1年ぶりなのに一鈴成分薄めで、ラウラファンに土下座レベルの内容となっております。
五月の連休が明けた国立IS学園。
朝のHR中の1年1組の教室に乾いた音が響いた。
「……何しやがる」
突然、自分の頬を叩いて来た銀髪の転入生を鋭く睨む一夏。しかし、相手は意にも介さずに氷のような冷やかな視線を向ける。
「私は貴様を認めん……貴様のような、女に現を抜かすようなヤツが教官の弟であることなど絶対にだ!」
(……)
目の前にいるドイツから来たと言う左目に眼帯を巻いた転校生、ラウラ・ボーデヴィッヒに対する一夏の評価は『興味無し』。
関わるだけ無駄だと判断したが、それは彼女自身によって即座に覆される事になる。
「フン、何か言い返すこともしないか……やはり色仕掛けで弄絡されるだけはあるな」
「……あ?」
ボーデヴィッヒの言葉に対する一夏の反応に鈴と千冬、山田教諭やクラスメイト達に緊張が走る。しかし、ボーデヴィッヒはそれに気付く様子は無い。
「数だけが取り柄の国の女に良いように利用されるだけの腰抜けでも図星を突かれれば怒りを感じるか」
ボーデヴィッヒの言っていることは眼前に立つ一夏の逆鱗をヤスリで削るようなモノだ。
それでも千冬の『自重しろ』の言葉に従い、一夏は怒りを抑え込んだ。
「……今言ったことを撤回するっつーなら、水に流してやる。さっさと席に座りやがれ」
「何故事実を撤回する必要がある?」
その時、その場に居合わせた者達は全員『ナニカ』が千切れる音を聞いた。
立ち上がり、ボーデヴィッヒと睨み合う一夏に対して鈴と千冬は思わず頭を抱えた。
「……わかった、テメェはたった今から俺の敵だ」
「バカめ、貴様など私の敵ではない」
「……へぇ」
刹那、ボーデヴィッヒの銀色の頭髪が右側からの風圧によって宙に舞う。
「……貴様ァ……ッ!」
ボーデヴィッヒの頭の真横、そこには寸止めされた一夏の蹴り脚があった。
「敵じゃない……ね」
脚を降ろした一夏はそれ以上何かを言うこと無く席に戻る。
「この……ッ!」
「いい加減にしろ、ボーデヴィッヒ」
激昂するボーデヴィッヒを諌めたのは織斑千冬だった。
「いつまでそこにいるつもりだ、さっさと席に付け」
「ッ!……はい、失礼しました。織斑教官」
「『織斑先生』だ」
なんとかその場は収まったものの、一夏とボーデヴィッヒから発する一触即発の雰囲気によって山田教諭や生徒達は終始気が休まることは無かった。
「え、えーっと……も、もう一人の新しいお友達を紹介しますね!」
重苦しい空気を変えるべく、山田教諭がボーデヴィッヒと一緒に入って来た転入生の紹介を開始した。
「では、デュノアさん。自己紹介をお願いします」
「はい」
気丈に返事を返す金髪の少女は一度お辞儀をすると自己紹介を始めた。
「フランスから来ました、シャルロット・デュノアです。よろしくお願いしますね」
その穏和な笑みは、平時であれば彼女の人柄を表すような安心感を感じさせるモノであるはずだった。
しかし、今の生徒達の緊張を解きほぐすには至らなかった。
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波乱のホームルーム終了後、次の授業のためにISスーツを着用した鈴と一夏は一緒に男子用更衣室の代わりに使用することを許可されたロッカールームにいた。無論、鈴は女子更衣室で着替えを済ませていた。
「一夏、大丈夫?」
「別にどーってことねーよ、心配すンな」
鈴は赤く腫れあがらせた一夏の頬に水で濡らしたハンカチをあてがう。
「それにしてもなんなのよ、あの銀髪女!いきなりアタシの一夏をひっぱたいただけじゃなくて、千冬さんの家族としても認めないなんて何様のつもりなのよ!」
鈴が口にした銀髪女とは無論、ラウラ・ボーデヴィッヒのことである。
「……別にどーでもいいけどな」
