今回の話はアリサがユウと対面した後、挨拶回りに行っているところです。
「よう、お前さんが新しく入ったっていう新型だな」
「はい。アリサ・イリーニチナ・アミエーラです」
アリサは嫌な煙草の匂いが漂う部屋で一人の二十代後半と思われる男と話していた。彼女の前でソファに腰掛け、配給ビールを呷る男の名は『雨宮リンドウ』。フェンリル極東支部第一部隊隊長である。彼は焦げ茶のジャケットに灰色のカーゴパンツという出で立ちでアリサと自己紹介を交わしていた。
アリサが律儀に頭を下げて挨拶……などするはずもなく、ただ仁王立ちで名乗っただけだった。
「俺は第一部隊隊長、雨宮リンドウだ。お互い固っ苦しいのはなしで仲良くしようぜ」
「いえ、あなたと仲良くしても特に意味はないので控えさせていただきます」
「おーおー随分と強気なんだな」
「新型と旧型の違いです。旧型は旧型らしく働いていただければそれで構いません」
「そうかいそうかい。じゃあ旧型とは仲良くできそうにないなら新入りと仲良くしてやってくれ」
「新入り……?」
リンドウは「おっと……」と失言を言ったように短い声を上げた。彼の言う新入りとは誰なのか、アリサにはわからないのも無理はない。リンドウが勝手に呼んでいるだけなのだから。そう、新入りこと神薙ユウのことを。
「ユウのことだ。あいつも新型だからな仲良くしろよ~」
「……あんな人のことをどうでもいい呼ばわりする人となんか……」
「ほお、ユウがそんなこと言うのは珍しいな」
リンドウは長い前髪で左目を隠しているので右目しかアリサには見えないが、その目は大きく見開かれ、あからさまに驚愕の意を表していた。
リンドウはアリサを一瞥し、ビールを呷る。何かを確信したようで口元で納得の声を小さく上げている。彼女の耳にもその声が届いたようでアリサはリンドウに問いただす。
「なんですか?」
「いいや、お前さん、成績はトップクラスって聞いてたが実戦経験はないみたいだな」
「……なんでわかるんですか?」
アリサは実戦という言葉を聞き、急にユウのことを思い出す。彼はアリサよりも先に戦場に出て戦っている。故にアリサはユウを憎たらしく思っていた。そんなことを思い出してしまい、彼女はリンドウを鋭い眼光で睨みつける。
「いや……あきらかに戦いづらそうな服装だしな。帽子なんか戦っている最中に飛ぶだろ」
「んなっ!!?」
アリサはリンドウに指摘され、頭に被った帽子を抑え付ける。まるで爆風で飛んでしまわないようにするかのように。
「べ、別にいいじゃないですか!! そ、それでは失礼します!!」
アリサは目の前の隊長格に反論し、そのまま部屋を出て行った。
☆★☆
「あなたが新人さんね。私はサクヤよ。よろしくね」
「はい。よろしくお願いします」
第一部隊副隊長『橘サクヤ』は柔らかな微笑を浮かべ、アリサに挨拶を交わす。彼女は黒髪を切りそろえた髪型に、アリサに負けず劣らずの露出の高い服を着ている。そんな彼女を見て、アリサは不覚にも美人だと思ってしまった。しかし、それも無理は無い。一見、リンドウと同年代の年頃だというのにとても若々しく、妖艶な雰囲気を纏っているからだ。それにとても良い香りがする。
「どうしたの? 私の顔に何かついているかしら?」
「あ、いえ。綺麗な方だなと思ったものですから」
「そう、有難う♪」
サクヤは優しく微笑み、アリサと楽しそうに会話をする。アリサも彼女ならば意気投合できるかもしれないと思っていた。妖艶かつ柔らかな微笑みで話しかけてくる彼女はアリサにとって憧れの存在となりうえた。そう、彼が現れなければ。
突如、サクヤの部屋の扉が開き、外から誰かが入ってきた。
