Emotoin monster ~感情の舞い~   作:夢見る座禅組

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空白の期間はゲームゲームゲーム時々原チャゲームゲームゲーム……
申し訳ありません……あ、後悔はしていません。開き直りまーす!(殴


第7話 ようこそ紅魔館へ!お出口は後ろです。

「ふわっぁぁ~…寝起きから激しい色はちょっと遠慮だぜー…」

 霊夢と悠が「紅い空」について動き出したと同時刻、霧雨魔理沙もまた、紅い空を見つめいた。

 

「朝はゆっくり過ごしたいんだが…これは見過ごせないぜ。」

 

 口許にひとつ、笑みを浮かべた魔理沙は「異変」を解決するために動き始める―――。

 

……

………

 

 速攻で準備を済ませて家を飛び出し、愛する箒に股がって紅い空を高速で駆け抜ける。

「妖怪の山の麓の湖、だったよなー…」

 

 魔理沙は、昨日「『文々。新聞』の編集者その他もろもろ」の射命丸文からもらった情報をもとに、「洋館」へと向かっていた。

 間もなくして目の前に大きな湖が見えてきた。本来なら青空を写して美しいスカイカラーになるはずの湖も、今日ばかりは紅色だ。

 

「おぉ…遠目でもわかるでかさの洋館だぜ…!そりゃ文の奴が騒ぐのも納得だぜ…!」

 

 その「洋館」というのは、赤レンガで建築された西洋風の建物のようだ。そして異常な大きさである。幻想郷で今まで見てきた中でもこんな馬鹿みたいに大きな建物など見たことがない。

「くふふ…ああもう相当なお宝の予感だぜ…!待ってろよお宝のボス!」

 異変の解決という単語が彼女の頭の中に浮かんでくるのはしばらく先のことである。

 

……

………

 魔理沙は洋館へ向けて湖の上空を飛行している。

「…ぶぅえっけしゅ!…うぅ…何だこの寒さは…これから雪でも降るのか~?」

 飛行中、魔理沙は寒さに震えていた。しかし、季節は秋。今現在、空にかかる雲ほど濃い色ではないが山肌は赤く染まっている。そのため魔理沙が現在進行形で体感している寒さは、常識的に考えてみればまずあり得ないことなのである。

 そう、「湖が凍るほどの寒さ」などあるはずがないのだ。

 

「お?さっそく異変首謀者様のおでましか?」

 目前で何者かが滞空している。

 

「チ、チルノちゃぁーん!危ないよー!止めよー!」

「大ちゃん!アタイを止めないで!」

「こんなこと本当に止めようよ!ね?」

「だってだって!どいつもこいつもみんなして『へたっちゃって』!情けないったらありゃしない!それに比べてアタイはどうよ…?やーん!アタイったら最強じゃない!見てよ大ちゃん!この湖を凍らせてるのよ!なにせ、アタイは最強だもの!そして天才よ!向かうところ敵無しね!」

 

「みんなの元気がなくなってるのはこの雲のせいだと思うけど…」

「え、そうなの?どうしてよ?」

「だって、雲が真っ赤になっちゃってから、みんなの元気が無くなっちゃったんでしょ?」

「…?…よくわからないけど流石は大ちゃんね!頭が良いのね!」

「い、いや、私なんて…えへへ…」

 

 

 どうやら、目前の妖精たちはどちらかというと被害者のようだ。しかし、紅い雲のせいで妖精妖怪は弱るのか。ますます気になるところだが――。

「無駄な戦闘は避けるべき…あの妖精どもは異変と関係ないみたいだし先に行――」

「だれ!?」

「ゲッ」

 

 先を急ごうとした魔理沙は妖精のうちの片方に見つかってしまった。

 

「『ゲッ』って何よ!アタイは最強なんだからね!お前なんかもより強いんだから!」

「チ、チルノちゃん!ダメだよ!」

 

 よく見ると、一方は氷の妖精である「チルノ」だ。もう片方は、いつも「チルノ」の後ろを追いかけている妖精だ。妖精のなかでも力の強い妖精のため、「大妖精」と呼ばれている。

 

「あーはいはい。お前らと遊んでやれるほどわたしも暇じゃないんだぜー?」

そう言って手をヒラヒラさせる魔理沙。

 しかし、氷の妖精チルノはどのように受け取ったのか…

「そんなに嫌そうな顔しなくても良いじゃないのよ!って、そうよね!私と戦いたくなんてないわよね!何しろ幻想郷で一番さいきょーな私と戦うなんてむぼーそのものよね!」

 

