ヴェルフが魔剣を強くするのは間違っているだろうか   作:カブタロウ

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第三話になります。お楽しみください。


第三話 オラリオでの出会い

 商人の連れた馬車はの衛兵の検問をうけ、オラリオの地にヴェルフを下ろした。

 

  「ありがとう。助かった」

 

 ヴェルフは簡潔にお礼を言い包みからヴァリスを出そうとするが、

 

  「いえいえ、こちらこそ。お金は要りません。逆にお礼としてこのお金をいただいて下さい」

 

 と、逆に商人からヴァリスを渡される。いやいやとヴェルフはそのヴァリスを返すが、商人もいやいやとヴァリスを渡す。数回の攻防を繰り広げた後、最終的にヴェルフが根負けしてヴァリスを受け取る。商人は晴れ晴れとした表情でヴェルフのもとを去った。馬車にあったヴァリスで魔石製品を購入するのだろう。ヴェルフも自分の目的地を探そうと歩きだす。

 

 ______________________________________

 

 この「オラリオ」という場所は、ダンジョンの上に「蓋」の様にそびえ立つ「バベル」から外へ放射状に広がるようメインストリートが外壁に向かって伸びている。簡単に言うと上から見ると八卦炉のような形をしている。ヴェルフは鍛治系ファミリアを探して歩き回っているのだが…

 

  「ここは…どこだ?」

 

 道に迷ってしまった。

 初めての街にガイドも無しで一人で来たのだ。迷うのも当然の事だった。

 仕方がないのでとりあえず頭を上げれば見ることのできる摩天楼施設を目指して足を進めた。

 

  「あの…どうかされました?」

 

 後ろから案ずるような声が聞こえ、反射的に振り返る。

 そこには心配そうな顔をしている少女がいた。その少女は薄鈍色をした髪を団子状にまとめ、ワザとなのか天然なのかはわからないないが一本の髪の束が飛び出している。見たところ服装は若草色の長めのスカート(?)その上にエプロンを着ている。町中でこんな格好をしているということは何処かでウェイトレスでもしているのだろう。

 振り向いておいていつまでも黙っているのも失礼なので返事を返す。

 

  「いや少し道に迷ってしまいまして…」

 

  「あら、じゃあオラリオは初めてですか?」

 

  「はい。いや、面目ない…」

 

 ヴェルフは苦笑いを浮かべながら赤い髪を手で軽くかく。

 

  「いえいえ、外から来られる方でそういう人はよくいらっしゃるんですよ。なんせここのあたりはゴチャゴチャしていますから。」

 

 薄鈍色の髪の少女も経験があるのか苦笑いを浮かべる。

 

  「何処をお探しになっているのですか?」

 

  「ええと、確かヘファイストス・ファミリアていう名前の鍛治系のファミリアなのですが」

 

  「まぁ、鍛治師を目指しているのですか?」

 

 驚いたのか口元に手を当てる。大抵男性鍛治師は今のヴェルフの2倍くらい体躯がしっかりしている者が多く、ヴェルフのような細マッチョな体型の鍛治師は珍しいからだ。そう考えるヴェルフは相手を不快にさせないよう笑顔で答える。

 

  「はい。産まれが鍛治師の家系でしたから」

 

  「へぇ、…ちなみに他のファミリアで興味があるのはなんですか?」

 

  「ヘルメス・ファミリアですね。他にはあまり興味はありません。」

 

  「そうですか…ヘファイストス・ファミリアなら此処から東にーーー」

 

 ヴェルフは道を教えてもらったが、自分の興味のあるファミリアを答えたとき微妙に残念そうだったのが気になった。

 

  「もし、ファミリアに入団できたらお祝いは是非この酒場『豊穣の女主人』で!」

 

 少女が示す酒場に目を向ける。なるほど、ここで働いているのか。

 

  「はは、できたらそうさせてもらいますよ。」

 

 この少女の商魂たくましいところに内心舌を巻いた。

 

  「入れなくても、私が贔屓にしてもらっているファミリアを紹介してあげますよ。」

 

 少々ドキドキする蠱惑的な声を聞くが、動揺をださぬよう笑顔を徹する。

 

  「お世話にならないよう頑張りますよ」

 

