Emotoin monster ~感情の舞い~ 作:夢見る座禅組
幻想郷の地理は、こちらのサイトの地図を利用させていただきました。
http://gakuyourou.web.fc2.com/text/text_map.html
あと、人里と博麗神社の間には魔法の森があるようですが、物語の便宜上二つに分けて、村と博麗神社との間に道を作ることにします。
「…結局、寝れんかった」
遠足が楽しみすぎて眠れない幼稚園児の悠は、布団の上でふて寝をしていた。
「…辺りの散策でも行ってみるか。」 夜の気配は、もうじき顔を覗かすであろう太陽によって少しずつ薄れてきている。
「んぅ、んーーっ!朝はやっぱり気分がいいな。」
一つ、伸びをしたのち、朝の冷えた風が頬を掠めるのに気を向けてみる。
「そういや、ずっとこの格好だな。」
『幻想郷』と呼ばれる、この世界に迷い込んだときと、何一つ変わらない格好。
「せめて寝間着と私服がもう少し欲しいな。」
今度、買ってもらうか…。
境内に出て、博麗神社の周りをよく見ると、木々に囲まれた場所にポツンと博麗神社があるだけ。どうやら山を整地して建築したようだ。周りの木々は赤や黄色に色づき、綺麗な紅葉を主張している。そのことから今が秋だとわかる。
鳥居をくぐった所には階段がある。ここを下れば、人里とやらに行けるのだろうか。
「わ…すげぇ…」
階段を下りようとした時、そこが『幻想郷』を一望できる場所であることに悠は気づく。
まず階段を下りた先には森があり、そこを抜けた先に建物がたくさんある。どうやら、あそこが人里のようだ。
太陽は博麗神社の後ろから昇ってきているから、ここは東なのだとわかる。
北側には大きな山が見える。麓には…湖だろうか?
現世ではなかなかお目にかかれない、自然豊かな土地だ。初めて見る光景に悠は感動する。
早速、目の前の階段を駆け下りて森を走り抜ける。道はあるが、あまり誰も立ち入らないからであろう、お世辞にも綺麗とは言いがたい。だが、そんなことはお構い無し。
息が切れるまでしばらく走っていると、森を抜けた。森の出口には少々大きめの建物が一つあった。建物の入り口に丸椅子があったので、少し休憩させてもらうことにした。しかし、何故丸椅子なのだろうか?パチンコでもあるとか?
「はぁっ、はぁっ、…。」
息を整える間に、建物を観察してみる。
その建物には「香霖堂」と書かれた看板が、建物の入り口の上に取り付けられていた。
「香…霖堂、か。はぁっ…。」
「見馴れない顔ですね。」
しばらく椅子に腰掛けて休んでいると、一人の男性が現れた。声は低いトーンでありながらも、どこか暖かみのある声色だ。
「あぁ、勝手にすみません…」
「勝手に使ってくれて構いませんよ?休憩してもらうための椅子です。それより、よくこれが座るものだとわかりましたね?」
「え?いや、だって、普通の、何の変哲もない椅子ですよね?」
「香霖堂」の家主だろうか。髪は青白く、眼鏡を掛けている。服は黒と少しくすんだ青を基調とした服だ。彼は悠を見据えるかのように、悠の瞳を覗く。
「…フム。きみ、最近幻想郷にやって来た者だね?」
「よくわかりましたね。」
「ああ、この椅子はね、外界から流れてきた物なんだよ。それを椅子だと判断できるのは僕か、はたまた同じ『外界から流れてきた』君か…」
「はあ…。」
「あぁ、すまない。まだ名乗っていなかったね。僕は森近 霖之助(もりちか りんのすけ)。よろしくたのむよ。」
「俺は鬼怒刈(きぬがい)悠です。」
右手を差し出された。握手をする。
霖之助さんが口を開く。
「さっきの話だが、僕は『道具の名前と用途が判る程度の能力』の持ち主なんだよ。だから、それが「丸椅子」といい、座るものだと判別できた訳さ。」
「て、程度の能力…?」
「ああ、そうか。わからないよね。この世界には、人間は勿論、妖怪や神、魔法使いや魔女、妖精などが存在する。それぞれ霊力や魔力、妖力に神力といった『力』を持っている。ただ、殆どの人間、妖怪、妖精は大きな霊力を持たない。だけど例外もある。突出した力を持った人間や妖怪、妖精たち、その他にも「魔法使い」「魔女」「神」等々の秀でた力を持つ者は『特殊能力』を持つことができる。その『特殊能力』のことを幻想郷の僕達は『~程度の能力』と呼んでいるのだよ。ちなみにボクの能力は道具の名前と用途が判る程度の能力、だね。」
