この小説はゆうかりんがバーサーカーを持っている特性上、一部陣営の扱いが酷いことになりますのでご了承下さい。
スレンダーマン。
ゆっかさんが言うにはそれがこのバーサーカーの真名らしい。容姿がここまで奇抜なら名が知れていてもいいはずだが、名前からすらも思い当たる節が全くと言っていい程に無い。
それに詳細を聞きたくともバーサーカーは会話が出来ないと来ている。
俺がバソコンの前で首を捻っているとゆっかさんが、"未来の反英霊なんだから検索で出るわけないじゃない"と詳細を探し初めてから三時間経過後に言ってきため、一先ずは詳細探しを諦めた。諦めたったら諦めた。
そして、性能の確認のために屋外でバーサーカーの宝具を一通り見終え、COOLと鳴き終えたりゅーくんと共に、サーヴァントのマスターが見ることの出来るステータスとやらをゆっかさんからその情報を聞き出す事にした。
クラス:バーサーカー
マスター:風見幽香
真名:スレンダーマン
属性:中立・中庸
身長/体重: 300㎝/150㎏
ステータス:
筋力A- 耐久A- 敏捷B++
魔力A- 幸運D 宝具A+
ステータス:
狂化:EX
気配遮断:A-
単独行動:C++
二重召喚:B
ストーキング:A+
とりあえず聞き出せた情報を紙に纏めるとこうなる。
Aランク以上のスキルと、ステータスの能力値がサーヴァント最高クラスだと仮定すると、このバーサーカーは中々の性能を持っているのではないだろうか。
「そろそろいい時間ね。行くわよトオル、龍之介、バーサーカー」
ゆっかさんが窓の外の暗闇を見つめながらそんな言葉を呟く。すると直立不動のままゆっかさんの背後で静止していたバーサーカーの身体が僅かに震える。
「丁度、街で生意気に気配を振り撒いているサーヴァントがいるみたいだから誘いに乗ってあげましょう」
◇◆◇◆◇◆
冬木の未遠川河口の倉庫街。夜ともなれば人通りの全くないこの一帯は後ろめたい事をするには打ってつけの場所と言える。
その一区画にあるコンテナヤードに走る四車線程の道路にて、2体のサーヴァントが剣と槍との鍔迫り合いを繰り広げていた。
両者が動く毎にアスファルトは裂け、街灯が割れ、コンテナが陥没する。その光景は人と人との戦いという粋を遥かに越えていた。さながら巨大な重機と、重機が殴り合っているようにすら思う。
両者の実力は拮抗している。と、言うよりも両者共に相手の持つ力量を測るためか、手の内を見せずに戦闘していると言うのが正しい。そのため、常に高速で動いているように見えながらも互いに汗ひとつかいていないようだ。
だが、それも終わりが訪れる。ランサーのマスターがランサーに対して、宝具の開帳を指示したのだ。
それを承けたランサーは左手に持っていた短槍を放り捨て、これまでの打ち合いはお遊びだったと言わんばかりに、殺気と、魔力を強める。
そして、長槍に隙間無く巻かれた呪符を取り払うと、中から深紅の槍が姿を現し、それを構えた。
「これから先は殺りに行かせて…」
だが、ランサーの言葉はそこより先に続かなかった。
岩を鈍器で砕いた爆音と共にランサーの姿がブレて、堆く積まれたコンテナをジェンガを崩かのように倒しながら吹き飛ばされて行ったのだ。
それに遅れるように歪に変形し、羽毛のように宙に舞った幾つかのコンテナが、コンクリートに吸い込まれるように落下して激しい音を立てる。
「は………?」
予想だにしない自体にセイバーは呆けた声を上げた。
そして、今までランサーのいた場所には、代わりに片腕を振り切った体勢でスーツ姿の巨大な人型の何かが佇んでいる。
ランサーが誰に何をされたのかは明白だろう。だが、セイバーが何よりも困惑した事は目の前で自身がランサーの一挙一動を監察していたにも関わらず、スーツ姿の何かは全く気取られずに一撃を叩き込んだ事だ。
見ていたが、見えなかった。言葉にするとなんと可笑しな話だ。
スーツ姿の何かに遅れるように3人の男女が姿を現し、スーツ姿の何かの背後に並ぶ。恐らくは目の前のサーヴァントのマスターとその協力者だろう。
「あら? 挨拶のつもりだったのに。まさかこんなに軽いとは思わなかったわ」
「ゆっかさんにぶん殴られなかっただけ恩情じゃないですかねぇ…」
「COOL! 最ッ高だ! あんなダイナミックな人間ボウリング始めてみたよバーサーカーの旦那!」
「バーサーカーだと…?」
