玲音救出に成功し撮影を終えたニック。その後、束の間の休息を満喫するなか、玲子とニックを心配した絵理が彼に本心を打ち明ける。
撮影二日目。今日から玲音も参加し出来栄えも昨日に比べると格段に良くなっていた。ディレクターの一人がニックに声を掛ける。
「あのぅ、昨日のアレ、ホントに撮影なんですか?」
「銃撃戦か?ああそうだ」
「迫真でしたね、銃撃戦を見たことないものですから」
「編集大変らしいし、放映まで時間かかるだろうから気長に待ってな」
さすがに本当の銃撃戦だとは言えないため、なんとかはぐらかす。ニック自身もまさか白昼堂々カーチェイスするとは思いもしなかったからだ。それはカイも一緒であり、今でこそ料理を美味しそうに食べるアイドル達の姿を温かく見守っているが、昨日の戦闘では負傷者が出ないかヒヤヒヤしたものだ。
「それはそれとして、玲音さん前より活き活きしてますね。961プロじゃ自由なかったのでしょうか?」
「どうだろうな。今回は勝手に参加してんだろ?」
「確かにそうですが、ジュピターには自由はおろか嘘すり込ませて他のアイドル達の妨害してましたね、北斗君は真実知ってましたけど」
「(その北斗は殺されたがな)そうだ1ついいか?」
「なんでしょうか?」
「五十嵐について知ってることはないか?」
「五十嵐局長の?あぁ、あの人確か今、黒井と並んで会社の筆頭株主になってるって聞いたけど、なんでPMCに投資したかは」
「PMC?社名わかるか?」
「それはここじゃ話せないですから、大御所さんと一緒に中へ」
ニックは驚いた。なんと新米ではあるが彼もまたICPOの覆面捜査官らしく、事実を知っていた。曰く、まだまだ沢山いるらしい。
「社名はプリファード・アウトカムズ。ご存知ですよね」
「まさか残ってたとはな。悪徳無しでも武器はおろか、兵隊も調達可能か」
「トカゲの尻尾だったんですよ、奴は」
「黒井までが遠いな。だが、次のターゲットが搾れた」
「そうなのですが五十嵐局長はいまだにテレビ局に顔を出して指示を出してます。局内の人間の中に兵隊も紛れているのも事実です。もしそこに仕事で行くなら、狙撃手も必須になるでしょう」
「警備員以外に警戒必至か。他のメンバーにも話しておくか」
「我々も可能な限り援助します、必要な物資があれば言ってください」
「そうだな、ジップライン用意できるか?ヘリでの脱出が見込めない場合、これが一番だ」
「わかりました。玲音さんの護衛、任せてください」
その後無事に撮影が終わり、夢子もバンに乗せて事務所に帰っていった。
「みんなごくろうさま、今日は家まで送っていくから早めに寝るんだぞ」
「もう小学生じゃありませんよ!」
「冗談だ。明日オフだからってスキャンダルになるマネはしないようにな」
「「はぁーい」」
珍しく絵理が疲れて眠っている。普段なら起きていることが多い彼女だったが、前の銃撃戦が思いのほか衝撃的だったのだろうか。
「カイ、玲子、事務所に戻ったら日程の確認だ。いろいろ話がある」
全員を送り届け、事務所に戻った3人。ニックは仕事の日程を見て頭をかしげる。
「土方姉妹の撮影だが、復帰早いな」
「なんでも五十嵐局長が早く済ませろっていうのよ、もう引退したっていうのに」
「(おそらく俺達の処理だろうな、その前に証拠を握っておきたかったが)とんだ出しゃばりだな」
「ニック。なんであの人がいるか知ってる?」
「さぁな、暇なんだろ」
「ならいいけど」
かなり不安そうな玲子だったが、ニックは彼女の頭をなでる。
「堂々としてろ、絵理が心配する」
「・・・」
オフの日。行きつけのキューバ料理の店に律子と千早、絵理を誘って昼食を食べていた。馴染みのない国の料理だったにも関わらず、いい食べっぷりをみせる千早と絵理。
「気に入ったみたいだな。これなら765も大丈夫そうだ」
「そんなわけないわよ、タイソンPが美希や亜美、真美に甘いから事務所が混沌としてるのよ。やよいは懐いても雪歩は怖がるし真と伊織も相乗効果で警戒するし・・・でも、春香がコケて頭上に熱いお茶が掛かっても平然としてる人だから、悪人じゃないだろうけど」
「アイツも結構苦労したからな、たかがお茶こぼしたくらいで怒らんさ。だろ千早」
「ええ。悪徳捕まえて睨んだ顔は怖かったですが、それ以外は特になにも」
「だろうな。他に変わったことは?」
「無いわ。強いて言うならCDの売り上げが赤羽プロデューサー時代より上がったことね」
「(なにをしでかした・・・)それよりも、律子の顔、昔よりもいい顔してるぜ」
「え!?」
「まぁ眉間のしわは仕方ないかもしれんが、楽しそうにしてる。俺がマイアミにいたころよりもな」
ニックの思わぬ言葉に顔を真っ赤にしてします律子。
「ななな何言ってんのよニック!恥ずかしいったらありゃしないわ!」
「ふ、その顔だ、笑顔を忘れないようにな」
楽しかった昼食を終え千早と律子と別れた後、絵理の要望で一緒に帰ることになった。足並みを彼女に合わせながら歩いていると、急に止まる。
「どうした?」
「プロデューサー、尾崎さんのことどう思う?」
「玲子のことか、あいつは頑張っていると思うし悪い奴じゃない。ただ妄想癖が心配だな」
「よく観察してる?」
「心配かそんなに」
「はい・・・尾崎さんのいいところは、まるでダメなところだから?」
思わず笑ってしまう。
「確かに心配性すぎるな、俺のことまで心配してる」
「プロデューサーはいい人、でも、それが欠点?」
「?」
「私の知らないところで危険な橋を渡っているから・・・」
絵理の表情に悲しさが漂う。彼女はニックに抱きつき彼の体に顔をうずめる。
「お願い、ずっと876にいてください?」
「おいおいここじゃパパラッチに撮られてもおかしくない、離れな」
「あ・・・はい」
「大丈夫だ、君達を立派にするまで離れるつもりはない。約束する」
頭を優しくなでる。安心したのか、少しずつ笑顔が戻っていった。ニックはこの時、一刻も早く黒井を逮捕し彼女達が安心安全に仕事できるようにすると心に誓ったのだった。
尾崎さんがヒロインっぽい感じでいいのだろうか・・・