ヴェルフが魔剣を強くするのは間違っているだろうか 作:カブタロウ
「貴方の名前は『ヴェルフ・アルゲース』よ!」
オラリオに来たばかりの鍛治師志望『ヴェルフ・クロッゾ』は困惑していた。そうなるのも仕方ない事である。なんせいきなり『ヴェルフ・クロッゾ』から『ヴェルフ・アルゲース』に命名されたのだから。目の前の神のヘファイストス様の言葉を遮ってしまい、謝ろうとしたら笑いだし、いきなり眷属入りを認められさっきまで威厳に溢れた
取り敢えず整理しよう。
神はミーハーだった。……まぁ別に良い俺のところの神だって見た目の割りにアホだった。なんらおかしい事はない。
名前が変わった。……いつかは捨てるつもりだった名。神に授けられたものならこんな名誉な事はない。だろう。
眷属入りを認められた。…まぁ良い事だ。
「ハッ!……ゴホン!ンンッ、貴方には『アルゲース』の名を授けます。』
正気に戻ったのかヴェルフの主神となったヘファイストスは咳払いをし、(若干頰が赤い)もう一度言い直す。ヴェルフは膝をついて深々と頭を下げ礼を言う。
「賜りました。ありがとうございます。これからは『ヴェルフ・アルゲース』を名乗らせていただきます。」
ヘファイストスは自分の眷属となる子供の様子を見、次にすることを言う。
「さて、それでは今から貴方に
ヘファイストスは手袋を脱ぎながらポケットより針を取り出す。ヴェルフは戸惑いつつ上着を脱いでそこの台に寝そべる。ヘファイストスはヴェルフの背中の横に立つと、持っている針で自分の指の腹を刺し血を出す。指の腹をヴェルフの背に向けその血、
一際光が大きくなると
ヘファイストスはそれらを指でなぞるように操作する。やがて青い光は弱まりヴェルフの背中に収まる。ヴェルフは横に目を向けると主神が何かしら紙に書いているのを確認した。
上着を着てその場に立ち上がり、主神が書き終えるまで部屋の中を見わたす。まず、大きく目を引く巨大な本棚。その中にはぎっしりと本が詰まっていた。殆どは鍛治関連の本だが時々ファンタジー小説や恋愛小説がみえる。………神はミーハーだった。
壁には無数の業物の武具が掛けてあり、ヴェルフが未だ打つことが出来ない「白刃」の剣もちらほらと見受けられる。ヴェルフは自分もいつかあのような武器が打てるようになろうと拳を握り決意した。そんなことを考えいたら主神ヘファイストスから声がかかる。相変わらずの美声に聴き惚れそうになるが踏ん張る。
「貴方のステイタスよ。」
と先程まで書いていた紙を渡される。この紙はヴェルフのステイタスを記してある。ステイタス自体は背中に
【ヴェルフ・アルゲース】
Lv1
力: I 21
耐久: I 15
器用: I 19
敏捷: I 13
魔力: I 18
《スキル》
「
・魔剣製造可能
・作製時における魔剣能力強化
・鍛造時の叩く回数に応じて補正上昇
「まぁ、スキル以外は普通のステイタスね。最初にしては魔力が高いかしら」
主神がヴェルフのステイタスの評価を告げる。
「最初はそんなもんよ。これから精進しなさいな」
ヘファイストスはヴェルフに激励を飛ばすと、さらに奥のドアを開ける。
「最後の『儀式』よ」
そう言ってヘファイストスはヴェルフをつれドアをくぐる。その部屋は全体的に赤く光源が魔石でできた長持ちする蝋燭だけで薄暗かった。そして部屋の中央では一振りの剣があった。
主神は問う。
「この剣を見て」
それだけだった。ここからでは暗くて剣を見れないのでヴェルフは近寄り台座から剣を持ち上げる。まず感じたのはその「重量」。重すぎず、軽すぎない。重さだけでこの剣は自分の求める剣の先にあるものと気付いた。
顔を近ずけ、刃を見る。その「白刃」は光源の光を浴びて妖しく煌めく。刃に映る自分の顔がゆらゆらと揺れ、引き込まれるかのような錯覚を覚える。この剣は「危険」だ。持っているだけで『斬りたくなる』『斬れ味を試したくなる』。ヴェルフは「本能」を理性で抑えつけ剣を台座へ戻す。
ヴェルフはこんな剣がこの世にあるのかと戦慄する。こんな剣があったら冒険者の「Lv」やステイタスといった「パワーバランス」を崩壊させる。そのことに恐怖を感じる。だが、ヴェルフはそれと同時に武具の「可能性」を感じる。この剣の矛先をモンスターへ向けるとしたら?…持ち主は向かうところ敵無しだろう。ヴェルフは武具に「恐怖」と「期待」を感じた。