「よう、サクヤ。ビール残ってるか? あったらくれ」
「ないわよっ! それより、こないだ貸した2000fc、早く返してくれるかしら!!?」
「あ、いや……それは……だな」
「何に使ったの!? 言ってみなさい!! 言わなきゃぶち抜くわよっ!!?」
外から入ってきたのはリンドウだった。彼はビールを貰いに来たのだろうが、彼自身が来ただけでサクヤの逆鱗に触れたようだった。おかげで今となっては、サクヤはリンドウの胸倉を掴み、彼の顔の前で怒号を飛ばしている。
アリサは何か面倒なことになりそうだったので、そそくさとその場を後にした。
「だからあなたって人はいっつも……ねぇ!? アリサもそう思うわよね!? ってあら、どこ行ったのかしら?」
「サクヤ、死んじ……まう……離せ……ブクブク」
☆★☆
「……ソーマ・シックザールだ……」
「アリサ・イリーニチナ・アミエーラです……」
沈黙。ただひたすらに沈黙だけが部屋を制している。第一部隊強襲隊長『ソーマ・シックザール』は褐色の肌に映える白髪を揺らし、何やらターミナルで作業をしている。おそらくミッションの報告書だろう。
アリサは無言な彼にどう接していいのかわからず、ただその場に立ち尽くしていた。彼女が何を話していいのか迷っているとソーマは作業を終え、アリサの方を向く。
「ようこそ、クソッタレな職場へ。お前は何のためにここへ来た?」
「はぁ?……そ、それはアラガミを駆逐するためですが?」
「そうか……期待はしないぞ、ルーキー」
その会話を最後に部屋は完全な沈黙へと堕ちていった。
☆★☆
「やあ、俺は藤木コウタ。アリサちゃんだっけ? よろしく」
「はい。その前にその呼び方はやめてください。寒気がします。ドン引きです」
「なっ!!? そこまで言う……」
オレンジのバンダナを巻き、同色のハーフパンツを履いた新米神機使い『藤木コウタ』は胸を押さえ、もがくような芝居をしてみせた。それに対し、アリサは冷ややかな目線を彼に送る。コウタはそれに気づいたようで彼女に軽く謝りながら会話を続ける。
「俺と同じ時期に入ったのに新型かぁ。スゲェ……」
「あなたは旧型でしたね。せいぜい私の邪魔にならないようにしてください」
「……あはは、わかってるって」
コウタは一瞬、心に冷たい棘が刺さったようで、暗い顔を見せた。その後は明るい顔に戻り、アリサに質問責めをする。しかし、彼女はそれを華麗にスルーしていき、最後に「では、失礼します」の一言だけを残し、部屋を出て行こうとした。その時だった。廊下へ出た瞬間に彼女を衝撃が襲う。
「きゃあ!!」
「うわっ!? ゴメン、大丈夫?」
その衝撃の強さにアリサは床に倒れてしまった。彼女はぶつかってきた相手に不注意であることを謝罪すべく、顔を上げた。そして、そこにいたのは彼女に手を差し伸べる、宿敵、神薙ユウだった。アリサはその顔を見た瞬間に顔が沸騰したように赤くなり、闘志を煮えたぎらす。
「あなたの助けなんて要りませんっ!」
「ん? アリサだったのか。あ、そうだ次、僕たち一緒のミッションだね」
「なっ……!!?」
ユウの一言にアリサは更に闘志の火を強め、彼をキッと睨みつける。
「そうですか……じゃあどれだけアラガミを倒せるか勝負ですッ!!」
「えぇ!? なんで今の状況からそうなるの!!?」
神薙ユウとアリサ・イリーニチナ・アミエーラの出会いは本当に最悪だった。
ユウの性格、その他キャラの性格がおかしかったらそれは……
仕様です
と、いうのは冗談で、作者のミスなのでご指摘お願いします。次回からはコンゴウ戦の後の話に戻します。
ではでは皆さんダ ズヴィダーニャ~♪