FGOで次々と様々な設定が追加される為、色々と書き辛くなってしまった別の自分の小説を見ていたので、少し様子を見た結果投稿が遅れてしまいました。すいません。
設定をちゃんと使いつつ終了までの道筋が何と無く出来てきたので更新をしました。
セイバーの不可視の剣と男の拳が交錯する。
セイバーはリーチでは圧倒し、技量の面でもリードはしていたが、男の方が手数と速度は遥かに上であり、加えて器用にも剣刃を避けて剣背打ち払う事で剣戟をいなしつつ次の剣戟が来る時間をコンマ数秒伸ばし続ける。
それによってセイバーの剣は尽くいなされ、決して男への致命傷を与えることが出来ていない。
加えてバーサーカーのマスターが、セイバーのマスターから令呪を引き剥がそうとしている現状が多少なりと彼女の剣を鈍らせるのに一役買っている。
押せば下がらず、退けば追わず、越えれば叩き返せる。完全に護りの姿勢に入ったこの男の姿は堅牢な砦にも等しい。
だが、ここまで異常な戦闘力を持っていたとしても彼は人間であり、彼女は精霊の範疇にも近いサーヴァント。素手でそのような行為をし続ければ男の手の甲の赤みと僅かな血の滲みを見るにそう長く持つことはないだろう。それに伴い徐々にだが均衡が崩れ、セイバーの方に傾き始める。
そして遂に男の片腕がセイバーに弾かれ、体勢が大きく崩れた。
(覚悟…!)
内心ほくそ笑みながらセイバーの剣が男の首筋へ叩き込まれるように振るわれた。
しかし、セイバーが感じた手応えは巨岩を木の枝で打ったような明らかに人体からは伝わるとは思えない絶望的な感触である。
「な…!?」
彼女の呟きに答えるように周囲に金属に金属を叩き付けるような異音が響き渡り、セイバーの渾身の一撃を持ってしても足を半歩も動かす事すら出来てはいない。
見れば男は自身の片手を盾にする事でセイバーの剣を受け止めているらしい。これまでとは違い、目に見える範囲での出血はしているが、尺骨まで届いているかも怪しい刺さり具合だとセイバーは感じ取り、唇を強く噛み締めた。
(強い……この男…高位の幻獣かそれ以上に肉体そのものが屈強だ)
男は明らかな素の状態でセイバーの剣が殆ど歯が立たないのだから、その耐久は全てのサーヴァントと比べても指折りと言える。
カウンターとして振るわれた男の拳を避け、首筋をなぞるようにセイバーの剣が再び突き立てられた。
多少なり彼も疲労しているのだろう。剣はノーガードの彼に吸い込まれるように直撃する。
「ゆっかさん以外に血を見せるのは久し振りだ…くわばらくわばら」
「化物か…」
「あなたに言われるのは心外だな」
首の皮一枚とは良く言ったものだ。それとは真逆で首の皮一枚を引き裂き、剣が止まっているのだから。
風王結界越しとは言え、セイバーの剣でして全くもって歯が立たない。彼女の知る蛮族ですらここまで出鱈目な者は存在しなかった。
種はあるハズだ。だが、それを解き明かすには時間も何もかもが足りない。
「しかし、ナメられたものだ。よもや俺が鞘を付けたままの剣で切り伏せられるように見えるとは…」
(な!? 風王結界を見抜いて…っ!?)
直感的に突き刺すような悪寒を感じセイバーは彼から飛び退く。
その直後、セイバーの居た彼の目の前で半球状の爆炎が上がる。発生源は考えるまでもないだろう。
爆炎が晴れると首を傾げた男がセイバーに対して口を開いた。
「予備動作は無かった筈だが、どうして今のが避けれた? それに打ち合っていても感じていたが、あなたはまるで未来でも見えているような…」
「トオル」
男が戦闘中にセイバーのスキルの一端を把握した事に眼を見開くと、彼の奥から声が掛かる。
見れば、少し古ぼけた服のセンスをしたバーサーカーのマスターが作業の手を止め、冷めた目で男を見つめていた。
「トオル、遊ぶのはその辺にしておきなさい」
「いや、俺は別に手を抜いているわけでは…」
「血だらけじゃない。主人の目の前で醜態を晒すように教育したつもりはないわよ?」
バーサーカーのマスターは服の内ポケットから簡素な作業用の手袋を取り出すと、男の足下に放り投げた。
男は呆れ半分諦め半分といった様子肩を竦める。
「………わかりました。手が痛くなるから嫌なんですけどね…はいはい」
そう呟きながら男は足下の作業用の手袋を拾い上げると、細くも強靭に鍛え上げられた手にはめた。
セイバーは目を大きく見開き、その手袋を見つめる。何せそれは微弱ではあるが、神性を纏っていたのだから。
サーヴァントは核兵器ですら殺す事は難しいが、神性を含んだものならばペーパーナイフですら傷付く。つまり、ここから先の攻撃は全てセイバーに直接通るという事だ。
セイバーが奥歯を噛み締める。つまり男はこれまで本当に手加減をしていただけのようなもの。もっと早い段階であの女性からそれを受け取っていれば、守手になど回らずに逸脱した怪力とそれに不釣り合いな確かな技量を持ってセイバーは殴り殺されていてもなんら可笑しくはない。
