IS、俺嫁日記。   作:u160.k@カプ厨

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主人公機、白式がようやく登場。
この白式も色々改変してます。



試合、終了。

 入学から1週間が経過した日の放課後。

 

 織斑一夏vsセシリア・オルコットの試合会場となっていた第3アリーナはつい先刻までの喧騒が嘘のように静まりかえっていた。

 

 それもその筈、誰もが勝利を予想していた英国代表候補生にして専用機『ブルー・ティアーズ』を持つオルコットが敗北したとなれば当然の事だった。

 

 ―――――――――。

 

 試合後、勝利判定を聞いた一夏が早々にピットに戻っていくのをモニター越しに見送る山田真耶は感嘆の息を吐いた。

 

「凄いですね織斑君、一週間も乗ってないのに代表候補生相手に勝っちゃうなんて、しかも()()()()()()……」

 

 試合内容はオルコットの先制射撃を回避、その隙を突いた渾身の一撃でその後の流れと勝利を掴み取った。

 その一夏が纏っていた専用IS『白式』を『あんな機体』と言うのは理由があった。

 

 入学式の翌日の放課後、名前通り白の装甲を持つその機体は日本のIS企業『倉持技研』から『織斑一夏のデータ収集』を目的に贈られたモノだった。

 専用機の受け取りには乗り気ではなかったが、SFや機械が嫌いではない一夏はその機体をそれなりに気に入った。

 しかし、受け取りに立ち会った鈴や山田教諭のようにISをよく知る面々は『この機体』である事に納得出来なかった。

 

「第1世代機とは言うが、少し古いだけの機体だ。一……織斑が動かせるならなんの問題もない」

 

 千冬は簡潔に言うと珈琲を飲んだ。

 

 ISは現在主流である『汎用性の向上』を目的にした『第2世代』。

 

 次に世界中で研究と開発の始まっている『操縦士のイメージインターフェイスによる特殊兵装の運用』を主眼に置いた『第3世代』が存在する。なお、鈴やオルコットなど代表候補生の持つ専用機はこの世代の機体が多い。

 

 だが、一夏に渡された専用機・白式は『第1世代』の機体だった。

 10年前にISが現れ、『白騎士事件』を契機に世界中の国で軍や企業が篠ノ之束博士から齎されたISコアや設計図を元に『ISの完成』を目指して作られた最初期に開発されたISの初期(ファースト)シリーズが第1世代のISである。

 ISの技術の進歩速度からすれば『骨董品(アンティーク)』どころか『化石』とすら呼ばれる代物だ。

 

 なぜ『世界最初にして唯一の男性IS適性反応所有者』である一夏にそんなISが渡されたのか?

 

 それは数ヵ月前、一夏の存在を確認した日本政府はIS学園にも訓練機として採用されている安定した性能を持つ近接・防御型IS『打鉄』を開発した倉持技研に彼専用の機体を用意する事を依頼した事がきっかけだった。

 依頼を受けた倉持技研は丁度日本の代表候補生の専用機を開発している最中で、企業としてはいくら政府からの特例の依頼であったとしても先にあった進行中の依頼を曲げてまで優先出来る事ではない。

 しかし一夏の肩書きや、織斑千冬の弟である事を考えれば量産機を渡す事など出来なかった。

 それでも新たな機体を用意する時間も人的余裕も無かった倉持技研は『とある機体』の事を思い出した。

 その機体こそ、倉持技研が世界中の軍や企業の中で篠ノ之束博士以外で初めて完成させたIS、名を『白式』と言った。

 白式はISの存在を決定付けた『白騎士事件』の中心にいた『白騎士』と言うISを真似て作られ、そして後に開発する『打鉄』の雛型でもある事から『試作型打鉄』の通称を持つ機体だった。

 しかし、安定した性能の打鉄とは違い、その性能は『安定』と言う言葉からとてつもなく掛け離れたモノだった。

 まずはISコアの全開にした出力に耐える装甲は現行の防御重視型IS並の重装甲となり、それにより削られた機動性を補う為に搭載された高出力スラスターの性能は速度特化型の第2世代機を軽く凌駕した。

 武装はISコアにケーブルを直結する事で出力の強化が可能な『高周波レーザー刀・村雨』と『対物質防御楯』のみである。

 だが、その威力は非常に高く、両者は『一撃必殺』の戦力を白式に与えた。

 

 武装、速度、装甲。

 