一夏は一部の者達から『世界最強』と言う称号を持つ織斑千冬の『付属品』や男であるということで『汚点』と中傷されたり、比較されることも決して少なくなかった。
「なんでよ!? 何にも知らないヤツが一夏のことを悪く言うなんてアタシは嫌なの!!」
鈴は不当な評価やレッテルを貼られてもどこ吹く風と言った一夏に代わって怒り、悲しんでいる。
実際、先のホームルーム中、ISを展開して殴り掛かりそうになる自分をなんとか抑えていたくらいだ。
「……鈴がいてくれるからだよ」
「え?」
鈴の手ごと濡れたハンカチを自分の頬に押し付ける一夏は誹謗中傷をただの騒音と聞き流せた理由を告げた。
「オレを一番肯定して欲しいヤツが肯定してくれる。それで充分だろ」
鈴は一夏の頬にハンカチ越しに触れている手に伝わる熱がだんだん熱くなっているのを感じていた。
「次の授業始まるし、そろそろ行くぞ」
「……うん!」
一夏がそう言ってベンチから立ち上がる。それに続く鈴の表情は非常に晴れやかなモノとなっていた。
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「……」
一夏ですら気付いていない事がある。
「……」
ボーデヴィッヒを殴ろうとしたのを必死に抑えていたのは、実は鈴だけではなかった。
「……」
担任であり、姉である織斑千冬は一夏を『
(……授業と称してシメるか……いや、それだと逆に喜んでしまうな)
『退学にしてやろうか』と本気で考えている元・世界最強がいることにIS学園内で気付く者は誰一人としていなかった。
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放課後、シャルロット・デュノアはアリーナ内で一人片隅で白式を起動させている一夏を見付け、声を掛けた。
「お、織斑君、良かったらボクと一緒に訓練してくれないかな?」
「デュノア、だったか。悪いが無理だ」
彼女は、今朝の一夏の言動に若干怯えながらの、必死の希望は本人により即座に却下された。
「な、なんでかな?」
取り付く島もない返答にたじろぎながらも食い付いて行くデュノア。
「……先約がある」
「先約って凰さんとかな? だったらなおさらボクも一緒に……」
「残念だが鈴じゃない……来たか」
一夏の発する気配が抜き身の刀を感じさせるものに変わる。
「え?」
デュノアが追った一夏の視線の先、そこにはドイツの第3世代のIS『シュヴァルツェア・レーゲン』を纏ったボーデヴィッヒの姿があった。
「……織斑、一夏ァ……!」
「ケガしたくなかったら、さっさと離れな」
両者の気迫は、フランスの代表候補生であるデュノアすら足を後ろに退いてしまうほどの物だった。
「う、うん……気を付けてね?」
「善処する」
デュノアを筆頭に危険を察知した生徒達がアリーナから撤退を開始する。
「私と……私と戦えェェェーーーッ!!!!!!」
「……奇遇だな、俺もテメェをブチのめしてやりたいと思ってた所だ」
即座に戦闘を開始する黒と白。
シュヴァルツェア・レーゲンの
シュヴァルツェア・レーゲンのレーザー手刀と白式の光刃刀が凄まじい勢いで衝突し合い、激しい火花を散らす。
「ツブす……貴様を叩き潰してやる!」
「……俺如き敵じゃねーんじゃなかったのか?」
「ダマレェェェーーーッ!!!!!!」
格下と見下していた一夏の死角でない方向からの蹴りに反応出来なかったことだけでなく、寸止めされたことに矜持を傷付けられたと感じたボーデヴィッヒは怒りを抑えることなく攻撃を仕掛ける。
「貴様如きにィィィーーーッ!!!!!!」
「一々煩いヤツだ」
一方で一夏の方も、何よりも大切な鈴を傷付けるような真似をしたボーデヴィッヒに落とし前を着けさせるべく、刀を振るった。
最近になってアニメの『オーバーロード』にハマりました。
アインズ様とパンドラズ・アクターが好きです。