セイバーとて騎士でありマスターに使えるサーヴァント。男に負けるつもりなどは毛頭ない。だが、今のあの男に勝てるイメージがあるかと問われれば閉口する他は無いだろう。
その直後、先程までは細く開いていただけの男の瞳が完全に開かれ、構えがより強固なものとなり、体勢が前のめりに変化する。
「出た! 旦那の"中段正拳突き"!」
バーサーカーのマスターの隣にいるオレンジ頭の青年が目を輝かせて叫ぶが、セイバーはその言葉を捉える事は叶わない。
セイバーは男の眼光に射ぬかれた瞬間、セイバーの脳裏に情景が浮かんでいた。そのビジョンではセイバーが男によって胸部を殴り飛ばされ、砕け散った鎧の破片を撒きながらコンテナ地帯を突き抜け、海上を跳ねていたのだ。
男の次の動作が始まる前にセイバーは剣を突き付けるように構え、剣を取り巻く風を一点に集める。
「
剣から放たれた魔力の暴風がアスファルトに破砕音を響かせ、削り取りながら男に直進する。
「………………」
それに対する男は静かに自身へと殺到する魔力の暴風を眺めながら構えを崩さずに呼吸を整えていた。
そして、風王鉄槌が腕の射程に入る直前に限界まで引き絞られた拳が振るわれる。
その直後、凄まじい轟音と共に男の拳を中心に周囲が爆撃でもされたかの如く砕け、あらゆるモノが塵のように吹き飛ぶ。
男の拳とぶつかる事で僅かに漏れた風王鉄槌の暴風はアスファルトを裂き、街灯を折り、コンテナが浮き沈みを繰り返す事で激しく音が鳴る。その風はセイバーにも届き、彼女の髪を靡かせた。
そして、何故かもう一度、風王鉄槌と男の拳が衝突した時のような音が響き渡った事でそれは起きる。
「は………?」
未だ放ったままの姿勢で呆けた声を上げたセイバーの脇を、自身が放った風王鉄槌が通り過ぎたのだ。
風王鉄槌は弓形の軌道を画きながら空を越えて雲間へと駆け、薄い雲を突き壊すように霧散させながら夜空へと溶けていった。
セイバーは唖然とした表情で拳を振り抜いた男を見る。
(風王鉄槌が……負けた…?)
それはセイバーの本来の切り札程では無いにしろ決め手ではある上、ただの人の身で宝具を超えた事に他ならない。目の前の存在は本当に人間なのだろうか。
無論、男とて無事ではない。風王鉄槌を弾き飛ばした拳は作業用の手袋越しにもわかる程に赤く濡れ、伸ばされた指先から血が滴り落ちて裂けたアスファルトを濡らす。
しかし、手としての機能は未だ健在らしく、それを確かめるように手を開いてから再び拳を作る動作を数回行うと顔上げる。
その視線は風の鞘が晴れて露出したセイバーの金色の刀身の両刃剣に注がれていた。
「面白い技だな。だが、次はどう止める?」
再び男の血濡れの拳が構えられたが、目新しい体勢に変わる。
男の言葉からも再び何らかの攻撃を放ってくるのは必然と言えるだろう。そして、恐らく風王鉄槌が連続で放つ事が不可能な事に気付いたのだ。
セイバーは男の間合いから後退する。到底相手の間合いで勝てる相手ではない。だが、下がったところで男を崩して後方のマスターを救出する方法を考えるが、歯を噛み締めるばかりで何も浮かばず、焦りだけが募っていく。
目に見えて行動に粗が出始めたセイバーに男は小さく笑みを浮かべ、次の瞬間に視界の男が消えた。
「かはっ…!!?」
いつの間にかセイバーの真横に拳を振り抜いた状態で男が立っており、セイバーの腹部に拳が突き刺さっていた。
意味もわからずそれを受けさせられたセイバーは、くの字に身体を折り曲げられながら口から肺の空気が勢いよく抜ける。風王鉄槌を弾き返した威力に比べれば遥かに劣る一撃であったが、それでもただ済む訳もなく肋骨の幾つかと内蔵も痛めているだろう。
程無く現れた時と同じように男が消え、元居た場所に立っていた。
「が……はぁ…はぁ…!」
「"縮地"法という歩法だ。だが、安心しろ。今の拳はただ殴っただけ。あなたには見切られそうなので2度同じ技は使ない」
すると再び男の構えが真新しい姿に変わり、地を滑るようにセイバーへと迫る。
セイバーは苦悶の表情を浮かべながら男を迎撃する為、剣を構えて息を整えた。
『■□□□■■■■!!!?』
突如、男の後方で金属と金属を擦り合わせるような異音が響き渡った事で男の動作が止まる。その音はまるで悲鳴のようにも聞こえた。
続けて勢い良く音の方向に男が振り返り、それに合わせてセイバーも視線を後方に移す。
するとそこに立つ者の姿を見たセイバーの表情がどこか安堵したモノに変わった。
「悪く思ってくれるなよ? 1発は1発だ」
そこにはバーサーカーの胸部の中心を、真紅の槍で背中から突き穿つランサーがいた。
ランサー復活。
ちなみにこの主人公は非常にLvが高いので、常に吼える悪竜の血鎧のスキル付きのすまないさんといい勝負の防御力があります。騎士王さんは大人しく宝具込みでバスターチェインを組みましょう。