IS、俺嫁日記。   作:u160.k@カプ厨

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 何だかんだでヤンデレ(ヤンキーデレ)な一夏君です。

3/1誤字の修正を実施しました。ご報告ありがとうございました。


朝、騒乱。

 入学式から一夜が明けたIS学園学生寮。

 

 そこの寮内食堂では大勢の生徒が1日の活力を生み出す源である朝ご飯の最中である。

 

 一夏と鈴も例外ではないのだが、やはりと言うか2人はかなりの注目を浴びていた。

 

「はい、一夏。あーん♪」

「……いや自分で食えるっつの」

 

 それもそのハズ。ほぐした焼き鮭をなんのてらいもなく差し出す鈴と、それを一夏が断りつつも食いついていたりすれば当然である。

 

「つーか、いつまで俺を珍獣扱いすりゃー気が済むってんだよ……」

「まぁ、良くも悪くも目立つから仕方ないわよ……ん、おいし♪」

 

 お返しに卵焼きを鈴に食べさせている一夏は昨日から未だに続く周囲から注がれる観察するような視線とヒソヒソ話に若干のイラつきを覚えていた。

 まぁ、半分は自分の行動のせいなのだがそれに気付く事は恐らく無いだろう。

 

「ちょっといいか」

 

 そんな一夏に声をかけて来たのは同じクラスの髪を頭頂部付近でまとめ、武士を思わせる雰囲気を放つ女生徒だった。

 

「なんだ、箒か」

「おはよう、篠ノ之さん」

「あぁ……確か凰、だったか?」

「そ、中国代表候補生の凰鈴音。よろしくね」

 

 篠ノ之箒。

 一夏が鈴と会う前に交流のあったもう一人の幼なじみだ。

 

「うむ。こちらこそ……早速だが聞きたい事がある」

 

 鈴の挨拶をそこそこに返した箒は射抜くような視線を2人に向ける。

 

「何よ?」

「単刀直入に聞く。貴様達が相部屋だと言う噂は本当か?」

「あぁ、鈴と一緒に1019号室の割り当てだ」

 

 『疚しい事もないので隠す必然性はない』、と判断した一夏の肯定に箒は怒りに声を荒げた。

 

「女子と同室などどう言うつもりだ!? 『男女七才にして同衾せず』とは常識であろう! それに昨日も朝から抱き着かれてだらしなく鼻の下を伸ばしおって……恥を知れこの破廉恥者!!」

 

 物凄い剣幕で怒鳴りつけて説教し始める箒の勢いは留まる事を知らない。

 鈴はその様に目を丸くし、一夏は朝から面倒な事になったと思いつつ右から左へ受け流す。

 

「おい、一夏!聞いているのか!?」

「あぁ、勿論聞いてねー」

「そうか、ならいい……ってよくない! 真面目に聞け馬鹿者!! 大体貴様は……」

 

 説教を再開する箒を他所に沢庵をかじる。

 

「ハッ! 貴様まさか、自分からこの凰と相部屋がいいと申し出た訳ではあるまいな!?」

 

 突拍子もない言い掛かりとそれに反応して盛り上がる周囲に対するイラつきが蓄積する。

 

「あのな、IS使えるだけのちょっと珍しいだけの男子生徒(ガキ)にンな権限あるワケねーだろ」

 

 ここでようやく反論を許されたイラつきを抑えながら呆れ気味にため息を吐く。

 冷静に考えてみればいくら『男性で世界唯一のIS適性反応所有者』と言えどもそんな勝手が出来る訳もない。

 

「くっ……そ、そうだ凰! 貴様一夏とはどう言う関係だ!?」

 

 一夏の指摘が暗に『そんな事も判らないのか』と言われたような気がした箒は怒りの矛先を鈴へと向ける。

 

「え、アタシは一夏の嫁だけど?」

 

 即答。

 

 鈴は箒を知っているようだが、逆はそうではない故の問い掛けは完全に予想外な返答だった。

 幼少から小学4年までの間、一夏と共通の知人に『凰鈴音』と言う少女はいない。少なくとも箒は知らないので離れてから再会するまでの6年の間に知り合ったであろう事は予想出来た。

 だからと言って馴れ馴れしく腕に絡み付くなんて容認出来る事ではなく、単なる友人程度なら『ふしだらだ』と一喝して2人揃って説教をかましてやろうと思っていた。

 しかしなんの臆面も躊躇もなく返って来た答えを箒は即座に理解する事は出来なかった。

 

「……は?」

 

 そして食堂全体が沈黙する中で一夏は平然と味噌汁を啜っている。

 

「……い、今なんと言った?」

「だから、アタシは一夏のお嫁さんなんだってば。ね、一夏♪」

 

