入って来る。
「あっ」
自分の
「あっ あっ」
それは記憶であり記録、ラファエラの思い出が頭に入って来る。
「あっあっ あ」
ーー右目に刺さった杭を伝って。
「あっ、あ、あ、ああああああああああああッ!!」
ローズマリーが絶叫した。
大事な何かが押しのけられている感覚。それは自分が消えようとしている感覚。
右目に……いや、全身に刺さった杭が、ローズマリーを侵食し、彼女を
「あがあ、ああ、ああああああああッ!!」
散り散りになる意識、存在を上書きされる恐怖。ローズマリーがガムシャラに暴れ、それにより深く杭が身体に刺さっていく。思考能力が低下し、杭を抜くという発想にすら辿り着けない。
ローズマリーはただ意味もなく暴れ回り、周囲の全てを壊していった。
「……ふむ」
そんなローズマリーの様子を見て、巨人が小さく呟いた。
どんな覚醒者よりも大きな天を衝く巨躯に、悪魔のような捩れた四本の角、羽毛のない骨肉で作られた飛べない翼を持ちーーそして、その腹部は大きく膨れ、中央には目を閉じた獣の顔が存在した。
全体で見ると、子を孕んだ女性像に見える巨人。それこそがラファエラの覚醒体、深淵を超える者の姿だった。
「……………」
「あ…が、かかか…」
暫くの間、ラファエラが真剣な目でローズマリーを観察する。杭が刺さってから十分、ローズマリーの暴走は既に止まり、絶叫は途切れ、今では譫言のように意味のない音を口から漏らすだけとなっていた。
「…………」
しかし、そんな有様ではあるが、まだ、侵食は終わっていない。
「あ…あ……」
多数の杭に刺されながらも、未だにローズマリーの身体は必死に、ラファエラの支配を拒み続けていた。
「……良く粘るな」
そんなローズマリーをラファエラが称賛する。このままでは、侵食しきる前に杭が力を失う。それくらいの頑張りようだ。
「…………」
まあ、逆に言えば、ローズマリーの頑張りはその程度の成果しか出せていないという事だ。
はっきり言って、そんなものは焼け石に水。杭の替えはいくらでもあるのだ。ただラファエラは逃げる力を失ったローズマリーが限界を迎えるまで侵食を続ければ良いのだから。
「…………」
ラファエラがピンと伸ばした人差し指をローズマリー向ける。すると次の瞬間、その爪が伸び、ローズマリーを大地に縫い止めた。
「……が、あが、が、が」
昆虫の標本のような状態のローズマリーが、ビクンっと、大きく跳ねる。意識しての行動ではない、ただ、攻撃に対し肉体が条件反射を起こしているだけ。
今、彼女は朦朧としており、意識して身体を動かせる状況にない。
「…………」
ラファエラはローズマリーを少し検分した後、刺した爪に妖力を込める。すると水を与えられた植物のように、爪がローズマリーに根を生やしていき、彼女を侵食する。している事は杭と同じ、ただし、本体が直前行っている分、効力は断片である杭より遥かに高い。
その為、侵食は一気に進む。
「………あ、ぎゃぁあああぁああッ!?」
すると、再びローズマリーの絶叫が周囲に響いた。どこにそんな力が残っていたのか? ラファエラの爪を砕かんばかりにローズマリーが暴れる出す。
彼女の身体は本能的に分かっているのだ、絶対に逃げねばならないと、ここで逃げられねば自分が終わってしまうと。
「がぁあああッ!!」
ローズマリーが手足を地面に叩きつけ、無理やり身を捻り、胴体を抉って爪から逃れようとする。
しかし、それを叶えてやるほど、ラファエラは優しくない。
「…………」
ラファエラが無言で、ローズマリーの四肢を粉砕した。
ローズマリーの四肢が即座に再生される。だが、再生した四肢をまたラファエラが粉砕した。
