本気のバトルもやったし、此で心置きなく舌戦にいけます。←本当は有ってもダメなんですけど。
ほら、此れは基本ほのぼのだから。
上空から降り注ぐ幾多の霊達。
二人はお互いに意識を集中させ過ぎて、それらに全く気付いていなかった。
気付いたとしても、隙間無く一枚の板のように密集して落ちてくる霊達を交わすことが出来たであろうか?
虎――鷲――龍にすら、その霊達はベタベタとボンドのようにくっ付き地面に拘束して動きを封じる。
某ジ○リの龍に取り付く紙人形達を思わせる程の量を相手に体をくねらせのたうち回り抵抗するも無理矢理大人しくさせる。
そして、その大群は当然仙人と、閻魔にも向けられた。
彼女達が気付いた時には手足を拘束され体が浮いている状態であった。
「なっ!此れは………亡霊!?其に悪霊まで」
「まさか……」
華仙が包帯の手を強引に動かし悪霊へと伸ばすもその手先の指一本一本を霊達が包み握れないようにする。
更にそのまま蛇のように体に巻き付き寝袋状態にして完全に動きを封じ露出しているのは、顔だけとなった。
この二人や他の動物達――ましてや、龍は、数千程度が重なり一つになっていたとしても引きちぎる事が出来た筈だ。
だが、相手は襲うときはすり抜けて纏わり付く時には物質と化する。
そして、数万もの霊達が纏わり付いて来るのだ。
更にその霊達の放つ冷気と、悪霊が気力を奪って行くのも原因の一つだった。
首から下を雪の中に埋められていると言う解釈が一番だ。
解くことなど不可能に近い。
「ちょっと!此もあんたの作戦って訳!」
「違います!だったら何故、私まで縛られているのですか!」
「其も……そうね。じゃあ、何でこんなに亡霊共が」
混乱する華仙とは、対象に四季様は至って冷静であった。
はぁ、と刑事ドラマの観念した犯人のように溜め息を吐いてから。
「先程の質問にまだ答えていませんでしたね」
華仙へと言葉を投げ掛ける。
先程までの殺意は消え失せていた。
「此と関係があるの?」
「上を見れば分かります」
「上を……?」
華仙が顔を上げると、其所には残りの数匹の霊達が一人の死神の周りを守るように囲みながら、回っていた。
「信じられない」
華仙は、そう呟き四季様の方へと視線を戻し
「何故?何故!渡しの死神にあのような力があるのですか!あんな数の亡霊を、ましてや悪霊まで従えるなんて……閻魔!貴女其が、どれ程
「あれは、私が与えた力ではありません!」
華仙の焦りと怒りを混めた叫びを四季様が否定する。
「貴女も知っておくべきなのでしょうね」
そして、自白する犯人のようにぽつりぽつりと下を向いて語り出す。
「私は、誰でも……どんな存在で在ろうとも白黒ハッキリと分けられると思っていました。――ですが、彼女の魂だけは、裁く事が出来なかった」
「何を言って――「灰色なんです」……?灰色」
その言葉に反応し聞き返す華仙に向けて四季様は、ガラスケースの中の欲しいものが手に入らない子供のような悲しそうな顔で
「そうです。灰色です。……白でも黒でも無い善でも悪でもない。そんな存在は視た事がありませんでした」
「其じゃ――こまっちゃんは、『間』の存在だからあの力を身に付けたって言うの?」
その言葉の何処かに心当たりでも有ったのか、ハッと合点の行った顔をして目を大きく見開き震える声で四季様へと問う。
「流石仙人と言う事ですかね。理解が早くて助かります」
その問いに答える為か、上げた顔のその目は、何処か哀れんでいるようで華仙でも上空の小町でもなく更に遠くを見ているようだった。
