ヴェルフが魔剣を強くするのは間違っているだろうか 作:カブタロウ
この度復帰いたしました。
身の回りがひと段落つきましたので投稿です。
お楽しみ下さい。
あのダンジョンの事件から翌日。
ヴェルフはダンジョンの外でも周囲に気を張ることにした。
すると、すぐにそれに気づいた。
視線。
後ろを付けられている。
恐らく三、四人といったところだ。
「…どうするか。」
曲がり角を利用して相手を誘うのはあまり得策ではない。
少なからずともモンスターを殺してきた『冒険者』だ。自分の視界に映らないところは警戒される。
まずは、相手の精神をすり減らすか。
ヴェルフは行動を起こした。
歩いている最中に咄嗟に振り返り、後ろに歩き出す。
「………!」
ヴェルフは視線の感じ方から、自分を警戒する反応を感じる。
そして、『じゃが丸君の屋台に並ぶ』。
「…………」
視線が一度消えたかと思うと、一気に増える。
…少しは動揺を誘えたみたいだな。
尾行は追われるより、追う方が疲れるのだ。
何故なら追われる方は何も考える必要はないが、追う方は追う対象に気付かれぬよう動き、且つ周囲にも気を張らなければいけない。
よってこのちょっとした行動でも相手は最大限警戒しなければいけないのだ。
ヴェルフはこのような行動を繰り返し、相手の精神を削っていった。
少し日が高くなり、昼が近くなったころ。
反撃開始。
まず、曲がり角に身を隠す。
確かにこの行動は警戒される。
しかし、精神を削ってあるから相手は瞬間的な判断力が鈍っている。
そこを突く。
予想通りに相手は曲がり角に近づいている。
しかし、入っては来ない。
ひたすらに待つ。
すると、一つの気配が動き始める。それに触発されたのかぞろぞろと他の気配も近づいてくる。
ギリギリまで近づいてきたところで、ヴェルフは反転し、一気に駆け出した。
…え?逃げられないかって?その心配はない。相手は俺に速攻で尾行がばれている。その時点でLVが低い冒険者であることは明白。更に判断力が鈍っているとあれば、逃げられることはない。
「…!?しまっーー」
「残念だな。」
急な展開に驚いたのか、脚を止めて動かなかった。
即座に三人をつかまえる。
エンブレムを見る限り、『ソーマ・ファミリア』だ。
「に、逃げないと…」
しかし、まだ一人いた。
ヴェルフは足元の石ころを拾い上げる。
「鍛冶で鍛えた器用値をなめんなよ」
投げる。
石ころは寸分たがわず後頭部に吸い込まれ
「ハブッ!」
「確保だな。」
捕まえた四人を路地裏にぶち込む。
そして剣を眉間に突きつけ、脅しをかける。
「さーて、全部話して貰おうか。」
「い、命だけは…お願いしま、す。」
「人様追っておいて随分なめんなよ言いようだな、おい?」
出来るだけ粗暴な言葉遣いを選び、揺さぶる。
『ヒッ、ヒィ……』
「誰から頼まれた?」
「い、言うわけがないだろう…」
このまま甚振ってても恐らく吐かないだろう。
…確かソーマ・ファミリアは金への執着心が異常だとか言う噂を聞いた覚えがある。
金で釣る、か。あんまり好きじゃ無いんだがな。
「吐いたら『魔剣』をくれてやろう。悪くない話だろう?」
「魔、魔剣か!?…おいどうする?」
周りでこそこそと会話を始める。
敵の前で相談とは…金への執着心の噂は本当のようだ。何がそこまで駆り立てているのやら。
ソーマ同士での会話はすぐに結論がでたようだ。
「分かった。分かる限り話そう」
「…そうか。なら、お前らのクライアントは誰だ?」
「ソーマ・ファミリア幹部『ザニス・ルストラ』だ。」
「他にターゲットは?」
「いない。」
「…他に部隊はあるか?」
「……ダンジョンで襲撃する部隊「おい、バカ!何処まで言ってーー」
「黙れ。」
頭を脚で蹴り飛ばす。
「続けろ。」
「……その部隊が二つ。」
「理由は知っているか?」
「…どっかのファミリアからの依頼だとか…」
「何処だ?」
「そ、そこまでは…」
「そうか。なら魔剣をくれてやる。」
「ほ、本当に、か………」
ヴェルフは腰に挿してあった魔剣を構える。
「ちょ!話が違、!?」
「さあ、プレゼントだ。魔剣をくれてやる!」
路地裏を青白い光が埋め尽くす。
『アビャァァァアァ‼︎』
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「ふざけろ、やってらんねぇな。」
オラリオは日が沈みかけ、空は赤み掛かって夜の訪れを告げようとする時間。空は薄く雲掛かっていた。一雨降りそうだと感じた。
ヴェルフはそのオラリオの中でも一際暗い路地裏を歩いていた。
あの後、ヴェルフは街へ繰り出し酒場という酒場を渡り歩いた。俗に言う『裏』という場所も。
しかし、これといって収穫は無かった。
ヴェルフへの襲撃の目的は分からずじまい。ザニスの情報は最近LV2になった事と容姿ぐらいである。
「これじゃあおちおちダンジョンに潜ることすらできやしない。」
ヴェルフは一人嘆いた。
そんなときだ。
暗闇に包まれた前方から、すらりとした人影が現れた。