ヘファイストスとヴェルフは部屋から出ると
「どう感じた?」
主神はわざと主語をぼかして問う。
ヴェルフはさっき感じた恐怖と武具への期待をありのままに伝える。
「そう…やっぱり貴方は根っからの鍛治師ね。そういう答えが聞けて安心したわ」
ヘファイストスは頷くと、笑顔で
「改めて…
ヴェルフの主神は手を叩き雰囲気を変える。
「そうと決まれば、歓迎会の準備ね。ツバーーー」
ヘファイストスはヴェルフの「団長」にあたる人物を呼ぼうとするが、無遠慮なドアのノックに遮られる。
「ヘファイストス〜いるかい?僕だよ。ヘスティアだよ〜」
その声を聞いた途端にヘファイストスは頭を抑え
「まったく、あのニートは……。」
と嘆息する。ヴェルフは自分の主神にニート(意味はわからない)と呼ばれる人物を見ようと後ろを振り返る。
「ヘファイストス居るんだね!入るよ〜。」
ドアを開けて入ってきたのはジャガ丸くん(オラリオ特有の庶民的おやつ。じゃがいもを丸々一個揚げ、それに様々な調味料をかけて食べる)を持ち、髪をやたら長いツインテールに分けた幼女(?)だった。なぜ疑問形かというと、幼女にしては女性の象徴がとても大きく、(言わせんな、恥ずかしい。)袖がなく、明らかにほぼ太ももが殆ど見えてんだろというなんとも言えない服装をしているからだ。「ヘスティア」という名前とこれらの情報から神ということを推測する。
「やあやあ、ヘファイストスただいま。おや?そこの黒い青年は誰だい?」
「よくもまぁいけいけしゃあしゃあと入ってくるわね。…そこの
主神がヴェルフを指し紹介する。ヴェルフはそれに合わせて首肯する。
「へぇ、よろしく!僕は『ヘスティア』だよ!」
やけに馴れ馴れしく手を差し伸べしてくる。こういう別け隔てないところがこの
「ヘスティア、貴方何もしないなら新しい眷属入団の歓迎会をすると伝えてくれない?」
神ヘスティアはヘファイストスの言葉に「歓迎会…」と目を光らせてピューと効果音がつきそうな勢いで走り去って行った。ドアの外からは「歓迎会だよ〜!」とヘスティアの声が聞こえる。
「「ハァ…」」
二人同時に溜め息が溢れる。
「まぁ、もういい時間だし、皆で歓迎会をしましょうか。会場はどこがいい?」
『歓迎』という単語にある酒場と名前を聞き忘れた薄鈍色の髪の少女をを思い出す。
「だったら少々恩があるので『豊饒の女主人』というところでいいでしょうか。」
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ガヤガヤと騒ぎながらヘファイストス・ファミリアは「豊饒の女主人」を目指す。
「まさか貴方の口からその酒場がでるとは思わなかったわ。」
主神は先頭を歩きながら、ヴェルフに話しかける。
「ある少女にファミリアまでの道を教えてもらいまして、」
ヴェルフは前のことを思い出す。あの少女が働く酒場はどんなものなのか楽しみである。
しばらく主神と談笑していると後ろからいきなり肩を組まれる。
「ヴェル吉!よくやった!」
どうやら団長のようだ。
「ありがとうございます。ところでヴェル吉とは?」
「何言ってる!お前の渾名だよ。」
「そうですか。……コルブランドさん」
口が裂けても、ダサいとは言えない。上司には抗えないのだ。
「そのコルブランドさんなんて堅苦しい呼び方はやめろ。ファミリアだろう?」
「それもそうですね。団長と呼ばさせていただきます。」
なんて会話をしていたら歓迎会の会場である『豊饒の女主人』が見える。店先に立っていた。キャットピープルの少女が「大変ニャ〜!団体客の来店ニャ〜!」と店内に知らせる声がする。
ヴェルフが先陣を切って酒場のドアを開ける。すると店内のガヤガヤとした喋り声が耳に届く。
ヴェルフは前あった薄鈍色の少女を探そうとするが、
「いらっしゃいまーーーー」
目の前にいた。
少女も気付いたのか案内の声が途切れる。それからヴェルフが先に挨拶を述べる。
「こんばんは。」
「あっ、ああ、こんばんは!ヘファイストス・ファミリアの方々ですね。席はこちらになります。」
手慣れたように少女はテーブルに案内する。そしてヘファイストス・ファミリアの面々が座ると、ヘファイストスがきりだす。
「はい、注目。今回眷属になった『ヴェルフ・アルゲース』よ。」
ヴェルフは立ち上がり、軽くスピーチをする。