「生と死の狭間をさ迷う存在……地獄にも天界にも逝けない存在で同種族にすらなることの許されない存在」
「二度と何者にもなることは無い」
四季様の言葉の続きを予想していたように華仙がぽつりと言う。
その言葉にコクリと力なく頷いた。
「このままでは、閻魔として危険な魂として、管理科に処分させなければならない。そうならない為に」
「別種族……自分の目に付きやすい死神にってわけ?独占欲の強い閻魔ね」
「何とでも言いなさい」
底冷えする声で華仙に言う。
それでいて何処か吹っ切れた強い意思を持った声で一喝する。
「そうでもしなければ、小町は消滅していました!最初は不思議な存在だったから!けど、何十年も長く一緒にいる内に、あのお節介な所が!サボりと放浪癖の塊な所が、お喋りな所が!寝付きがやたら良い所が!あのだらしなさが、好きなんですよ!何処かにフラフラ出かけるたんびに、女作って来て!もういっその事、一生サボれる空間にでも閉じ込めて愛でていたいくらいに好きなんですよ!何か文句がありますか!」
吹っ切れ過ぎて、余計な事まで口走ってる気がしなくも無いが、そんな事に気付く筈もない四季様に今度は華仙が、溜め息を溢し。
「最初は一目惚れって奴ね。――でも、そうだからって、はい分かりましたって引ける訳じゃ無い!」
再びお互いに威嚇しあい、押さえつけているにも関わらず今にも、飛び掛かろうとする二人。
霊体が、ブチブチと不快な音を出し始めた(最も、万が一引きちぎれた所で、元の個体に戻るだけだ。合体したスライムみたいな)所で、
「ストップ!ストーーーーーーップ!」
上空からの聞き慣れた声が熱を持った二人の頭に冷水をぶっかけたかのように、冷静さを取り戻していく。
反射的に上を見れば
「其処までです!二人とも!」
――龍によって荒れていた天候は、龍が押さえ付けられた事により止んで変わりに、綺麗な夜空が二人の視界に飛び込んできた。
其処からゆっくりと降りて来た死神が途中で消え二人の間に姿を現した。
この争いの半分は火種となった死神が。
◆ ◇
ヤバッ……流石に此れは
「ちと、やり過ぎたかねぇ」
てか、呼びすぎた。
最初は、数匹良くて、数十匹かと思っていたけど、まさかこんな空の一部を覆い尽くす程集まるとは思わなかった。
何処のコンサート開場よ。
三途の河にだってこんなにいないよ。
けど、あの二人の間に飛び込むなんて自殺行為だって分かりきってる。
もしも、あのまま入れば一言も発せずにピチュられて、新しい人生を待つことになる。
まだ、遺書すら書いていないのに。
あたいは、サボ……休憩が多いから、判決は『黒』だね。
そして、この惨状。
この暴風雨を止める為とは言え、一目でやり過ぎたのが分かる。
やらかしたね。
かせんちゃんは、まぁ、相手が四季様だからと言うのも有るだろうけど、やっぱり生まれ持った性質は捨て切れないんだろうな。
別に完璧な仙人を目指してる訳でも無いみたいだし、其処はあたいがとやかく言う事じゃ無い。
そう現実逃避していたら、下の方でまた言い争い遂には、体を動かし始めて僅かにプチッ!と言う音が聞こえて来た。
放って置いたら力付くで抜け出してしまうんだろうな。
(ええい!もうなるようになれ!)
「ストップ!ストーーーーーーップ!」
半ばやけくそで二人の元へと行く。
その途中で距離を短縮して二人の間に入る。
(今だけ、あたいの声を聞いて!)