 そしてお互いに別れの挨拶を交わす。

 

  「さようなら。また今晩に」

 

  「ええ、お待ちしております。」

 

 そのまま背を向け、教えてもらった方へと進む。

 

 あ、名前を聞くのを忘れていた。

 

 

 ___________________________________

 

 

  「ここがヘファイストス・ファミリア…」

 

 しばらく歩き、大きなメインストリートに沿うようにしてヘファイストス武具店本店兼ホームがそびえ立っていた。

 ヘファイストス武具店の大きなロゴが書かれた看板が掛けてあり、客寄せのショーケースにはヴェルフの作品とは比べものにならないほど「綺麗」でかつ「鋭い」(しかも考えられないほど「高い」)。思わずヴェルフも足を止め、数分の間見入ってしまった。

 

  「ほう………ハァ」

 

 余りの綺麗さに思わず息が零れる。今のヴェルフなら数時間でもショーケースを見ていれるだろう。延々と中の武具の数々を見つめていた。

 

  「そこのおまえは何がしたいんだ?」

 

 前に少女に声をかけられたときとは違う呆れたような声がした。自分の周りには誰もいないので自分に話しかけているのであろうと推測して声に反応する。

 

  「いえ、少し見とれていまして」

 

 後ろに立っていたのは太刀を背中にかけ、工房の炉を彷彿とさせる紅の袴を着、特徴的な大きな眼帯を左目に付けた女性が立っていた。風貌は武人然としておりどことなく男らしさを感じさせた。

 

  「ほう、どの武器が一番いいと思った?」

 

 褐色の肌の女性は満足そうな笑みを浮かべ、挑戦的な瞳で問う。ヴェルフが横目で見た手には鍛治師特有のハンマーダコがあった。若干軽装な気がするが太刀を持っていることから鍛治師兼冒険者で、仕事という意味で自給自足をしているのだろう。ショーケースに自分の作品でもあるのだろうか。ヴェルフは相手の問いに答えた。

 

  「自分が思うにこの立て掛けある大剣ですかね。なんせ大剣という重量級の武器で見た目で重さを感じさせず、且つ刃は太刀のように鋭い。この武器を持っているだけで冒険者は誇りに思うでしょう。しかもこの柄の部分は、ーーーーでーーーーーそうなーーーカッコいいーーーところーーー」

 

 年甲斐も無くはしゃいでしまった。失礼だっただろうか。

 

  「うんうん、そうだろう、そうだろう。」

 

 かなりご満悦なようだった。

 

  「あそこを分かってくれる人が少なくてねぇ。あんたその手のハンマーダコからして、鍛治師志望だろう?ここのファミリアに入団したいのかい?」

 

  女性は一頻り頷いた後、笑顔で問う。ヴェルフはYESの意味を伝えるべく首肯で答える。

 

  「そうかそうか!なら私直々に主神様に推薦してやろう。」

 

 え?推薦?主神様?もしかしてもしかしなくてもファミリアの幹部クラスの人?確かここのファミリアの団長は「椿・コルブランド」だったはず、写真はないが身体的特徴は女性で太刀を使う上級鍛治師兼Lv5上級冒険者。いつも左目に大きな眼帯をしている……うん?目の前の女性と特徴が一致していないか?俺、こんな人に自分の趣味を晒したのか?

 顔には出さないが内心で激しく動揺する。自意識過剰でなければ恐らくあの大剣はコルブランドさんの自信作でそれをべた褒めしたから気にいられたのだろう。もし否定していたらどうなっていたことか戦慄する。ヴェルフは息を吐き、心を落ちつかせて失礼の無い様返答する。

 

  「あ、ああいがとうごさいまふ」

 

 スベった。盛大にスベった。

 何で噛んでしまったのだろう。慣れない土地だからか。もしくは椿・コルブランドの雰囲気に飲まれたのか。

 

  「フハハ!よしっ!付いて来い!」

 

 しかし、その返事はコルブランドに対しては当たりだったようで。

 意気揚々とファミリアに入っていく。その後ろにヴェルフはいそいそとついていった。

 しばらく歩くと思考が落ち着いて本来の冷静さを取り戻す。そしてヘファイストス・ファミリアの眷属だと思われる人たちから人目を集めていることに気付いた。「団長」と歩いているからだろう。その団長は鼻歌でも歌いながらスキップを始めそうな軽い足取りで歩いていたが、大きなドアの前に立つと表情を引き締めた。

