ゆうかりん始めました。
地導師と花妖怪
妖怪と言うものを知っているか?
一般的には日本で伝承される民間信仰においてのみ存在する架空の生物だろう。
だが、 この世界においては妖怪は生物として実在する。いや、まだ実在していると言うのが正しい。
主な妖怪とは
アラヤとは霊長の抑止力、或いは世界の抑止力。だが、この場合は"人類の無意識下の集合体"ということだけに注目すればいい。そして本来の精霊種とは星の触覚。自然霊。ガイアの抑止力の一つ等と言われるものだ。
規模の小さいものは"妖精"と呼ばれ、相当に神秘の濃い場所か、その手の知覚に優れた者以外は基本的に人間には知覚できず、人間に知覚できるまで規模が大きくなると、"精霊"と呼ばれるようになる。
そして、人間の空想により生み出してしまう事もあるため、全てが抑止力というわけではない。これが重要だ。
要するに、星の触覚と呼ばれるモノが人の無意識の意思により不完全に完全な命を得たモノを妖怪と呼ぶ。
元来妖怪とは人の恐れるモノ。畏れと言う感情そのものが妖怪を造る。人が本能的に恐れる自然とは? 火? 雷? 洪水? それもあるが全ての人間が必ずしも恐れるのは"闇"だ。
闇とは単に暗黒を差す言葉ではない。人間にとっての闇……すなわち人間の理解の及ばない超自然的怪異の事である。
例えば山彦や、鎌鼬。原理さえわかれば何て事はないが、昔はそう言った事は全て妖怪の仕業だと思われた。その結果、人間から本当に山彦や、鎌鼬と言った妖怪が生まれたのだ。
だが、昔に比べて今は人間の理解の及ばない事は減った。
魔術協会でも魔法が数える程しか正式に認定されていない事からも明らかだろう。何もかもが科学で証明できる世の中になってしまったのだ。
確かに妖怪は腐っても精霊種であり、普通の人間では足元にすら及ばない程強大である。
だが所詮、人の自然を恐れる無意識の意思から生まれる不完全な命でしかないのだ。故に人が無意識下に自然を恐れなければ新たに生まれようがない。
元々、不完全な人間から産まれ出た存在。妖怪は時代と共に消えていくだけの存在なのだ。
だが、その妖怪の話は最初に挙げたように一部の例外を除けばである。
強くなり過ぎる、能力を持ち過ぎる、あるいはは生命としての枠組みを越える等して、果てはその全てを超越した存在というモノがごく稀に現れる事がある。
そう言った存在もまた、人々からは大妖怪と呼ばれている。が、それは最早妖怪と言えるかと問われれば怪しいところだ。何せ、それらは妖怪という枠組みを超越した何かだ。
人間で言えば人間から転じた死徒27祖と、どこにでもいる一般人を比べる程の違いである。それが人間と比べても遥かに強い力を持って生まれる妖怪の中での話なのだからそう言った存在が何れ程逸脱した実力を持つかは語るまでもないだろう。
とは言え、現代から妖怪が消えたようにそう言った大妖怪もまた何処かへと行ってしまった。
だが、妖怪とはそもそも成り立ちからその存在まで人間と密接な関係を育む事で生きる生き物だ。ならば大妖怪もまた何処かで人間に依存しながら、あるいは人間を嘲笑いながら今を生きているの事だろう。
そう、例えば……。
「味噌汁にレタスは無いわ……美味しいけど」
「アッハイ」
案外、何処かの家で居候していたりするのかも知れない。
◆◇◆◇◆◇
ベッドから身体を起こした俺は寝ぼけ眼で枕元の腕時計を眺める。
そこには"5:00"と表示されていた。
我ながら目覚ましも掛けていないのに正確なものである。既に身体が覚えてしまったのだろう。規則正しいと喜ぶべきか年寄り臭いと悲しむべきか。
俺はまず腕時計を巻き、隣でピンクのパジャマ姿で眠っている女性を起こさないようにそっと立ち上がる。
寝室のドアを閉め、一階に降りて廊下を通り、家から出ると眼下に広がるそれなりの大きさの畑を通り過ぎる。ビル街がある程度には発展している街の外れにあるには大き過ぎる程の広さの畑だが、普通の農家からすれば寧ろ小さな畑だ。
畑の隣にある作業小屋に入り、中にあるクワと、ジョウロと、何かの旬の種と、青々とした木の枝を拾い、畑へと戻った。
畑の丁度中央に立ち、周りを見渡す。昨日収穫が終わったばかりのため、辺りはただの荒れ地となっている。
俺はクワを振り上げると限界まで引き絞ると畑へ降り下ろす。すると次の瞬間、轟音と共に俺の周囲の畑が直ぐ様にでも農業の出来る畑へと変わった。それを暫く繰り返し、全面を畑へと変える。
次にその場で回転しながら種を畑に投げつけるように均等にばら蒔くと立派な農場が出来上がる。それも何度かにわけて種を撒いた。
そして、ジョウロの水を吹き掛けるように様々な場所で一回転で満遍なく水を行き渡らせよう。
