ねこだまし!   作:絡操武者

46 / 47
大変長いこと間が開きました。
お待ちいただいていた方がもしいれば本当に申し訳ありません。
今話の冒頭でもメタ発言として書いてますが、1年以上も開いてしまいました。

続けられる限り続けたいですが、どうなるか分かりません。
うまく頭が働かないんだなー。周囲の環境が変わることも多かったです。その周囲に付いていくのが大変大変。
最近ではコロナ問題によるストレス、自分の事でも分からない事が多いものです。仕事してても、ニュース見ても、休みの日に短めの散歩しても、ちょっとしたことでイラついてしょうがない。

はーーー優しい世界に転生したいなーーーー!

そんな作者の戯言でした。失礼しました。ではどうぞ。





46 他人事なネコ

 

 

 

 ……んはっ!? やばい意識飛んでた? なんか客観的に見ると1年以上意識が飛んでた気さえするが、メタ大丈夫みたいだ。……脳内で言葉を噛んだ。めちゃ大丈夫だ。自分でも何を言ってるか分からないけどとりあえず大丈夫だ。

 

 三雲君の話は蓋を開けてみれば結構重い話だった。というか俺もレプリカ先生から遊真の状態を聞いてはいたんだ。ただ、レプリカ先生がいなくなってその後、遊真とあまりにも普通に接してたから忘れかけていた。

 

 三雲隊は今日のランク戦で負けたことで、遠征部隊の選抜までにA級に上がるのが絶望的状況になった。この先の試合は負けられない。三雲君達が『今期はダメだった、来期で良いか』とはならない理由。それは空閑遊真に残された時間だ。

 

 迅さんが玉狛第二に入れば負けないかもしれない。未来が視えるサイドエフェクトを持っているし、A級隊員を複数相手に一人で互角に渡り合えるほどの能力を持ってる。あの時はブラックトリガー持ってたけど、大規模侵攻の時はノーマルトリガーでヒュースを抑えた。初見の相手、初見の敵の何をするかわからないトリガー相手に凄いことだろう。

 

 そして、迅さんは三雲君の話を聞いて答えを出した。

 

「……残念だけどおれは玉狛第二には入れない。俺には今他にやらなきゃいけないことがある。チームランク戦に参加するのはムリだ。すまない」

「ネコ隊なら抜けていいっすよ。そっちの方が面白そうだもん」

「え!? 迅さんは音無先輩のチームに入ってたんですか?」

 

「形だけになりそうだけどな。それでも俺はネコ隊のエリートヒラ隊員だ」

「個人的には迅さんは抜けてもいいと思ってるんだけどね。これから忙しくなるのは本当みたいよ?」

「迅さんがそう言うなら……無理なお願いをしてすみませんでした」

 

「メガネくん。あんまり自分を責めるなよ。レプリカ先生のことはメガネくんのせいじゃない」

「……空閑もそう言ってましたけど……レプリカはぼくたちを助けるために……」

 

「いやちがう。レプリカ先生がいなくなったのは、おれのせいだ」

「え……?」

 

 この時だ。俺が迅さんを信頼してもいいのではと思ったのは。今までは何か裏があるのではないかとばかり考えていた。自分だけが視える未来。その力で自分だけが良い思いをしているのかもしれない。もちろんそういう人じゃないのは分かってる。分かっているけど、この思考は迅さんに会う度に付きまとっていた。

 

 枝分かれしている未来。大規模侵攻の時も何通りかの良策が視えていたらしい。ネイバーの狙いが隊員の捕獲だと分かった時に、千佳ちゃんを逃がすことも出来たがそうしなかった。千佳ちゃんという膨大なトリオンの餌に集まってもらった方が、被害が減る可能性があったからだ。その結果、三雲君は病院送り、レプリカ先生もいなくなった。

 『俺のサイドエフェクトがそう言ってる』ってよく迅さんが言ってるけど、その感覚が俺にもわかる。俺の場合はサイドエフェクトが何も伝えて来ない時は嘘は言ってない、隠し事は無いということだ。だから迅さんがこのことをかなり深く重く捉えてるというのは本当の事みたいだ。大きな借りもあるって言ってるし。

 俺はといえばどうにも重い話とかは苦手で逃げたい気持ちから迅さんに質問を投げてみた。

 

