ヴェルフが魔剣を強くするのは間違っているだろうか   作:カブタロウ

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第十ニ話になります。お楽しみください。
ちなみに今回ヴェルフは出ません。ご了承ください。



第十ニ話 テストプレイヤー

ヘルメス・ファミリア主神とファミリア団長はあるファミリアのホームの前に立っていた。

 

「本当にここにするんですか……」

 

「さあ、アスフィ!行こう!」

 

そしてヘルメスはホームの門を守る兵に近寄っていく。

アスフィがそのホームを見上げると大小様々な幾つもの塔が天に向かって伸びている。その塔の間にはところどころそれらを結ぶ空中回廊がかけられていた。

 

「………よしっ!交渉成功!いざ、『黄昏の館』へ!」

 

アスフィを侍らせ大きな門をくぐる。

恐らくここにヴェルフが居たら卒倒して気絶していただろう。

ヘルメスが決めたテストプレイヤーを取り付けるファミリアはオラリオの中で知らない奴はいない、最大派閥のファミリア。

『ロキ・ファミリア』

このファミリアは北欧神話で語られ悪神と呼ばれた『ロキ(終わらせる者)』が創った探索系ファミリアである。団員に『勇者(ブレイバー)』『九魔姫(ナインヘル)』『重傑(エルガレム)』『怒蛇(ヨルムガンド)』『大切断(アマゾン)』『凶狼(ヴァナルガンド)』そして何より『剣姫』といったオラリオ最強の一角、第一級冒険者と呼ばれる者達が勢揃いしておりロキに恨みをかったら最後とも言われる程勢力が強いファミリアだ。(ちなみにロキの趣味で美形が多い)

普通、こんなとこにテストプレイヤーを頼める筈が無いのだがヘルメス曰く、「ロキの趣味を利用すれば出来る」らしい。

ロキはトリックスターやらずる賢い者、狡知の神などとも呼ばれるが基本的に新しいものにガンガン手を出してすぐ飽きるといったミーハーな趣味を持っている。そしてロキは他の神以上に娯楽に飢えている。暇潰しに他の神をそそのかし、争いを起こさせた程。だからこんな面白そうな魔剣に手を出さないことな無いだろうとヘルメスは踏んでいるのだ。

そう上手く行くだろうか、とアスフィは不安に思いつつもまぁ、あの世渡り上手なヘルメス様(悪戯神)ならなんとかするんだろうとよくわからない納得の仕方をして意気揚々と歩くヘルメスに続く。

そしてやけに長い螺旋階段やら壁がガラス張りで恐怖感を煽る空中回廊を渡り、主神の居る部屋にたどり着く。……途中、訳のわからない石像や価値がわからない絵画、中庭にそびえ立つ巨大なロキの像とかがあったがまぁ、あのロキですし…と最早悟りを開いたかのような広い視野を持って納得した。

 

「ロキー、失礼するよ。」

 

揚々とドアを開けるヘルメス。その後ろに付き添うアスフィは若干疲労の色が見え眼鏡と相まって○魂の新○を彷彿とさせる。

部屋の中心にあったのは小柄で赤髪の一柱の背中。

 

「なんのようや、ヘルメス。お前がオラリオに居るのも珍しいのにうちに用事なんてどない事や?」

 

椅子をクルリと反転させて疑うような表情を見せる神。目が細く謎の方便を扱う神。このファミリアの主神『ロキ』だ。

 

「そんなに珍しいか?…まあまあそんなに怪しむなって。ちょっと頼みたい事があるんだよ。」

 

「頼みたい事?」

 

「そうそう、頼み事。」

 

そう言ってアスフィから魔剣を受け取り、ロキに見せる。

 

「こいつのテストプレイヤーを取り付けて欲しいんだよ。」

 

「無理。」

 

即答だった。

 

「まぁそう言わずにちょっとだけお前の眷属に振らせてみたら分かるって。」

 

「ドアホウか、自分。うちのファミリアは良くも悪くも有名なんやで。そんなテストプレイヤーとか言う依頼はぎょーさん来とって困っとんの。しかも聞いた事のない無名な鍛治師の作品なんぞ試す程うち達は暇じゃないんや。」

 

「ちょっとだけ、ちょっとだけでいいから!」

 

「しつこい!」

 