「紹介にあずかった『ヴェルフ・アルゲース』です。よろしくお願いします。」
「じゃあ、飲みましょう!」
主神の一言で野郎どもが「うおー!」と声をあげ騒ぎだす。ヘスティアも一緒になって騒ぐ。その様子をヘファイストスとヴェルフは苦笑して眺めていた。すると後ろ自分を呼ぶ声がする。酒の飲みつつ振り返ると、あの少女がいた。少女はヴェルフが振り返ったのを確認して隣に座る。
「貴方はヴェルフさんと言うんですね。私の名前は『シル・フローヴァ』です。」
「君はシルというのか、よろしく。」
と酒を飲む。ヴェルフは早くも少し酔いが回っているようだ。シルはヴェルフの若干フレンドリーな様子に驚くが、会話を続けていく。
「ヴェルフさん、ちゃんとヘファイストス・ファミリアに入団できたんですね。おめでとうございます。」
「ありがとう、シル。君がいなかったら入れなかったよ。」(案内してくれなくてはいけなかった)
「ふふ、ありがとうございます。約束はちゃんと守ってくれたんですね。」
「失礼するなぁ。俺はシルに早く会いたくてここにきたのに…」(ファミリア入団の朗報を伝えたかった。)
「えっ」
シルはヴェルフの思いもよらない一言で赤面し、動きを止める。
……ヴェルフは酔うと無自覚にやらかす様だ。
「ヴェル吉〜〜。酒のんでるか〜〜?」
酔った椿がヴェルフに絡む。
「そうだ。団長も俺を推薦してくれてありがとう。感謝している。」
酔ったヴェルフは椿を抱き寄せ耳元でお礼を伝える。椿も顔を真っ赤に染め上げ、「そっそうか、」と足早に立ち去った。
シルはまだ動きを止めていてヴェルフは両肩を掴み自分の顔を近づけシルの顔を覗き込む。
「どうした?」
目が覚めたシルはヴェルフの顔が近くにあり両肩を掴みまれているのに気付いて顔をさらに赤くする。そんなシルの様子を見たのか店員のキャットピープルが
「おや?もしかしてもしかしなくても『コレ』かニャ?」
と小指を立ててみせる。シルは慌てて、
「ちっちがうよ‼︎ア、アーニャからかわないでよ!」
ヴェルフは酔いが回った頭で何をとちくるったのかシルを抱き寄せ、
「シルは俺の女(友達)だ!」
と言ってしまった。
それを観ていたヘスティアやファミリアの団員は口笛を吹き囃し立てる。
さすがにコレはマズイと思いヘファイストスは店員に持ってこさせた水を頭からかぶせる。
酔いから醒めたヴェルフは顔を真っ赤にしているシルと口笛を吹くファミリア(ヘスティア)、ビショビショの自分の体を見て一言
「えっと、…なんかやっちゃいました?」
ヘファイストスは深く頷いた。
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酒場では一悶着あったが歓迎会は最終的に無事終わった。ヴェルフ自分が何をしたかを教えられ、顔を赤くしシルに何度も謝っていた。
「最後は私のファミリアが迷惑かけたわね。」
ヘファイストスが『豊しの女主人』店主のミアに謝罪する。
「ハン、これくらい日常茶飯事さ。」
ミアは言い返す。
「そろそろあんたらも帰りな、店を閉めるよ。」
「それもそうね。ファミリアのみんな!帰るよ!」
ぞろぞろと店を出ていくヘファイストス・ファミリアの眷属たち。みんな顔が赤くなって千鳥足の人もいる。ヴェルフは一番最後に店を出た。
「すまん!本当にすまん!」
「いいですって、また今度ここにきて下さいね。」
ヴェルフはこのやり取りでだいぶ態度が砕けたようだ。
「…ああ、わかった。また来る。さようなら。」
「ハイ。さようなら。」
別れの挨拶を交わす。
ヘファイストスはそれを見届けるとミアと別れを告げる。
「美味しかったわ。じゃあね。」
「そうだろう?またきな!大歓迎だよ!」
ファミリアは各自自分の工房やホームにもどっていく。ヴェルフはまだ自分の工房が割り振られていないのでホームに向かう。
旅の支度が入っていた包みから寝袋を取り出し適当なところで包まる。
ヴェルフはやけに濃度の高い一日を過ごし疲れてしまったのかすぐに眠りにおちた。
随分長くなりました。早くダンジョンに行きたい!でも書くことまだまだあるんだよなぁ。多分次回を終えたらダンジョン行きます。待っていて下さい
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