天稟のローズマリー   作:ビニール紐

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何故だろう。二日で八割は書けたのに、残り二割に二週間以上掛かってしまった。
……一体、どうなってるんだ?(言い訳)


第41話

──ミスった。

 

天高く、それこそ大陸のいかなる山よりも高く宙を舞いながら、テレサは先の失敗について悔やんだ。

 

あの初撃の右、あれが誘いだったのだ。接触の刹那、ダフルは右より先に左を……正確には左に持った大剣を動かした。

 

攻撃ではない、順手から逆手に持ち替え己の半身を頑強な刀身で防御したのだ。これにより当初狙っていた首を断つ攻撃コースが潰されてしまった。

 

ここで半瞬、更に最初の出遅れでもう半瞬、テレサは行動が遅れ先制を許してしまう。そして、繰り出された辛うじてカウンターが取れそうな右に反応、その作られた小さな隙に反射的に食いついつき、致命傷にならぬ腹を狙わされてしまったのだ。

 

そう、全部計算尽くだった。最初から肉を切らせるつもりだったのだ。ダフルは上下に身体を分断されたくらいでは死なない。それは十年以上前、最初に戦った時、ダフルが生き残った事から確実だ。

 

だからダフルは己を両断させる代償にテレサの上半身を粉砕しようとしていたのだ。

 

「ぐ………」

 

左腕が痛む。そこは真赤な林檎のように鬱血し、見るも無残に変形していた。

 

それは直前でダフルの狙いに気づき、攻撃ではなく防御に回した結果。先にダフルの攻撃が当たったのは途中、テレサが大剣から片手を離したからだ。そうしなければ今頃はダフルを両断した代償にテレサは粉微塵にされていた。

 

「ッッ…………」

 

ダメージ確認の為、テレサが腕に力を入れる。しかし腕は痛むだけでピクリとも動かない。時間を掛ければ治りそうだが、すぐに再生するのは難しい。

 

テレサが思考していると不意に真下から強い羽ばたきの音がした。下方に視線をやればダフルが翼のように髪を編み、こちらに飛翔している。ヤバイ、そう思った次の瞬間、ダブルが獲物を狙う猛禽類のように襲い掛かって来た。

 

ぐるっとテレサの背後を取ると大剣を一閃。テレサは背に大剣を背負うように動かしこれを防御。衝撃で乱回転するもなんとか防ぐ。

 

──だが、残念ながら攻撃はこれでは終わりではない。

 

大翼を羽ばたかせ空中で自由自在に動き、ダブルはテレサの死角から死角へ移動。高速で飛び回りながら黒槍を連打して来た。

 

テレサは大剣で黒槍を弾く。しかし反動でその都度体勢を崩され、どんどん不利な状況に追いやられる。

 

「…………ちっ」

 

空中戦で翼の有無は絶対的な戦力差である。テレサならば空気を叩き、方向転換や多少の移動くらいは出来る。しかし、そんなもの、この相手には気休めにしかならない。

 

テレサは例え空中でも、翼を持ったそれなりに強い覚醒者くらいなら普通に倒せる自信があった。

 

だが、相手はダフル、それなりに強いなんてレベルではなく、極限に強い覚醒者だ。地上戦でも苦戦は必至、事実地上でしてやられたからこそテレサは今、空に居る。

 

そんな難敵に翼を使われてはどう考えても空で勝ち目などなかった。

 

ダフルが優雅に翼を羽ばたかせ、大きく旋回……そこから一気に加速し、フェイントでテレサを惑わせながら黒髪を操り攻撃して来る。

地がない事を生かした上下左右から全方位攻撃。突き斬り打つ、変幻自在の黒髪が次々とテレサを襲う。

 

「……ちっ」

 

大剣を縦横無尽に走らせ苛烈な攻めを捌くテレサ。だが斬撃防御を抜け、一本、二本と黒槍が服と鎧を裂いていく。早くも完全には防ぎ切れなくなってきた。

 

「くっ……」

 

避け損なった黒槍がテレサの皮膚に赤い線を刻んでいく。このままでは殺されのは時間の問題だった。

 

地へと引かれ、身体はグングンと加速し落下している。

しかし、地上まではまだまだ遠い。おそらく後、一分少々掛かるだろう。この調子では地に足が着く前に骸だ。

 