「なあ〜、昔からの付き合いだろう?色々世話したじゃないか」

 

「お前に世話になった覚えはない。」

 

「ロキ〜、硬い事言わないでーーーー」

 

………本当に大丈夫なんだろうか。心配に思っていると、ヘルメス様がこちらを向いてウィンクする。「大丈夫」と言っているつもりなんだろう。…傍観に徹しよう。

 

「帰れ帰れ!しっしっ。」

 

手で払うような動作をして帰りを促すロキ。

 

「なっ?なっ?」

 

手を合わせてペコペコする主神。………恥ずかしい。

すると突然部屋のドアが開く。

 

「どうしたんだい?ロキ。騒がしいよ。」

 

金髪碧眼で小人族(パルゥム)らしき小柄な体躯で端正な容姿。

まさかのロキ・ファミリア団長を務めるかの有名な『勇者(ブレイバー)』フィン・ディムナ登場。

 

「これはこれはヘルメス様。ご無沙汰しております。、と万能者(ペルセウス)は初めまして。団長『フィン・ディムナ』です。」

 

「やあ、フィン君久しぶり。」

 

「あ〜!良いところに来たフィン!こいつ追い払ってくれんか?」

 

「うん?というと?」

 

「こいつが魔剣のテストプレイヤーしろって五月蝿いんや!」

 

すると顎に手を当て考え始めるフィン。

 

「んー……、良いんじゃないかな。」

 

「え!?」

 

まさかの肯定。

 

「今は『遠征』に行ったばかりでファミリアの休養期間だ。そこまで忙しくない。お試し期間という事で一週間程やってみたらどうだい?」

 

「で、でも誰にやらすんや?」

「ファミリアの集会の時にこんな期間でもダンジョンに潜るメンバーに応募すればいい。」

 

「いや、でもな……」

 

「ロキ。こうやって他のファミリアに『借り』を作っておくのも大事な事だよ。」

 

恐らくこれが本命だろう。ヘルメス・ファミリアは商業系ファミリアでありながら珍しい中立ファミリアだ。色々なファミリアと付き合いがありその中で唯一ヘルメス・ファミリアに融通が効くとなれば大きなメリットだろう。………ヘルメス様は微塵にも気にしてないようだが。

「じゃあ、まあ、フィンが言うなら…いいわ。やったる。感謝しいや。」

 

「おー!ありがとう!ロキ!フィン君!」

 

「ありがとうございます。ちなみにこれが魔剣の研究データです。」

 

自分も頭を下げる。

 

「まあ、そう言う事になりましたのでしばらくの間この魔剣をお借りします。」

 

「うん、ヨロシク。」

 

「お願いします。 」

 

「じゃあそろそろ失礼するか。お邪魔したよロキ。さようならー」

 

「ありがとうございました。失礼します。」

 

そう言って部屋を出て行く。

その時ヘルメス様は『笑っていた』。帽子を深く被り目を見せない様にして口元を不敵に歪める。

アスフィはこの笑い方を何度か見た事があった。

自分の思い通りに事が進んだ時だ。

……もしかして私に告げた作戦は嘘?事前にファミリアの休養期間である事を調べていた?全て思い通り?

全く、食えないお方だ……

 

「ハア……」

 

アスフィは今日一番深い溜め息をついた。

 

 

____________________________________________________

 

 

翌日

 

朝のファミリアの集会では団長のスピーチがある。

団長は中庭の壇上に上がり団員を見渡して口を開く。

 

「今日は僕から話がある。みんなそれぞれ思いのまま休養期間を過ごしているだろうが特にダンジョンに潜るメンバーにあるお願いがある。」

 

にわかに全体がざわめきだす。

……まあ一度ざわつくと関係無い話をしてしまうのが人の性でして。

 

「な!?あの団長が俺たちに頼み事だと?」

「何だろうね?」「………(コクッ)」

「なっ!?私が予定さえ無ければ今すぐにでも……しかし約束は……」

 

 

「静粛に!」

 

するとピタっと話し声が止む。フィン・ディムナの成せる技だろう。

一瞬「団長ー!今日もカッコいいです!」と聞こえた気がするが気のせいだ。そうに違い無い。無いったらない。

そしてフィンは後ろから魔剣を出す。

 

「この魔剣のテストプレイヤーをして欲しいんだ。」

 