そう思い先ずは、どちらから説得するか考える。
答えは直ぐに決まった。
「四季様」
「……小町」
しゅんと、怒られた子犬のように下を向いて、視線をしない四季様に構わず言う。
「失礼を承知で申し上げます。四季様は、この一件をあたいに任せると仰って下さいました」
「うっ…た、確かにそう言いました」
四季様は、ばつが悪そうに、一瞬顔を上げ直ぐにプイッと、そらしてしまった。
きっと、あたいだけでは、仙人を相手にするのは荷が重いと思って加勢しに来てくれたのだろう。
他の死神からしてみれば、あたいが、かせんちゃんと仲良くするのは、警察が犯人と仲良くするくらいあってはならない事なのだ。
其は分かっている。
だからと言ってかせんちゃんをあたいの手で傷つける事は出来ない。
何より争っている二人を見たくはなかった。
そんな申し訳ない気持ちを一時隅に置いて四季様に遠回しな休戦をさせるしかない。
この反応ならいける。
伊達に場数は踏んでないよ。
「ようは、『怨霊潰し』の一件を止めさせれば良いのですよね?」
「そう……です」
此処が幸いした。
今回あたいに任された事は、仙人の『討伐』ではなく仙人への『警告』更に、かせんちゃんは、特殊な仙人。
周りがどう対処して良いのか分からないから遠ざける。
好条件が揃っていた。
後数メートルで、賭けた馬が一位になるくらいの確信があった。
「ですが、小町……先程から其処の女狐……じゃなくて、仙人と仲良いようですが?」
「あ……えと」
だが、そう上手くは行かなかった。
その言葉に、心臓を鷲掴みにされたような錯覚に陥る。
かせんちゃんとは、親友だ。
だが、正直にそうは言えない。
言ってしまえば、四季様はこの幽霊の拘束を破って再び攻撃するだろう。(実際は、四季様が、一割華仙の事を小町がどう思っているのか探る為と、九割、普段の無自覚な鈍感女たらしな死神へのささやかな仕返しなのだが)あたいの死神人生も共に終わりである。
「『警告』ならもう聞いたわ」
あたいと四季様がかせんちゃんの方を向くのはほぼ同時だった。
(かせんちゃん……どうするつもりだい?)
思考が追い付かないでいてもかせんちゃんは口を開く。
ふと、あたいと目があった。
すると
(私に任せて)
パチリと片目でウインクしてきた。
「其はどういう事ですか?」
「分からないの?言葉のまんまよ」
「あの時に『恋人みたく抱きしめ合って』いたのは?」
僅かにナイフのような視線を此方に向けて抱きしめの所を強調して言って来る。
少なくとも恋人同士では無い。
あたい女だよ?
「そ、其は」
「あら?誇り高い閻魔様には、そう見えたの?白黒ハッキリとだったっけ?とてもそうは思えないな」
昼ドラの姑ですか?と言いたくなる程の嫌みたっぷり100%の声で四季様を挑発する。
其に苺のように顔を真っ赤にして
「そ、其くらい分かります!だから、えと……二人は、その」
「四季様」
言い淀んだ所ですかさずあたいが入る。
説得するなら此処しか無い。
「お言葉ですが、四季様は誤解しています」
「誤解……ですか?」
「はい」
キッパリと四季様の目を見て言い切る。
四季様の言っている事が本当は事実なのだが、だからと言って認めて仕舞うわけには行かない。
二人に生きて欲しいから。
「あたいは、あの時戦っていました。……話が拗れてしまったから。背後を取りましたが流石仙人。直ぐに気付かれて、先程のような醜態を晒してしまいました。本当に申し訳ありませんでした!」
腰を90度曲げて頭を深く下げる。
この時に声を大きくするのが、此方の事を考えさせる有効手段だ。
「いえ、小町別に醜態等とは」
「どんな処罰でも受けます!だから、今回の一件……どうか見逃してはくれませんか?」
「うっ……」
――此処で、この死神、小野塚小町は、まだ乾ききっていない体と高ぶった感情のせいで全く気付いていなかった。
自分がうっすらと。涙を溜めていることに。
妖怪や神などの人外の者達は、肉体よりも精神にダメージが行く。
その為に、先程の子供の言い争いみたいな所に出てきた、お風呂がどうの、キスがどうのと言うのは、二人にとってみれば左右からトラックにプレスされるような衝撃を喰らわせていたのだ。
其所にこの涙である。
此で勝敗は決したと言えるだろう。
考えてもみて欲しい。
自分の好きな子が泣きながらお願いしてくるのだ。
其を無慈悲に、NOと言えるだろうか?