再生、粉砕、再生、粉砕、再生、粉砕、再生、粉砕、再生、粉砕、再生、粉砕、再生、粉砕、再生、粉砕、再生、粉砕、再生、粉砕、再生、粉砕、再生、粉砕、再生、粉砕、再生、粉砕、再生、粉砕、再生、粉砕、再生、粉砕、再生、粉砕、再生、粉砕、再生、粉砕、再生、粉砕、再生、粉砕、再生、粉砕、再生、粉砕。
「…………」
抵抗する虫の足を捥ぐように、繰り返し繰り返しラファエラはローズマリーの四肢を壊していく。
復元しては打砕き。新たに生えては引っこ抜く。そんないたちごっこをラファエラとローズマリーは何度となく続け。
そして、それが百を幾つか超え、ローズマリーが手足が歪に生え始めた、その時。
「……もう、眠れ」
遂に、ラファエラの侵食が、ローズマリーの抵抗を押し切った。
今、振り返って考えれば、正直、その時は事の重大さを理解していなかった。
「ーーーー」
自分が何をしているのか、自分が何をされているのか、それを考える余裕は残っていなかった。そう、その時はただただ怖かった。
自分が消えていく感覚、押しつぶされる感触、それが加速したのが堪らなく怖かったのだ。
それまでは寄せては返す波のように一時的に記憶の一部が押し流されても、すぐに自分に返って来た。
しかし、暫くすると、それが返って来なくなった。
それはまるで、落ちる砂時計のように、ひっくり返さない限り戻って来ないような気がした、それは良く覚えている。
そして、それを自覚した時、目の前に本当に砂時計が出現したのだ。
いや、今思えばあれは追い詰められた私が、妄想で作り出した幻覚だったのだろう。
しかし、その時は手に取れる本物と錯覚した。落ちる砂時計の砂が、自分の記憶だと気付く、根拠もなく理解した。
「…………」
砂粒は残り少ない。その時には既に、自分が誰か分からなくなっていた。いや、自分は
だが、残った記憶の切れ端が必死に、私はラファエラなんかじゃない! と否定する。だからこそ、なんとかしなけばと思った。それは良く覚えている。
故に、私は砂時計に手を伸ばした。
落ちた砂を戻すのなんて簡単だ、ただ
砂時計を持ち上げた瞬間、それまで以上の恐怖が押し寄せて来る。その理由が分からない。自分が消される以上に怖い事なんてある筈ないのに。
そう、その時は私は考え、恐怖を振り切り、一気に上下の向きを入れ替えた。
ーーそれが、自分の死より恐れていた事とは気付かずに。
それはいきなりの事だった。
「………ッ?」
ローズマリーを侵食していた爪が、負荷に耐えかねたように砕け散る。何が起こったのか、ラファエラがすぐに察知、一旦、後方に飛び退いた。
「…………」
下がったラファエラが、倒れたローズマリーを観察する。その目はここに来て初めて警戒の色が浮かんでいる。
しかし、そんな視線を受けながらローズマリーは寝起きのように、まだ眠っていたいと言わんばかりのゆっくりした動きで立ち上がる。その仕草から危機感は感じない。
そして、ローズマリーはとろんとした目を何度か瞬きさせると、ラファエラに視線を “向けず” やや虚ろな目で、自身の身体を見下した。
「…………」
ローズマリーが見た自分の身体は配色は大きく変わっていた。
白過ぎて不健康そうなだった皮膚は、血色の良い温かみのある肌色に、同じく不気味だった銀眼はありふれた黒眼へ変化。
そして、色素の抜けた銀髪は、その名の通り、ローズマリーの花のような、どこか紫掛かった黒髪へと回帰する。
一糸纏わにその身体は美しく、そして
「…………」
ローズマリーは髪を引っ張り、その視界に入れる。
「…….ああ、確かに、子供の頃はこんな髪に肌だったな」
ローズマリーは懐かしそうに呟く、しかし、その顔は非常に暗く沈んでいた。
ーー分かるのだ。