シンッと空気が静まる。

基本休養中にダンジョンに潜る奴は自由奔放な奴が多くテストプレイヤーを受けてしまうと報酬は出るが実験結果を纏めるなど所謂『デスクワーク』をしなければいけない。つまりダンジョンに潜る時間が減るのだ。だから挙手する奴は殆ど居ない。

 

「うーん、この魔剣は結構『面白い』んだけどな。多分みんなは見た事が無いと思う。」

 

ファミリア内に驚愕が走る。

あの『勇者(ブレイバー)』に見た事がないと言わせる武器だ。少し興味が出た冒険者がちらほらと挙手しようとするが、集会の最前列、ファミリアの幹部が集まる場所からピシッと関節外れるんじゃないかという勢いで手を挙げられる。

その手は細く女性の物だと分かる。

視線を下げると輝く金髪。

『剣姫』アイズ・ヴァレンシュタインが目をキラキラと煌めかせていた。

更にファミリア内に走る戦慄。

な!?あのアイズが!?非公式で『戦姫』とまで呼ばれる戦闘狂(バトルジャンキー)が!?

挙げられかけた思わず止めあんぐりと口を開ける。ファミリアの殆どの団員がそうしている様子を見るのはある意味圧巻だった。

……どこかで「目を輝かせるアイズさんも素敵です……」と千の妖精(サウザンド・エルフ)の声が聞こえた気がするが気のせいだ。気のせいって言ったら気のせいだ。

 

「ん?アイズがやるのか?ちゃんと報告書とか書くかい?」

 

「………(コクッコクッ)」

 

まるでペットを飼う時の親子の会話である。

 

「そうか、ならいい。…テストプレイヤーはアイズに決定だ!スピーチは終わり。解散!!」

 

阿鼻叫喚としていたがフィンの解散の号令にぞろぞろと中庭を去って行く。

そしてフィンはすれ違い様アイズに

 

「後で団長室に来てくれ。」

 

と告げた。

 

 

___________________________________

 

『黄昏の館』ーー団長室ーー

 

その部屋にはアイズ・ヴァレンシュタインとフィン・ディムナの二人だけがいた。

 

「さて、テストプレイヤーの件だけど、…取り敢えず振ってみてくれ。」

 

「ん?この剣、魔剣じゃないの?」

 

アイズは首をコテンと倒してフィンに問う。

基本、魔剣は振る“だけ“で効果を発揮し、どんなに弱い冒険者でも魔法の様な事が出来る剣で貴重であり、且つ回数制限がある。振りすぎると壊れてしまうのだ。

 

「ああ、大丈夫。回数制限はかなり多いらしいから。」

 

アイズは不審に思いながらも魔剣を空中で薙ぐ。

煌めく緋線。

驚愕し目を開く。

 

「これは……?」

 

「ある鍛治師が打った魔剣だ。面白いだろう?」

 

「うん。」

 

「テストプレイヤー、やってくれるね?」

 

「うん、やる。」

 

「よし、ならその魔剣を打った鍛治師の研究データを上げよう。一回見てみるといい。」

 

アイズはそれを受け取り軽く目を通す。

その中で気になった事が一つあった。

【最大限に威力を発揮する魔剣の検証結果】

12階層出現モンスター【インファント・ドラゴン】にこの魔剣を使用した結果、実験体は魔石を残すことなく『消滅』し、ダンジョンに甚大な被害が及んだ。

※大変危険なため、使用者は注意すると共に使用には広い場所を使うことを指定する。ーーーー

……使ってみたい。

 

「ねぇ、フィン。これを打って貰って欲しい。」

 

「なんだい?『最大限に威力を発揮する魔剣』?ふむ、頼んでおこう。」

 

「ありがとう。」

 

「じゃあしっかり試して来て。」

 

「分かった、行って来る。」

 

そしてアイズはダンジョンに向かったのだった。

 

フィンは思う。

この調子なら本格的にテストプレイヤーを受けてもいいかな?

 

ヴェルフが知らぬ間に自体は急変しているのだった。

 

 

 

 




ちょっとしたネタ回かな?楽しんで頂けたら幸いです。
感想、批評お待ちしています。
これからも『ヴェルフが魔剣を強くするのは間違っているだろうか』をよろしくお願いします。

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