六月の中頃。そろそろ忍耐の夏が来ると思うと憂鬱になる六月。
「デートのお誘いだよ! 春人くん!」
そして、ノックの音より雪ノ下さんの声で起きるのが日常になってきた六月の今日この頃。
「ねぇ......なに考えてるのか、聞いてもいいかい?」
日曜日。学校もなく、ぐだぐだ昼まで寝れる至高の日。ワタシはこの日、必ずと言っていいほど二度寝をする。統一のノックで起床し、朝ご飯を食べ、布団にもぐる。最高だ。最高なんだが...。
「単純にデートに誘ったんだよ、泣いて喜んでね」
もちろん、それは雪ノ下さんがいなければの話だ。
雪ノ下さんの服装は、白を基調としたレースで縁取られている柔らかめの服装。露出は多いが、不思議と上品さがあった。
うん、美人さんはどんな服を着ても似合うんだね。違和感がまったくない。
そして、あぁ、嘆かわしいことにワタシは着替えなければいけないらしい。いっそのこと寝巻きで行こうかな。
「雪ノ下さぁん」
ワタシの喉からあくびのような間延びした声が出た。
「くすっ...なぁに?」
皮肉るように間延びした声で返事をした魔王。
「僕の服を取ってきてくれるかい?」
「......うん?」
しばらく間をおいて、
「春人くん......頭打ったの?」
寝転んでいるワタシを心配そうに覗いてくる雪ノ下さん。頭ではなく、おでこなら最近強打したけど。下手人は言わずもがなだけど。
「冗談だよ」
ワタシは布団から出て背伸びをする。
「だよねー。春人くんの今日の予定空いてたかな?」
空いてないと言えない事後承諾ですね。わかります。予定としてはバリバリ忙しかったはずなんだけど...睡眠ですけどね。
「特にないから大丈夫だよ」
余計なことを言ったら脛を蹴られそうだからね。おとなしく黙っていようとワタシは思う。
「よかった! 忙しいって言われたらどうしようかと考えちゃったよ」
そう言い、寝起きのワタシが目をつぶりたくなるほど眩しい笑顔をつくった雪ノ下さん。新手の目潰しらしい。
「雪ノ下さんは朝ご飯食べたかい?」
「朝ご飯? 昼ご飯の間違いじゃない?」
寝惚けてるの? 頭上にそんなセリフがありそうな顔で首を傾げる雪ノ下さん。
うっそだー、と思い目覚まし時計を見たら、短針が十二を過ぎていた。どうやら寝坊したらしい。別にいいよね、休日だし。休日だし......休日だs...。
「布団にくるまってないで構ってよー」
再度布団にもぐったワタシをゆさゆさと揺する雪ノ下さんだが、それは眠りに誘う行動なのだ。一定の感覚で揺すられると効果倍増。ラリホーとラリホーマくらいの差がある。起こすならザキくらいしないとワタシは起きない。あ、成功したら棺桶に入るから尚更起きないね。
「構ってくれないならわたしにも考えがあるからね」
夢の世界に片足突っ込んでるせいか、雪ノ下さんの声がどこか遠くに聞こえる。
「春人くんが寝るならわたしも寝るから。それでもいいなら寝ていいよ?」
「おはよう。今日もいい天気だね」
耳に届いた冗談でワタシは即座に飛び起き、布団をたとんだ。もちろん天気など見ていないから適当だ。雪ノ下さんは目を細めているが、目が痒いのだろう。取り合えず挨拶ってだいじだよね。
「うん、おはよう」
「どこに遊びに行くのかは後で聞くとして、昼ご飯は食べたかい?」