 それらによる『一撃離脱(ヒット&アウェイ)』を主眼に置いていた白式だが、その特化型以上の性能を持つ機体を動かす事は常人には不可能だった。

 まずはその速度から実体刃を装備する事は不可能であり、最高速度ではレーザー刀の刃ですら対象接触時にとてつもない衝撃を装着者に与える。

 重装甲の機体による高速機動が発するG(重力)は瞬間最高速度時には15Gにまで達し、試験運用でPIC(パッシブ・イナーシャル・キャンセラー)を最大稼動させていても装着者が重傷を負う大惨事が起きてしまったと言う曰く付きの機体なのだった。

 起動評価試験以降、コアを外された状態で封印されていた機体に再びコアと制御装置(リミッター)を着ける改修を施された後に一夏に譲渡されたのがことの次第であった。

 

 しかし、それでも白式の逸話と危険性を知る鈴と山田教諭の不安を払拭する事は出来無かった。

 

「……」

 

 千冬は黙ったまま手にしたカップ内の漆黒の液体を見つめていた。

 

 ―――――――――。

 

「一夏、大丈夫!? 痛い所とかない!?」

 

 開口一番、心配そうな鈴の前で一夏は装着している専用IS『白式』を待機状態である白い手甲(ガントレット)に戻す。

 しかし鈴の心配も白式の事を知っているなら当然の反応である。

 

「問題ねーよ、心配すンな……まぁ、俺の方も一安心したってのは一緒だけどな」

「どう言う事?」

「……鈴にカッコ悪ィ所見せずに済んだからな」

 

 未だ不安気な表情の鈴を安心させるように彼女の頭を撫でる一夏は初勝利に終わった試合後初めて笑った。

 

「……」

「……なんだよ?」

 

 当然硬直し、頬を薄紅に染める鈴に一夏は声をかける。

 

「……もぉ、ガマン出来ない! 戦勝記念のお祝いのチューしてあげちゃう!!」

「は?」

 

 不安から解放され、滅多に見れない一夏の笑顔を見た鈴は興奮のあまり暴走を始めた。

 

「一夏ぁ〜、むちゅちゅ〜♪」

「……せめて俺が風呂入ってから抱き付け」

 

 唇を付き出して抱き着こうとする鈴を抑えながら『結局、平常運転(いつもどおり)か』と溜め息を吐くが、それでも自分達らしくて悪くないとも思う一夏だった。

 

 ―――――――――。

 

 翌日、セシリア・オルコットは1年1組のクラス代表に就任した。

 

「い、一体どう言う事ですの!? 納得の行く説明を要求致しますわ!!」

「お、オルコットさん? おち、落ち着いて下さい! ね?」

 

 憤慨するオルコットを宥める童顔な眼鏡美人教師は困惑しながら原因である男子生徒、つまり織斑一夏に視線で救援を要請した。

 

「……どう言うつもりですの?」

「『勝利者権限』ってヤツだ」

 

 怒りの感情を隠しもせずに、しかし表面上は穏やかにその真意を問うオルコットに淡々と返答する一夏。

 数日前、一夏が専用機を受領する事を聞きつけたオルコットに再び絡まれて口論となった際に『負けたら奴隷にする』と宣言された事を利用したのだ。

 

「メンドくせーし、級長とかガラじゃねーからな。それに賭けには相応のリスクがある。その覚悟もなく俺を『奴隷にする』なんざ言わねーよな?」

 

 『故にクラス代表を自分に押し付ける』。反論を許さない一夏の目がそう告げている。

 一応は筋が通っている一夏の理論に沈黙する以外の選択肢を無くしたオルコットは甘んじてクラス代表に就任することを受け入れたのだった。

 

 ―――――――――。

 

「……で、何をそンなむくれてンだ?」

 

 休み時間の屋上、鈴は『私、怒ってます』と言った空気を放ちながら正座させた一夏の前で仁王立ちしていた。

 

「胸に手を当てて聞いてみなさい」

「思い当たる記憶がねーから言ってンだよ……」

 

 本当に心当たりがない一夏に、珍しく鈴が溜め息を吐いた。

 

「……メンドくさいとか言ってたけど、本当は違う理由だったんでしょ?」

 

 ジト目で睨みつける鈴に頬を抓られた一夏が『離せ』と言っても、彼女は『離しません』と返答。

 鈴は一夏がクラス代表を押し付けたのはオルコットが『第三世代機の』専用ISを持つからだと言った。

 

「どーゆー事だよ?」

「前にアタシ達専用機を持ってる代表候補生がなんでIS学園(ここ)にいるのかって話したわよね?」

 

 鈴の言葉をヒントに自分の脳内の記憶に検索をかけた結果として一夏は既に肩書に相応する訓練と勉強を積んでいる彼女達が、『IS操縦者としてより高みを目指して研鑽する為の入学』と聞いていた事を思い出した。

