久々の作品ですが、どうぞ。
僕の名は郡司。何処にでもいる夢を追い続けている平凡なフリーターだ。
僕が追い続けている夢とは、同人作家になる事だ。
しかし大きな夢を持ちつつも未だに作品は描けず、独学と参考書を見ながら日々学び、そして練習を―――それに新しく見つけたバイトを勤め、貯めた給料を材料費や参考書に換えたりなどと、多忙な毎日を送っている。
でも刺激的で楽しい毎日でもある、あの時に比べれば辛くない。
なぜならば――――――
「郡司、ナポリタン二つ追加だ」
「はい、了解しました」
そう。今は彼女達と共にいるからだ。
一ヶ月前
「……さて、今日は何処に行こうか?」
何時もと変わらない退屈な一日、バイトに就く前は俗に言う《自宅警備員》をしながら、転々と新しい居場所を求める旅人のように、バイト探しをしていた。
かく言う僕も一年前には就いたものの、自分の性に合わず、短期で辞めてしまった。
それでも無力な自分を直すため、一歩前を踏み、少しずつだが卒業した母校の教師達や信頼できる心理カウンセラー、親友に相談しながら、自分の夢に向かって成長、夢を叶えるため前進する日々を繰り返していた。
「今日のところは、これだけ調べれば良いかな? さて慎重に選んで、面接に行こうか」
自身を励まし、次こそは大丈夫と言い聞かせ、手にしたメモ帳を確認すると―――
空腹を知らせる虫の音がした。腹ごしらえでもして強い気持ちを持っていればいいよ、と答えるように。
「そう言えば、今は何時だろう?」
音楽を聴くのを止め、ポケットからスマートフォンを取り出し、時刻を確認。
時刻は、午後一時を過ぎていた。
「もうこんな時間か、早く家に帰ってから昼食に…… っん?」
僕は、ふと店の前に立ち止まった。
「……【もんむす@カフェ】? 新しいできた喫茶店かな? それともメイド喫茶の類かな?
ともあれ、たまには贅沢しても良いかな」
そう納得した僕は興味を抱き、人生初のメイド喫茶に足を踏み入れた。
カラーン、コローン、とベルの音が何とも心地よく響き、店内に入った矢先―――
「「「「いらっしゃいませ、ご主人様~!!!!」」」」
メイド服を着た女の子たちがお出迎えの言葉と共に、笑顔を見せてくれた。
店名のように全員がモンスター娘。上半身は美少女、下半身は蛇や馬、背中には翼が生えた子など様々だが、僕は彼女たちを見て、『可愛い』と思わず呟き、心を奪われてしまった。僕は時々だが、帰りに寄る事にした。
食事はもちろん、彼女達と会話をしたり、時には相談相手になり、それらに通えない日でも店の前を通ると気軽に声を掛けてくれたりと―――退屈な日々を嫌と言うほど味わった自分にとっては久しぶりに味わった時間、幸せな一時でもあった。
―――とある一日
……いつまで経っても受からないとは、不幸だ。
頭を抱えながら悔み続けると伴い、ため息のパレードが始まる。
心の中では、次なら大丈夫、と自信をつけるも、いざ本番を向かえると―――
どうあがいても絶望的な状況に陥り、努力も空しく【不採用】という結果に。
嘆いていても仕方ない、と呟いた僕は少しでも嫌な気分を紛らわすため、先ほど注文していたアールグレイを一口飲む。砂糖もミルクも入っていないそれは、淹れたてだから熱くもあったが、この芳醇な香りは癒してくれる。
ここに通って早くも一ヶ月。僅かな希望を信じ、頑張っているが……
それでも上手くいかないのが現実だ。
再びため息を押さえるため、マグカップに残っていたアールグレイを流し込む。
飲み終えた僕はマグカップを置き、何気なく横にあるポスターを見て、これだ、と思いある決意をした。
【キッチンスタッフ募集中】のポスターを見て―――
これをきっかけに、僕は【自宅警備員】から【フリーター】に昇進したという訳だ。
こうしてこの店で働けることに僕は、大いに感謝している。
だから今まで嫌いだった、いや一度捨てた調理が、もう一度好きになった。
こんなに楽しく思えるようになったのは彼女達のおかげなのか、それとも自身が成長したのかな、と思いつつ作業をこなしていく。
―――夕方
「それじゃ郡司、お疲れ様」
「お疲れ様~」
「お疲れ様です、郡司さん」
三人の挨拶に会釈し、掃除を続けること数分が経つと―――
「郡司、こっちも終わったから一緒に帰ろうぜ」
声を掛けてくれた彼女に、了解、と頷き、掃除道具を片づけ、店内の電気を消灯、僕たちは帰る準備をする。
「……いつもすみません、タツミさんに手伝ってもらって」
「気にすることはないさ、郡司。俺とお前の仲だ。それにこうして郡司と話しながら、一緒に帰るのが何よりも楽しみなんだから」
「……ありがとうございます」
彼女の名はタツミ。僕と同じキッチンスタッフを担当するドラゴン娘である。
僕が入店して間もない頃、的確な指導を丁寧に教え、どんな仕事でもそれをこなすと褒めてくれたり、偶に失敗して落ち込んでいる時や泣いている時でも優しく言葉を掛けては、笑顔で「お前なら大丈夫さ」と元気づけたり―――
僕の将来の夢や趣味であるミリオタ知識を話しても、嫌な顔一つもせず聞いてくれる。
厳しくもあるが、誰よりも僕に気遣い、面倒見が良い彼女は、頼れるお姉さんでもある。
僕も彼女同様、一緒に帰るのが何よりも楽しみだ。
「それじゃ、明日も頑張ろうな! おやすみ郡司」
「おやすみなさい、タツミさん」
二人は別れ際に手を振り、自宅へと帰った。
無事、第一話が終了しました。次はキャラ紹介でもしようかなと思います。
それでは次回まで、ダスビダーニャ(さよならだ)。