「あ~……茶化すわけじゃないですけど、じゃあ俺は? 大規模侵攻の時、結構一人行動だったんですけど」

「ネコ君の事は本当に直接視えないから迷った。でも、周囲の状況から千佳ちゃんの次に狙われる可能性は高いのは分かっていたから、事前にネコ君と一緒に行動する予定の隊員さんを観察して間接的な未来を視て、捕獲されないように誘導したはずだ。不安にさせて悪かった」

 

 あー、これは俺も悪い。サイドエフェクトが使いこなせてないのだから。いまだに使いこなせてるか怪しいしね。

 

「あ、そうだもうひとつ。玉狛第二の戦力増強のことだけど」

「はい?」

 

「玉狛第二に入れるならおれより適任なやつがいる。そいつがチームに入ってくれるかどうか微妙だからあんま詳しくは言えないけど、自分の弱さを理解してなりふり構わずいろんな手を考えられるのがメガネくんのいいとこだ。今回も考えて探してみるといい」

「わかりました」

 

「んじゃ、がんばってね」

「俺も帰るかな。がんばってね」

 

「迅さん、ぼくはたしかに死にかけましたけど、それ以上に今まで迅さんに助けてもらってます。迅さんに貸しがあるなんて思ってませんから」

「メガネくんはそう言ううだろうと思ったよ」

 

 色々考えさせられるなー。てかさ? 俺が玉狛第二に入るっていうのはダメなのかな? まぁほぼダメだろうなー。鬼怒田さんの実験動物だもんなー。

 そんな自虐を考えつつ俺は帰宅した。

 

 

 

 

 

 さて、その翌日の事である。鬼怒田さんのいる開発室に行って検査をした結果。

 

「……むぅ」

「あの……悪くなってるんですか?」

 

 鬼怒田さんがデータを表示してるタブレットを見ながら唸る。あー、こんなシーンは医療ドラマとかで見たことあるよ。あれだろ? CTとかいう白黒のペラペラしてるアレに影が写ってるとか言い出すんだろ? 大体ガンなんだよね。腫瘍がー。とか言うの。白黒のアレで影なんてわかんねーよと思って今まで見てたけど、まさか俺がその立場になるとはね。いやでも鬼怒田さん凄いわ医療関係も分かるんだもん。そんな事を隣にいる寺島さんに聞いてみたけど、検査結果を医療班や検査機関に回してるだけで、ここにいるスタッフは医療的知識はほぼないらしい。

 

「身体はほぼ治っとる。明日にでも完治していそうな数値と見解が届いとる」

 

 じゃあ何で唸ったし。俺がジト目で鬼怒田さんを見るが、鬼怒田さんはどこ吹く風か、寧ろ俺を逆に睨みつけてくる。な、なんだし……?

 

「いいか、何度も言ってきたが、何度も言うこと聞かないから正直に言うが」

 

 そう鬼怒田さんが前置きをした瞬間に周囲のスタッフさん達は不自然なタイミングで距離をとる。まるでこの場から離れたいかのようである。……ははーん。この話、長くなる説教のようなタイプだな?

 

「あー……その話は置いといて、治ってよかったですねー」

「置いておけるか! 他人事か貴様!!」

 

 ……おかしいぞ? 何故かスタートボタンを押してしまったようだ。

 

「はぁ、まったく。いいか、『サイドエフェクトだと思われるモノ』だ」

「……はい?」

 

「お前の『騙しのサイドエフェクト』だと思われるモノはサイドエフェクトだとは限らないと言っとるんだ」

「……え、でも」

 

「相手を意識し、または攻撃手段に思考を傾けることで対象を変化させる。誤認識させる能力。言えば簡単だがな。強力な能力だが、数日前からやっとるトリオン能力の数値の話は分かるな?」

「えっと、少し成長してるのか増えてるんですよね。俺のトリオン能力」

 

「違う。いや、そうだが、そこじゃない。お前のトリオン能力値はボーダーの中でも平均か少し上ぐらいだ。その能力値でのサイドエフェクトの発現はおかしい。データとして知る限りネイバーの中でも異常……というよりもありえないことだ。トリオン能力値が特別高いというわけでもないのにサイドエフェクトが発現した。そんな特別な例が『音無 ネコ』という初めての存在ということも有り得なくはないが、やはりそこは異常だと捉えておくべきだ」

「だとしたらコレ何なんです?」

 

 俺は両手の平を見つめながら質問するが、鬼怒田さんは頭をガシガシと掻きながら答える。

 

「分からんから困っとる。身体はほぼ治っとる。その回復の速さも異常だ。本来なら最低でも後2ヶ月は掛かってもおかしくないレベルのダメージだった筈だ」

 