(……まだ、集中力が足りない、もっと集中しろ)

 

テレサは冷静になるように己に言い聞かせる。焦っても状況が悪化するだけ、ここは落ち着く事が肝心だ。

 

「…………」

 

意識を研ぎ澄まし、攻撃を防ぎながらどうすれば現状を打開出来るか思考。答えは直ぐに出た。

 

(……今求めるべきは更なる身体能力じゃない。多少、身体能力が増した所で翼がなければ意味はない)

 

そう、必要なのは運動能力ではなく、相手の行動を読み解く洞察力。より小さく、より正確に、より素早く、限界まで無駄を省き回避する為の道筋を作り出す先読みだ。それが出来ねば嬲り殺しにされる。

 

(意図を読め、狙いを悟れ、次は何処に移動する? 何処から攻撃が来る?)

 

移動方向、体勢、発射直前の微動、そして視線の動き……それら全てを視界に収め、即座に予測を立てるとテレサは先読みを実行に移した。

 

一度目はまるでダメだった。フェイクに引っかかり左腕を抉られる。

 

二度目も失敗。予測を出すのが遅過ぎて、捌き切れず肩に小さな傷を負う。

 

三度目は成功。傷を負う事なく黒槍を回避。しかしまだ次の回避に繋げる動きで弾けない。

 

──そして、四度目、テレサの読みは完璧だった。

 

「ハッ……!」

 

先読みした攻撃を迎撃、意図した方向に弾き、その反動で乱れていた自身の体勢を修正、続いて来た槍を更に上手く弾き、連撃にさらされながら、しっかりとした余裕のある迎撃姿勢を作り出していく。

 

ダフルが攻撃の手を強める。数を増した黒髪が蛇のようにうねり、巧みにテレサの裏を突こうと、タイミングをずらしながら殺到する。

 

──しかし、それでも当たらない。

 

「…………ッ」

 

少なくない衝撃をダフルは受けた。足場がないのに、翼を持たないのに、高速飛翔から放たれる全ての黒槍が弾かれ、捌かれ、躱されるのだから。驚かない筈がない。黒曜石のような顔が小さく引き攣った。

 

だからだろう、ダフルはリズムを変えるべく黒槍に混ぜて鉄柱を発射する。

 

それがいけなかった。

 

「……フッ」

 

待っていたと言わんばかりにテレサは鉄柱を蹴り飛ばした。

 

「──ッッ!?」

 

一秒先のダフルを位置を正確には予測。超高速で蹴り返された鉄柱が直撃コースでダフルに迫る。彼女は咄嗟にこれを迎撃、ノーダメージで済ます。

 

だが、その結果、攻撃の手を緩めてしまう。その隙に突き、テレサは鉄柱を蹴った反動で加速、ダフルの追尾を引き剥がすと、圧倒的不利な空中から脱し地面に降り立った。

 

「……ふぅ、ヤバかった」

 

息を吐くと、テレサが地上からダフルを見上げる。細められた金眼、その鋭い眼光にダフルは自分の行動全てが筒抜けなのでは? という気分になってくる。

 

だが、ダブルはすぐに首を振って余計な思考を追い出すと心を落ち着かせよう自分に言い聞かせる。

 

「…………まあ、これくらいはするよね、あなたなら」

 

羽ばたきにより宙で静止しながら、僅かに動揺した心を鎮める。むしろこの程度は出来て当然だ。そう、考えやや甘くなっていたテレサの脅威度の認識を上方修正する。

 

ダフルは緩やかに円を描くように滑空、しばらく、自らの姿を追うテレサの様子を観察すると翼を解き、少し離れた地面に着地。再び二人は相対した。

 

「…………」

 

「…………」

 

眼光が激突する。やはり両者共に動かないのか?──いや、違った。静止するテレサに対しダフルは僅かずつだが動いている。

 

ジリジリとすり足で距離を縮める。先ほどとは全く対応が違う。そんなダフルの動きをテレサの金眼が余す事なく射抜いていた。そこで不意にダフルが口を開いた。

 

「…………なるほど、そういう事か」

 

──なにがだ?

