『アーク計画』を知ったのはディアウス・ピター戦の時だった。荒廃した教会の中ほどにぐったりと横たわるピターの遺体を捕食してみると、黒き獣の体内から出てきたのは赤々とした腕輪だった。サクヤがそれを見つけるなり、他の全員が全てを悟った。その腕輪が誰のものであるかなど。
サクヤは腕輪を強く、自分の胸に押し当てながら悲痛な叫びを上げた。
「いや……そんなこと……リンドウゥゥウウウ!!」
彼女の痛々しい絶叫は止むことなく、ずっと……ずっと響き続けていた。彼女の目からこぼれ落ちる涙をソーマでさえ見ることはできなかった。
★☆★
アナグラへと帰還した第一部隊はユウを医務室へ運ぶ間にひっそりとリンドウの腕輪と思わしきそれをサクヤの部屋へ持ち込んでいた。
サクヤは自室のターミナルに腕輪をセットし、しばらくの時間をかけてから腕輪のセキュリティを解除した。彼女はまず、自分の目を疑ったのだが、それはどうしようもない現実だった。
「やっぱりこれって……」
中身を見て確信した。それはまごうことなき、リンドウの腕輪だったのだから。いくらなんでも残酷だった。その現実は彼女にリンドウの死を教えたようなものなのだ。
サクヤは膝に精一杯の力を込め、泣き崩れるのをどうにかしてふんばってみせた。何故なら、確かめねばならないことがあったからだ。それは、あの時、何故新種のアラガミが突如として現れたのかだった。あまりにも不自然だった。彼女は疑心を持ちながら、腕輪内のメモリー解析へと移った。
ターミナルで何か調べ物をした場合、その検索履歴が腕輪内の記憶媒体にインプットされる仕組みになっている。つまり、腕輪を調べれば、リンドウが何に関わっていたのかがわかるということだ。
「全く、あの人ってば……こんなものばっかりじゃない」
リンドウの腕輪に残されていた検索履歴はどれもアダルトサイトへのアクセス履歴ばかりだった。メモリーにさえリンドウの面影を感じ、サクヤは思わず、ふっと笑ってしまった。しかし、履歴を深追いしていく内に例のワードが目に入った。
「アーク……計画……?」
計画の名は『アーク計画』。大まかな内容としてはこうだ。
アラガミが食い合いの末に生まれたノヴァに特異点を埋め込み、ノヴァの眠りを覚ます。これが第一段階。次に各国の人類にとっての主要人物を宇宙船に乗せ、地球外へと逃避。これが第二段階。そして、最終段階。ノヴァによって引き起こされる終末捕食によって、地球ごと全地上のアラガミを消し去る。そして、地球外へと逃避した人物たちによって新たな世界を築き上げるというものだった。
「そんな……じゃあリンドウはこれを知ったために……? こんな計画馬鹿げているわ。地球に取り残された人類はどうなるのよ、私たちはなんのために戦ってきたというの?」
気づいた頃には彼女は走り出していた。窓から外を見れば、そろそろ日が落ちそうだ。当てもなく走り続けた結果、たどり着いたのは医務室だった。中を見れば、何やらバカップルが惚気ている。しかし、そんなこと気にしていられる場合ではない。計画が実行される前に止めるには、誰かしらの協力が必要不可欠なのだ。
未だ戦闘に出れる状態ではないユウに頼むよりも、今からでも動けるアリサに頼んだほうが手っ取り早いと彼女は考えた。
「ちょっとアリサ借りてくわよ〜」
「へ? あ、あのどこへ……?」
そしてその後、夕陽の差し掛かった屋上でサクヤは事の一部始終をアリサに話した。もちろん、彼女が素直に協力をしてくれるとは到底思っていなかったのだが
「……わかりました。今回、リンドウさんをあんな目に遭わせたのは私です。その責任、身をもって償います」
「そう、ありがとう。アリサ」
二人の当面の目的は特異点の捜索だった。特異点がなければノヴァが目覚めることはない、ましてや終末捕食が起こることも決してない。
二人は話し終えると何事もなかったかのように屋上を後にした。
★☆★
アリサはサクヤから聞いた計画について少しばかり考えごとをしていたのだが、自分の恋人に感慨にふけっている顔を見せるわけにもいかないので、彼女はすぐさま、いつもの表情に戻した。
「やぁアリサ、おかえり。何だったの、話って?」
「いえ、他愛のない世間話ですよ」
「ほんとに〜?なんか怪しいな〜」
ユウは悪戯を考える少年のような顔でアリサの動きを目で追っていた。彼女はユウに近づきつつ、このまま彼の横たわるベッドに腰掛けた。
「ユウは他人のこと気にしてる場合じゃないんですよ? 早くその怪我治してくださいよ。じゃないと……抱きつけない……じゃないですか……モゴモゴ」
「え? 最後のほうよく聞き取れなかったんだけど、何か言った?」
「い、いえ、なんでもありませんよ。早く良くなってくださいね」
「優しいアリサもいいなぁ〜」
「んなっ!?」
アリサはベッドの上にあった枕を持ち、ユウの顔に思い切り押し付けた。その後も他愛のない、絡み合いが続き、いつしか面会時間終了になっていた。
アリサもヤエもいなくなった病室にはサクヤが来るまでは無かったはずの松葉杖が転がり、暗闇の中、ユウは独り言のように呟いた。
「アーク計画……ね」
はい!! え〜皆さん、どうぞこの醜いぼっちめがねを殴っていただいてもかまいません。というか殴ってください、顔を重点的に。
二ヶ月にも及ぶ未更新。皆様には多大なる御心配と迷惑(心配も迷惑もされてないだろうけども)をおかけしまして、誠に申し訳ありませんでした。
やることがあれやこれやと増えていき、新生活が始まったせいで疲労はピークに達し、ぶっ倒れる日々が続いておりました。
さて、現状報告はこれくらいにして、最近の後書きではほんと、謝ってばかりですね、私。まぁそれだけ私が不真面目という表れなのですけども!!
今回の最後はなんだか意味深な感じで終わらせて見ましたけども、この作品は原作に全く沿っていませんので、ご了承ください。
さて、最後になりましたが、これからも暇を縫っては書いていきたいと思いますので、どうか応援、よろしくお願いします!!