「食べてないけど......春人くんが作ってくれるの?」
「統一がいないから僕が作るしかないけど」
「やー、お腹すいたなー、春人くんの手料理食べたいなー」
一般の感性を持つ男子だったら効いちゃう女の子の必殺技、上目遣い。雪ノ下さんがすると大体の人は効くだろう。何せ、雪ノ下さんは学校に宗教染みたファンクラブが作られる程の愛される美貌の持ち主らしいからね。ワタシには色々と理解できない。
「品数が三品しかないけど、それでもいいのかい?」
ご飯(冷ご飯をレンジに投下)、味噌汁(インスタント)、卵焼き。この献立を手作りと言っていいものか悩むところだが、まぁ手作りなのだろう。
「いいよー。...念のために聞くけど、インスタントは入ってないよね?」
「入ってるけど」
「冷ご飯は許せるけどインスタントはダメですな」
「なんで? 便利だよ、インスタント」
「......はぁ」
もう手遅れだ...を代弁するかのように発せられたため息。
「手伝うから早く行こうよ」
手伝うって言っても味噌汁だけなんですけどね。
テーブルに並んだ、いつもの朝食に味噌汁が追加された昼ご飯。おかずが卵焼きしかないのはきにしない。だってめんどくさいし。味噌切れたし。買い足さないと駄目だし。
いただきますと呪文のように唱え、手を重ね、箸で卵焼きをつつく。
「は、春人くん?」
口に物が入っているときに話すのは行儀が悪いので、なに? と目で応える。
「この卵焼き凄く美味しいんだけど」
口に入っている卵焼きは飲み込める大きさじゃなかったが、飲み込みワタシは口を開く。
「ならよかった」
「どうしてお味噌汁作れないの?」
「作れないものは作れないよ」
味噌汁など料理本を見ればできるはず。美味しいかどうかは知らないが。
「別にいっか。ららぽに行くけど電車とか大丈夫? 酔ったりしない?」
「酔う」
「じゃぁ大丈夫だね」
適当についたデタラメが綺麗に流された。どうやら雪ノ下さんはワタシの扱い方を知っているらしい。にしてもどうやってデタラメを見抜いているのだろうか、ポーカーフェイスには自信があるのだが、雪ノ下さんを前にするとその自信が砕けそうだ。
「ららぽに行ってなにをするんだい?」
買い物とか映画鑑賞あたりだろうとワタシは予想する。
「春人くんを連れま...買い物だよ!」
『買い物だよ!』以外聞かなかったことにしよう。ワタシの心の平穏のために。
「つまり荷物持ちをしろってことかな?」
「そゆこと」
雪ノ下さんの食器を見たら空になっていた。まさかの早食いですか。
雪ノ下さんはご飯だけでは足りないのか、じーっとワタシを見ている。
「なにか言わないの?」
なら、ワタシの身の安全を守るために一つ聞いておこう。
「僕を食べるなんて言わないでよ?」
雪ノ下さんは笑顔から一転、一瞬だけ背筋が凍る無表情を作り、それが幻覚のように思える程綺麗な笑みを浮かべる。残念なことに幻覚ではないとワタシに知らせるものが一つ。雪ノ下さんの目が今までよりなお笑ってない。
美人さんの笑顔は和むものがあるけど、無表情は果てしなく恐ろしい。たぶん、今の無表情は頭からなかなか離れないと思う。夢とかに出てきそう。
なんてことを考えていたら、ぐみぃとワタシの足の甲が踏まれた。
「面白いこと言うね、春人くん?」