 

そう、テレサが問おうとした瞬間ダフルが飛び出した。

 

覚醒体になる前と同じ意表を突いた動き。だが、それはもう経験している。テレサは即座にダフルの目線と筋の微細な初動から彼女の動きを先読みしようとした。

 

「ッッ!?」

 

しかし、テレサが先読みを完成させる直前、テレサの死角からダフルの黒髪が動き、彼女の全身を外套のようにすっぽり覆った。これでは視覚に頼った先読みは難しい。早くも先読みのタネが割れたらしい。

 

先読みの失敗に伴い行動が遅れる。外套の下から発射口の見えない数本の鉄柱が飛来。全て避けたが僅かに体勢が崩された。そこで黒髪の外套が跳ね上がり、中から横薙ぎの銀光が現れる。

 

轟然と振るわれる大剣。テレサは瞬時に妖気を五割解放、袈裟斬りの一閃で迎撃する。

 

大剣が噛み合い、盛大に大地を揺らす。重い衝撃がテレサを右手を伝い、その身を後方へと弾いた。五割解放でも右手一本では打ち負ける。

 

踏ん張った足が地を削り、二本の線を大地に引く。ダフルの追撃。彼女は再び黒髪の外套を纏いテレサの予測を阻害する動きを見せた。

 

しかし、そう何度も同じ手は食わない。

 

「セイッ!」

 

テレサは “外套を纏う” という動きを先読みしていた。あえて踏ん張りを弱くして後方に滑らせていた身体を瞬間停止。全力で地を蹴ると外套を纏うというロスで動きが遅れたダフルに大剣を突き出した。

 

「ッッぐっ」

 

真っ直ぐと顔の中心を目指す切っ先。ダフルは頬を裂かれながらも放たれた刺突を躱す。

 

「……がっは、ぁあっ!?」

 

しかし、突きの動きに連動させ間髪入れずに放たれた飛び膝蹴り、これを避けるのは流石に無理だった

 

膝の直撃で鼻が潰れ顔面が跳ね上がる。突進から一転。後方に弾け飛ぶダフル。トドメを刺さんと追い討ちにテレサが走る。

 

しかし、ダフルも簡単にはやられない。髪の半分をテレサの牽制に放ち時間を稼ぐと、もう半分を足の代わりに地に突き立て急制動。

 

体勢を整え、移動方向を変更し足止めでタイミングのズレたテレサの攻撃を躱す。そのまま滑るように側面へと移動、左腕に頑丈な鉄柱を生み出すと苛烈な攻撃を加え出した。

 

予測を覆すには短期集中、予測の間に合わないほど速く、多数の攻撃を叩き込む。

 

超高速で走る大剣と鉄柱、不意に死角から飛び出る黒槍。この乱撃にテレサも応じ己が大剣を走らせる。

 

「「………ッ!」」

 

数瞬の衝突。秒に満たぬ間に攻防は数十合に及び、五つ数える頃には千を超えた。そのまま二人は思考と身体を加速させ互いの命を奪わんと激しく己の武器を振る。二人は全くの互角に見えた。

 

──だが、その拮抗も長くは続かない。

 

「ぐ……くっ」

 

剣撃に押されテレサが退がる。開いた距離を瞬時に埋めダフルが激しくテレサを攻め立てた。乱れ飛ぶ剣閃の数は止まる事なく増え続ける。

 

(……このままじゃ負ける)

 

テレサは調子付くダフルを強力な一閃で弾き飛ばし、僅かに間合いを離す冷静に戦況を見つめる。今はほぼ互角だ。しかし、これはダフルの初動を見切って全ての行動に先んじているからに過ぎない。

 

先の対応、呟きから先読みのタネは既に割れている。だからダフルは読まれる事を承知で対処不可能な数の攻撃を用意しているのだ。

 

それどころかダフル自身もテレサと同じ先読みをし始めている。だからどんどん形勢が不利になる。

 

身体能力を上げ対抗ようにも既に解放率は常時三割、ここぞという場面で六割にほどで使っている。長期戦を想定する戦士にとってこれはギリギリの解放率と言っていい。

 

覚醒者と違い戦士は常に高い解放率を維持は出来ない。そんな事をすればすぐ限界が来てしまう。然りとて七割以上で一気に勝負を決めようにもダフルは強大で短時間で仕留められる気がしない。しかもテレサは妖力解放をしての戦いに慣れていないので下手に七割以上の力を出せばそのまま覚醒してしまう恐れすらあった。

 

(……この(・・)先読みじゃダメだな)

 

初動を読んでからの先読みでは間に合わない。速度で多少優っても手数の多さに押し潰される。もっと早い予測が必要だ。初動が肉の表層に現れた時点で動き読めくらい早い先読みが。

 

テレサは意識的に切っていた妖気感知再開し、先読みをしようとする。しかし、ダフルの荒れる大河の如き妖気がテレサの感知を阻む。やはり、妖気感知の先読みは出来ないのか?

