ようこそ、もんむす@カフェへ   作:SEALs

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時間がありましたので、続けざまの投稿であります。

それでは、本編であります。

どうぞ!


第二話:いつもの日常、変化

翌日 

開店前。

ケンタウロス娘のソフィアによる朝礼が終え、みんなで肩を組み、円陣を作り、そして彼女の音頭を取って叫ぶ。

 

「今日も一日、乗り切っていきましょう!」

 

「「「えいえいおー!」」」」

 

言い終えた一同は解散、僕は厨房へ移動すると、ポン、と軽く肩を叩かれたことに気付き、振り返る。

 

「今日もタツミちゃんと頑張ってくださいね、郡司さん」

おっとりとした雰囲気の銀髪ロングヘアーのラミア、リリスが声を掛けてくれた。

 

「はい。頑張ります」

 

「もちろん、仕事もだけどタツミちゃんとの関係もね」

 

リリスが微笑みかけると、僕も笑い返す。

 

「スパシーバ(ありがとう)。リリスさん」

 

さて、いざ厨房に出撃しますか、と映画やゲームに登場する兵士が戦場に向かう際のお決まりの台詞を言い放ち、今日の一日が始まる。

 

 

 

時刻は昼までありながらも、店内の席はほぼ満席状態だった。当然だが客が多くなるにつれ、ホールは多忙から戦場と化した一方……こちらもタツミと共闘、死闘を繰り返していた。

 

―――畜生! ここは魔女の婆さんの呪いか!

 

 戦場と化した厨房で、思わず大好きな某小林劇画キャラのように愚痴を零した。これならM4A1アサルトライフルを持ち、忍従して敵兵と交戦した方がマシかな、と思いつつ作業を続けていると……

 

「変な事は考えないでやる。心配するな、俺がいるんだから安心しろ」

 

「……了解」

 

器用にフライパンを振りながら喋る彼女に対し、肯いた。そして次から次へと来るメニューをただひたすらに作りこなし、時間を見ることすら忘れていった。

 

 

 

―――休憩時間あれほど大勢の客で賑わっていた店内は静まり返り、僕たちは休憩時間を取る。

 

いつもなら交代しながら昼食を取るが、今日は珍しく多忙であったため、するほど余裕がなかった。

――なお普段は休憩室で食べるのだが、「たまにはホールで食べよう」と意見が出たので一緒に昼食を取るにした一方―――チ~ン、と僕は力果て、口から魂のようなものが抜け出していた。

 

頭の中が真っ白になる寸前に見えた幻想、草原を見た途端、これが走馬灯なのかと、自分なりに実感していると―――

 

「……郡司。なんか死にかけているが大丈夫か?」

 

心配したタツミが声を掛けてくれた。

 

「何とか大丈夫ですが、どうも食欲が無くて、食べられるとしたらパンぐらいなら……」

 

そう言っていると、彼女がある物をそっと置いた。

 

「ほら、仕事の合間に作ってみたんだ。よかったら食ってくれ」

 

ニッコリと微笑みながら、僕の目の前に置いたのは、ハチミツ独特の甘い香りが漂い、上にはシナモンが少々掛かっているシンプルなフレンチトーストが二枚、それと伴い、カットされたイチゴとバナナ、香りづけにミントが彩りよく盛られていた。また後口をさっぱりさせるための柑橘系の香りが漂う紅茶、アールグレイと共に。

 

「―――ゴクリ」

 

先ほどは疲れ果てた故に、食欲など湧くことすらままならなかった今の僕には……ハチミツとシナモンの香りが堪らなかった。

思わず出てきた生唾を飲みこむと、手渡されたナイフとフォークを手に、それで切り分け、フレンチトーストを口に運ぶ。……これは美味い! 疲れた後に甘いものが最高とは、本当だな。

 

「どうだ? 美味いか?」

 

僕が食べている最中、タツミが横から顔を覗いた。

 

「はい、とても!」

 

「そいつは良かったぜ」

 

僕は素直な感想を述べ、少し照れたのか顔が赤くなってしまった。

 