さらに、ぐみぐぃと踏み続ける雪ノ下さん。この効果音だとワタシの足は美味しく食べられそうだ。
「わたしはそんな返事を待ってたわけじゃないんだけどなー」
顔に笑顔という名の皺を寄せ、ワタシの足の甲を強く踏む雪ノ下さん。ワタシの足の甲がグミなら呆気なく千切れているだろう。
「荷物持ちくらいするけど」
ワタシはポケットから中身が小銭しか入ってない財布を出す。
「運賃しかないから、奢れとか言わないでね」
期待されていた返事をしたのか、雪ノ下さんはワタシの甲から足を離した。
離してくれたのはいいのだが、雪ノ下さんはなにが楽しいのか子供のように足をぱたぱたさせていて、爪先がワタシの脛に当たり地味に痛い。
「春人くんの財布に期待してないからね。頭と腕があればオーケーだよ」
「もしかして服でも買うの?」
「そ」
簡潔に述べられた一文字の返答にワタシのハートが砕けた。
完全にあれでしょ、雪ノ下さんが選んだ服を見て意見するやつでしょ、やだー、めんどくさいやつじゃないですかー。
「...行きたくないなー」
ぽつりと口から溢れたそんな言葉。ワタシの口って固かったはずなんだけどなぁ。
「ん? ごめん聞き逃しちゃった、もう一回言ってくれるかな?」
耳に手を添え、どこかの難聴系主人公のように聞き直す雪ノ下さん。
「行きたく...行きたいなー、楽しみだなー」
卑怯者め...卵焼きを人質に取るだなんて...。
「ほんとにそう思ったならもうちょっと気持ちがこもると思うんだけどー?」
卵焼きを掴んだ箸を自分の口に運ぼうとする雪ノ下さんのその目には、当然嗜虐の色が灯っている。
「行きたいなっ、楽しみだなっ」
語尾に弾みをつけて、気持ちが入っているアピール。これで通らなかったら、頭のなかに卵焼きの楽園でも思い浮かべるしかない。
「はい、あーん」
スルーいただきました。
ワタシは二度と語尾を弾ませないと卵焼きに誓った。
それにしても、箸で掴んだ卵焼きをワタシの前に出してくるのは何故だろうか。あと、『はいあーん』ってなに? 廃案なら知ってるけど。
「口開けて?」
言われるがままに口を開けたら卵焼きが突っ込まれた。うん、普通に美味しい卵焼きだ。
「こうしてみるとなんだか餌付けしてる気分だねぇ」
感慨深そうに言う雪ノ下さんだが、うん、餌付けされるのは構わない。決して、雪ノ下さんにはなつかないが。
返す言葉が見つからず、卵焼きを食べていると、雪ノ下さんはこんなことを言った。
「そのお箸、わたしが使ってたやつだから」
味わって食べた卵焼きを喉に通して、ワタシは口を開く。
「それがどうしたんだい?」
中学生ではあるまいし。
「え? 普通わたしみたいな美少女と間接キスしたら喜ぶか焦るかくらいすると思ってたんだけど...むぅ、春人くんを落とす道のりは遠いなー」
とうとう自分で美少女って言ったよこやつ。
どちらかと言えば雪ノ下さんは美少女ではなく、美人があうと思うのだが、まぁ言わなくていいだろう。
それと落とすってなに? 機動戦士の専門用語?
「ごちそうさまでした。味噌汁美味しかったよ」
「でしょ? なんなら頭撫で撫でを許可するよ」
「撫でないよ、お皿洗うから台所に置いといてね」
「はーい」
雪ノ下さんは少ないお皿を重ねて持ち、それを台所に置き、入り口兼出口から出ていった。いや、どこに行くの?