 

(……いや、そんなはずはない)

 

テレサは防戦一方になるのを承知で更に妖気感知に集中力を割く。捌き切れなくなった攻撃がテレサの身体を擦り出す。

 

(意図を読め、狙いを悟れ、体勢、筋肉の微動、視線の動き……そこに次の行動が現れている。それは分かる──ならばその動きが始まる前の微細な妖気の違いを見れば先読み出来るはずだ)

 

「ぐっ」

 

ダフルの攻撃がテレサの左腕を斬り飛ばす。知ったことか、どうせこの戦いでは使えない。痛みに集中力が途切れそうになるのを気合いで抑え、テレサはより深くダフルの妖気を探る。

 

(どんな巨大な妖気でも、底の見えない澱んだ濁流でも、魚が動けは普通の流れとは別の漣が立つ。どんなに小さくても立つ、ならばそれを見つけろ……そこに必ず)

 

ダフルの攻撃が頬を深く削る。鮮血が目に入り視界が潰れる。トドメだ。好機とばかりに笑みを浮かべ、ダフルが大剣を走らせた。

 

(──敵の未来(動き)があるのだから)

 

「……?」

 

しかし、決着を期した斬撃は何故かあっさり回避された。

 

たまたまか? テレサが目を瞑っている事を確認し、至近から多数の鉄柱を発射。それに合わせて気配を消して移動、斜め後ろから斬撃を放つ。

 

だが、これも見えていたように……いや、初めから動きが分かっていたように躱される。攻撃を放つ前に回避行動を終えている。

 

「思い出したよ」

 

そう、テレサが言った。悪寒を感じダフルが下がる。しかしそれより早く動き出していたテレサが絶妙な位置どりで大剣を走らせた。放たれた剣閃が回避行動で生まれた防御の隙をするりと通過し、ダフルの胸を浅く斬る。

 

「……ッ」

 

ダフルは両足だけでなく黒髪も使って地を蹴る。急停止と急加速による緩急によりダフルの姿が何人にも分かれ。

 

──次の瞬間、テレサの斬撃により強制的に一人に戻される。

 

「……ッく」

 

防御に回した左腕にテレサの大剣が食い込む。ダフルが蹴りを放ち、避けたテレサと間合いが離れる。そこでダフルは隠していた罠を発動。移動の際に地に潜らせていた黒髪をテレサの背後から急襲させる。

 

だが、これも既知のように攻撃前に躱される。

 

「久しぶり過ぎて忘れてだが……お前、前回もこうやって負けたよな」

 

テレサが前に出る。妖力解放60%。瞬間七撃の剣閃が放たれた。七つの斬光はその全てが尋常じゃなく疾い。しかしダフルなら決して防御出来ない速度はない……そう、ないのに。

 

「ガ、ハァッ!?」

 

七撃全てがダフルの胴体を削った。防御の動きの裏を突かれたのだ。

 

早くなっている。動きが速くなっているのではない、動き出すタイミングが早くなっている。読みが深まり、一手前の予測から四手、五手前の動きまで先読しているのだ。

 

「ぐっ、ふ」

 

無理は禁物だ。全ての髪を地に叩きつけ、それで得た推進力でテレサを置き去りにするとダフルは一旦、距離を取った。

 

『…………』

 

ダフルとテレサは互いのダメージを確認する。

 

テレサは左腕の肘から先を失い、どれも深くはないが、全身に数十の痛々しい切傷がある。

 

ダフルはたった今の胴に受けた七つの傷以外は再生している。彼女の高い再生能力なら胴の傷も程なくして癒えるだろう。

 

ダメージ的、体力的にはダフルの方が有利だ。無理をせず、現在の傷を癒させないように、遠距離から延々と黒髪と鉄柱で攻撃すればテレサを削り、血を流し続けさせればこのままでテレサを倒す事が出来るかも知れない。

