ダンジョンに人形遣いがいるのは間違っているだろうか   作:粉プリン

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第3話

ダンジョン都市に存在するギルド。その一角で主に成り立てに近い冒険者などのサポートや面倒を見ているギルドの職員、エイナ=チュールがいた。いつもの如く書類を区分ごとにまとめ、コーヒー片手にその一枚一枚に目を通していき、最新の冒険者登録をした瞬間コーヒーを噴き出した。ギリギリ書類には掛からなかったが犠牲に対面で同じく仕事をしていたミィシャ=フロットに掛かった。盛大に。

 

「いやぁああ!!これ下ろし立ての制服なのに!?」

 

ミィシャの魂の叫びも今のエイナにして見れば雑音でしかなかった。それほどに目の前のたった一枚の紙に書かれている内容が濃すぎた。

 

『アリス=マーガトロイド

 

Lv.8

所属ファミリア:未定

 

力:C601

耐久:C695

器用:S938

敏捷:B723

魔力:S999

 

発展アビリティ:《神秘》《魔力》《耐異常》《並列処理》《神聖》

 

《スキル》

神酒蔵庫(エリクサータンク)

・魔力の貯蔵

・時間経過で濃度向上

・貯めるほどに最大蓄積量の増加

 

一騎軍勢(ワンマンパレード)

・人型の使役

・心血を注ぐ程に使役量の増加

・親愛により生命の付与

 

魔神降誕(パーフェクト・ゴリアテ)

・魔神の使役

・神聖により魔神の能力向上

・降誕時間は召喚者の魔力に依存』

 

今この場で叫び出したい気分であったが、それを気合いで押し込めて対面の同僚に視線を向ける。

 

「……悪かったわ」

 

「悪いじゃ済まないよ!?あー……もうこれどうしようもないじゃん……」

 

「いや、それは弁償するわ……にしても誰よ、こんな出鱈目なステータスを書き込んだのは……」

 

「んー?どれど…………」

 

横から覗き込んだミィシャが紙を見た途端固まった。その様子になにかあると思ったエイナはミィシャの方を掴むと前後に揺らしながら揺さぶりを掛けた。

 

「ミィシャ?今吐けば後で後悔せずに済むわよ?」

 

「それ選ばせてるように見えて選択肢潰してるよね!?」

 

「なら……黙秘権?」

 

「喋ります喋りますからそのハイライト消した目はやめて!エイナがやると冗談に見えな……あいたぁ!?」

 

脳天にズビシッとチョップを貰い悶絶しているミィシャに再度エイナは尋ねた。

 

「これ、本当にミィシャが受付したの?なんだか嘘の報告者みたいな感じなんだけれども」

 

「くぅぅ……頭叩かれた上に仕事を疑われちゃうとか、今日の私ついてなさ過ぎ」

 

「でもねぇ……Lv.8なんて今まで一度も見たことも報告も受けたことないし、普通なら眉唾だって思うわよ」

 

「えっ?エイナって聞いたことないの!?『操者』の噂!」

 

「聞いたこと……ないわね。そもそもその噂いつのやつよ」

 

「確か……5年くらい前にいた冒険者が『操者』って言われてて、単独で深層を突破したとかなんとか!先輩に写真見せてもらったから顔は覚えてたんだよ!」

 

「たいして覚えてるわけじゃないのね……それにしても聞いたことないと思った。私まだここに来て4年よ?」

 

「それはエイナが恋や噂にときめく乙女じゃないから……痛い痛い頭が裂けちゃう!」

 

「何か言ったかしら?」

 

「言ってないですぅ!」

 

 

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

 

「……久しぶりね」

 

「……それは此方もだ」

 

本があった。いや、その空間には本しかなかった(・・・・・・・)。おおよそ目につく範囲内を本に囲まれていた。壁どころか通路を埋め尽くす勢いで棚が並びそれが天高くまで積み上がり隙間なく本が詰められている。さらに上を見れば本棚が旋回している(・・・・・・)。正しく普通の部屋ではなかった。その部屋の中心で語り合っているのはアリスと、オラリオ最強の冒険者である『猛者』オッタルだった。

 

「……何故ここから去った」

 

「深層も見たし、私が求める物が彼処にあるか分からなかった。それにあの時の私はまだ未熟。だからこそ外に出て知識を蓄えたのよ」

 

「知識ならば、この街にもあるであろう」

 

「確かにそうかもしれないけど、単に息抜きもあったかもしれないわ。暫くはダンジョンは貴方に譲ってゆっくりしようかと思ったのよ」

 

「俺はフレイヤ様に仕える者だ」

 

「知ってるわ、だからあなたの主神にも言ったわよ?」

 

「……何?」

 

「……はぁ、その様子だと聞いてないようね」

 

そこで話を一度切り、空になっていた自分のカップに紅茶を注ぐ。

 

「お代わりは?」

 

「……いただこう」

 

「はいはい……それで?他に聞きたいことはあるかしら?」

 

「……あくまで勘だが、5年前よりも何かが違う。また上げた(・・・)のか?」

 

「……どうも私はは隠し事はできないみたいね。上がったわ、二つほど」

 

「外でLvを上げるほどの偉業があると?」

 

「えぇ、例えばその子とか」

 

そう言って、アリスが指を指す。そこには話し合いが始まる前からテーブルに座っていた人形がいた。それを丁寧なのか粗雑なのかわからない微妙な手つきでとるオッタル。

 

「…………これに何か意味があるのか?」

 

「これじゃない、上海ー」

 

「………………」

 

「ふふっ、貴方の驚き顔はある意味レアスキルよりもレアかもしれないわね」

 

「……生きているのか」

 

「その通り。魂を持ち、生命を宿した一つの個よ」

 

「……不可思議だ、だが面白い」

 

「先に言うけど、その子達を使って貴方と戦いはしないから」

 

「……しないのか?」

 

「あのねぇ?わたしを貴方みたいな戦闘民族に分類しないでほしいわ。無理を言うならこの子達と静かに暮らしていればそれで良かったのよ」

 

「……まあいい。聞きたいことも聞けた」

 

「……いつもいつも、唐突ね。いきなり現れていきなり去っていくんだから」

 

「しらん、お前の都合に会わせろとは言われていない」

 

「私の都合を無視していいとも言ってないわよ」

 

「……ではな」

 

「ええ、また会いましょう」

 

バタンと音がなりオッタルは部屋から退出した。残ったのはアリスと人形だけだった。

 

「……相変わらず、無愛想ね」

 

「アリスもー」

 

「上海ー、ちょーとこっちに来ようかなー?」

 

「キャー」




エイナさんは割と新人設定
まさかのオッタルとくっつく可能性が微レ存
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