「なんでもいいからこの寒さは勘弁してほしいのぜ…!」

 

 チルノが力強く口を開くごとに、肌に触れる冷気も鋭さを増す。

「…え?もっと涼ませろって?」

「言ってないぜそんなこと!」

チルノが不適な笑みを浮かべると同時に、一段と寒さが増す。

 

「チ、チルノちゃん…?」

「仕方ないわね!この私が涼しくしてあげるわよ!」

「だから嫌だったんだよー!」

 

「涼しくなぁーれ!」

 

 滞空していたチルノが両手を広げ、猛吹雪を辺り一帯に発生させる。その吹雪に混じって、砲丸投げの玉ほどの、それも先端の尖った氷塊が魔理沙に向かって飛ばされてくる。

 

「うわっと…!当たったらシャレにならないぜ!」

 

「まだまだ!もっといっちゃうんだからね!雹符!『ヘイルストーム』!」

 

 チルノは魔理沙に向かって、大きな氷塊を扇状に飛ばす。魔理沙は当たるまいと、箒を右に左に、時には体を捻り、時には戦闘機がロールするように回り、弾幕をかわしていく。

 

「こんなの余裕だぜ――っとと…!」

 余裕の表情を浮かべていた魔理沙だが、その表情はすぐに焦りの物へと変わる。

 氷塊が進行方向を、魔理沙から見て右側へと次々に変え始めた。ただ進行方向を変えただけならまだよかった。弾幕は扇状に広がっていたため、魔理沙の左側には氷塊がたくさんある。それらが一斉にこちらを向き、襲いかかってくるではないか。こうも突然だと魔理沙とて慌てる。

「…面白くなってきたぜ…!」

 

 口元に笑みを浮かべ、自身も弾幕による攻撃を始める。悠に見せた時と同様に魔法陣を作り出し、そこから弾幕を撃つ。

 同時に移動も開始する。魔理沙の右側に進み、弾幕の流れに従う。

 上に下に、右に左に、時には回り、時には弾幕で相殺。チルノに弾幕を撃ち込みながら、チルノからまっすぐに放たれた弾幕も次々とかわしていく。

 

「中々やるじゃないの!ならこれはどうかしら!」

 

 今の攻撃では無理と悟ったのか、チルノは別の攻撃手段に移る。

 

「とっておきよ!凍符!『アイスストーム』!」

 今度は魔理沙と同じような拳大の弾幕をばらまき始めた。色は赤、黄色、青、緑と、色とりどり。

「おいおい?これがとっておきか?」

 