 

──かも知れないのだが、それを試す気にはダフルはなれなかった。

 

「やっぱりか……やっぱり、あなたは強いね」

 

「いきなりなんだ?」

 

ダフルが小さく呟いた。おそらくフェイントではない。何か喋るつもりらしい。傷を癒す時間が欲しいテレサからすればダフルの話は聞く価値がある。なので先を促すようにテレサが質問した。

 

「再確認かな? ……あなたって一度も負けた事ないよね?」

 

「は? なんの話だ?」

 

「なんの話って戦いの話だよ。誰かと本気で戦って負けた事がないよねって聞いたの」

 

「……いや、当たり前だろ」

 

ダフルの言葉にテレサは何いってんだコイツと、不審そうな目で見る。それにダフルが少しだけ悔しそうに言った。

 

「そう、そうなんだよね」

 

「……お前は何が言いたいんだ?」

 

「う〜ん…………あなたの “敗因” かな?」

 

その言葉と同時に、ダフルとテレサの妖気に満たされた空間に三つの異物が進入する。

 

「…………」

 

背後から来た三つの気配に、無言でテレサは身体の向きを変え、ダフルを警戒しつつ乱入者に目を向けた。

 

一体は大型の巨人。人の五倍は有りそうな体躯を持った大型の巨人。その手にはダフルが射出する鉄柱に良く似た、棍が握られている。ダフルの父親と思われる覚醒者。

 

もう一体は二足歩行する獅子、体躯は人の倍もいかない程の小さなもの、鋭い爪を持った高速戦闘が得意そうな覚醒者。

 

そして、最後の一体は巨人型より少しだけ小さな体躯をした、神話に出てくるケンタウロスそっくりな覚醒者。その右手には刺突槍、左手な盾、そんな風に形成された雄々しい騎士のようにも見える。

 

三体が三体、ダフル程ではないが並みの覚醒者ではない。明らかに元ナンバー1かそれに準ずる力を持った戦士が覚醒したものだろう。

 

「…………」

 

例え妖気を抑えていてもこんな奴らが近づけば、かなり遠くからでも普通は分かる。妖気感知が得意なテレサなら尚更に。だが、今回ばかりは状況が悪い。

 

この場はいるダフルと他ならぬ己の妖気が強過ぎて、この距離まで接近に気づけなかったのだ。

 

「……手下はデカブツだけじゃなかったのか」

 

「ふふ、十年来の頼れる仲間だよ」

 

ダフルが胸を張って言った。

 

「……最初、一人で戦ったのは私を釣る為か?」

 

「それもあるけど、私のワガママが大きいかな。私は一人であなたに勝ちたかったんだよ。一時はこのまま押し切れるかな? と思ったけどやっぱり難しいね。悔しいけどあなたは私よりも……うんうん、この大陸の誰よりも強い」

 

「……そいつはどうも」

 

「でも、だからこそ、それがあなた敗因よ。誰よりも強いから、一度も負けた事がないから、どんな状況もどんな相手も一人でなんとか出来る。そう強敵相手にも確信を抱いている……まるで。あなたに負ける前の私と同じようにね」

 

「…………」

 

「だから、自分の窮地を知識として分かっていても、本当にそうなのか実感が得られない。頑張ればなんとかなるんじゃないか? そう、思ってしまう。だって、窮地の実感が得られるのは敗北を知る者だけだから、最強のあなたは特にそれが顕著ね」

 

「…….ふん、負けたら死ぬだろ」

 

「ふふ、そう、その通りね。だからこそあなたは他者との協力という選択を取らせない。あなたは助ける側ではあっても、助けられる側ではないから」

 

「ダフル、それ以上長引くと相手に回復されてしまうよ」

 

ケンタウロス型の覚醒者がダフルに忠告する。

 

「はいはい、イースレイはうるさいなぁ、分かってますよ……まあ、なんにしても」

 

イースレイと呼ばれた覚醒者の言葉にダフルは溜息を吐くと臨戦態勢を取る。同様に背後から来た三体もそれぞれの武器を構えた。

 

「終わりよテレサ。誰よりも強いあなたは誰よりも強いまま一人で死ぬ。それが最強の限界なのよ」

 

 

 

 

 

 

 






最強に仲間と一緒に挑む展開って燃えますよね!(白目
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