ヴェルフが魔剣を強くするのは間違っているだろうか   作:カブタロウ

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カブタロウです。あらすじ通り、ヴェルフと魔剣が大好きです。
同志がいたら感想欄に一言お願いします。

火月ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい‼︎‼︎


スイマセン………


第1章 鍛治師ヴェルフ
第一話 魔剣を打つ者


  ラキア王国ーー某所ーー

 

  魔剣で一躍有名になった鍛治貴族の鍛治場に黒の着流しを纏い、炎のような髪を短く切り揃えた青年が槌を振るっていた。

 その瞳に映るのは熱によって紅く染まった両刃の剣。

  その青年は一切喋らず一心不乱に槌を紅の刃に打ちつける。

 この金属の加工法を『鍛造』といい、槌などで叩いて圧力を加えることで金属内部の空隙をつぶし、結晶を微細化し、結晶の方向を整えて強度を高めるとともに目的の形状に成形する製造技術である。

  何度か金属同士がぶつかり合うとき特有の高い音が鳴り響いたのがやんだとき、おもむろに首に巻いていた手ぬぐいで滴る汗を拭った。

 手ぬぐいからは吸いこんだ汗が滴り落ちていた。

 

  「そろそろ頃合いか……」

 

  青年は一言つぶやくと紅に染まっていた剣を工具で持ち、あらかじめ溜めておいた水につける。多量の水が蒸発する音と共に大量の煙が立ちのぼった。

 鉄は槌で叩いているだけでは硬く、脆くなっていく。冷やす事によって鉄は粘り強くなっていくのだ。

 煙がやんだ頃に剣を引き上げる。

 煙の中から現れたその剣は元になった金属、インゴットの影響で見る者を吸い込むような透き通る黒色をしていた。

 このままではタダの鉄の棒である。剣を持ち上げその刃に自分の顔を写し、にらむようにして刃を細部まで鑑定する。

 

  数十分経つ。

 おもむろに立ち上がり剣を持って歩き出す。部屋の隅の地下に進む階段を台の上の魔石でできたランプに明かりを灯し、迷わず進む。

 少し歩くと急に視界が開け、そこかしらに焦げ跡、切り裂かれた跡から凍っている跡など、惨事が広がる部屋があった。それらの跡は最近できたであろうものから随分昔のものまであった。

 ランプを側の台におき、そこの中央に立つと打ったばかりの剣を構え、気迫と共にで振るう。

 たちまち爆炎が巻き上がって部屋を赤く染め上げる。その炎は凄まじい勢いで突き進み部屋の壁に激突し、激しく熱と光を発し爆発する。その様は冒険者の長文詠唱による魔法のようで、その壁には熱で紅く染まりもうもうと黒い煙を上げる新たな焦げ跡が残っていた。

 

「まだだ、もっと……もっと……!」

 

 何が不満なのか舌打ちをしたかと思うとピシッと何かが割れるような音が部屋に響く。

 その途端に持っていた剣が音を立てて崩れさる。

 剣を握っていたハンマーダコだらけの右手を睨み付け剣から発生した炎によってできた紅い焦げ跡に一目やるとランプを掴み剣の残骸を踏みつけながら大股に階段を上って元の部屋に戻る。

 そして今の不機嫌な気持ちを体現するかのように荒々しく石製の椅子に腰をおとした。

 

「……クソッ!最近何も進まん。何かが足らん。何かが……。」

 

 怒号と共に先程まで剣を打っていた金床に勢いよく拳を打ち付ける。拳には未だに残る金床からの熱が伝わってきた。

 のちに工房からは光が消えた。

 

 

 ____________________

 

 

 赤髪の青年の名は『ヴェルフ・クロッゾ』。

 先祖が『魔剣』を打ちそれが戦争時に「海を焼き払った」とまで言われたことから有名になった鍛治貴族『クロッゾ』の家系の一人息子である。しかし近年の『クロッゾ』は「魔剣製造」の血が薄くなってきたのか年々代を重ねるごとにつれ魔剣の効果が下がってきて遂には、魔剣を打てる者さえいなくなってしまい今ではすっかり落ちぶれてしまった。

