Emotoin monster ~感情の舞い~ 作:夢見る座禅組
悠が幻想郷にやって来て最初の朝だ。
昨日、ここの家主「博麗霊夢」と話した部屋に足を運んでみる。その部屋にはちゃぶ台の上に並べられた料理を口に運ぶ霊夢がいた。
「あら、悠。おはよ」
「あ、あぁ…おはよ…」
「…何よ?」
「いや、おはようってあんまり言ったことないから…何か、新鮮って言うか…」
「そうかしら?」
「意外とな。」
「ほら、あなたの朝食も作ったから冷めないうちに食べて食べて。」
「お、ありがとう。」
霊夢のお言葉に甘えてありがたく朝食を頂くことにする。改めて朝の食卓を見回してみる。すると、大変驚愕の事実が発覚する!
「……」ワナワナ
「…今度は何よ?」
「マジか…!」ガクガク
「…何よ?」
「…朝飯が!」ブルブル
「が…?」
「たくさん…!」キラキラ
「そこ!?あと↑これ何よ!」
「…?」キョトン←これ
「だから何なのよ!」
朝から賑やかな食卓であった―――。
☆
朝食を終えた二人は、ふすまを開いた居間にいた。吹き込んでくる穏やかな秋風が心地よい。
「悠、ちょっといいかしら」
「ああ。なんだ?」
「私、昨日の話のなかで『あなたたちの世界に送り返すことができる』っていったわよね。」
「あぁ、そういえば言っていたな。…そっか、おれのいた場所に戻って、元の生活に戻るわけだな?――元の、生活…?」
悠が首をかしげる。つられて霊夢も首をかしげる。
「どうかしたの?」
「わからない…」
「…悠?」
「俺は…鬼怒刈悠は…どこの誰なんだ?…今まで何をしていた…?何も覚えてない…」
「まさか…断片的な記憶喪失…みたいな…?」
ひとつの可能性を霊夢が指摘する。その指摘に申し訳なさそうな表情で悠が頷く。
「すまない…俺、自分の名前しか…覚えていないんだ…」
しかし対照的に霊夢の表情は変わりはいない。
「ちょうどいいわ、悠。あなたを外界に送り返すのはもう少し先になるのよ。」
「…どういうことだ?」
予定調和、計算の内…とでも言わんばかりの表情の霊夢。
「別に記憶喪失でなくてもしばらくはここ、幻想郷にいてもらう予定だったのよ。」
「どうしてだ?」
悠の疑問ももっともな物だろう。霊夢が疑問に答える。
「幻想郷は『外界から幻想として認識されている』から存在できるっていうことは、説明したわよね?」
「ああ。」
「つまり、あなたが外界の住人に戻る資格は『幻想郷を知らない』ことなの。」
「…なるほど。いまの俺は確かに幻想郷の存在を知っているもんな。」
「そう。つまりは私たちのことを一切合切忘れて、ここに来る前のあなたに戻ってもらう必要があるの。」
「ふーむ…忘れる方法ってのは…流石にあるよな。俺以外にも迷い込んだ人間もいるんだろ?つまりはそういう人たちにやってきたことをするわけだな。」
「その通りよ。具体的にいうと、術をかけるの。術で今までの幻想郷そのたもろもろの記憶を抜き取って、抜き取られた空白の時間についてはあたかも日常生活を送っていたかのように錯覚させるわけ。」
「便利なもんだな。けど術をかけられて帰る側の人間の、友達とか知り合いとかのことはどうするんだ?いなかった間の出来事というか…しばらく音信不通なんだから、本人を錯覚させても回りが異変に気づくんじゃないか?」
「ところがどっこいなのよ。その術は周りの人間にも効果を撒き散らすの。周りの人は『昨日も悠に会ったし、一昨日も悠に会っている、今まで通りだ』と錯覚するようになるわけ。つまりわね、悠…」
「ん?」
「あなたは私の家に居候しているのよ?」
「…まあ、そうなるか。」
「つまり、私が主人(あるじ)よ!」
「…はい?」
「いい?私の命令には従いなさい!」
「確かにそうかもしれないが…どうしてそうなったんだ?何がどう転がればそういう解釈になる?」
「じゃあ、私は買い物に行ってくるから、留守番と落ち葉掃除しておいてね~」
「あー傷口が傷むーいやーこれは何もできねーなー」
「あら、怪我人は買い物には行けないわよね。それに誰かさんのせいで食料の減りが予定より早くなりそうなのよね。」
「…」
「というわけで、宜しくね!」
悠を負かしてから、霊夢は「空を飛んで」出かけて行った。普通ではあり得ない「空を」「飛んで」…。
「…チキショー」
悠は、まだこの世界についてよくわかっていない。
☆
掃除を終えて、縁側で一服する悠。
「…ん?」
空を見上げると、誰かが箒にまたがって空を飛んでいる。
「うわ!飛んでるし!こっちきたし!」
「お!復活したか!」
「喋った!?」
「喋るわっ!」
「ヤベェ…!なんだこいつは…!」
「人間だわっ!」
…
……
………
「友だなっ!」
「友だぜっ!」
ガシッ!っと、握手を交わす二人。ボケと突っ込みのポジションが確立した!