つまり、『程度の能力』というのは、この世界の能力の呼称の仕方のようだ。少し独特な呼び方だ。
「っと、そろそろ腹が減ったな。霖之助さん、自分はそろそろ失礼します。お陰でまた新しい発見ができました。」
「そうかい。またいつでもおいで。今度は開店時間にでも。」
「ええ。では。」
…
……
………
「ただいまー。」
博麗神社へ帰ってくる。
「お帰りなさい。朝ごはんができているわよ。」
二人は本殿のうらの居住空間へ行き、朝食を食べ始める。
「悠、あなたどこへ行っていたのよ?」
「香霖堂っていう場所まで行ってきた。」
「っ!?」
霊夢が大変驚いた表情で悠を見る。
「ど、どうした?」
「あなた、どこまで行ったのよ!?」
「どこって、香霖堂っていう場所まで森を通って行ってきた。」
「道中、襲われたりしなかった?」
「へ?」
「いい?この世界には危険な物がたくさんなのよ?妖怪だっている。今回はなにもなかったものの、次からは絶対に一人で出歩かないでね?」
「いや、でも…」
「いい?」
「お、おう。」
おしきられてしまった。
…
……
………
朝食をとり、身支度をして二人は人里へ向かう。
霊夢は飛べるため、悠を自身の手に掴まらせて運んでいった。
ついさっきまでいた「香霖堂」を通り過ぎて、人里の前に降りる。
悠たちの前には門があり、人が立っている。
「お疲れ様。」
「おう、嬢ちゃんか。と、後ろの坊主は?」
「外界から流れてきたのよ。怪我をしているから、しばらくは私の家で居候(いそうろう)。」
「鬼怒刈悠といいます。」
「ここは人の住まう村。あんたらは人間だから入れるのさ。ようこそ、人里へ!」
門をくぐり中に入ると、一本の道が真っ直ぐ続いている。わきを見てみると、白菜や人参、大根などが並んでいる店がある。いわゆる八百屋だろう。少し向こうを見れば、カンッ!カンッ!と、甲高い音を鳴らしながら、鎚を使って打ち付ける音が聞こえてくる。鍛冶屋だろうか。
村の中にいる誰しもが、楽しそうに、幸せそうに笑っている。
霊夢は真っ先に八百屋さんへと向かう。
「おはようございます、おじさん。」
「おうおう、霊夢か。と、後ろの坊主は?ああ、霊夢も年頃の女の子じゃもんな。」
「バカ言わないで。彼は外界から流れてきたのよ。」
「初めまして。鬼怒刈悠です。」
「ワシは見ての通り、ここの店主じゃ。よろしくな。」
さっきの門番といい、ここの店主のおじさんといい、みんな優しそうで気さくな人だ。
そんなことを考えていたら霊夢はあっという間に買い物を終えていた。
「悠の日常品も買わなくちゃね。」
「そうだな。歯ブラシとか、そういう衛生的なものは最低限ほしいな。あと衣服か。」
「ええ、そうね。房楊枝(ふさようじ)なんて、どこで買えるんだったかしら。」
「ふ、ふさ…?なんだそれ?」
「ええと、あなたたちの世界でいう歯ブラシってところね。」
話を聞くと、柳や灌木(かんぼく)の枝を十数センチに切ったものを煮て柔らかくし、さらに先端を叩いてフサフサにしたものらしい。なるほど、これも幻想なワケだな。
荷物持ちの悠がいても両手が塞がってしまうほどに買い物をしたため、昼食もかねて一旦家に戻る。
昼食を終えると、また家を出る。人里に行く前に悠は香霖堂に行きたいと話したため、これからまずは香霖堂へ向かう。霊夢曰く、香霖堂は「ガラクタ屋さん」だとか。
「いらっしゃ――って、霊夢か。と、それと、悠くんじゃないか。ようこそ、香霖堂へ。」
「どうよ悠?私が言った通り、ガラクタ屋さんでしょ?」
「ガラクタ屋さんだなんて失礼な!これは外界から流れてきた優れものの数々だよ!それをガラクタで片付けるなんて…!」
「霊夢と霖之助さんは知り合いなのか?」
「ええ、まあね。」
「あ、石油ストーブだ…」
「流石は外界から来ただけあるね。そうさ、これはストーブといって、灯油という油を使って炎を燃やし、暖めるための道具さ。あぁこれは非売品だよ?」
「電子レンジ…」
「これは電子レンジといって、電気という力を使って水分を含むものを暖めることができるのだよ。ああ、それも非売品だよ?」
「パソコンじゃん。」
「それはパーソナルコンピュータといって、いわば、外の世界の式神らしい。命令されたことをこなすことが出来るらしいが、どうやらこれも電気が必要みたいでね。あ、これも非売品だよ?」
…あ、あれ?ここの店って、売ってるものあるの?