3人の内、ひとりが叫んだ言葉の中にあった単語にセイバーは声を漏らした。異常なまでに精密な不意打ちを、狂化によって理性や思考能力の殆どが失われているバーサーカーが行った。これが事実なら目の前に現れた新たなサーヴァントは相当に特異な能力を持つサーヴァントだろう。
「ごめんなさいね。家が街から無駄に遠いせいで、折角のお祭りに遅れちゃったわ」
「家主への嫌みですかいなゆっかさん?」
二人の男性を従えるような態度を見せている妖艶な女性が、セイバーに対してそう言葉を放つ。
「だから、彼女にはもう少しだけ力加減をして相手してあげなさい。殺っちゃえバーサーカー♪」
『■■■□■□□□□■■!!!!!!』
バーサーカーは機械の雑音のような人間の声帯には出しようもない声を響かせると、巨体を柳のようにしならせながらセイバーに襲い掛かった。
「ぐっ…!?」
馬鹿げた重さの拳が降り下ろされ、セイバーの不可視の剣と衝突し、その衝撃によってセイバーの足下のアスファルトに蜘蛛の巣状の亀裂が入る。
その威力は疑いようもなくバーサーカーのそれだ。
セイバーは腕を振り払うと、バーサーカーの脇腹を薙ぎ払う。だが、不可視の剣がバーサーカーの身体に到達することなかった。
「なッ!?」
バーサーカーの片腕が鞭、あるいは触手のように不可視の剣に巻き付く事で攻撃を止めていたのだ。
間を置かずにセイバーの倍近い体格から繰り出されるバーサーカーの膝蹴りがセイバーに突き刺さった。激しい衝撃を受け、地面を数回バウンドしながらも体勢を立て直し、地に足を付けてバーサーカーを見据えた。
しかし、バーサーカーが立っていた場所には何も存在していなかった。周囲を見渡してもそれらしい人影はいない。
直後、セイバーの脳裏にこの位置から早く動かなければならないという激しい悪寒が走った。
それに従い、セイバーはその場から飛び退きながら自身が立っていた地点を見据える。
その刹那、あのバーサーカーが両手を合わせて拳を振り上げながらセイバーの立っていた場所の背後に出現し、出現と共に拳降り下ろして地面を抉った。
「ッ!? そういうことか!」
セイバーが叫ぶと、バーサーカーはそちらの方を向きながら首を傾け、行動を停止させる。セイバーの言葉を待っているような行動を取るバーサーカーに対し、セイバーは会話を投げ掛けた。
「移動系の能力か宝具を持っているな? それも一瞬で距離を詰めれるタイプのモノだ」
『■□□……』
その問いに対し、バーサーカーはまた雑音のような音を発するとセイバーの問いに答えるように5m程横の地点に予備動作も無しに転移して見せた。
「やはりか…」
バーサーカーの攻撃は威力はあるが、攻撃の速さも精確さもランサーの刺突に比べればお粗末なモノだ。それを補うために瞬間移動と、腕自体が不定に変形するのだろう。
それに初撃のランサーへの一撃は聖杯戦争故に致し方ないと考えても、戦闘方法や態度からして見た目に寄らず中々に紳士的なバーサーカーらしい。
セイバーは呼吸を整えてから剣を構え直す。それに合わせるようにバーサーカーは両腕に魔力を漲らせ、より堅牢なものとした。
「行くぞ! バーサーカー!」
『□■■■■■□□■■■!!!!』
両者が再び衝突するために踏み締められた地面が悲鳴を上げているかのように亀裂が入る。
その直後に連続的な銃声と、それとは違う一発の銃声がコンテナヤードに響き渡った。
◆◇◆◇◆◇
現在、俺とゆっかさんとりゅーくんは家からかなり離れた場所にあるコンテナヤードにいる。そこで戦闘を行っていたサーヴァントらに家のバーサーカーをけしかけていた。
ちなみに家ですやすや寝ているふーちゃんはゆっかさんの分身を置いてきたので問題なかろう。
ゆっかさんと、りゅーくんはバーサーカーを応援している。バーサーカーはと言えば目の前のセイバーと互角以上に渡り合っているようだ。
ふと、昔は日常茶飯だったが、今となっては懐かしさすら感じる独特の気配を読み、足下に転がっていた呪符で隙間無くぐるぐる巻きにされている短めの槍を拾い上げる。
「…………あー、りゅーくんや」
「いっけー!バーサーカーの旦那! ……え? なんすか旦那?」
「頭下げてろ」
言われた通り、りゅーくんは頭を下げて中腰の姿勢になる。さらに俺はゆっかさんの前に出た。
次の瞬間、どこからゆっかさん目掛けて銃弾が降り注ぐ。その直線上にいた俺は勿論、ゆっかさんの代わりに受ける事になる。
俺は短めの槍を使って直線上の銃弾全てを叩き落とした。一般的な突撃銃は精々、3秒も撃ち続ければ弾切れを起こす。体感的には長く感じたが実際の時間にすれば一瞬……
「いたッ…」