 鈴の同意に対する一夏の返答は箒どころか周囲で事の成り行きを見守っている生徒達にも衝撃を与えるモノだった。

 

「……まだ籍入れてねーだろ」

 

 金鎚で殴られたような衝撃に見舞われた箒達は石膏像のように白く固まる。

 

「あ、そっか。だとしたらまだ婚約者?」

「……そーだと思うならそーなんじゃねーの?」

 

 刹那、食堂内の空気が完全に凍った。

 

「話は終わったか? なら俺達は行くからな」

 

 完全に固まっている箒達を残し、いつの間にか朝食を食べ終えていた一夏と鈴は食堂を後にして教室へ向かう。

 

「1時間目ってなんだったっけ?」

「数学。……つーか、別に手ぇなんか繋がなくてもいいだろ」

「とは言いつつも振りほどいたりしない一夏であった♪」

「……ヤカマシイ」

 

 そして箒達は考えるのを止めた。

 

 ―――――――――。

 

「やれやれ、朝からお熱い事だな御両人(バカップル)

 

 食堂を後にした2人の前に現れたのは(義)姉であり、担任である織斑千冬だった。

 

「あ、おはようございます千冬さん」

「おはよう姉貴。こんな所で何してんの?」

 

 教師である筈の(義)姉が早朝から学生寮にいる事に2人は少なからず驚いたようだ。

 

「『織斑先生』だ……と言いたい所だが今は大目に見てやる。質問に答えるなら私はここの寮監でな、朝から騒いでいる輩がいると言うから来たんだが……やっぱり貴様らだったか」

「別に騒いでたのは箒だけだぞ?」

「……その原因が自分にあるとは思わんのか?」

「あ、あははは〜……」

 

 騒動の原因が自分にある事が解っていない弟に呆れてる姉と苦笑する鈴。

 

「つーか、姉貴があんまり家に帰って来なかったのは寮監ってのをやってたからだったのか?」

「そうだ。中々帰れなくてすまないな」

 

 少し申し訳なさそうにする姉に『大丈夫だから気にするな』と答えた一夏は後で少々片付け(と言うか家事全般)が苦手な姉の部屋に掃除しに行く事を決めた。

 

「さて、先の話に戻すが……あまり人前でやたらとイチャつくなよ?」

「TPOを弁えろ、って事か?」

 

 確かについさっきまで食堂でやっていた事は内心おかしいかなと一夏は思う。が、姉の言いたい事はそれだけではないらしい。

 

「それもある。……言いたくはないがお前達の関係をハニートラップと疑う輩もいないとは限らんからな」

「なっ、なんですかソレ!?」

「?」

 

 謂れのない事態に当人である鈴が激昂し、姉も苦い表情を見せる中で一夏だけが耳慣れない言葉に首を傾げる。

 

「ハニートラップと言うのは女を使って男を懐柔、それをネタに脅迫したりする事だ」

 

 言葉の意味とソレが自分だけでなく鈴にまで適用されるのがどう言う事かを理解した瞬間、一夏の機嫌がとてつもなく悪くなる。

 

「……姉貴。いや、織斑先生」

「……なんだ?」

 

 機嫌の悪くなった弟は自分自身の事ならともかく、姉である自分と鈴の事になると見境が着かなくなる節が多々あり、『とんでもない事』を平然と仕出かすのを千冬は知っている。

 正直な所、嫌な予感しかしないが努めて冷静に反応する。

 

「あー……い、一夏? そう言う事を疑う人もいる可能性がある、ってだけの話だからね? だから落ち着いて……ね?」

 

 一応、鈴が必死に宥めてはいるが期待は薄い。

 

「ソレ言ったヤツは殴っていいですよね?」

「自重しろ」

 

 この弟の問答無用の有言実行さ加減は長所であり、短所でもある。

 千冬は自分と(認めた訳ではないが)未来の義妹が弟の逆鱗である事が嬉しい判明、悩みのタネである事に頭が痛くなるのだった。

 

「そう言えばお前達、昨日は消灯時間には寝ただろうな?」

 

 空気を変えるべく話題の変更を試みた千冬の言葉に鈴の肩がビクリと揺れた。

 

「………昨日は姉貴からの電話の後は大人しく寝たよ」

 

 姉にそう返答する一夏の隣で鈴は彼にしか聞き取れないほどの声量で『残念ながら』と呟いていた。

 

 昨夜2人きりの部屋の中で雰囲気が高まり、高校生の学生生活には相応しくないような事態になってしまう。まさにその時のことだった。

 突然一夏の携帯電話に着信を知らせるメロディーが鳴り響き、2人の雰囲気に水が刺された。

 

