ヴェルフが魔剣を強くするのは間違っているだろうか   作:カブタロウ

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第七話です。お楽しみください。遂にヴェルフのあのセリフも……?
【注意】前回同様若干のグロ要素


第七話 ダンジョンとギルド

ダンジョン探索を終えたヴェルフは工房に戻る。

工房にて装備を下ろし、血と脂にまみれた太刀を水にさらして汚れを取り砥石で刃を砥ぐ。鍛治師たるもの武器は人一倍大切に扱う。

武器の研磨を終えヴァリスを入れた包みから今日の儲けを出す。

 

八〇〇ヴァリス。

 

「……まぁ最初はこんなもんか。」

 

ヴェルフはラキアの頃のヘソクリで今までしのいできたが金欠気味になってきたこの頃でこれぽっちの収入では心もとなく生活の危機を感じる。

以前の買いだめを漁って腹に収めると明日はもうちょっと頑張るかと意気込んでその日は眠りに落ちた。

 

 

翌日の早朝、ヴェルフは今日もダンジョン探索に向かう。

1層にたどり着き、モンスターを探して地を駆ける。昨日以上の儲けを出すべく危機迫る(誤字にあらず)表情で周囲に目を走らせる。

ゴブリンを見つけ餌を前にした獣の目をして飛びかかる。ゴブリンはヴェルフを殴ろうと拳を振り上げるが人型の赤獣(ヴェルフ)は止まらない。拳が来るより速く太刀を振り緑の魔物の腕を切り飛ばす。ゴブリンは痛みに動きを止めるがその隙が命取りだった。すかさず首を斬り落としゴブリンだったものは動きを止める。普段からは考えられないほど手際よく魔石を回収し次のモンスター(魔石)を探す。

 

コボルトが三体で固まって居るのを見つける。コボルトらは向かい合い縄張り争いでもしているのか周りに気づかない(そんな概念が在るかはわからないが)。

ヴェルフは狩人(ハンター)のように身を縮め音もなく魔物達に近づく。

そしてニ匹のコボルトの体からは血に彩られた刃が突き出る。そのコボルトらは相手を視認する前に命を落とした。ヴェルフはすぐさま太刀を引き抜き残りのコボルトめがけ上段に構える。コボルトはその瞳に恐怖を浮かべるが、容赦無く刃は振り下ろされる。ヴェルフのステイタスと質量、重力をもって勢いよく下ろされた太刀は魔物の頭蓋を砕き痛みを感じる間もなく絶命する。死体から早技で魔石をバックパックに詰め込み先に進む。……

 

 

いつの間にか3層まできたようだ。その視界にニ体のゴブリンを捉える。ゴブリンらは壁際に背にしたヴェルフに体当たりするべく突撃するが標的は棒高跳びのように腰を捻って跳躍し、後ろに回りこむ。ゴブリンはすぐ振り返ろうとするが眼前にはダンジョンの壁が広がっておりニ体とも激突し、目を回す。ヴェルフは後ろから片方のゴブリンの横腹を切り裂き刃を返して斜め上に切り上げる。その刃の射線上に首を捉えるが唐突にヴェルフの体が吹き飛ばされる。目を向けるとそこには拳を振り抜いたもう片方のゴブリンがいた。殴り飛ばされたようだ。ステイタスが低いヴェルフにとってダメージは大きく、脇腹の痛みを抑え太刀を杖に立ち上がる。

 

「ふざ……けろ!」

 

油断していた。簡単にモンスターを殺せた事に調子にのっていたらしい。俺らしくないなと自虐の笑みを浮かべ思考を落ち着かせる。そして襲いかかるニ体のゴブリンを咆哮を上げて迎え撃つ。

まず、手負いのゴブリンをかたずけようと考える。とりあえず先方のゴブリンの拳を回避し、後方のゴブリンの体当たりを太刀を盾にして防御する。体制を整えたヴェルフは「攻守交代(チェンジ)だ…」とつぶやき肉薄する。一瞬にして距離を縮め太刀を振るう。極限の集中より放たれた一刀は容易く首を刈り取る。

敵を減らしゴブリンとの一対一を作り出して対峙する。太刀を構え油断なく見据える。そして突撃するゴブリンを見極め正確に膝を斬る。脚を失ったゴブリンはバランスを崩す。

 

戦闘終了(チェックメイト)だ」

 