「郡司。顔が赤いけど熱であるのか?」

 

「えっ、大丈夫ですが」

 

そんなやり取りをしている僕たちを見かねたのか、ソフィアが口を開いた。

 

「もうさ、恋人同士だよねこれ」

 

彼女に続き、ハーピー娘のスーも率直に述べた。

 

「僕もそう思うよ、羨ましいな」

 

「そうですね。お二人とも仲がよろしいものですし」

 

ソフトな口調で、リリスも答えた。

 

「なっ……! 俺は」

 

僕たちを見ていた三人は、からかい始めた。

僕はアールグレイを飲んでいたが―――タツミは彼女たちの会話に加わり、恋人関係を否定しているものの、少し顔を赤面しており照れているせいなのか説得力がない。

 

「だから俺は、郡司とは」

 

「もう二人とも付き合いなよ、さもないとあたしが貰っていくよ?」

 

「そ、それはダメだ」

 

「「「「ガヤガヤ」」」」

 

等々とそれを聞きながら、そろそろ食器を下げますか。と片づけに入る。

 

食べ終えた僕は、まだまだ他愛のない会話をしているタツミ達をあとに、厨房へと戻り、そして休憩時間が終わるまで、僕は音楽を聴いた。

 

本当に、ここに来てからは毎日が楽しくて仕方がない。

 

『幸せ』と言ってもいい。本当の『幸せ』とは、『こういう事』だったのかな。

 

随分と『長い逃走』を繰り返してきましたが、それを見つけてくれたのは皆さんのおかげです。

 

心の中でそう呟き、次の曲を聴くためスマホを操作していると―――

 

「あのさ、郡司……」

 

声を掛けてくれたタツミに、僕は「注文ですか?」と訊いたが、彼女は首を振り、否定した。

 

分からず仕舞いだった僕は、問いかけようとしたら―――

 

「郡司、ちょっと良いかな?」

 

ソフィアが僕たちを呼び、言われるがまま彼女の後に付いていく―――するとスーが姿を晒さないよう、ホールの様子を窺っており、彼女の隣にいたリリスは困った表情を浮かべ、心配していた。

 

「あの、二人ともどうかしたんですか?」

 

僕が尋ねると、スーが答えた。

 

「あ、郡司。それが大変なんだ」

 

「どう大変なのですか?」

 

「僕たちが昼食を終えて、それに入れ替えるようにお客さんが来たんだけど……」

 

彼女の答えに続けるように、リリスが答えた。

 

「……それがあのお客さん、酔っているのか酔っていないのか分かりませんが、来店から早々、郡司さんの名前を呼んでいたのですが、お知り合いですか?」

 

僕は首を傾げた。ここに務めている事は心理カウンセラー、または短大の頃の親友にしか話していない。

前者は一度訪れた事があるから分かるが、後者は卒業後以降、市外にある車の整備学校に通い、免許取得後は整備工場に働いているから平日に来ることはない。

例え来たとしても早くて前夜、遅くて翌日の朝に連絡してくるはずだ―――

 

「ちょっと、見ても良いですか?」

 

その客が気になり、僕は少し顔を晒し様子を見たが、すぐに見るのを止めた。彼を見た瞬間、冷静さを失いそうになるほど、自身の目を疑ってしまった。

 

息が少し荒く、心臓の鼓動が速く、大きく聞こえる。それと伴うかのように額から冷や汗を搔き、顔が真っ青になった。なん………で。なんで、いま、ここに。

 

まるで終わらない夢、再び襲い掛かってきた悪夢を見ているように―――逃げたい。走ってここから逃げ出したい。だが、恐怖で体が動けない。

 

頭の中で、どうしてあの男が。どうして、ここにいるんだ、と木霊する。

 

自分の中に眠っていた、忘れたくても忘れられない思い出……あの頃の思い出、トラウマがよみがえり始めた。




登場人物紹介は、次回の後書きに記入するのであります。

では、第三話までダスヴィダーニャ(さよならだ)。
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