 相手は姉の千冬からであった。千冬からの要件は、『彼女と同室だからと言ってハメを外して夜更かしなどしないように』。次に、『翌日『あるもの』が届くために放課後に時間を開けておくようにと』の2件だった。

 ちなみに、その時千冬は『夜更かし』の部分を強調していた。

 (義)姉の言葉に何らかの恐怖のようなモノを感じた2人は一夏の言う通り、その日は大人しく就寝することにしたのだった。

 

「………まあ、仲良くするのは構わんが節度は守れよ」

 

 2人の了承の返事を聞いた千冬は、遅刻に関する罰則を伝えると食堂内で固まる生徒達に注意をしに向かった。

 

「さーて、学校行こっか!」

「………そうだな」

 

 (義)姉を見送った一夏と鈴は気を取り直し、学舎の教室へと向かうのだった。

 

 ―――――――――。

 

 同日の放課後。

 

 2人の眼前ではIS用の巨大なコンテナが重機によって運搬され、そのISに携わっているらしい人達と供に(義)姉と副担任が何やら作業している光景が広がっていた。

 

「……鈴」

「何、どうかしたの?」

「鈴も最近こんなン見たのか?」

「……えぇ、そうね」

 

 一夏は担任である姉、千冬から昨夜連絡を貰った通り、『あるもの』が届く予定の場所。学園内第三アリーナの一角で鈴と共にその光景を眺めていた。

 

「専用機、か……イマイチ実感わかねーな」

 

 千冬の言っていた『あるもの』、それは一夏に与えられる専用機を指していた。

 『専用機』とはその名の通り、国や企業から個人に預けられる専用の機体である。

 IS操縦士を目指す人達の一つの目標であり、その人物が優秀である(ステータス)にもなりえる。

 

 しかし当の一夏に『嬉しい』等の感情はなく、むしろ憂鬱気な表情だった。

 

「そうかもしれないけど、千冬さんが一夏の機体はデータの採取や計測が主な理由だ、って言ってたじゃない」

「確かにな……」

 

 鈴の言う事も解るが、ほとんどISに関わった事のない自分にいきなり『専用』の機体なんか渡されても正直な所、迷惑でしかない。

 

「ねぇ、一夏」

「ン?」

「なに怒ってるの?」

 

 『専用機』の事をどこからか聞き付けたらしいクラスメイト達の羨望とオルコットの挑発をスルーし、昼休みの時も試合の事も含めて1人の上級生が指導役を申し出て来たのを丁重に断ったりしている内に一夏の機嫌は徐々に悪くなっていくのを隣にいた鈴は敏感に感じ取っていた。

 

「別に、ただちょっとばっか気に入らねー事があるだけだ」

「気に入らない事?」

 

 鸚鵡返しに尋ねる鈴に一夏は呟くように答えた。

 

「……また鈴との時間が減る」

 

 一夏は世界で初の男でありながら適正反応を有する事が判明してから暫くの間、検査等の為に長い時間拘束され、行動の制限も多くなる事があった。

 マスコミや『解剖させてくれ』などと言って来るどこぞの研究者などが自宅に押し寄せて来る事など気にしなかった。

 だが、その頃はまだ海の向こうにいた鈴とパソコンによるメールのやり取りではあったものの、一緒に過ごす時間が大幅に削られた事が彼にとって一番の被害であり、苦痛だった。

 

 『専用機』を受け取る事は訓練やそれに関する勉強などで前の時より更に彼女との時間が減る、と一夏は予想している。

 

 正直な所、オルコットとの決闘すら今では乗り気でない。

 売られた喧嘩を買ったのは自分ではあるが、適当に凄んで黙らせれば良かったとすら後悔している。

 

 もっとも、そんな事をしても相手は貴族としての誇りで半、いや9割泣きになってでも決闘を宣言する事を一夏は知らない。

 そんな一夏の心情を察したのだろうか、鈴は彼の手に触れた。

 

「……なンだよ」

「大丈夫。アタシがまた先生役やってあげるからさ」

 

 一夏の肩に額を当てながら、子供をあやすように言葉を紡ぐ。

 

「……それならやってやらんでもねーけどよ」

 

 渋々と納得する一夏に思わず鈴は笑ってしまう。

 

「何笑ってんだよ?」

「一夏ってばホントーにゲンキンなんだもん」

「……うっせぇ」

 

 恥ずかしそうにふて腐れる(フリと思われる)一夏と、それが面白くて更にからかい始める鈴のじゃれあいは副担任が起動テストの開始を知らせに来るまで続いていた。

 




 はい、R18展開は千冬さんにより図らずも未然に見事防がれたのでした(作者斬首)

10/15、報告を頂きました誤字を訂正しました。
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