「雪ノ下さん?」
「ん? どうかしたのかな春人くん。あ、一緒に居て欲しいとかかな?」
首だけ振り返り、笑えない冗談を言う雪ノ下さん。相変わらずその端正な顔には笑みが張られている。
「居て欲しいとは微塵も思わないけど、どこに行くのかなって思ってね」
「春人くんは素直じゃないなー、可愛いから許しちゃうけど。わたしが行く場所なんて、春人くんの書斎とも言えなくもない部屋に決まってるじゃん」
確かに置いている本の数は少ない。ただ、読書や書き物をするための場所を書斎と呼ぶなら、あの部屋は書斎に分類されるだろう。
この旅館染みた家には、書斎が二つある。一つはワタシが使う、綺麗な書斎。一つは父さんが使う、ごちゃごちゃしている書斎。どれくらいごちゃごちゃしているのかと言うと、文字通り足の踏み場がないほどごちゃごちゃしている。ワタシは本屋で買ってきた小説などは後者に纏めて収納しているが、読むときは引っ張り出してワタシが使う前者で読書をする。なにかとめんどくさいが、ごちゃごちゃするよりましである。
「じゃ、準備が済んだら呼んでね」
雪ノ下さんは、手を振りながら板張りの床を歩いていった。
さぁ、たいして汚れていない食器たちよ、根こそぎ落としてやるから覚悟するのだー。
と。
別に深夜でもないのに、謎の深夜テンションで意気込み、皿を洗い終え、服を着替えて、役目を果たした問題集を何故か眺めている雪ノ下さんに声を掛けたら『なにその服?』と聞かれたのは数秒前の出来事だ。
ワタシの服装はいたって普通。なにか指摘されるような物でもない。
どこにでも売っているジーンズに、柄のないぶかぶかの真っ白な長袖。別にワタシは極度の甘党でもないし、ワイミーズハウスの創設者と一緒にいるわけでもない。
「デートだよ、デート。もっとお洒落しなくてもいいの?」
荷物持ちで引きずり回されることをデートと呼ぶなら、ワタシじゃない違う人と行けばいいと思うのだが...取り合えずそれは置いておこう。それに、ワタシはお洒落と無縁である。
世の中にはシンプルイズベストという言葉があるらしい。なら、ワタシはそれに乗っ取って生きよう。まず、布団に戻って一人で昼寝をする。そうしたら、きっとこの悪夢も覚めるに違いない。ところで、これのどこがシンプル?
「しないよ」
ワタシは一生お洒落と無縁でいたい。ついでに雪ノ下さんとも無縁でいたいです...。
「そういうの嫌がりそうだもんね。わたしって春人くんの制服姿とパジャマ姿以外みたことなかったんだよね」
そう言い、雪ノ下さんはワタシを中心として回る。耳の鼓膜に異常が起こったのか、綺麗な音色の鼻唄が聞こえた。不覚にもずっと聞いていたいとさえ思って、そっと目を閉じた。
「うん、やっぱり春人くんって美人さんだね!」
見ることに飽きたのか、雪ノ下さんは鼻唄を止めて男子に使われることのない言葉と共に、ワタシに突っ込んできた。避けることも防ぐことも目を閉じていたから間に合わず、尻餅を突かなかった幸いで、ぐへぇと息を吐いても不可抗力なのだ。
「...前々から思ってたんだけど」
ワタシは言葉を区切った。ワタシにくっつきながら肩を震わしている雪ノ下さんが目に入ってからであり、言おうと思ったことがたぶん通じないと悟ったからである。
ワタシは、予想するまでもないが予想する。こやつは今、笑いを堪えて肩を震わしているのだと。そして次に爆笑するのだと。ならここで取る、最善な行動は心の耳を塞ぐことだ。うん、つまりは現実逃避。
「...あはは、ぷ、ぐへぇだってさ......やだ面白い...」
だから返事になっていない返事にきを割く必要なんてどこにもない。ないのだが、いかんせん至近距離過ぎて意識したくなくても意識してしまう。なんてこった...これだと次に来る煩い爆笑が耳に届いてしまうではないか。
「あはははははは! ぐへぇってなに! カエルなの! あははは! 春人くんがカエル!」
予想以上に煩い。にしてもカエルはないと思う。...うん、今のは寛容なワタシでも傷付いた。意味のわからないことに直結した雪ノ下さんの頭にチョップを落としたいと思うくらいに傷付いた。
