいな子が出歩く時間じゃないと思うけど。」
その言葉に二人の顔が暗くなる。
「えーっとそれは…。」
口ごもる彼女に昴は優しく問いかける。
「何か悩みがあるなら言ってみて。人に聞いてもらうのともらわないとでは、随分違うよ。」
響は今日あったことの一部を隠し昴に話した。勿論シンフォギアやオートスコアラーの事は内緒にしてだ。
「私、怖いんです。この手で人を傷つけてしまうのが。戦う力があるのに。」
そう言う響に昴は真剣な表情でこう答えた。
「響ちゃん、君は人助けが出来る時に出来なかったら後悔する?」
「当たり前ですよ。」
「手が届くのに手を伸ばさなかったら一生後悔する。それが嫌だから人は手を伸ばすんだ。響ちゃんは、後悔したままでいいの。」
「それは嫌です。」
「だったら自分が後悔しないようにしないと。君の力は誰かを傷つける力じゃない、誰かを守ることのできる優しい力だと思うよ。それに、君には支えてくれる友達もいるんだから。」
昴は未来の方を見てそういった。響はどことなく吹っ切れた顔をしていた。
「ありがとうございます。すいません、急にこんな話をしてしまって。」
「いいよ別に。またコンサート見に来てね。毎週ここでやってるから。」
「それと、良かったら呼び捨てで呼んでください。」
「私もお願いします。」
「分かったよ。気を付けて帰るんだよ。」
そう言い、昴は寝床のテントに帰っていった。