次の瞬間、別方向からの一発の銃声と、それに遅れて可愛らしい悲鳴が上がった。
………………ところで話は変わるが、子供が数人集まってオリジナルの遊びをするとすればそれぞれの主張が食い違うのは当然の事だろう。
遊びだからルールを作ろうぜ、と言い出す子もいれば遊びなのにルールなんて知るかよと言う子もいる。
これは別の事柄にも言えることだ。例えば遊びを聖杯戦争に置き換えてみよう。すると、聖杯戦争だからルールを作ろうぜ、聖杯戦争なのにルールなんて知るかよ。と、こちらも個々の主張が食い違うだろう。
と言うか60年周期の上、優勝賞品は好きな願いという嘘のようなもの、参加者は監督を含めても30人を越えることはないとなれば後者が増えるのも当然と言える。
ならば別に飯に毒を盛ろうが、拠点を爆破しようが、爆撃機で街ごと空爆しようがこちらとて文句は言いまい。それは理解の上だ。
だが……。
"お祭り気分で楽しんでいるゆっかさんをヘッドショッドする自殺行為"は流石に溜め息を吐くしかない。折角、最悪の自体を防ぐために最初の掃射は止めてやったというのに……。
俺は器用に青筋を浮かべた笑顔で無言のまま瞬間移動したゆっかさんを見送り、これから出るであろう犠牲者に御悔やみを申し上げる程度しか出来なかった。
◆◇◆◇◆◇
「なんだあのサーヴァントは…?」
サーヴァント同士が激突する中、コンテナの上で銃を構えた男…衛宮切嗣はそう呟いた。
彼もまたスーツを着た棒人間のような異様なサーヴァントが、ランサーを背後から遥か彼方に吹き飛ばした一部始終を見ていたのだ。
さらにそのサーヴァントは体格と、伸縮する腕を使いセイバーを追い詰めている。
「消えた…!?」
スコープ越しに目で追っていたサーヴァントが突如として姿を消す。そして、セイバーの背後に現れて攻撃を繰り出したのだ。
「瞬間移動だと…?」
決め付けるのは早計だが、何にせよあの移動能力でセイバーの背後にいるマスター代理であり、衛宮切嗣の妻のアイリスフィールを真っ先に殺してしまう事は容易に可能だろう。
「厄介だな…」
今は小手調べ程度に戦わせているようだが、あのサーヴァントがマスターに狙いを定めて行動したのなら最大の障害となりかねない。
だが、幸いにもあのサーヴァントのマスターはこの場に来ているようだ。男性二人に挟まれた20代前半程に見える女性の手には確かに令呪が浮かんでいる。
「舞弥行けるな?」
『はい』
彼は通信機を使い、命令を下す。そして狙いをあのサーヴァントのマスターに定めた。
彼のいる位置とは別の方向から突撃銃による掃射が行われる。だが、それは隣に居る男が即座にランサーが残した槍を拾い上げ、それで全てを叩き落としてしまった。
口元を歪ませ、彼は引き金を引く。本命はこちらなのだ。
彼の銃から発射された銃弾は女性の側頭部に吸い込まれるように命中し、女性はバランスを崩して、地面に倒れ……
無かった。
「バカな!?」
女性は一歩踏み締めて体勢を立て直した。だが、たったそれだけの動作で地面にあのサーヴァントが起こした3倍近い規模の蜘蛛の巣状の亀裂が入が走り、彼の乗っているコンテナすらも激しく揺れる。
彼は直ぐに体勢を安定させて銃口を彼女に向けると、次の弾丸を発射しようとスコープを覗いた。
瞬間、頭を擦りながら笑顔を浮かべ、こちらに身体を向けている彼女と目があった。
「………!!?」
なぜあれで死ななかったのか、今の衝撃はいったい、なぜこの暗闇でこちらの位置を即座に理解したのか、それらの疑問全てが視線ひとつで吹き飛び、代わりに果てしない後悔と、絶望、そして諦めにも似た感覚が彼を染め上げる。
それでも彼は己を振り絞り、再びスコープを覗いた。
しかし、そこには呆れたような様子で談笑している二人の男性が映るだけで、女性の姿はどこにも見当たらない。
彼はセイバーや、あのサーヴァントの周囲を見渡しながら協力者にも探させようと通信機に手を掛け……
「こんばんわ。いい夜だったわね」
背後から女性に声を掛けられた。
ランサー→鳥になってこい
主人公→必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)入手
龍之介→COOL!
スレンダーマン→結構楽しんでる
セイバー→これから楽しめそう
ゆうかりん→激おこ
切嗣→\(^o^)/
うん、あれだ。ランサーが嫌いなわけじゃないんだ。単純に話の流れ的に邪魔だったからゲイ・ボウごと少しだけ退場して欲しかったんだ……。