「まだ名前を言っていなかったな。俺は鬼怒刈悠だ。よろしく。」
「私は霧雨魔理沙だぜ。宜しくな、悠。」
「あぁ。」
再び握手を交わす二人。
悠は、さっきの疑問を問う。
「なぁ魔理沙?魔理沙はどうやって空を飛んでるんだ…?」
「え…いや、普通…に…?」
「普通に空を飛ばれてたまるかっ!」
「えぇ…」
「何なんだよ…この世界はどうなっているんだ…っ!」
「あぁ…まあ…うん…大変だなぁ…」
「魔理沙っ!」
「お、おう!?」
「教えてくれ!」
「任せろ!」
「なにをっ!」
「わかんないぜっ!」
「だよなっ!」
「だぜっ!」
「「ハーッハッハッハッハッーっ!」」
…
……
………
「空の飛び方…教えてください…」
「おう…」
★
まず、大事なのは「自分の中の力」を感じることだ!
「力?」
例えば、人間は霊力だぜ。
「…ん?」
「どうしたんだぜ?」
「その話、どこかで…あ、霊夢が言ってた。」
「……なあ?」
「ん?」
「霊夢は…今、どこにいる?」
「どこって…買い物に、行くって…」
「どうやって行った?」
「いや、普通に飛んで…」
「なんでその時点で驚かなかったんだぜ!?それに、普通に飛ばれてたまらんやつが『普通に…』って!」
「おぉ…」
ま、まぁ飛んでいるイメージが大事なんだぜ…。
まずは、「普通は飛べない」っていう思いを無くすことだぜ?
「何だよこの世界どうなってるんだよ…!」
…そういう世界なんだぜ。あたしもそこは苦労したんだぜ…。
そうだな…自分の体重を感じないように…とか。
「…地球には重力という物体を地球の中心に引っ張る力があって重力は地球上の物体全てにはたらいているから体重が無くなる事はない訳だから体重を感じるなということは無理だけどそうだ重力とは逆の力を生み出せることさえ…っは!?」
「…お前らの世界の科学力って、怖いな」
★
「とんでるいめーじ…とんでるいめーじ…よくわかんねぇな。もっと簡単にイメージが掴めたらな…」
「なんなら、あたしと飛んでみるか?」
「そりゃいいかもな。きっとイメージがつかめるな。」
「まずこの箒だがな!この箒はあたしが箒の種類によって空の飛び方が変わるって気づいて……!」
(あ、これスイッチ入っちゃったヤツだ)
…
……
………
「は、話が一向に進まねぇ…!」
太陽は南の空高くに昇っている。
「えっと…?何の話だっけ?」
「何だっけ?」
「ふう。ただいま~。あ、魔理沙いらっしゃい。」
空を「飛んで」帰ってきた霊夢。
「あ!そうだよ空を飛びたかったんだ!」
「それだぜ!」
「いや~スッキリ。」
「じゃあスッキリしたことだし帰ることにするぜ~。」
「おう。じゃあな。」
「また会おうぜ~」
そう言って箒にまたがり、空を飛んでいった…。
「霊夢~腹減った~」
「あなた達、顔合わせは初めてのはずなのに何でそんなに仲がいいのよ?」
「イヤーなんか意気投合しちゃってさ~」
「へ、へぇー…」
「あ!空の飛び方を教えてもらうの忘れてた!」
「……」
「…霊夢さん」
「…はぁ。わかったわよ。お昼ご飯を食べてからね?」
「おし!さすが霊夢」
霊夢のご飯は美味しい。
…
……
………
★
あれから数日が経った。突然そういわれてもって思うかもしれないけれど…彼はお腹に穴が空いていたのよ?何でピンピンしてるのよ。しばらく危なっかしいことはさせられなかったわ。3日もしたらある程度痛みは引いたっていうし、秋は天候も崩れやすい…しばらく我慢してもらっていたわ。
そんなこんなで今日は悠に飛び方を教える日よ。
そうね、悠…イメージっていうのなら助走でもつけてみたら?あなたからは「力の気配」を感じるから素質はあるの。
「助走か…(マ〇オの三段ジャンプの要領かな?)」
そうよ、助走。
「ヨッ!ホッ!ホアチャァ!!」
あら、うちの神社よりも高く飛べたわね。並みの人間の跳躍力の遥か上よ。これは成功じゃないかしら?
