「あのぅ、僕はなぜここに?」
「簡単だ。何故1ヶ月も危険な捜査をしたか知りたい」
ニックは876プロの近くにある飯屋に涼を呼びつけ取調べをしていた。舞も彼の失踪理由がわからないため直接本人を捕まえて聞いている。
「武田蒼一って方ご存知ですか?」
「アメリカでも有名な音楽プロデューサーだ、彼がどうした?」
「実は彼がこれを渡してくれたんです」
USBメモリーのようだが、真っ二つに割れてデータ解析もできそうにない。
「これの中身を見ようとしたら誰かに狙撃されてこうなったんです。でも、武田さんは日本を救う大事なものだがらっていうから気になって徹底的にかぎ回っていたら、冬馬君に見つかってこうなったんです」
「なるほど。やったことは馬鹿だが、収穫はあったのか?」
「わかったことはコカインの売買で誰かが儲けようとしたこと、ジュピターの残り二人もモルモットにされて伊集院北斗君だけ生き残ったことでしょうか。あとは悪徳記者が情報と武器収集係ってだけです」
「伊集院北斗。彼はどうなった?」
「芸能界から引退して今は北関東の高原にある専門機関で入院中。彼はコカイン吸入を最小限にしていたみたいですから、話は聞けるかと」
「そうか。武田は?」
「悪徳の仲間に襲撃されて警察病院で入院しています。夢子ちゃんが定期的にお見舞いに行っているのですが、目を覚ますかといえば絶望です」
「重症か、だいたいわかったし協力感謝する。律子や他の面子にはこのこと内緒にしていてくれ」
翌日、タクニカルボックスを開きMP5Kと357マグナムを取り出す。今日は武田蒼一の見舞いと桜井夢子に事情聴取に行く。建物内での戦闘で困らないための装備をしたニックは、剣胴とともに警察病院に向かった。病室には眠っていると静かに見守る赤の似合う少女がいた。
「やぁ。今いいか?」
「何でしょう、ナンパなら後にしてください」
「ここでナンパする人間なんていないだろ。彼が襲撃されたことについて知ってることだけ話してくれればいい」
「・・・あれは2月前のことです、オールド・ホイッスルの収録前でした。私はこの時控え室で着替えてたとき、ステージの方から銃声が響いてきました。私は怖くなってロッカーに隠れて止むのを待っていました」
「それで?」
「止んでしばらくしてステージに行ったら・・・出演者はもちろん、テレビクルー全員が殺されてて・・・かろうじて息があった武田さんを助けるために、救急と警察を呼びました・・・」
彼女の目には大粒の涙が浮かんでいる。まだ十代、しかも虐殺現場を見た後だ、衝撃は大きいに違いない。ニックも幼少期に自宅周辺に死体が転がっている光景を見てショックを受けた。彼女の気持ちがよくわかった。
「そうか辛かったな。もういい、あとは別口で聞く」
ニック達が去ろうとしたとき、夢子が引き止めた。
「待って・・・一つ言わせて。ありがとう、涼を助けてくれて」
「なんでそれを?」
「彼が話してくれたの、助けてくれた恩人だって」
「そうかい。なら目が覚めるのを祈っといてくれ、君も彼からしたら恩人だろ?」
病院をあとにすると、今度は北関東の向かった。生きてるという伊集院北斗から話を聞くためだ。
「ニック。彼女は立ち直るだろうか、憧れの人に先立たれたら目標を失うだろうから追ってしまうかもしれん」
「大丈夫だろ、彼女には涼や律子がいる。俺もできるだけ助けてやりたいしな」
施設周辺に近づくと、向こうから黒い煙が昇っている。
「火事か?確かこの先には・・・運転荒くなるぞ!」
「どうい・・・うわっ!!」
交通法違反ドンと来いといわんばかりの荒っぽい運転を始めるニック。
「あそこは確か北斗がいる、パトランプ用意しろ!」
「ああもぅ荒すぎる!」
サイレンを鳴らすとさらに危険運転をし、施設に向かう。目的地に着くと、案の定HCARやUZI、AKMを装備した連中が占拠しており、職員や患者を残らず射殺していた。
「MP5は失敗だったかも」
「奴らめ、かぎつけたか」
剣胴は車から出ると、トランクを開けとんでもない物を用意してきた。
「戦争おっ始める気か?」
「大丈夫だとも、殺傷許可は下りてる」
「普通の警官じゃ装備しないぞこれは」
用意してきたのはM249軽機関銃。これを持って突撃しろといわんばかりだ。
「私にはこれもある」
M249とM320グレネードランチャーを装備すると、剣胴はランボーよろしく敵陣に突撃していった。ニックもM249を持って彼を追うも、すでにどこかにいなくなっていた。
「ハハハハ!肉弁当に成り果てろ!」
声がする方を見ると剣胴が調子に乗って施設に向かって連射していた。どうやらトリガーハッピーらしい。
「待てスナイパーだ!」
「え?」
木に隠れていたスナイパーに脳天を撃ち抜かれあっけなく倒された剣胴。ニックはM249を構えスナイパーに狙いをつけ仕留める。
「馬鹿が、敵陣に突っ込んで自滅とはな」
この時ドーズの島に行ったときを思い出した。あの時はステルス重視に行動し戦闘は避けていたのに対し、彼はわざわざ敵陣に突っ込んで自爆したのだ。ICPOの彼ならそんな馬鹿げたことだとわかっていたはずである、理由がわからない。
「まぁ持ち物だけでも回収するか」
すると剣胴の電話が鳴り響く。相手の名前を確認すると、驚くべき相手の名前があった。
「黒井だと!?」
電話には出ず、電話と手帳を回収すると、代わりに自分のスキャナーでブーマーにこのことを報告する。
「ブーマー、やばいことが」
「ニック!昨日臭いからあいつのPCにハッキングしたら剣胴の奴、黒井にホットショットの情報を流してやがった。奴が製造ノウハウと設備を手配してたんだ!俺は会社にいるから待ってるよ!」
「わかってる、さっき黒井から連絡があったんだ。今から帰還する」
帰還中だったが追っ手は来なかった。すでに施設襲撃が完了していて剣胴の行動が演技だとしたら説明がつく。
「ドーズより腐った奴がいるもんだな、用済みなら子供すら殺すとは」
ニックは怒りのあまりにハンドルを強く握り、ブーマーと合流を果たした。
ニックのイケメン度が加速する