太刀の長い刀身の遠心力を活かした大振りの攻撃は肋骨を砕き心臓を切り裂いた。

 

 

 

 

 

 

 

魔石の回収を終えたヴェルフは腰を下ろし一息つく。

 

ビキリ…

 

すると何処かの壁を壊すような音が聞こえる。

 

ビキリ、 ビキリ、 ビキリ、 ビキリ、

 

そんな不吉な音がそこら中から響き広間に反響する。

ヴェルフが視線向ける先には産まれ出たばかりのコボルトが複数。

立ち上がり息を吸い込んで魔物の群れへ突っ込む。

 

「うおおおおぉぉぉォォおおお‼︎」

 

ヴェルフの右目は薄っすらと紅く染まっていた。

 

 

__________________________________________________________

 

 

 

モンスターをかたっぱしから殺し尽くし、やっとの思いで1層に着いたヴェルフは返り血を身体中に浴び、息も絶え絶えの酷い状態だった。

前回とは比べられないほどの量の魔石が入ったバックパックが肩に食い込む。

 

「ハァ、ハァ、ハァ」

 

荒く呼吸を繰り返す。

幸い、1層はモンスターの出現率が低いので帰還することはできそうだ。……と思った瞬間、ゴブリンが進路上に躍り出る。

 

「ふざけろォォォォォおおおおおおおおおおおおおお‼︎‼︎」

 

ヴェルフは残った力を振り絞って一太刀みまい、急所を切り裂き殺す。

 

 

 

 

入ってきた時よりかなりゆっくりしたペースで出口を目指す。途中何度か何かに遭遇したが、腕が勝手に始末した。朦朧とする意識の中で光差す出口を見つける。ヴェルフは走り出し「バベル」に到達すると安堵し死の緊張から解かれたことでバタッとうつむせに倒れる。閉じかける目でバタバタと慌ただしく動くセミブロンドの髪が見えるが、後でどうにかなるだろう。もう何も考えたく無かった。

ヴェルフは意識を落とした。ーーーーー

 

 

 

バベルの病室の一角で目が覚める。ヴェルフは体を起こし一言。

 

 

「なんで俺はこんな所にいるんだ?」

 

 

ヴェルフに残る記憶はニ匹のゴブリンを倒し、魔物の群れに突っ込んだところまでだ。出口までの道のりの記憶がぽっかり抜けているようだ。アドレナリンが出てランナーズハイのような状態だったのだろう。

ヴェルフは不思議に思いつつも周りを見渡す。側には愛用している太刀が掛けてあり、魔石が入ったバックパックが置いてある。ふと、気になってバックパックを持ち上げると意外なほど重かった。

バックパックを背中に掛け、太刀を持ってベッドから降りる。記憶にない激戦によって刃こぼれした太刀を見て少々不気味に思いながらも工房でしっかり手入れしないとな、なんて事を考え病室を出る。するとそこにはーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分の冒険アドバイザーである『エイナ・チュール』がいた。しかし背後でドス黒いオーラを纏い、最初の頃の優しそうな様子はなりを潜めていた。ヴェルフは死とはある種、別の恐怖を感じた。

最早、ヴェルフにとって悪鬼羅刹と化したエイナは額に青筋を浮かべ口を開いた。

 

「アルゲースさ、…いやヴェルフさん?ダンジョン二回目でボロボロになって帰還するとはどういうことですか?」

 

余りに恐ろしいエイナの様子に正直に言ったら不味いと思わず言葉を濁してしまう。

 

「あっ、いや。少し、ちょっと……」

 

「ヴェルフさん?」

 

「スイマセン。調子乗って3層まで行きました」

 

正直に告白し、体裁などドブに放り捨てて頭を下げる。

 

「まったく、『冒険者は冒険しちゃいけない』んだよ」

 

エイナは一度キレると敬語がぬけフレンドリーになるようだ。

顔を上げヴェルフはエイナに問う。

 

「『冒険者は冒険しちゃいけない』とはどういう?」

 

エイナは人差し指を立て説明する。

 

「『安易に下に潜らず、安全第一で探索する』って事だよ。ただでさえヴェルフさんはソロで探索してるんだからもっと慎重にならないと」

 

「…わかった。」

 

「じゃあダンジョンの怖さを知る為をにも、勉強会しよっか?」

 

エイナはイイ笑顔だった。

そこはかとなく不安を感じ、御断りしようとしたが腕を掴まれる。

そしてバベルの資料室へと連れられた。

 

