ダンジョンに人形遣いがいるのは間違っているだろうか 作:粉プリン
あの後、2人の言い合いを止める事なくアリスは上海を連れて協会から出て来た。止めなかったとは言え、険悪な雰囲気ではなかったため自分が割って入る必要もないと判断したためだ。
「それよりも、早くやる事は済ませないと……だからしばらく貴方達は御留守番よ」
「ええー」
「そとみたーい」
「アソーブ」
「しばらくしたらダンジョンに行くからその時にしなさい」
と言って人形全てを明らかに入らないと思われる小脇に持っていたトランクに入れていく。不思議といっぱいになる事はなくどんどん人形が入っていった。途中から面倒になりポイポイトランクに投げ入れていたが、それが気に入ったのか入れてもまた出て来てを繰り返し、ようやく全員を詰め終わった時には既に10分が経過していた。
「……何してるのかしら、私」
明らかに運動以外で疲れた顔をしたアリスは立ち上がり再び歩き出した。向かう先はオラリオでも一二を争う有名ファミリア、
ロキ=ファミリアだった。
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「……なんか、暇やな。おもろい事でも起きんの?」
そのロキ=ファミリアのホームでは主神のロキが暇そうに眷属のアイズ=ヴァレンシュタインの髪の毛を弄っていた。弄られている本人も無表情無反応と動くことすらしないため、段々と飽きてきているロキだった。
「まあついこの間まで遠征でしたから、僕たちもこうしてゆっくり休んだって罰は当たらないでしょう」
「せやけどなぁ〜、暇なもんは仕方ないんや。それにうちなんかその間ずっとここに缶詰やで?」
眷属内のリーダーであるフィンの一言をしてもロキに変化はなかった。ダラダラとアイズの髪を弄っている。
「ベート、なんかおもろい事でもやってみいや」
「ふざっけんな!なんで俺がそんな事しなきゃいけねえんだ!」
「……ベート弄るのもいい加減飽きてきたな」
クッソオオ!と怒り出すベートを押さえつけるフィン。おおよそ下層や深層についこの間までいたファミリアには見えなかった。
「……そや、あのアホンダラもこの時期辺りだったか」
「……アホンダラ?」
「アイズたんは知らんやろな、アイズたんがここに入る前におったんよ。アイズたん見たいな可愛い子が」
「ハンッ、あんな自分から逃げ出した臆病もんなんてどっかで野垂れ死んでんだろうがな」
「ベートが怖くて出て行っちゃったんじゃない?」
「あ、それあり得そー」
「うっせえ馬鹿共!」
「「馬鹿って何よ!?」」
ギャーギャーと騒ぐ
「そのアリスは今どこにいるの?」
「知らん」
「……?」
「アイズたんが入る前に脱退してったんや。自分探しの旅とか、人形についてもっと知りたいとか抜かしてな。まああれもああ見えて強情やったから、どっかで元気にしとるんやないか?」
「……そう」
「まあアリスは怒るとむっちゃ怖かったからな!ちょーっとうちが後ろからちょっかい出しただけでゴブリンみたいにキーキー言ってな!」
「へぇ、そう思ってたのね」
「そうそう、んでもって怒ったらいつの間にか人形に囲まれ…………」
その瞬間、ロキの笑顔が固まった。神である所以か分かってしまった。後ろから放たれている氷の微笑のオーラが。
「ゴブリンみたいにキーキー……ね」
「あ、アリスたんいつ帰って?」
「今さっきよ、でも本当に良かったわ。興味深い話が聞けて」
アリスが持っていたトランクが突然開く。そこから途切れる事なく人形がどんどん溢れてきた。いつの間にかロキを囲むように人形で出来たドームが形成されていた。
「……アリスたん?」
「貴方達、前言撤回よ。そこの
「ちょ、アリスたん流石にこの数はさばけ……てぇちょお勘弁してやぁぁぁぁあああああ!!」
「何かしら?キーキー言っててよく分からないわね」
その時のアリスの顔を見た全員が同じ事を思った。
アリスは怒らせると相当根に持つ、と。
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「それで?アリスはどうしてここに来たんだい?」
外で人形との
「特に何があった訳じゃないわ。強いて言うなら……挨拶かしら?」
「まあ一度顔見世をしてくれただけでも嬉しいさ。それで、本題は他にあるんだろう」
「相変わらず話が早いわね。まあそうだけれど。とりあえずこのファミリアには加入しないとだけ言っておくわ」
「どゆことやアリス!」
突如、壁を壊して入ってきたロキが声を荒げた。が、直後フィンに思いっきり笑顔で睨まれたため人形と共に壁を直す作業に戻った。
「そのままの意味よ、私は一度ここから自分の意思で抜け出した。私のここでの冒険はもう終わったのよ」
「だから今度は別の冒険を……そういうことかい?」
「概ねそんな感じね。まあ別に他のファミリアに入ったからといって敵対するわけでもないから、単にさっき言ったけど挨拶に来ただけ。そろそろ行くわ」
そのままロキが壊した出口とはまた別の場所から出ようとして、ふと足を止めた。先ほどからこちらをじっと見つめ続けている者がいた。数年前にはいなかった者だ。
「…………」
「…………何かしら」
「その子はアイズ、だいたいアリスとすれ違いみたいな形で入ってきたんだよ。だからお互い知らないと思うけれどね」
「そう……アリス=マーガトロイドよ」
「……アイズ=ヴァレンシュタイン」
「……もっと他に何かないのかい?」
「二人とも固すぎだよー」
「そうそう、もっと気楽に行かないとさぁ」
「そうは言っても特段語ることなんてないわ、それにもう一箇所いかなきゃ行けないから、失礼するわね」