「本日付でフェンリル極東支部に移転しました。アリサ・イリーニチナ・アミエーラです」
「聞いての通りだ。ユウ、お前と同じ新型だ。仲良くやれ」
「……はぁ」
時は2071年。世界は絶対なる捕食者、『アラガミ』によって食い尽くされていた。そんな折、後に最前線と呼ばれる、『フェンリル極東支部』のエントランスには三人の男女が立っていた。
『アリサ・イリーニチナ・アミエーラ』。くすんだシルバーヘアを肩少し下ほどまで伸ばし、赤いキャスケット帽が印象深い少女だ。歳のわりに生育が早いのか、胸は服のボタンが閉められなくなるほど大きくなっていた。
アリサの隣に仁王立ちで鎮座し、黒髪の間から覗く鋭い眼光の『雨宮ツバキ』上官。そして、ツバキの威圧に耐えかねている、新型神機使い……
『神薙ユウ』の三名だ。
新たに入った新型神機使いを紹介するだけのためにユウは上官からの呼び出しをくらった。大抵、呼び出しの時は何かヘマをした時だったので、ユウは呼び出された時に記憶を辿り、自分のミスを探し始めたくらいだった。
「アリサ、こいつもつい先日、神機使いになったばっかだ。腕は同じくらいだろう」
「そうですか。ですが、この人が私と同等だとは思えませんね」
「……気に障る言い方だなぁ」
「ふふっ、確かに。ユウ、貴様ではアリサには及ばんだろう」
ツバキはアリサの言葉に同意し、少し笑みを零しつつ、ユウを罵倒する。しかし、ユウがアリサに及ばない、というのはありえないことだった。
ユウは座学こそ、最底辺の成績なれど、戦闘実技においては非常に優秀な成績を残していた。おかげで早くの内にミッションへ赴き、アラガミを倒している。そのせいか、風呂に入る余裕などなく、体はボロボロのままだった。
「何なんですか? その服装は?」
「い、いや洗濯してる余裕なくて……」
「訓練でどうやったらそんなに汚れるんですか?」
「ユウはもう実戦に出ているからな。ミッションの連続で余裕がないのだろう?」
「ごもっとも……」
アリサに質問責めにされ、回答にこまねいているとツバキの助け舟が入った。のはいいが、ツバキに全てを諭されてしまい、思わずユウは降参のポーズを取る。
ユウはツバキに両手を挙げ、頭を下げていたが、顔を上げるとアリサが驚愕の表情を浮かべていた。
「な……私よりも先に実戦に出ているというのですか!?」
「そ、そうですけど……」
「今は何のアラガミ討伐を?」
「今はまだサリエルくらいかなぁ」
『サリエル』。女性と蝶が合体したようなアラガミ。常に宙に浮遊し、オラクル細胞の弾丸を雨のように降らす、近接攻撃型神機使いには不得手な相手だ。しかし、それをユウは一人で、しかも近接攻撃でねじ伏せていた。いくらオラクル細胞で体が強化されているといってもそこまでの跳躍力を誇るユウは、相当な実力者であることが窺える。
「精進しなければならないのはアリサの方だな」
「な、なんで私がッ…………」
「わかった。わかった。いいから貴様は第一部隊に挨拶してこい」
「ん? ツバキさんちょっと待ってください」
「なんだ、ユウ?」
「彼女、第一部隊なんですか?」
「そうだぞ。聞いていなかったのか……」
ツバキは「
気まずい空気に耐えかねたアリサがため息をつきながら沈黙を破る。
「私、あなたの自己紹介を聞いてませんが……」
「え? あ、そうか。僕は第一部隊所属、神薙ユウだよ」
ユウはわざと第一部隊のところを強調して自己紹介をした。案の定、アリサの顔にはまたしても驚愕の表情が浮かんでいた。しかし、その顔は急に曇っていき、遂には闘争心をみなぎらせ、ユウをキッと睨んだ。
「あなたには負けませんからッ!!!」
「はぁ……」
「なんですか!? その生返事はッ!!?」
「いやぁ、どうでもいいかなぁ、って」
「どうでもいい!? 私のことをどうでもいい呼ばわりですかッ!!?」
「いや、違うんだけど……」
アリサはツバキのように「どうでもいい呼ばわりしたんですからね! 覚悟していてくださいッ!」と捨て台詞を吐いて、エントランス内にあるエレベーターへ乗り込み、階下へと下っていった。おそらく行き先はベテラン区画だろう。名の通り、ベテランの神機使いが住まう区画だ。そこには第一部隊隊長の『雨宮リンドウ』がいる。
ユウはアリサに対抗意識を持たれてしまったことをとても辛いように感じた。正直、彼女が自分の力の前にひれ伏すことを望んではいるのだが。
「はぁ、何なんだ? まぁいいか。次の任務だ……」
ユウは脱いでいたジャケットを着なおし、神機保管倉庫へと歩を進めた。
毎回、このくらいの長さを予定しております。用語解説とか省いちゃってますけどそこはご了承ください。読んでくださっている方々がすでに熟知していることを願います……
ではでは皆さんダ ズヴィダーニャ~♪