  そんなときだ。ヴェルフが産まれてきたのは。

 ヴェルフは親に鍛治の全てを叩き込まれ、16くらいの年だっただろうか。その才能「魔剣製造」の才を発揮しヴェルフは魔剣を打った。

 いや、打ってしまった。

 たちまち大騒ぎになって親のヴェルフを見る目が変わった。その目はまるで巨大な金塊を見つけたようだった。

 それからの『クロッゾ』は急に鍛治貴族としての地位を上げた。家は豪邸と言えるほど大きくなり、内装も日に日に豪華になっていく。

 しかし、それらの日々はヴェルフにとって地獄だった。鍛治を教えてくれた親が今では口を開けば「魔剣を打て」、自分の工房には連日冒険者や、商人が押し寄せ口を揃えて「魔剣を出せ‼︎」と騒ぎたてる。おかげで一時期ラキア王国建国以来初の社会現象になったほどだ。

 

  ヴェルフは『今の』魔剣が嫌いだった。

 一振りすれば持ち主を残して崩れ去るくせに、伝説の魔剣のような「海を焼き払う」ほどの効果もない。

 自分の求める魔剣は威力があり、なおかつ壊れない魔剣。

 他の魔剣鍛治師が聞けば失笑し、諦めろと諭すだろうがヴェルフは愚かでもそれを実現するするためには何が必要かを考え続けた。色々な書物を読み漁り、ラキアに来た商人の話を聞いたりして考察した結果、やはり必ず必要なのはオラリオで鍛治系ファミリアの眷属になり恩恵《ファルナ》をもらうこと、さらに言えば「鍛治」や「神秘」といった『スキル』を手に入れることという考えに行き着いた。

 自分はオラリオに行きたい。オラリオで夢を叶えたい。

 ありふれた考えだろうが、毎日毎日自分が打った魔剣が壊れていくのを見るたびにその思いは募っていった。ーーーー

 

  初めて魔剣を打ってから3年ほど経ったある日。

  いつもどおり魔剣を打ち、失敗して不機嫌なまま不貞寝した翌日。

 魔石製のレコードから音楽が流れ目が覚めると目に入るのは自分が打った魔剣を売った金で買ったのだろう高価な調度品の数々とヴェルフ自身が打ちあげた無数の武器や防具。

 それらを一瞥するとレコードの音楽を止め、備え付けの洗面台に向かう。高価な修飾が施された蛇口をひねり水を出し手で水を汲んで顔を洗う。掛けてあるタオルで顔を拭き、クローゼットへと向かう。

  クローゼットを開くと色鮮やかな綺麗な服が沢山掛けてあるがその中から迷わず黒の着流しを選ぶ。そばにあった青のスカーフを首に巻き、鏡を見ながら身だしなみを整える。

 朝の身支度が終わった後自室の椅子に腰掛け、レコードを流し最近買ったオラリオの情報誌を読む。

 ここまではいつもと同じだ。

 

  ーー新生ファミリア、極東よりタケミカヅチ・ファミリア発足!ーー

  ーーイシュタル・ファミリア所属。アイシャ・ベルカがLv.2ランクアップ!ーー

  ーーロキ・ファミリア、階層主突破!MVPは「剣姫」‼︎ーー

  ーー今月の注目ファミリアは?ーー

 

  冒険者たちの様々なニュースを見てヴェルフは「冒険者」と「鍛治師」の関係は何であるべきかを考えた。

 

