ユウ×アリは正義であるッ!   作:ぼっちめがね

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恋人

 ずっと冷たかった。私の心。

 ずっと空いたままだった。心の穴。

 

 ほんのイタズラのつもりだった。親を困らせてやろうと思っただけだったのに、私は幼くして両親を亡くした。そして、フェンリルに拾われた。

 フェンリルなんて私を戦いの道具程度にしか思っていない。でも、私にはそれで良かったのかもしれない。だって両親の仇をとれるのだから。

 それ以来、私は人のぬくもりなど感じぬままに生きてきた。彼が現れるまでは。

 

 最初は間の抜けた、頼りなくて、私よりも格下の実力しか持たない人間だと思っていた。でも、それは違った。彼は気さくなだけで、頼れて、私なんて足元にも及ばないほどの実力者だった。

 彼と過ごす時間は今までで一番、心が満たされている気がしていた。

 忘れていた人の温もり、空いた穴を埋められる満たされた時間。

 

 彼が私の前に現れた日から何もかもが違って見えた。そして、いつの間にか彼を好きになっている自分がいた。好きになった理由なんて自分でもよくわからない。でも、きっと彼の優しさが私に安心感をくれた。それが理由だと思う。

 なんてことない理由で好きになって、気持ちを言い出せない毎日が辛かった。胸が、心臓が締め付けられているようだった。

 

 私は我慢できなくなった。そう、彼に思いの内を話したのだ。

 彼は驚愕しながらも私の気持ちに真正面から向き合ってくれた。そして、晴れて私達は恋人になれた。あの時がどれだけ嬉しかったなんて、とてもじゃないけれど言葉では言い表せない。ただ一つ言えるとすればこのまま死んでも良いとさえ思った。

 

 そして……そんな彼は、今……

 

 

 

 

「いい加減に……折れてください……ッ!!」

「ぐっ……そうは……いきませんよ……ッ!!」

「はぁ~~……」

 

 注射器を持ったヤエさんと激闘を繰り広げていた。

 アナグラ唯一の敏腕看護婦、ヤエは右手に注射器を持ち、ベッドに横たわるユウに詰め寄っていた。しかし、彼は打たれまいとして彼女の腕を掴み、全力の抵抗を見せている。そんな注射器に怖気づく自分の愛しい恋人を見て、アリサは深いため息をついた。

 

「ユウ……あなた、いくつですか。いい加減、大人しくしてくださいよ」

「これはっ……これだけは……無理……ッ!!」

「ユウさんっ……あなた、本当なら数十本打たなきゃいけないんですよ……ッ!!」

「マジでッ!!?」

 

 ヤエの一言に驚愕したユウは抵抗の力を一瞬、弱めてしまい、全力の押し合いをしていたヤエはそのまま前倒しになり、彼の胸元に吸い込まれるようにして倒れた。

 

「うおっ! 大丈夫ですか……?」

「あ、危なかった~……」

 

 ユウの胸元に倒れこんだヤエはまるで彼に抱きついているかのようだった。

 目を合わせた二人は背筋に何やら冷たいものを感じた。例えるなら、そう、背筋をトカゲがスルスルと這っていくような感覚。これは明らかに殺意を感じたからだ。

 二人はゆっくりと前を向く。

 

「「え、え~っと……アリサ……さん……?」」

「……へぇ~、まさか付き合って一週間も経たない内に浮気されるなんて……思いもしませんでしたねッ!!」

 

 アリサは無理やりヤエから注射器を奪うと、ユウの入院服を巻き上げ、腕を露出させる。そして、彼の筋肉質な腕に思いっきり注射器を突きつけた。

 

「ぎ……ぎぃやぁぁぁぁああああああ!!!!!」

 

 アナグラに初めて、ユウの悲鳴が響き渡った瞬間である。

 

 

 

     ★☆★

 

 

 

「全く……信じられませんよ」

「ち、違うって! あれはアクシデントであって、故意じゃない……」

「そうですか、そうですか。……じゃあ」

 

 アリサはベッドに横たわるユウにまたがり、彼の顔に自分の顔を近づけていく。そして、若干、下を向いて軽く頭頂部を前に突き出す。まるで何かを催促するように。

 

「……んっ」

「はい?」

「……んっ!」

「え~っと……?」

「……んっ!!!」

「……どうしろ「頭撫でてくださいってことですよッ!!」 あ、ハイ……」

 

 ユウは言われた通りにアリサの頭を優しく撫でる。銀色の美しい髪が彼の指の間をすり抜けていく。撫でた感触としては猫を撫でているような感じで、とてもリラックスできる。気づけば彼は夢中で彼女の頭を撫でていた。一方、彼女は自分の行動にやっと理性が追いついたのか、顔を真っ赤にしている。

 

「あ、あの……もう、いいですよ……?」

「……へ? ああ、わかった」

 

 あまりにもリラックスし過ぎたのか、ユウは上の空状態だった。

 しばらくの沈黙。今のやり取りのせいかお互い声を出しづらい。そもそも何て声をかけたらいいのかさえわからない。二人は顔を伏せたまま黙りこくっていた。そんな時、救世主が現れた。

 

「ラブラブなところ、ちょっといいかしら?」

「サクヤさんッ!?」

「……僕ら見られてたのかな…………?」

「ふふっ、どうかしらね。ちょっとアリサ借りてくわよ~」

「へ? あ、あのどこへ……?」

 

 アリサは悪さをした猫のように首根っこを掴まれ、引きずられながら病室を出て行った。

 

 

 

     ★☆★

 

 

 

 アリサがサクヤに連れてこられたのは外部居住区を守る、アラガミ防壁の上だった。

 

「あ、あの……話って何ですか?」

「う~ん、それもいいけど、その前に私に訊きたいことは無いかしら?」

「……えっと……」

 

 正直、アリサは今のことで悩んでいた。自分に恋愛経験などないし、ユウに対してどう接していいのかわからなかった。そこで、大人の女性たるサクヤに相談しようと思ったのだが、勇気が出せず、ベテラン区画の廊下をうろうろしていた。

 それをサクヤ自身が見ていて気づいたようだった。

 

「サクヤさん……恋人って何ですか……?」

「難しい質問ね。……そうね、恋人っていうのはお互いを許しあえる関係だと思うわ」

「……許す」

「そ。例え、相手がどれだけ悲しい人生を送ってきたとしてもそれを受け入れて、その上で愛しいとさえ思う……それが恋人同士の許すってことかしら。だから私はまだ、許せてないってことよね……」

「どういうことです……?」

「リンドウがいなくなったことを受け入れられてないってことよ……」

 

 サクヤは少し俯き、暗い表情を見せる。アリサはそんな彼女を見て、声をかけるべきか逡巡する。愛する人を失った者の悲しみなど到底、自分がわかるものではなかった。

 未だ、アリサが逡巡しているとサクヤは急に顔を上げた。

 

「今回呼び出したのは少なからずリンドウに関係あるわ……」

「リンドウさんに……?」

「そう。あなた、『アーク計画』って知ってるかしら?」

 




え~、まず言うべきことは更新遅れて申し訳ありませんでした!!
もうホント、書かなきゃ書かなきゃとは思っていたのですが、話のネタが思いつかずにズルズルと……
本当に申し訳ありませんでした……

それから、注射器は素人が打ってはいけません。
良い子も悪い子も戦闘狂もアラガミも真似しちゃダメだぞ!

ユ「……戦闘狂って僕のことかな~?(怒」

あ、ヤッベ……
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