少なくとも
(確かめる為に聞いたのですが、まさか此処までとは―――まぁ、着いてきたのは私ですし、もう少しこの事には時間を置きましょう。小町の貴重な泣き顔もこの目に焼き付けた事ですし)
そう後ろめたい事もあり
「分かりました。今回の所は見逃しましょう。取り合えず、此を早く解きなさい。寒くてどうしようもありません」
「あ、す、すいません!!四季様!」
四季様には、出来なかった。
――こうして、一夜のちょっとした異変は、一人の死神によって引き起こされ、そして日の出と共に片付けられた。
◆ ◇
結局あたいには処罰も無く、二人は休戦と言う形で納まり、かせんちゃんの事はあたいに任せると言って去っていった。
ものすっごい二人とも睨んでたけど、また、管理科の連中がやって来たりするのは無さそうなので良かった。
さて、此処で大きな問題が二つある。
家と動物だ。
かせんちゃん及び飼っている動物達は、あの激闘により家が全壊してしまった。
かと言って四季様に頼るのは論外。
閻魔と仙人……あれが最善の策なのだ。
と、言ってあたいの家にご招待と言うわけにもいかない。
住所は地獄で死神の巣窟。
かせんちゃんには牢獄と変わらない。
幸い動物達の方は、一旦預かって貰える所を知っている為に何とかなった。
あの子は、動物が好きだし直ぐにかせんちゃんの動物達もなつくだろう。
流石に龍には、サイズ的に無理があるのでそこら辺を飛び回って貰っているが。
後でお礼に、本でも持っていこう。
あの子は、読むのも書くのも刺激になるとか言っていたからね。
家の方も同じ場所にかせんちゃんの知り合いがいるために直ぐ建て直す事が出来るそうだ。
明日の夕方には終わるとの事だからありがたい。
代金は、極上の酒を樽で、との事だったが。
だが、此処で家が無いとなると寝床が無いと言うことになる。
かせんちゃんは、知り合いとは長く一緒にいることは出来ないと断って致しその辺は仕方ないだろう。
「其で、此処に来たってわけね」
「あははは…………ごめん」
「良いわよ別に、あんたがトラブルに巻き込まれてるのは何時もの事もだもの」
「む、失礼な」
「事実でしょ。そのボロボロのあんた達が何よりの証拠よ」
かせんちゃんの家を通る道のりにある妖怪の山。
その山には、天狗の里と言うのがあり、天狗達が一つの社会を使って暮らしている。
その里から少し離れてポツンとある一軒家をあたいはかせんちゃんと共に訪れていた。
「見た所、仙人みたいだけど………あの閻魔絡み?」
「両者引き分けって所だね」
扉を開けて気だるげに呆れた視線を向けてくるの天狗の名前は、姫海棠はたて。
紫のリボンを付けた茶髪のツインテールに、紫の天狗帽子をちょこんと頭に被ると言うより乗せて、服は襟に紫のフリルが付いた薄ピンクのブラウスに黒のネクタイを付けて同じ色のハイソックスを着用し黒と紫の市松模様のミニスカートを履いた、外の世界の今時のギャルを思わせる。
今の時代のギャルがどんなのかは知らないけど、少なくともあたいの時はこんな感じだ。
「ふ~ん」
はたては、じろじろとかせんちゃんの体をグルリと360度見渡すと一人の納得したのか、コクリと頷き
「文が吹き飛んでいったのは、そう言う事だったのね」
ぼそりと小声で何かを言った。
あたい達には聞き取ることが出来なかった。
「まぁ、良いわ。取り合えず、そのボロボロのままでいられても目のやり場に困るし、お風呂でも入って来なさい。その間に、服用意しておくから」
「あ、ありがとう」
ぐいぐいと、背中を押してほぼ強引に部屋へと上がらせる。
お節介な所はどちらかと言うとはたての方が合っているのではと、ついつい思ってしまう。
「じゃあ、あたいは此で」
踵を返して、帰ろうとすると
「え、ちょ、ちょっと待って!」
ガシィ!と右腕を捕まれる。
「あの、えっと………どうせあんたも今は、帰れないでしょ?」
「いや、あたいは」
もう解決したし、これ以上の迷惑は掛けられないだろう。
そう言おうと、したら少し頬を赤くして
「と、兎に角ほとぼり覚めるまで家に泊まれば良いでしょ!」
あたいは浮気のばれた旦那か。
―――そのまま、ほぼ投げられる形で家の中へと案内された。
「あ、ついでだからいつも通り取材させてよ」
「……手短にね」
此で、四人のクリスマスメンバーが揃いました。
クリスマスって言うと、赤い帽子のお爺さんが斧持って夜道のカップルを襲うんでしたよね?
え?違う?
おかしいなイギリスの話にそんなのがあると聞いたことがあるのに