「お前は、『ヴェルフ・アルゲース』だろう?」
問いかけていながらも、確信している声色だ。
ヴェルフは警戒し、その暗闇へと目を向けた。
その出会いは『幸運』だったのか『不運』だったのか。
ヴェルフは驚く。
「『ザニス』……『ルストラ』……!」
その人影は正しく探し求めていたザニスだったのだから。
「初めまして、だ。…『私のターゲット』」
「ノコノコとよく俺の前に来たな。ザニス。」
その言葉を発すると同時に太刀を抜刀。薙ぎ払う。
「おっと、いきなりだなぁ、ヴェルフ。」
跳躍して、太刀筋をさける。
「当たり前だ。お前は、俺の、敵だっ!」
次いで逆袈裟に切り上げる。
だが、相手もLV2。そんな単調な攻撃は躱されてしまった。
「…お前が私に勝てるとでも?」
ザニスは剣を抜く。
その刀身は、一目瞭然。ヴェルフの太刀の輝きを超えているものだった。
「…っ!」
そこから冒険者同士の戦闘が始まった。
知能の低い魔物達とは違う、思考や心を持つ『人』との戦い。
その中、ヴェルフはザニスと会うという大きな誤算によって焦っていた。
ヴェルフは酒場での情報との交換、つまり対価に『魔剣』を出してしまっていた。(失敗作だが)
それにより保険に持ち合わせていた魔剣も出してしまい、奥の手が使えなかった。
奥の手、『切り札』があるかないかで戦闘時に発揮できるポテンシャルは大きく異なる。
始まって最初の頃、二人はどちらが優勢、劣勢だということはなく拮抗していた。
しかし、ザニスとヴェルフには覆せない大きな差があった。
『時間』である。
ヴェルフは他の冒険者に比べ、オラリオにいる時間は少ないのだ。つまりダンジョンに潜る回数が少ない。
それに比べザニスはヴェルフよりかはダンジョンで経験を積んでいた。ランクアップ時の潜在値が大きいのだ。
よって、着実にザニスの手数と武器による攻撃にヴェルフは押されてしまう。
技なんてものはない。ステイタスと武器のごり押し。
『魔法』使おうとも試みたが、そんな隙さえない。
「ふざ…け、ろ…!」
「どうしたどうしたぁ!?さっきまでの威勢はどうしたんだぁ!」
そして致命的な一撃がヴェルフに炸裂した。
「カハッ…!」
脇腹。
切り裂かれた着流しの内側から、血が溢れ出す。
思わず倒れ伏してしまった。
ザニスの剣の白い刀身には己の物と思われる赤い血でべったり塗り潰されていた。
「私の勝利だ。」
血の滴る刀身を首に添えられる。
「でもまぁ、人殺しは私の仕事じゃあない。」
ポタリと血が落ちる。
「私は自身の手を汚したくはないんだよ。」
何処までも下衆だと思った。自身は殺さず、他人に殺されるのだろう。
ザニスはヴェルフを蹴り飛ばすと不吉な笑みを浮かべていった。
「お前が手負いであってもウチの団員は敵わないだろう。だから結果的にはお前を殺すことはできない。」
…こいつは何を言っている?
「だが、『私の受けた依頼』はお前を排除することであって殺すことではない。」
「なにを…言って、いる?」
「ククッ、いいだろう。教えてやろう。このことは排除にもつながるからな。」
ヴェルフは頭が混乱していた。
クライアントは他にいる?俺の排除?
「お前の排除を依頼したやつはなぁ……ククッ、『ヘファイストス・ファミリア』だ。」
は?
「知ってるかぁ?武器防具で有名で高名なあのファミリアだよ。知ってるよなぁ?知らない筈ないよなぁ?なんせ他でもないお前の所属ファミリアなんだからよぉ!?」
「…………」
「おやおやぁ?ショックで言葉もでないのかぁ?お?」
「ふざけろ!」
「なんもふざけてなんかいないさぁ。これは真実だ!覆しようのないな!」
本当に何の言葉も考えられない。
「ここで仲間を呼んで殺すことは簡単だろうがわざと生かしてやる。そこで苦しんでいるといいさ!」
「………」
「アッハッハッハッハッ…………」
日が完全に沈み、オラリオは夜を迎えた。
ザニスは路地裏の深くなった闇へ笑い声を残して消えていった。
ヴェルフは未だうずくまる。
狭い路地には笑い声がしばらく反響した。
反響するのが消えた後でもヴェルフの耳にはその高笑いが聞こえるような気がした。
ポツポツポツポツ
頬に水の冷たい感触がはしる。
道に広がった己の血だまりを水飛沫が跳ねる。
傷口に雨が染みた。
しばらくして雨が強くなってきた。
ヴェルフは太刀を杖にゆらりと立ち上がる。
髪はしな垂れ、着流しは血と水を吸ってぴったり身体に張り付いている。
ヴェルフは天を見上げる。
そして顔を前に向け、カツンカツンと太刀を立てながらふらふら帰路につく。
血だまりは地面に染み込み、中々雨で流されなかった。
その翌日は夜の雨が嘘だったのかのように晴れた。
血だまりはもう残っていなかった。
オラリオの町は清濁すべてを受け入れ飲み込む。
バベル、『
特に後書きに書くことはないのですが…
次回外伝を挟むつもりなのですが、ちょいHか、ほのぼのかどっちにしようか悩むんですよねー。
うーん。
では。久しぶりに。
火月ぃぃぃいいいいい‼︎(また会おう!)