「ぐぼはぁぁぁッ!!!」
「変態ッ! 最低ッ! ドン引きですッ!!!」
ユウは口から血を吐きながら地面へ突っ伏した。血は雪の降り積もった地面に赤く広がった。ここ『鎮魂の廃寺院』は常に雪の降る場所だ。もちろん、彼の倒れた地面にも雪が積もっている。そんな彼はというと、共にミッションに来ていたアリサに顔面に回し蹴りをもらったところだった。何故、そんなことが? それは数時間前に遡る。
★☆★
アリサとユウの二人は彼女の戦闘のカンを取り戻すため、鎮魂の廃寺院に来ていた。今回の標的は『コンゴウ堕天種』。極地適応型のコンゴウだ。通称・青コンゴウである。
「ぬわぁぁあああ!! 寒ッ! 寒すぎるッ!!」
「うるさいですよ、ユウ。まぁ確かに走ってると顔に雪が当たりますね」
「クッ……ロシア出身、卑怯なり……」
「どうとでも言ってください」
二人は標的である青コンゴウ捜索のために走っていた。ユウはいつもの服装にコートとマフラー、手袋までしているというのに走っているおかげ顔に冷たい突風が当たり、絶叫している。一方、アリサというと、普段の服装に手袋とマフラーのみである。コートなどは着ていない。彼女曰く、ロシアに比べれば温かい、だそうだ。
「くっそぅ。その格好、いつも思うけど寒いでしょ!?」
「いえ、別に。動きやすくていいですよ」
「いや、見てるこっちが何かと危ないから……」
「…………?」
どうやら彼女自身に自覚はないようだが、周りからすると彼女の服装は男の煩悩をくすぐるものだ。そのふくよかな胸の半分は見えてしまっているし、柔らかそうな太股に、ミニスカが故にグッとくるものがある。そんな彼女と仲良くしているユウはアナグラの男性局員から羨ましがられている。
「うぅ~~寒い寒い……ん? 敵、発見ッ!!」
「豹変した!?」
ユウは前方に青コンゴウを発見すると、走っている勢いはそのままに、突っ込んでいった。しかし、耳が良いコンゴウ種は彼の足音を察知すると彼のほうに振り返り、雄たけびを上げた。その時にはもう、彼は敵の懐だった。
「フンッ!!!」
「ギャオォォオオオオ!!!」
彼には明らかな手ごたえがあった。なにせ、振りかぶった神機は敵の腹を一閃し、煙を上げている。さらに、敵は悲鳴を上げているからだった。しかし、青コンゴウは腕を振り、煙を払うとユウを睨んで、まるで笑ったかのように唸った。
「グルルルゥ……」
「嘘でしょ……ユウでも切れてない……!?」
「コンゴウのくせして硬いなぁ~」
青コンゴウの腹には軽いかすり傷がついただけで、とても切れたとは言えなかった。ユウは一度、大きく後退し、近くにあった建物の壁を蹴り、神機を真正面に構えて突進した。切れなければ、貫くのみと言った表情で彼は敵に肉薄する。
「うぉりゃぁぁあああ!!!」
「グギャォォオオオオ!!」
ユウの突きはまたしても敵の腹に直撃した。しかし、伝わってくるのは硬い手ごたえで、全く貫けた気がしない。彼は敵の腹に剣を突きたてたまま、剣の峰に手を添える。これは返ってくる振動を抑えるためだ。
「これで……どうだッ!!」
彼は手元にある引き金を思い切り引いた。次の瞬間、神機の銃形態の銃口のみが突出し、凄まじい爆煙をあげた。同時に圧縮された弾丸が青コンゴウの腹に直撃した。流石にこれには耐え切れなかったようで、悲痛の叫びを上げながら、腹を腕でおさえた。この砲撃は『インパルス・エッジ』と呼ばれている。
「ユウ!! 下がってください!!」
「アリサッ!? ……なるほど」
アリサは彼が下がったのを確認すると敵の、インパルス・エッジによって傷つけられた箇所に標準を定め、引き金を引いた。直後、大量の弾丸が敵の腹を襲う。青コンゴウは成す術なく、両手を挙げたまま、腹を無防備にしている。
「ユウッ!! 今ですッ!!」
「了解ッ!!!」
ユウは敵に向かって走り出した。流石に敵も彼の動きを予測し、両腕で腹を隠した。しかし、彼は青コンゴウの手前で高く跳躍し、敵の背後を取った。敵は驚いたように、腹から腕を外し、後ろを向こうとした……その瞬間だった。
「腕……離しましたね?」
「ギャオゥ?」
青コンゴウの目の前にはアリサがいた。どうやらユウの後に、少し遅れて走ったようだ。そして、彼女は軽く跳躍し、空中で身体を縦回転させ、剣形態にしていた神機を振りかぶった。その一撃は敵の腹を深く抉り、青コンゴウを絶命させるに至った。一方、彼女が最後の一撃をかました時、青コンゴウを挟んで向かい側にいたユウはとある光景を見た。それはアリサが縦回転をした時だった。
「黒……だと……」
彼はその後、鼻血を吹き出して倒れたそうだ。
★☆★
アリサとユウの二人は任務を終え、まだ現地で迎えのヘリを待っていた。二人、黙って立っているとアリサが急に口を開いた。
「あの……ユウ……」
「ん? 何、アリサ?」
「私に付き合ってくれて、有難うございます……迷惑、ですよね……ホント」
「いいや、全然、迷惑じゃないよ。僕はアリサといて、楽しいから」
「……でも、私は迷惑をかけっぱなしで……あの日だって……」
「あの時は、アリサが天井を撃ってくれてなきゃ、リンドウさんが死んでたところだったよ」
「それでリンドウさんは行方不明になって……他の部隊の皆さんが必死になって探してるんですよね……ホント、迷惑かけっぱなしです……」
少し、俯いている彼女の表情は、綺麗な銀髪で隠れて読み取ることは出来なかった。でも彼にはわかった。彼女が泣いていることが。全ては自分の責任だと思い、何もかもを一人で背負っている感じがした。彼にはそんな彼女がひどくいたたましく思えた。だから、彼は彼女を慰めるべく、ゆっくりと近づき、抱きしめたのだろう。
「…………え?」
「ごめん、いきなり。でも、謝るのはアリサの方だよ。何もかも自分の責任、だなんて思って、僕やコウタ、サクヤさん、ソーマを含めた皆に心配かけたんだからさ」
「そう……ですよね。本当にごめんなさい……心配ばっかかけてしまって……」
「うんうん、よしよし」
彼はまるで子供を扱うかのように彼女の頭を優しく撫でた。そのせいか、彼女の顔を真っ赤に染まり、体温まで上がってきている。彼はそれでも頭を撫で続ける。
「そうだ。僕もアリサに謝らなきゃ」
「え? どうしてですか?」
「さっき、アリサの下着、見ちゃったんだよねー。いやー、まさか、黒とはねー」
「…………」
アリサは俯いて黙り込むと彼から離れた。そして、少し距離をとり、足を後ろに引いて構える。
「いやーそれに、やっぱりアリサって胸おおk……ぐぼはぁぁぁッ!!!」
「変態ッ! 最低ッ! ドン引きですッ!!!」
色々と台無し……と思うかもしれませんがそれがぼっちめがねズムッ!!
はい、ただ単にシリアスを書くのが苦手なだけです……