 鍛治師は冒険者の命を守るべく、武具を打つ。

 それを受けとった冒険者はダンジョンから生還し、手に入れた金属を渡す。

 その金属でまた武具を打ちあげる。

 そんなサイクルなんだろう。

 間違っても使い捨ての、すぐ壊れるような剣ではいけない。下手に冒険者を危険にさらす剣を打つなら打たない方がマシだとも思う。

 そんな思考を止め、情報誌に目を落とす。ペラペラと流し読みしていたがふとある1ページで手を止める。

 

  ーー万能者《ペルセウス》 アスフィ・アル・アンドロメダーー

 

 様々な不思議な道具を作り出すLv.2の冒険者。商業系ファミリア、ヘルメス・ファミリア所属の団長である。(ヘルメス・ファミリアは珍しい「中立」ファミリアで有名)まだ一般に公開していない道具もあるらしい。今後の活動に期待であるーーーー

 

 ヴェルフは自分が求めるものはこの人にあると直感した。残念ながら写真はなかったがこの名を覚えておこうと思った。

  そういえば、と顔を上げ壁にかけているこれまた高価な時計を見ると6時31分を指していた。

 

  「朝食の時間だな……」

 

  つぶやくと情報誌を机に置いて立ち上がる。レコードを止め、部屋を出る前に大きな包みを持ちドアを開け、食堂に向かいすっかり長くなった廊下を歩く。しかしその顔は食事に行く顔ではなく、何かを強く決意した顔だった。(カッコよくしているが朝食の時間は6時30分である)

 

 __________________

 

  「3分遅刻だ」

 

  食堂のドアを開けた途端視線が集まったのを感じた。

 ここのほとんどの人はヴェルフのいつもの様子と違うことに気づいたようだが、自分の父親「親父」にあたるヴィル・クロッゾは気づかなかったのか普段通りの注意をする。

 ちなみにヴェルフが朝食の時間通りに来た事はない。ヴェルフは答えずシカトして朝食が並ぶテーブルの椅子に座り、包みを下ろす。

 

  「無視をするな!ったくおまえは時間通りに来ようとはしないのかね。 はぁ、…父上、そろそろ」

 

  ヴィルが父上と呼んだ人物。名をガロン・クロッゾ。ヴェルフの祖父、「爺《ジジイ》」にあたり、クロッゾ家の当主だ。

 ガロンは黙り込んでいるがいつもと違う様子のヴェルフを困惑の表情で見ていたがヴィルの言葉で顔を戻し、

 

  「いただきます」

 

  と手を合わせる。その一言で家族の面々が気がついたように黙々と食事を始める。

 今日の朝食は魚のムニエルにスープにライス、サラダのようだ。

 いつからだろうか。飯は美味くなったのにこんなにも侘しい気持ちになってくるのは。誰もが無言で朝食を食べる姿はとても寒々しい様子に見えた。

 しばらく経って一足早く食べ終えたヴィルがナプキンで口を拭き、ポケットから手帳を取り出し、開くとヴェルフに今日のスケジュールを簡潔に伝える。

 

  「今日までで魔剣の注文が56件ほどきているんだ。今日中に12本ほど作ってくれ。 頼んだぞ。」

 

  命令にも近い予定を聞き、ヴェルフはそれを聞いた途端顔を顰め深くため息を吐く。

 ヴィルは魔剣を「打ってくれ」ではなく「作ってくれ」といった。

 それが剣を愛するヴェルフにとって何よりも腹立だしくしく、苦痛だった。ヴィルは実際ヴェルフの事を魔剣製造機としか思っていないだろう。最早、金のなる木のように捉えらているんだろう。

  怒りのままにヴェルフは朝食を掻き込むと勢いよく立ち上がり、食堂の家族たちの目を集める。その中にはもちろんヴィルの目や、ガロンの目もあった。

 

  「おい、どうしたんだ?ああ、少し多かったか。じゃあ10本ぐらいにーーー」

 

 ヴェルフはヴィルの自分の息子の事を考えない言葉を遮り、自分が今まで考えに考え、実行しようとしていることを口に出す。

 

  「俺は今からこの家を出て行く」

 

 




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