戻ったのは見てくれだけで、その肉の内側は今まで以上に人間から離れたものに成り果てていると。それを本能的に理解していたのだ。
「……はぁ」
溜息を漏らし、ローズマリーが目を瞑る。思い浮かべるのは人、戦士、そして、覚醒者の顔……そして、その優先順位。
「………だよね」
諦めたような、どこか諦めきれないような呟きをローズマリーが漏らす。
ーーどうやら、順位が変動しているらしい。
「はは、本当に……本当にやってくれましたね」
そう囁き、ローズマリーは悲し気に笑うと。
「ねぇ……ラファエラさん」
目線を上げて、ラファエラに声を掛けた。
「……もう、良いのか?」
話し掛けられたラファエラが、ローズマリーにそう返す。それにローズマリーが頷いた。彼女の目は既に完全に醒めていた。
「ええ、お待たせしました」
「そうか、覚醒に伴う混乱は落ち着いたようだな」
そんな事を言って来るラファエラにローズマリーが頷くと。
「落ち着いた? ええ、そうですね、落ち着きましたよ」
そう言って静かにラファエラを見つめた。
「…………」
「…………」
そうすると、会話が途切れ、言い知れぬ緊張感が、周囲を支配した。
しかし、その沈黙は長くは続かない、いくら黙ろうと問題はないが、双方とも長々と時間を掛けるつもりはないからだ。
「その様子では、支配は完全に失敗か」
沈黙を破り、先に口を開いたのはラファエラだ。彼女はローズマリーを観察し、自身の支配が機能していない事を確認すると、僅かに表情を曇らせた。
「支配……さっきの杭の侵食の話ですか?」
「ああ、それだ。お前の意識を砕き、自分の操り人形にするつもりだった」
「はは、随分とエゲツない、ラファエラさんは私を仲間にしたいと言っていませんでしたか?」
「その通りだ、しかし、途中で人形にした方が楽だと気が付いてな、予定を変更した」
「……その内容の変化は私からすればたまったものじゃないんですが?」
「失敗したんだ、別に良いだろう」
そう告げるラファエラに、ローズマリーが呆れ顔となる。
「いや、それは結果論でしょう……まあ、良いですけど、それで、なんで覚醒してすぐに攻撃しなかったんですか? 大チャンスでしたよ」
ローズマリーが微妙に納得いかなそう顔で聞いてくる。その姿には出会った当初はなかった余裕が見受けられる。それにやはりか、とラファエラは内心溜息を漏らした。
「支配にしろ仲間にしろ、私の目的はお前に力を貸してもらう事だからな、当然、お前と交渉する為だ」
「交渉? 今からですか?」
「……そうなるな」
「それはまた、都合が良い考えですね」
「自覚はある。だが、復讐の為に手段を選ぶつもりはない」
「はは、なるほど、ではもう一度、ストレートに言ったらどうです? 私の仲間になれと」
「…………」
「聞かないんですか? 拒否権はないんでしょう?」
そう言ってローズマリーは微笑む……膨大な妖気と共に強い殺気を放ちながら。
いつの間にか、彼女は革鎧の様なものを装備していた。
「……それがお前の覚醒体か?」
迸る強大な妖気と殺意。それを受けながらラファエラがローズマリーに問う。その質問にローズマリーは笑みを深めた。
「さて、どうなんでしょう、覚醒したてで分かりませんね。それよりも早く聞いて下さい、私に仲間になれと」
「……質問するまでもないだろう?」
その、殺気を見れば一目瞭然だ。
「だとしても、聞いて欲しいものですね」
「……戦う気か?」
「私がしてもらいたい質問はそれではありません」
「お前は強い、その妖気を見ただけで分かる、きっとお前はルシエラ姉さんよりも強いだろう」
「……聞いていますか?」
「だが、多分、私の方がお前よりも強い、それでも……それでも」
ーー戦う気か?