 

 

 

 

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ーーダンジョン入門〜三つのススメ〜ーー

ーーオラリオの歴史ーー

ーー歴代英雄譚オススメ十選ーー

ーーラビリンスに刺激を求めるのは間違っているだろうかーー

 

バベル ーー資料室ーー

 

 

 

ギルドの職員が行き交う資料室では様々な本に囲まれ顔を青ざめているヴェルフがいた。その正面にはイイ笑顔でヴェルフに教鞭を執る冒険アドバイザーのエイナ。

 

「ヴェルフさん、続いて『ダンジョンの生態系〜1層から18層〜上巻』の104ページを見て」

 

積み上げられた本から一際大きな背表紙の本を抜いてページをめくる。

 

「この本の魔物で脅威なのは6階層の『ウォーシャドウ』と7階層の『キラーアント』という魔物で『キラーアント』は体長約二(メドル)、主な攻撃方法は強靭な大顎からの噛みつき。全身に強固な外骨格を持ち、弱点は脚や胴体の節目と火属性による攻撃。弱点が小さくて必要以上に強く見られがちだけど動きが遅いから狙うのは難しくない。でも注意することは他にあってそれは『仲間』を呼ぶことなの。見つけたら直ぐに倒さないと危険な魔物ね。次の『ウォーシャドウ』という魔物だけれど体格は人に酷似し、体長約一・五(メドル)ーーーーーー」

 

元々物覚えはそこまで悪くないと自負しているヴェルフだったがアドバイザーからのスパルタな『勉強会』に頭がパンクしそうになる。しかし親切心からの指導と信じ、誠実なヴェルフは真摯に答えようと必死に食らいつく。そしてエイナの言葉に耳をすませてメモを取るのだった。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

図鑑を片手に『勉強会』を行うエイナ・チュールはダンジョンの知識を目の前の青年に叩き込んでいた。神曰く、『ダンジョンはダンジョンだろ。ダンジョンに他の何を求めてるんだよダンジョン』という格言があるがダンジョンが危険であることには変わりなく、(というか神様ダンジョン好きすぎるでしょ)しかもダンジョンは()()()()()。よって不足の事態に陥り易く、事前の情報不足は死を招く。(勿論情報があっても力及ばずで亡くなるケースも多いがあるに越したことはない)

この青年、ヴェルフ・アルゲースを亡き者にしない為にも自他共に認めるスパルタで教えているのだが…

 

「216ページにめくって。この一面に描かれている魔物は15階層から出現する『ミノタウロス』という魔物。体長約二・五(メドル)で戦闘推奨Lv2。主な攻撃方法は巨腕での攻撃と『迷宮の武器庫(ランドフォーム)』の石斧の天然武器(ネイチャーウエポン)による攻撃に角を使った突進の三種。全身に剛毛を生やし凄まじく強靭な筋肉をしているため生半可な攻撃は全く効かない。しかし突進などの直線的な攻撃以外は遅いので逆に相手の防御を上回る攻撃力があれば比較的苦戦することなく倒すことができます。でもヴェルフさんは挑んじゃダメだよ?そして次のページのーーーーーーー」

 

「…………………………………………………………」カリカリカリカリ

 

着いてきている。顔色は悪いが食らいついている。エイナは内心驚いていた。エイナは自分が担当する冒険者に対してこの『勉強会』を開いたがどの冒険者も途中でダウンしている。そんな冒険者達とは違う『ヴェルフ・アルゲース』という冒険者の必死な頑張りにとても好感が持てた。

 

「ーーーーーふぅ、じゃあ『今日』はここまで!これは毎日ダンジョンから帰還してからやるから頑張ってね。ちなみに今日はないけど終わりにテストを受けて貰うよ。」

 

「……………………………!」カリカリ、コロン

 

その冒険者は口を大きく開いてエイナを見つめた。

 

 

バベルの外には太陽に変わって月がオラリオを照らし、夜空には星が散りばめられていた。

そして一つの流れ星が現れ、宵闇に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふざ…………け…ろ…………………」

どこかの赤髪の鍛治師はつぶやいた

 

 

 

 




今回はダンジョン中心にしたつもりです。
たったこれだけの戦闘描写にめっちゃ時間かかった……。そして「ふざけろ!」が言いたかった。
感想・批評お待ちしています。
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