「...春人くん...わたしがバカになったらどうしてくれるの?」
だからワタシは、チョップを落とした部分をさすりながら、さも恨めしそうにジト目を寄越されてもなんとも思わない。自業自得である。...でもカエルは本当に傷付いたな。ワタシなんかがカエルだとカエルに失礼だ。
「雪ノ下さんがバカになったら、無視するか現状維持だと思うよ」
「無視って構ってすらもらえないんだ...ううう、陽乃ちゃんは悲しいのです」
「雪ノ下さんが悲しもうが笑おうが勝手だけど、早く離してくれるかい?」
さっきから肩を押しても引いてもびくともしない雪ノ下さんに、ワタシが無言で切れる札は残されてない。最終手段の交渉しかないのである。
「時間もあれだからね。仕方ないから離れてあげる」
雪ノ下さんは残念そうに肩を落として離れてくれたが、その表情はなにか良からぬことを企んでいるそれだ。
「にしても春人くんは誰の許可を取ってわたしの肩に触ったのかな?」
「にしても雪ノ下さんは誰の許可を取って僕に抱き付くのかな?」
「ほら、女の子の特権ってやつ」
雪ノ下さんは愛らしくにんまりして言った。
女の子の特権、なんとなくわかるが言葉にするのは難しい。
女の子が男子に抱き付いても、男子は茶化すか喜ぶかだが、その逆もありとはならないのである。
しかも、男子の純情は不思議なもので、女の子に優しくされると『あり? こやつはワタシのことが好きなのかな?』と勘違いしてしまうものなのである。抱き付くほどの過剰な触れあいは仕方のないようなきもするが。
その男子の純情に今現在のワタシを当て嵌めると、告白して振られるという在り来たりなパターンが出来上がってしまうが、ワタシの心は少し特殊なので、誰かを好きになるという当たり前のように出来て、理解するのが難しい恋とやらをするのが不可能な人間なのである。
適当に考えたが要点を纏めると、単にワタシが捻れているだけなのだ。
「なら、その女の子の特権ってやつの被害者が僕になるね」
「もう、被害者なんて人聞きが悪いよ」
雪ノ下さんはそう言って、その細い指でワタシの手を取り、ドアに駆けて行く。ふと脳裏に過ったいつかの光景。このまま突っ立っているとおでこを強打することになる。強打が嫌なら、ワタシもゆっくり歩けばいいのだ。
ガタンガタンと電車に揺られること五分。人の視線を雨のように浴びてワタシ達はららぽの案内板の前にいる。
雪ノ下さんが美人過ぎるせいか、すれ違う人達の視線を集めていた。側で見ている分は面白いのだが、本人はどう思っているのだろうか。別に聞くほどのものでもないので口には出さない。
案内板の前で『春人くんを連れ回すにはどこがいっかな』なんて完全に主旨が変わっている言葉を呟く雪ノ下さんに、ワタシは不満の声を掛けた。
「腕、離してくれないかな?」
雪ノ下さんがくっついている腕は、幸いにも利き腕ではない左手なのでいくらかましではあるのだが、片手一本しか動かせないのはなにかもどかしい。
「春人くんが迷子にならないって約束してくれたら離すよ?」
「わかったよ。迷子にはならない」
そう言うと雪ノ下さんは素直に腕を離してくれた。やけに素直だ...もっと『やっぱ離してあげない』と渋るものだと思っていたが...絶対に裏がある。うん、きっとそうだ。
「じゃあ春人くん、まずは本屋さんに行こう。れっつらごー!」
雪ノ下さんの顔には、何度見せられたかわからない花も恥じらうような眩しい笑顔がある。嘘で塗り固められたひねくれ者のワタシでも、たまには心から楽しんでいいのだと思える、不思議で素敵な笑顔。
いつもならそれに思うことはないのだが、なんというか、日光を浴びたすぎたせいで胸が痛い。
人を笑顔にさせる笑みを浮かべる人の心はきっと含みなく、純粋に楽しんでいるのだろうね。だから、ワタシの頬が少し緩んでも可笑しくないし、左手に添えられた暖かな体温を握り返しても可笑しくないと思う。
けれども、ワタシは胸の内側に温度がないことを知っていた。
ここまでお読み頂きありがとうございます。
読み返してみると、この主人公コインみたいですね。裏か表になるかはわかないけど。