ユウ×アリは正義であるッ!   作:ぼっちめがね

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病室の彼女

『もういいかい?』

『まーだだよ』

『もういいかい?』

『もういいよー』

『ッ!?……アラガミだ! うわぁぁぁぁあああ!!!』

『キャァァァアアア』

『ゴガァァァァアア』

 

 

『パパ……? ママ……? やめて……食べないで……』

 

 

 

     ☆★☆

 

 

 

 フェンリル極東支部内にある病室。そのベッドの上に一人の少女が横になっている。彼女はアリサ・イリーニチナ・アミエーラ。ロシア生まれということもあって元々白い肌が今は弱々しく青白くなっている。そんな彼女の寝ているベッドの横に置かれた椅子に座っているのは神薙ユウだ。

 

「アリサ……」

 

 彼は名前も呼ぶも彼女に反応はない。彼女がベッドに伏せたのは一昨日のことだった。作戦中に精神的パニックを起こし、錯乱状態となった彼女は強力な鎮静剤でどうにか収まり、やっとの思いで寝てくれた。

 彼は何の反応もない彼女の手を取ると自分の手をそっと重ねた。青白く、弱々しい肌に、血の通ってなさそうな肌に体温を分け与えるかのように。

 

「……ッ!? な、なんだ今の……」

 

 彼女に触れた瞬間、彼の脳内に映像が流れ込んできた。二人の男女が誰かとかくれんぼをしていたと思えば、彼ですら見たことのないアラガミが現れ、その二人を食い殺した。そして、映像は移り変わり、目の前にアラガミの移ったモニターが現れる。傍らにいるのは彼女とともにここにきたオオグルマ医師だ。若干、今よりも若く見えるので昔のことだとわかる。そして、オオグルマ医師が口を開いたその瞬間、映像が途切れた。

 

「うぅ……」

「アリサッ!?」

「ユ……ウ……?」

「よかった、目が覚めたんだね」

 

 ユウは心底、胸を撫で下ろした。強力な鎮静剤を打たれた彼女は死んだように眠っていたのでこのまま死んでしまうのでは、と思っていたからだ。彼が安心していると彼女が口を開いた。

 

「今、アナタの映像が私のなかに……」

「え……じゃ、じゃあ今、僕が見たのはアリサの過去……?」

「……そうなると、今のはユウの過去……」

 

 どうやらこの二人の間で記憶の交換、いわゆる”感応現象”が起きたらしい。これをサカキ博士が知ったら大騒ぎだろうな、と彼は不謹慎にも思うのだった。

 二人が不思議そうに互いを見つめていると病室の扉が開き、オオグルマ医師が入ってきた。

 

「さて、メディカルチェックの時間だ……ッ!!?」

「オオグルマ先生、どうなされたんですか?」

「し、失礼する!!」

 

 オオグルマ医師は慌てた様子で携帯端末を取り出しながら廊下へと戻っていった。二人はまたしても不思議そうに見つめ合った。すると突然、彼女は何かに気づいたように片手を自分の顔の前にもってくる。そして、その手をまじまじと見つめ、急に頬を紅潮させていった。例えるならばボンッという音とともに湯気が立ち昇るほどだ。

 

「どうしたの? アリサ」

「……私の手、握りましたよね……?」

「あ、うん、まぁそうだけど……いけなかったかな?」

「い、いえ別にかまいません……」

 

 彼女は顔を真っ赤にしたままそっぽを向いた。彼はそんな彼女が可笑しくてつい笑ってしまった。しかし、彼は急に真剣な表情になり、こちらに背中を向けている彼女に声をかける。

 

「アリサ……よければ教えてくれないかな? 君の過去を、あの時何があったのかを」

「…………」

 

 彼女はさっきの真っ赤な顔はどこにいったのか、真剣な表情になると彼のほうを向き直った。そして、何かを決心したかのように口をゆっくりと開いた。

 

「私は幼い頃に両親を少し困らせようとして近くの廃工場に隠れたんです。もういいかい、まーだだよって。でも急にアラガミだ! アラガミが来たぞ! って声に変わって私の両親は……」

「…………」

 

 先程、ユウが見た映像の男女は彼女の両親だったようだ。そして、映像は自分視点だったから気づかなかったが、あの視点はアリサのものだったようだ。

 彼女は弱々しい口調で話を続ける。

 

「それからオオグルマ先生に拾われて、アラガミのことを沢山学びました。親の仇を取るためにも。でもあの時、私の中の仇が……リンドウさんに変わって……」

 

 彼女はそのつぶらな瞳から大粒の涙をぽろりぽろりと零し、ベッドにシミをつくっていく。嗚咽(おえつ)をもらし、今まで誰にも見せなかった泣き顔を隠すように両手で顔を塞ぎこみ、泣き崩れた。ユウはいたたまれない気持ちになり、気づいた時にはもう彼女を抱きしめていた。

 

「有難う……話してくれて。君は何も悪くないさ……悪いのはこの世界なんだよ……」

「ユ……ウ……そんなの……反則ですよ……」

「ん? 何か言った?」

「いえ、なんでもありません……」

 

 アリサはまたしても紅潮した顔を隠すようにして、自分を抱きしめている彼の背中に両腕をまわした。そして、ゆっくりと力を込め、自分のほうへ抱き寄せた。

 

「ちょ……アリサ!?」

「もう少し……このままでいさせてください……」

 

 彼女は真っ赤に火照った顔を隠すように彼の胸に顔を埋めた。彼女の体温は急上昇し、先程まで弱々しかった青白い肌も日焼けしたかのように真っ赤だ。そして彼女は心密かに思う。

 

 この時が永遠であればいいな、今も、そしてこれからも……

 

 

 

 

 

 




ホント……やる時間ナッシングここに極まれり……ハァ、久しぶり過ぎる……

待っていただいていた読者様! 心よりお詫び申し上げますとともにこれからもこの作品と呼べぬ作品をよろしくお願いしたい次第でございますッ!
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