 正直、トリガー起動してない通常時に、痛いなー苦しいなーの感覚しかなかったから自分がやばいと言われてもよく分からなかった。説明されても上手く受け入れられず、指示通りに動いたり検査受けたり蛍光色のドリンクを飲んだぐらいだ。2回倒れた事で頭痛が来たら身体がヤバくなってるという認識を持てたぐらいだ。

 その後も黒い鼻血の事を伝えたり、この前の試合の後に一度死んだ可能性がある事も伝えた。滅茶苦茶怒られたけど。今後、無理して倒れた時に脳へのダメージなども起こりうる。起こった時には身体障害が残る可能性も伝えられた。脅さないでよー。色々考え事が多すぎて頭が痛くなるからー。

 

「でもサイドエフェクトを使いこなせてなくて、やっぱり騙してる情報をデータとして出しちゃってるなんてことも」

「もちろんその可能性もある。だが、お前は意識してサイドエフェクトを切って検査したんだろう?」

 

「そりゃー……そのはずですけど」

「使いこなせ始めているから、身体を騙し回復も早くなった。とも考えられる」

 

 あー、確かにその可能性もあるのか。自分の事なのに何が何だか分からなくなってくるな。

 

「まぁ今日はここまででいい。また時間をおいて来い。無理はするなよ。出来るだけサイドエフェクトに頼るな。……この後の予定は分かるな」

「あ、はい。会議室ですよね。行ってきます。失礼しました」

 

 

 

 

 

 会議室へ向かうがいつも通り少し早い時間帯。5分前行動どころかまだ30分もある。ココアタイムだな。自販機で温かいココアを調達し飲みながら考える。サイドエフェクトではないかもしれない。確かに聞いてたことではあった。高いトリオン能力を持っているからサイドエフェクトが発現する場合がある。高いから発現するわけじゃないけど、高くないと発現することはないという通説。俺も疑問はあった。でもあるんだからいっか。ぐらいにしか考えてなかった。

 トリオン能力を騙して多くカサ増ししてるからトリオン能力が高く、それ故にサイドエフェクトがあるのだ。いやいや、それはおかしい、前提として本来のトリオン能力は低いではないか。そんな卵が先か鶏が先かみたいな問答を頭で繰り返しても答えは出てこない。でだ、ここで俺の悪い癖が出てくる。思考の悪い方への偏りだ。

 

 改めて思うわ。本当に俺は役立たずだなー。猫に小判・猫に真珠・猫に金棒だわ。色々と違ったかもしれないけど、とりあえず自分で自分を振り返って見てもさー、すごい能力持ってても倒れたら意味ないじゃん? でも、この能力を使うためには無理しなきゃ使えないじゃん? でも、無理したら倒れて迷惑かけるじゃん? でも、迷惑かけちゃうんでボーダー辞めますって実家に帰るのも逃げ帰るみたいでカッコ悪いし、まずサイドエフェクトかも不明な能力を持ってる人材が出す辞表なんてモノが通じるかって話じゃん? 現に最初の頃、口頭で話した時は止められたしね。じゃあボーダー続けるしかないじゃん? そもそもさ、サイドエフェクトであってもなくても、騙すことに変わりないじゃん? 多分だけどそうじゃん。そしたらさ……。

 

 あ、ヤバイ……。ダメだろ。ダメなことに気が付いた。あーあー……これだから自分のことが嫌いなんだ。思考が悪い方へ悪い方へと止めどなく加速していく、流れていく。もう滝だ。止められない。

 

 

 

 ボーダーに入ってすぐ開発室通いになった時、ボーダーを辞める話を出した時、鬼怒田さんはすぐに特別手当の申請書を出してきた。あの時、何で一瞬で良い方向に話が進んだのか疑問に思った。

 

 ―――自分に都合が良いように騙したんじゃないの?

 

 B級に上がってすぐに那須隊と合同で防衛任務に就いた。オペレーターの小夜は男性不振というか苦手としていた。でも防衛任務から帰ってきたら大丈夫になっていた。クッキーの差し入れをした程度で人間はそうまで変われるだろうか。

 

 ―――あぁ、騙すの簡単だったよな?