 

  「ここには主神様であるヘファイストス様がいる。失礼の無いようにな」

 

 コルブランドさんの先程までの雰囲気の違いに息を飲みつつ、首肯を返す。

 

  「……わかっているならいい。 主神様、 椿・コルブランド、入ります」

 

 ヘファイストス・ファミリアの団長としてコルブランドはドアをノックし主神の返答を待った。

 

  「いいわよ。入って」

 

 綺麗な声が響く。ヴェルフは神というのは美貌が凄いと聞いていたが、声もここまでとなると本人はどこまで美しいのだろうと内心驚く。少しの間声に聞き惚れていたが、コルブランドさんがドアを開けるのに気付いてそれに続く。

 

 最初に目に入ってきたのは自分の髪より綺麗で優しさを感じさせる赤髪だった。その次にはコルブランドとは逆の右目に眼帯をつけているのを見つける。左目は髪と同色の赤色でその瞳の中では自分自身が映りこんでいた。想像を絶する美しさで見とれる。

 

  「あら、椿そこの人は?」

 

 部屋の中には美声が響く。

 

  「ああ、こいつはヘファイストス・ファミリア入団希望者だ。私が推薦する。」

 

 椿はヴェルフの背中を叩き、前に立たせる。ヴェルフは一目惚れのような状態に落ちていたが背中の衝撃で目が覚める。

 

  「あなた直々の推薦とは珍しいわね。」

 

  「気に入ったからな。自分でも珍しいと思っている」

 

 ヘファイストスは椿が連れてきた男をまじまじと見つめる。女慣れなどしている筈もないヴェルフは照れ臭くなり神の前だというのに目を逸らした。

 

  「あらあら、照れちゃって………わかったわ。今から面接を受けてもらいます。それで決めましょう。椿は出て行って。 」

 

 椿はニヤリと笑うと、足を反転させ部屋から出て行く。ヴェルフとすれ違うときに耳元で

 

  「相手は神だ。嘘をつくなよ」

 

 と小声でアドバイスを受ける。改めてヴェルフは目の前の者を人を超えた超常の存在である事を理解し、顔には緊張がはしる。

 

  「じゃあ質問をするわ。なぜあなたはヘファイストス・ファミリアを選ぶの?」

 

 心を落ちつかせ本心を語る。

 

  「俺は魔剣鍛治師です。自分の夢の『壊れない』魔剣を創り上げる為にここにきました」

 

 2大鍛治系ファミリアのゴブニュとヘファイストス。ゴブニュ・ファミリアは「実質剛健」がポリシーで火力はあるが直ぐに崩れ去る魔剣が嫌いである。ヘファイストス・ファミリアにはオラリオの魔剣鍛治師が揃っている。ヴェルフの夢を叶えるなら「ヘファイストス・ファミリア」だろう。

 

  「そう…理由は分かったわ。その年で魔剣鍛治師…あえて聞いていなかったのだけれど、あなた名前は?」

 

 ヴェルフは苦渋の表情を浮かべ、言葉を絞りだす

 

  「………ヴェルフ……です」

 

  「あなたのもう一つ名は『クローーー

 

  「もうその名前は捨てました」

 

 ヴェルフは失礼と知りながら神の言葉を遮る。ヘファイストスは黙ってヴェルフを左の赤の瞳で見る。ヴェルフは神の気を悪くしたと思い謝ろうとしたときーー

 

  「アハハハ!貴方面白そうね。いいでしょうファミリアに認めます。」

 

 ヴェルフは唖然として目を見開いた。

 

  「ん〜もう一つの名前がないと不便よねー」

 

 ヴェルフは話に追いつけていないが主神はいい事を思いついたと手を叩く。

 

  「そうだわ!『アルゲース』!貴方の名前は『ヴェルフ・アルゲース』よ!」

 

 




大体これくらいの字数目指していくのでよろしくお願いします。
感想・批評をお待ちしています。

火月ぃいいいいいいいいいいい!!(また今度)
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