 

「それともう一つ、代表候補生が持ってる専用機に理由があるの」

「……鈴の甲龍(シェンロン)にか?」

 

 肯定した鈴の話によると彼女達の専用機は『第三世代』と呼ばれる機体は搭乗者のイメージ・インターフェイスによる特殊武装の搭載とその試験運用を目標としている。

 

「けどそれの大半が実験機の域を出ないし、機体にもよるけど燃費の悪さも課題になってるの」

 

 そこで一夏はようやく鈴が言いたい事に気付いた。

 

「つまり俺はオルコットに実戦経験の機会を増やす為にクラス代表の座を譲った、ってか?」

 

 その推測は鈴の拗ねたような頷きによって肯定された。

 

「千冬さんか山田先生の補習の時とかにその事聞いててわざとあんな意地悪な態度で譲ってあげたんでしょ?」

 

 ちなみに姉からは勿論、補習でもそんな事は聞いていない。

 

「わかってる。一夏は態度とかは悪いけどすごく優しいし、アタシが好きになったのもそーゆー所でもあるから……けど」

「鈴以外にソレを向けてるのが悔しい、ってか?」

「……うん」

 

 『嫉妬』。そんな感情から結論に至ったのであろうと推測した事が的中し、溜め息を吐いた。

 今更ながら嫁はかなりヤキモチ焼きなようだ。

 

「的外れもいー所だな、俺はそンな善人じゃねーよ」

 

 問答の途中から胡座をかいていた一夏は立ち上がって制服の砂を払う。

 

「俺が自分勝手なのは知ってンだろ……こんな風によ」

「そんな事な、ふむっ!?」

 

 自虐的な物言いに何か言いかけていた鈴は不意に口を塞がれて混乱状態に陥った。

 

「……仮に」

「ぷはぁ……はぁ、はぁ……ふぇ?」

 

 短い拘束から解放され、乱れた呼吸を落ち着かせようとしている鈴の耳元に声が届く。

 

「仮に百万歩譲って、何かの拍子になンかがズレにズレまくって俺が『優しい』なんて評価されるよーな事があったとする」

 

 未だ混乱が収まり切らずにいる鈴は必死に理解しようと頷く。

 

「俺が鈴以外にソレ向ける事は有り得ねーって覚えとけ」

「……」

 

 無言。

 

「わかったら教室行く「ぷはぁ!?」……」

 

 『ぞ』と言いかけた所で鈴の鼻から赤い液体が勢い良く吹き出し、一夏の顔面に直撃した。

 

 ―――――――――。

 

 一夏の顔面が鮮血に染まる少し前、一人の女生徒が屋上の出入口から走り去った。

 

(……)

 

 その女生徒は英国代表候補生、セシリア・オルコット。

 彼女は鈴と同じく、敗者となった自分にクラス代表を押し付けた本当の理由を問い質すべく屋上に向かったのだがそこで聞いたのは『一夏の嫁』を公言し、当人からも『婚約者』と認められている(らしい)同じクラスの中国代表候補生。

 家族以外では彼と同じ時間を一番長く共有し、誰よりの理解者である信憑性がかなり高いであろう凰鈴音の推測。

 

(私に『任された代表候補生としての任を全うさせ、更に汚名返上、名誉挽回の機会を与えてくれた』と言うのですか?)

 

 図らずも立ち聞きと言う些か貴族いや、人としてあまり行儀がいいとは言えない行為で知った(多少脚色されている)事実。

 

 そしてセシリアを混乱させるのはそれは偽悪的な態度の敵対していた筈の相手からの『優しさ』だった。

 

 最初は敗者である自分に『面倒だから』とお情けでクラス代表の座を譲られた事に憤慨していた彼女は互いに敵視していたはずの相手の(本人は否定しているが)優しさに悪くない感情を抱いた。

 

「……織斑……一夏……」

 

 ふと立ち止まったセシリアは昨日から自分の思考回路の大半を占拠している『男』の名前をそっと呟いた。

 

 ―――――――――。

 

 一方、恍惚とした表情のまま鼻血を垂らして気絶した鈴と全身を返り血(?)で染めて立ち尽くす一夏。

 

 結局、鈴を保健室に(お姫様抱っこで)運んだり、体育用のジャージに着替えた一夏は授業に遅刻した為に放課後、グラウンド十周を厳命されたのだった。

 

「納得いかねぇ……」

 




セシリアファンの皆さま、扱いが悪くてごめんなさい。(土下座)

僕もセシリアは全ヒロインの中で4番目くらいに好きです。(斬首)
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