 

 社交辞令程度で一人暮らしの男の家に会って数時間の女性がやってくるだろうか。

 

 ―――いつも通り騙したんだよ。

 

 俺みたいな生意気な奴を誰もが受け入れてくれているけれど、そんなことがあるだろうか。

 

 ―――全員騙したんだよ。この能力がないと音無ネコなんて存在は無価値なんだよ。

 

 

 

 あぁ、あの時だって、あぁ、あの時も、思い出しては『本当は違う』『それはあり得ない』と過去の出来事を否定していく。有り得ない。自分は好かれるような人間ではない。では何故そんな過去が有り得たのか。

 

 ―――だましたんだろ。お前が。 

 

 

 

 

 

「……なし! 音無!? おい!」

「……へあ? あ、風間さん。お疲れ様です。あれ、凄く伸長伸びましたね。え、ソックリさん?」

 

 どこかから駆け寄ってきた風間さんに肩を叩かれ、意識を向ける。気付けば俺の頭は風間さんの腰元ぐらいの位置にあった。見上げるとかなりの身長差である。

 

「……お前がうずくまってるからそう見えるだけだ。大丈夫か? 医務室に行くか?」

 

 気付けば俺は通路でうずくまっていた様だ。風間さんも俺が冗談で言ってるのではなく本気でそう思っていたと判断し、膝を付き熱などがないか俺の額に手を当ててくる。

 

「え? あ、あー……大丈夫です。ん? あ、ほら! ココア飲んで酔って座ってただけですから!」

「ココアで酔えるのか? 通路に座り込むか? ……何があった」

 

 ……何があったんだろ? 何で俺ココア缶持って座り込んでたんだろ? 分からないから。何も言えない。俺は「本当に何でもないです」と言って立ち上がり、風間さんの前で跳ねて「ね?」反復横跳びして「ね?」回転したりしてみて「ね?」と言ってみるが、それでも睨んでくる風間さんに覚えてる限りの事を話すことにした。

 

「えーと、鬼怒田さんのとこ行って、まだ会議まで時間があるから、そこでココア買ってそこの椅子に座って飲んで、気付いたらここで風間さんに肩叩かれてました」

「話に聞いてはいたが、また意識が飛んだのか」

 

 意識が飛ぶ? あー、何回かそんなことがあった様な話を聞いたことがある。でもそれはサイドエフェクト使い過ぎの時期だったからでしょ? 今はむしろ戦闘系は休業してるし、さっき鬼怒田さんからほぼ治ってると言われた。なんでやねーん。

 

「お、風間さんにネコ君。お疲れ」

「迅、音無は大丈夫なのか?」

「大丈夫ですってー。ほらココア飲んでますし、鬼怒田さんからもほぼ治ってるって言われましたし」

 

 迅さんが本部にやって来て時計を見れば、もう会議まで数分だった。

 

「何があったの?」

「音無がまた―――」

「あ! 会議に遅れちゃいますよ! さぁ行きましょう!」

 

「はぁ……会議の後で話すぞ」

「はいはい~♪」

 

 覚えてたらね! 会議の後に速攻で逃げよう速攻で! 面倒な説明なんて上層部だけで良いんだよ。携帯への連絡は「気付きませんでした」で、次に会った時には「あ、忘れてました」でやり過ごそう。

 

「ふむ……ネコ君が会議の後逃げる未来が視える」

「ファッ!? な、何を言っとるのかね?! しょ、証拠でもあるのかね?」

「……音無」

 

 そんな目で見ないで風間さん……。そっか、迅さんは風間さんを視て判断したのか。ビビったー。はぁ、迅さんにはこの前強く言われてるからなぁ。そうだよ。そもそもがいつも通りじゃダメなんだ。報告するように言われてるんだもんな。

 

「すみません、つい癖で……」

「よしよし。あ、そうだ風間さん。昨日もネコ君と一緒にいたんだけどさ、その時にウチのメガネくんに玉狛第二に入らないかって誘われたよ おれ」

「おまえをチームに誘った……? まったく豪胆というか強欲というか……」

 

 メガネくんに関する雑談をしながら俺たちは会議室へ向かうのだった。

 

 

 

 

 






もちろん感想あればありがたいですが。
もし批判とかあれば優しめでお願いしたいです。趣味で書いてるだけだから心は簡単にへし折れる事を自覚しました。


◆完治目前なネコ
 本当でござるか~?

◇サイドエフェクトなのか再び検証すべき?
 作中で何回か書いてましたがネコのトリオン能力はそこまで高くありません。
 最初考えてた未来が枝分かれしてて、どっちに行くか分からない。俺のサイドエフェクトが言ってる。

◆完治と見せかけてか~ら~の~
 ネコは生意気な奴ですが心は割と脆いです。思考は基本的にネガティブ寄りで、周囲が甘やかしてればある程度保てますが、、、


では、また次回。 ノシ



▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。