そう、ラファエラが告げようとした瞬間、ローズマリーが消えた。
遅れて、炸裂音が周囲に響き、その頃にはローズマリーはラファエラの懐に潜り込んでいた。
「余計な話が長い」
大きく引かれた右腕が音の壁を打ち抜き、ラファエラの腹部、そこにあるルシエラの顔に着弾。
直後、もはや衝撃波と化した大音響と共にラファエラの巨躯が殴り飛ばされた。
「ッ……!?」
苦悶と驚き、そして怒りがラファエラの顔に浮かぶ。
苦悶と驚きは予想を遥かに上回る威力、そして、怒りは腹を、ルシエラの顔を殴られたからだ。
ラファエラが地に足を突き立て、体勢を立て直すと、鋭い視線をローズマリーに向ける。それにローズマリーは不敵な笑みを返し。
「さあ、聞いて下さい、仲間にならないのかと」
などと、ほざいてくる。それにラファエラがキレた。
ラファエラが右手をローズマリーに向ける、その掌に数十の突起が生まれ、それが杭となり高速で射出される。
しかし、その刹那、またもローズマリーが消えた。
いや、今度は辛うじて見える。しかし、対応が間に合わない。
ーー轟音。
再び、ラファエラの胴体に拳が減り込んだ。
「………ッ」
恐ろしく重い衝撃。踏ん張る両足が地を削る。ラファエラは森に巨大な爪痕を刻みながら後退、同時に彼女は翼でもってローズマリーに反撃した。
唸る大翼が巨剣となって接近する。攻撃直後で未だ宙にいるローズマリー。翼を持たぬ彼女にこれは躱せない。
故にローズマリーは巨剣に対し、右拳を突き上げた。
拳と巨剣が真正面から激突、直後、右手と翼が砕け散り、発生した衝撃に天地が鳴動、斜め下と斜め上、双方が逆方向弾かれた。
「……なるほど、そういう絡繰りか」
吹き飛びながら、冷静さを取り戻したラファエラが納得の呟きを漏らす。何を納得したかというとローズマリーの速力と攻撃力の理由だ。
ローズマリーが踏み込んだ時、その足裏から何かが射出され、地に突き立った。それがローズマリーを加速させのだ。そして、激突の直前、ラファエラは見た、彼女の拳が超高速で巨大化するのを。
ラファエラが巨躯に見合わぬ俊敏な動きで、くるりとバク宙、吹き飛ぶ勢いを回転運動で相殺し、着地、ローズマリーが激突した地面を睨む。
「……それが、お前の能力か」
「能力なんて大袈裟な、あなたのソレに比べればなんて事ないものですよ、身体を作り変えるなんて覚醒者なら誰でも出来る事でしょう?」
ーー私はただそれを他よりも早く行えるだけ、そう言いながら、ローズマリーが土煙が舞う着弾地点から姿を見せた。
「……それよりも早く聞いて下さい。仲間にならないかと」
「……まだ言うか、何故そんなに聞かれたい?」
「仲間になりたいからかも知れませんよ?」
「……嘘だろう?」
「まあ、そうですね」
ラファエラの言葉をあっさりローズマリーは認める。
「覚醒前にも聞いていたでしょう、私の仲間になれと、その時の心境と今の心境、感じ方の違いを知りたいんですよ、私が覚醒前と覚醒後でどう変わったか知る為に」
「……それは無駄な行為だぞ?」
「ええ、そうですね、しかし、それでも聞いて欲しい」
その眼は真剣であり、どこか縋るような色も伺えた。
「…………」
ラファエラは暫しの間、黙る。それと同時に、侵食中、万が一にもローズマリーを逃さぬように、周囲に配置していたルシエラのコピー体。その操作に回していた意識を本体に戻し、集中力を高めた。
それによりラファエラ知覚速度が大幅に上昇する。これでローズマリーを見失うなんて無様は晒さない。戦いの準備は整ったのだ。
「……では聞こう」
万全となったラファエラがローズマリーの真っ直ぐ見つめる。
ーーそして。