「飛んだ…!飛んだぞ!れいぃううおぉぉ!!」
…前言撤回ね。ただ単に「跳んだ」だけだったみたいね。 ジャンプしたらそのまま落下するのよね。
「そんなのんきなこと言ってんなうぉぉぉぉ!!?!??」
このままだと死ぬわね。
「だからのんきなことヒィィィィィィィィィィ!だしゅげで~あ"ーーー!!」
このままっていうのも後味悪いし…面倒ね…
★
そう呟くと空へと飛び、霊夢は悠を抱えに向かう。
「駄目だぁもうおしまいだ~!!…あ、霊夢?ありがとう!た、助かったー…」
「まったくもう…」
霊夢にお姫様だっこされながら、悠は地上に無事生還を果たす。
「…(ウルウル」
「…」
霊夢は悠の泣きそうな顔をじっくりと観察してから両手の力を抜いた。地面に尻で着地をする悠。
「グヘッ!」
「あら、ごめんなさい」
「な、なにするんだ!」
「あなたのつぶらな瞳にイライラしたの。許して♪」
「…」
「まあいいわ。次はもうすこし加減して跳ぶのよ?」
「あぁ、わかったよ」
それから空を飛ぶ練習は日がくれるまで続いた…。
☆
霊夢が夕飯を作っている間、悠は濡れたタオルで体を拭いていた。今日一日の汗や先日の傷口を綺麗にしながら、今日あったことを振り返る。
「いってててて…ん~…霊夢が言うには『力』なんだよな。でも、実質『力』よりは『エネルギー』の方が近いかな~…」
『力』とは、運動している物体の進行方向を変える、物体の状態を変える、物体を運動させるはたらきがある。
そして『エネルギー』とは、他の物体を動かしたり、変形させることができる「能力」のこと。
例えば、今日の自身の跳躍。あれは「上向きの力」をもった「エネルギー」に「霊力」を加えて上向きの力を増加させ、結果として上向きの力がより大きくなった、ということだ。
「要は、この世界で言う『力』っていうのは『体内生成できるエネルギー』を指しているってとこかな。」
『力』には他の意味もある。
身につけた能力・実力。それに加え、事を行う意気込み。気力。物理的だけじゃなくて、精神的にも作用できる。
「辞書の『力』という言葉をそのまま現実に引きずり出したみたいだな…魔理沙が『飛べないイメージを取っ払う』って言ってたし…そういうことなのか…」
そうこうしているうちに晩御飯の時間になった。今日の夕食も霊夢のおいしい手作りごはん。悠が、ちゃぶ台を挟んで向かいに座る霊夢から「村のヒトに顔合わせをするから明日はお出かけだ」と言われ、遠足が待ち遠しい子どものようになかなか寝付けなかったということはまた別の話…。
チョット難しい、科学的なやつ。
「力」とは、運動している物体の進行方向を変える、物体の状態を変える、物体を運動させるはたらきがある。
そして「エネルギー」とは、他の物体を動かしたり、変形させることができる「能力」を指す。
力はエネルギーを必ず持っている。
力には「物体の状態を変える」ことができる『能力』(=エネルギー)がある。
つまり、エネルギー(=能力)を持っているから、力は物体の状態を変えることができる。
なので、悠君はその「エネルギー(能力)の大きさ」そのものを大きくできる、ということをイメージして跳んだわけですね。(=通常のジャンプする「力」の「エネルギー(=能力)をより大きくした」ことで、結果としてジャンプの力が大きくなった)
通常よりもエネルギーの大きさが大きくなるため、最終的な「跳ぶ」のに必要な「上向きの力」を大きくできたのですね。俺も何を言っているのかよくわからねぇ。
ご感想お待ちしております。
意外とヘンテコな表現が多いのでご指摘して下さいますと、主が発狂しながら白目を剥いてピョンピョンしながら喜びます。もれなく死にます。