「霖之助さんはね、ガラクタまにあっていうやつなのよ。」
「何がガラクタだ!この素晴らしさがわからないってのか、君は!?」
「わからないし、わかったところであなたみたいになるのも嫌だからわからないように努力するわ。」
「霖之助さん」
「ん、どうしたんだい、悠くん。」
「この洋服…」
「なんだい、その服を買ってくれるのかい?」
「悠、あなたってば見慣れない服に興味を持つのね。」
「これは外界の服のようだけど、誰も目をつけてくれなくてね。買ってくれるのなら安く提供するよ。」
「そもそも霖之助さんのお店ってお客さんは来るのかしら?現に売れる物も無いようだし。」
「何を言うか。この前はね、銀髪で、ちょっと変わったメイドさんがうちの店にティーカップを買いに来たばかりだよ?」
―――メイド?こんなところで?…なにか、嫌な予感がするわ…。面倒ね…。
霊夢は、直感ではあるが、これから面倒事が起こるのではないかと思った。だが確信はないため口にはしない。
「なぁ霊夢、ちょっとここで衣服を買いたい。」
「――え!?あぁ、服ね?まあ、悠がそれでいいならいいけど。あ、霖之助さん、今日もツケておいてね。」
「またツケかい?硬貨の一枚ぐらい払っておくれよ。」
「いいじゃない、硬貨の一枚ぐらい。」
「いや、君が払うのは一枚どころか紙幣数枚なんだけど?」
「さ、悠、適当に服を選んでて。ワタシはもう少し食糧の貯蓄を買ってくるから。」
そう言い残して霊夢は店を出ていってしまう。
話によると通貨は現世のものらしい。
「…」
「…」
「…霖之助さん、いつか、返します…。」
「そうしてくれると、助かるよ…。」
…
……
………
しばらくして、霖之助が妙案を思い付いたような顔で優に悠に話しかけてくる。
「あのさ、悠くん。」
「はい?」
「君さえよければだけれども、うちで働いてみないか?」
「はい?」
「あぁ、働くと言ってもね、ただ単に物を集めてほしいんだよ。」
「と、言いますと?」
「君は博麗神社に住んでいるって言ったよね?」
「ええ、まあ。」
「博麗神社は外界と幻想郷を隔ている結界のすぐそばにあってね、そこには『幻想となったもの』や、『外界から紛れ込んだ物』が近くに落ちていることがよくあるんだよ。」
「はい。」
「君にはそれを拾ってきてほしいんだ。」
「拾ってくるだけですか?」
「あぁ。なんでも構わない。あ、勿論それは僕が買い取るから、それをツケに回す。こういうことさ。拾ってくるものは何でも構わない。外界の進んだ技術はすごい。もっと、色々なものを見てみたいんだよ!」
「ええっと、例えばこういうのとかですか?」
悠は、何故かポケットに突っ込んであった定規を取り出す。
「フム。定規だね…長さを計るもの…幻想郷にも存在するが、面白い定規だね。」
悠が元居た世界にはある、普通の定規。プラスチック製だ。
「これは…引きやすいな!なんだい、つまりは早速売ってくれるのか?」
「ええ。持ってても使わないと思いますしね。」
「ありがとう!そうだな、500円で買おう!」
た、高っ!!100均で買ったやつですよそれ!いいのか!?
「さあ、あと『2万9500円』だ!はりきっていこうじゃぁーないか!」
…おいちょっと待てなんだよ、その莫大な借金は?空耳かな??んん?
「あ、今日も購入してツケに回したから3万1500円か。」
あ、増えた。空耳どころか増えた。
…
……
………
外を見ると、辺りは夕陽で赤く染まっていた。同時に霊夢が迎えに来たため、今日のところは帰ることにした…。
夜…。
悠は霊夢にあの莫大な「ツケ」について問いただすことに。
「あの、霊夢さんや」
「何?」
「霖之助さんの、あのツケはどうすればあんな額になるのです?」
「今までずっと貯めてきたからよ?」
「いやそんな偉そうに言われても…そこまで渋る必要があるのか?」
「私は妖怪退治が本業よ。事件があれば収入があって、ないとお金は減る一方。収入が確実に不安定な仕事をしてるのだもの。節約するのは当然よ?」
「なるほど、しっかり考えているんだな。」
「当然よ!」
それにしても貯めすぎではないか、とか、節約どころか一銭も支払ってないじゃないか、とツッコミを入れたくなったが、ここはグッとこらえた。
「悠?明日は、幻想郷で生きる上で必要となるであろうことを教えるからね。」
「必要となるであろうこと?」
「ま、身の安全を守るための方法、かしら?」
「どういうことだ?」
「今日の朝にも言ったけど、力がさほど強くない妖怪や妖精は、本能のままに生きているからいつ襲われてもおかしくないの。だから、身を守るための方法よ。」
明日も大変そうだ。
~おまけ~
「さてっと…寝る前に歯を磨こうか。ずっと磨いてなかったんだよな。」
「……(シャコシャコシャコ…)」
「お、霊夢だ。霊夢も歯磨きか?…って、ん?あれ?」
「何よ、じろじろと。」
「いや、だって…」
「?」
「なんで俺のは超スーパー昔風歯ブラシでなんで霊夢のは現世でも売られてるやつなんだよ!俺もその歯ブラシの色違い使ってた!安くていいよなコノヤロー!」
「ああ、これね…。……あれ?…あなた…今さら房楊枝なんて使ってるの?プッ」
「霊夢がこれだっていうから買ったんだよ!騙されたこんチキショー!!」
わ、わ、誤字だらけやん
てか、悠くんは傷を負ったばかりなのになんでピンピンしてるんだよ…これどう言い訳すれば…