最後に青々とした木の枝に力を込め、地面に円を描くように回すと畑に撒かれた種が一斉に芽を出し、みるみるうちに畑は作物の芽で溢れる農地に変わった。
2、3日もすれば食べれる作物が実るだろう。
我ながら大した生き物だ。"
俺は小屋に道具を片付けてから台所へと戻った。ふと、腕時計を見ると"6:50"を示していた。
◆◇◆◇◆◇
うちのパジャマは家計に金も入れない居候の上、食べなくても生きていけるクセに非常に食に厳しい。味噌汁にレタスを入れたらぶーたれる程だ。
昨晩に朝の7時に炊けるようにセットしたご飯。畑で取れたキャベツとジャガイモの白味噌の味噌汁。子供っぽい舌をお持ちのパジャマ好みの甘い卵焼き。俺が住んでから隣の川で釣れるようになった鮎の塩焼き。それとデザートに去年の今頃に砂糖付けにして凍らせたイチゴも付けよう。
そこまで用意したところで、リビングの扉が開かれ、ピンクの水玉のパジャマを着て、パジャマと同じ柄のナイトキャップを付けた女性が入って来た。
碧玉のように淡く光沢を帯び、肩口程で切り揃えられた翠の髪。
そして、眠気眼ではあるが赤い瞳と、爬虫類のように縦に細く開いている瞳孔が人間のそれではない事を示していた。
だが、それらを兼ね備えた彼女の身体は到底人間には出せない美しさを演出するには十分過ぎた。人智を越えた、或いは人外染みた美貌といえる。
美人は生きているだけで特だと言うが事実だろう。大体の事は彼女の顔を見れるだけで許せてしまいそうだと、男ながら俗な感情を懐く程である。
「おはようございます。"ゆっかさん"」
「おはよう……」
彼女は眠気眼のままユラユラと倒れ込むように席へ着き、いただくわ…と呟いてから箸を取る。
鮎を箸で掴むと腹からもしゃもしゃと食べ始める。するといきなり彼女の眉に皺が寄った。
「少ししょっぱいわ。塩焼きなのは構わないけど塩を払ってから出しなさい」
「それは悪かったよ……骨大丈夫?」
「鮎の小骨が刺さるような身体に見える?」
「そ、そうでしたね…」
「お茶が無いわ」
「アッハイ」
俺は予め用意しておいたポットに入っている庭の薔薇から作った、鮮やかな血のように赤いローズヒップをカップに注ぐと彼女の前に置いた。
常人が飲むと胃が爛れる酸味だが、彼女は寧ろこれがいいらしい。
彼女の向かいの席に座りながらまだ眠そうに目を細め、テレビのリモコンに手を伸ばしている彼女を眺めた。
彼女の名は"風見幽香"。 アダ名は"ゆっかさん"。ゆっかさんはこう見えても大妖怪なのだ。いったい何の妖怪なのかは不明だが、恐らく戦神か、魔王か、覇王か、大悪魔が妖怪化した何かだろう。そして、人を殴り殺す程度の能力を持つ御方でもある。
バックベアード様を人の形にしたらこうなるのかもしれない。このロリコンどもめっ"!?
「ゆっかさん…? 何故に俺の足の爪先を踏み…」
「あなたが眉を浮かせて半笑いしている時は大抵しょうもないこと考えているからよ」
ゆっかさんはこちらに目もくれず、玉子焼きと味噌汁の間で箸をそわそわさせながらそう呟いた。
「ご名答………………あれ?」
それって踏む理由にはならないんじゃ……まあ、いいか…未だじんじん痛むが、足は退けてくれたわけだし。
真面目に話すと彼女は大妖怪であり、何の妖怪なのか不明だと言うのは本当だ。そして花を操る程度の能力を持つらしい。一応は俺の使い魔に当たる、とは言っても完全に主従関係は逆転しているがな……ん?
「ゆっかさん口にご飯粒付いてる」
「あらそう? ん…」
そう言って顔をこちらに突き出してくるゆっかさん。俺は指でご飯粒を取るとそれを自分の口に入れた。うーん、やっぱり新米は旨い。
「ありがとう」
「いえいえ」
「ごちそうさま」
暫くすると俺より先にゆっかさんが食べ終えたようだ。
するとゆっかさんは怖いほど澄んだ瞳で俺をじっと見詰め始める。
「何かな?」
「夫を眺めるのに理由がいる?」
「そ、そうですね…」
真っ正面からそんなことを言われ、思わず自分の表情が綻ぶ。性格を抜きに…コホン……性格を抜きにしてもこんな美人にそう言われて喜ばない男は男食家とペドフィリアぐらいだろう。
「それとも伴侶と言った方が良いかしら? あ・な・た」
照れて下を向いた俺に向かってゆっかさんは追撃を続ける。
この人を見ていると案外、人間と妖怪とは近い生き物何だなとよく思う。まあ、彼女を人間と比べるのは失礼に当たるだろう。
俺は悪戯っ子のような笑みを浮かべ、じりじりとにじり寄ってくるゆっかさんと会話を続けながら白米を掻き込んだ。
ルーンファクトリー……エーテルリンク……ゆうかりん……閃いた!
何カ月か暖めるだけ暖めていたモノだったのですが、今さっきFGOのサブアカで2枚の金時を喚び札で出しちまった事で私の中の何かが決壊し、連載投稿することにしました。違う、(そっちの)そう(アカ)じゃない。