「私の仲間になれ、ローズマリー」
真剣な目でローズマリーを仲間に誘った。
「ーーーー」
「………ああ、やっぱり」
誘いを受けたローズマリーが悲しそうに目を伏せる。
「もう、私は戦士ではないんですね……この誘いを少し、嬉しく思ってしまいましたよ」
そう、言って泣き笑いを浮かべたローズマリー。そして、彼女は。
「しかし、お断りします」
ラファエラの誘いを断った。
瞬間、彼女の身体が変化する。
少女から大人へとなるように緩やかにその四肢が伸び、肌色だった革鎧は黒く暗くく、染まっていき、その厚みを増すと騎士甲冑へと姿を変えた。
「…………」
数秒後、ローズマリーが立っていた地点に、黒鎧を纏ったが戦乙女が現れた。
その大きさは人間体の倍もない、ラファエラの二十分の一以下、そんな小さな覚醒体だった。
しかし、それが纏う妖気はラファエラにすら並びかねない。
深淵を超える者、その三体目の誕生、それがローズマリーが完全覚醒した結果だった。
「…………」
ローズマリーが変化を終えた瞬間、ラファエラが全身から杭を発射した。何も、ラファエラはただ黙ってローズマリーが覚醒体になるのを待った訳ではない、変身の隙にどんな速度でも避けれない攻撃を用意したのだ。
数千あるいは万に届く巨大杭の豪雨がローズマリーに迫る。一人に対象を絞ったそれはどんなに動きが疾くとも避ける術は隙間的にない。
そんな豪雨を前に、ローズマリーは左腕を伸ばした。すると魔法のように、ローズマリーの全身を覆う黒いタワーシールドが出現、杭の嵐を受け止めた。
大地を穿つ杭の豪雨が轟音を響かせ盾を撃つ、立て続けに放たれる強力な射出に盾がヒビ割れ、砕けていく、しかし、盾は決して全壊しない、破損する度に、新品同様に再生する。
攻撃力が足りないのだ。
「…………」
ならばと、足が止まったローズマリーにラファエラは巨大な右手を振り下ろす。
ローズマリーの頭上に巨大な影、まるで天が落ちて来た様な錯覚する大きさとそれに見合う威力を持った攻撃だ。しかし、ローズマリーはこれを、この展開を待っていた。
右腕が振り下される直前、ローズマリーが地を蹴った、同時に足の一部を変形させ、杭として射出、それを地に突き立てることで通常ではあり得ない推進力を得ると、超高速で飛び出した。
巨腕を傘代わりに、弾幕の薄まった地点をローズマリーが盾を構え駆け抜ける。その速度は先程よりも尚疾く、瞬く間もなくラファエラの股を抜け、背後に着地。同時に再び地を蹴りの砕き、跳躍、その背に強烈極まる飛び蹴りを叩き込んだ。
「グぅ……ッ!」
ボコン、と、ラファエラの背中がクレーターのように陥没、蹴りの威力で、大きな放物線を描き、ラファエラが吹き飛んだ。
そして、ラファエラの背には未だに、ローズマリーが居る。蹴りと同時に足裏に巨大なスパイクを作り、それを突き刺す事でラファエラに張り付いたのだ。
ローズマリーが立つラファエラの身体から多数の突起が生まれ、それが槍となりローズマリーに襲い掛かる。
しかし、多数の槍に突き刺されながらローズマリーは小揺るぎもしない。ローズマリーの鎧は硬く、また、多少破損しても盾同様、一瞬で再生してしまう。
「……前言を撤回する」
背に作り出してたルシエラのコピー、その視界でローズマリーを捉えたラファエラが呟く。コピーの視界に映るローズマリー、彼女が掲げる両腕はいつの間にか、身の丈の数倍の黒い大剣へと変貌していた。
ーー防御も回避も間に合わない。
「どうやら、勝つのはお前の方らしい」
自身の敗北を認めたラファエラ。
彼女が縦に割れたのは、次の瞬間だった。
やったね、ローズマリー、ようやく準最強タグが活かせるよ!(白目)