「ん~~~!本日の仕事修了!」
お疲れあたい。
誰に言うでも無く、彼岸花咲き誇る大地で一人大きく伸びをする。
死は平等で無くとも、転生は誰にでも平等にやって来る。
そんな中人間として死に、死神として新たな生を受けた。
三途の水先案内人事、あたい、小野塚小町。
この三途の川には、あたいだけ。
他に誰も居やしない。
そのせいか、一人言が多い。
前世でも休日は一人TVの前から殆ど一歩も動かず、女子力と言うもの皆無だったが、流石にこんな風に幾ら一人だからと言って独り言を言うほど年寄り臭くは無かった。
あたいが運ぶ亡霊が、喋れたらどれ程良いことか。
此方へ来る亡霊は、人の形に足なしの皆の想像する亡霊とは違い(そう言うのも居ると言えば居るが、此方へ来るのは希で自我を持ち長々此方へ来ようとはしないで、現世をふらついているのが殆どだ)バスケットボールくらいの大きさで白い球体の先っちょに尻尾のような尖りがある。此れは此で可愛い形をした奴等だ。
こいつらは、生きてきた記憶だけを持ち自我は無く本能で此方へと来るものばかりだ。
だからあたいの気晴らしに話し相手にするのだが、此が長々面白い。
喋れはせずとも記憶がある。
記憶は、いわゆるメモリーカードのような物で、其を覗いてそいつの生前を見る事も出来る。
其を元にそいつと(一方的に)会話する。
まぁ、其でも、TVの中の人物に思わず突っ込んでしまうような、一人あるあるの様でなんとも言えない空しさがあるのだが。
自我を持つ奴が此方へ来たのはもう数十年も前の話だ。(其処、あたいの年を予想しようとしないで!永遠の17……は酒が飲めなくなるのは嫌だから20で。良いね?)
其もふらつくのに飽きたと理由で。
え?死神なんだから、魂狩りに行けと?
生憎死神は死神でも役職ってもんがある。
一括りに死神と言っても役割は様々。
その中でもあたいは、運搬専門さ。
来た奴等を運ぶだけ。
外の死神みたいにノートばら蒔いたりなんかしないのさ。
――ふぁ、と小さく欠伸をし、地面に鎌を刺し近くを通りかかった此方へ来たばかりらしき亡霊に支えてもらい鎌を鏡変わりにして、側面に映る自分の髪を見る。
左右に少し振り寝癖等が無いかを確認してから、前髪を整える。
誰も居なくても身だしなみは乙女として整えて置きたい。
そうしないと女として駄目になりそうだ。
疲れた体を、数分だけ休憩と称して休ませようと、彼岸花の上に仰向けに倒れる。
そのまま、周りの花の香りと一定のリズムで流れる川の音に耳を傾けてる内に次第に睡魔が襲い、瞼が重くなる。
数分――1分―――いや2分くらいは良いだろう。
今のところ亡霊は目の前の一匹だけだし。
その亡霊もピタリとあたいの隣に寄り添いその亡霊の冷たさが、体を動かし少し熱くなっていた体にはちょうど良い。
こう、真夏の夜に扇風機が当たるような、そんな冷た過ぎないのがまた。
其に、あたいが休むと言うことは、死者が出てないと言う平和な証拠だ。
だから――本当――にす、こし――だ――け
「小町!」
「きゃん!」
ベシッ!と、額に鋭い痛みが走り、そのまま勢いよく飛び起きる。
思わず変な声が出てしまった。
額を擦りながらまだ、覚醒しない頭のまま顔を上げると
「げっ……」
「何が、『げっ』ですか!」
目の前には、だいたい見た目的には、 10歳くらいの、緑色の艶々のショートカットな髪に何とも奇妙な帽子で真ん中には閻魔と書かれ、両手には、ピンクの動く尺じゃなくて、有名人のサインのようなふにゃりとした罪と言う文字がデザインされていた。
「小町!貴女と言う人は、直ぐに目を離すと、サボりだすとは死神としての自覚が足りませんよ!」
目の前では、くりくりのエメラルドのような目で此方を睨み、少し舌足らずな声でも誰もが震えるくらいの覇気を持った声であたいに怒りの声を上げる。
そうこの子―――いや、この方こそ
「い、いやぁ、四季様休むって言ったってまだ本の1~2分位のうたた寝みたいなもんで少ししたら、ちゃんと仕事しようと」
「へぇ………随分と長かった1~2分ですね」
「へ?」
死者の行き先を決める最後の判決を言い渡す、楽園の最高裁判長。
四季映姫・ヤマザナドゥ様――つまりあたいの上司だ。
その四季様の口からでた、妙な言葉にまたしても間抜けな声を出す。
状況が分からないと言ったあたいの意図を察したのか。
尺をあたいの後ろには突きつけ
「周りをよく見てみなさい」
言われるがままに、辺りを見渡すと、日は既に傾きあたいの後ろには、其れはもう日曜日の遊園地みたいな『此処から数時間待ち』のような長蛇の列が亡霊達によって出来上がっている。
あたいが寝たのは、お昼頃とすると―――うん。まぁ、夢とか見ないと寝てるって感覚も無いよね。
「ずっと、隣で起きるのを待っていましたが、まさか半日も寝るとは随分と長いうたた寝でしたね?」
「半日も隣で何してたんですか?いたなら起こして下さい」
てか、四季様こそ仕事は?
「私の事は良いんです。其より小町何か、言うことは?」
ニコリとその見た目に似合わないほど冷たい笑顔を張り付ける四季様に、あたいがすることは一つ。
「……寝てました。すいませんでした」
深く頭を下げて土下座をするのだった。
その後明け方まで、四季様からのありがた~い説教が続き、その間も列はより長くなっていたのは、また別の話。
え?明らかに別次元の死神が混じってた?
気のせいだよ。メソラシ―
一応設定としては、性格の瓜二つな人がこまっちゃんになっちゃったと言うことです。
感想評価等有りましたら宜しくお願いします。