 先程より幾分か避けやすい。とっておきの弾はまっすぐに飛んでくるだけだ。油断しなければ絶対に当たりはしない。

 しかし、とっておきはこれからのようで…

「いまっ!」

 チルノが叫ぶと、ばらまかれた弾幕が一斉に色を失い、空中で停止した。もちろん、慌てて魔理沙は急ブレーキをかける。

「うわっと!取って置きってこれのことか…!」

 だが、止まってしまえば問題ない。避けやすいことこの上ない。

「まだよ魔理沙!動けー!」

「――っと…!」

 再びチルノが叫ぶ。同時に止まっていた弾幕がゆっくりと再始動する。

 動き始めた弾幕は先程までの進行方向とは無関係に動き出す。進行方向に飛び出してきた弾幕にひやひやしなが らも、回避に相殺と、次々に弾幕をいなしていく。

 チルノの攻撃は止まない。再び動き始めた弾幕が散らばり、密度が薄くなってきたらもう一度弾幕を張り、先程と同じような弾幕を射出する。今度はさらに密度が増している。

「(だぁー!やりづらいったらありゃしないんだぜ!)」

 攻撃をしようにも、チルノの弾幕の濃さのせいで魔理沙の弾幕はすべて弾幕に阻まれる。

「おい!わたしはお前らと遊んでやれるほど暇じゃないんだぜ!いい加減勘弁してくれ!」

「逃げようったって無駄よ魔理沙!この、『サイキョー』の私の前ではね!」

「(あんにゃろ~っ…!!)」

 流石に苛立ちを覚えてきた魔理沙は、自身も「とっておき」の一撃をお見舞いしてやろうと考える。

「そうかよ!後悔するんじゃないぞ!」

 悠に模擬戦を見せた時にも使用した、八角形の立体「八卦炉」。スカートのポケットをあさり、それを取り出す。

 魔理沙はとっておきのために八卦炉に魔力を流し込みながらバックする。チルノも3度目の弾幕を張るが、魔理沙の後退の方が、若干速いか。

 魔理沙の後退にあわせて弾幕が追いかける。しばらく後退したのち、魔力を流し込んでいだ八卦炉から魔力が逆流しているのを感じ取った。「魔力が溢れている証拠」に気がついた魔理沙は、八卦炉を前に突きだし、不適な笑みをひとつ浮かべた魔理沙は言い放った。

「おいチルノ!私にケンカを売ったこと後悔させてやるぜ!」

 前につきだした八卦炉から虹色の光が溢れ出し、次第に光の強さが増してくる。

「行くぜっ!恋符!」

 八卦炉に充填した魔力に、さらに大量の魔力を流し込む。

「マスタースパーークッ!!」

 八卦炉に急激に流し込んだ大量の魔力が、決壊したダムのように溢れ出す。

「…え」

 八卦炉から溢れ出た魔力は極太のレーザー光線となり、チルノを飲み込み―――

 

……

………

「本当にごめんなさいっ!!」

 

「あー…まぁ…別に構わないぜっ!」

 魔理沙は落下していくチルノを抱きかかえ陸地まで運んだ。

 

「ありがとうございます!ご迷惑をおかけしました!…ねぇ!チルノちゃんってばぁ!チルノちゃーん!起きてぇー!」

 

 本来ならば妖精は「自然」がある限り消滅しない。しかし大妖精はしきりにチルノを心配する。

 

「チールーノちゃーーん!」

 

「(ま、何もわたしがでしゃばることもないな。)」

 

 そう自分に言い聞かせ、愛する箒に股がった魔理沙は目的地へと急ぐ。

……

………

 時を同じくして、霊夢は例の「洋館」に足を運んでいた。

 

「しっかり門番まで居るものね。怪しいことこの上ないわね…はぁ…」

 

 門番が正門前に構えているため、遠くから洋館を眺めてみる。

 

 やはり面倒だ。これだけ怪しい証拠が揃っていても、勘で強硬突入した挙げ句、関係なかったりしたらどうしよう…

 

「…いやいや、まさかね。絶対にここよ。そうに違いないわ…!ここよね!うんうんそうよね!よし行きましょう!」

 

 気合いを入れ直し、洋館へ飛翔を再開する。

 

 

 

「こんにちは門番さん!お勤めご苦労様!」

「あ、どもー」

「やっぱり門番って大変そうですね!」

「ですねー」

「それなのにずっと門番のお仕事をしてるんですね!」

「ですねー」

「私も入りたいんだけどダメなのよね!」

「ですねー」

「…」

「…」

「……」

「…?」

……

………

「失せろこのファッ○ン門番がオラァ!!!」

「ちょ!」

 しばしお互いに見つめあったのち、霊夢が自身の武器「お払い棒」を力任せに振るい、門番がすんでのところで真剣白羽取りの要領で押さえる。

 

「いやいやいや!?あなたいきなり何してるんですかぁー!ケガしちゃうじゃないですかぁー!」

「こっちはあの赤い雲のせいで迷惑してんのよ!とっととあの変なのどうにかしなさいよ!」

「私だって今朝お嬢様に『頑張りなさい!』って言われただけで何が起きているのかさっぱりすっかりちんぷんかんぷんなんですよ!」

 

 近くで門番を見てみると、中々の長身の女性だとわかった。服装は緑を基調としたチャイナドレス風。あとよく分からない帽子を被っている。

 

「おとなしくッ…ここをッ…!とお、しなさいッ!」

「嫌ですぅー!私の晩御飯!ハンバーグ食べたい!毎日TKGはこりごりなんですよー!ハぁッ!!」

「…っと。流石に一筋縄じゃ行きそうにないわね…。」

 

 お払い棒を押さえながら門番が蹴りを放つ。

「その体制からでも足が動くなんてね…私もやってみようかしら…」

 押さえられていたお払い棒を無理矢理引っこ抜き、門番が放った蹴りを間一髪で防いだ霊夢。

 

「止めた方がいいですねー。私は妖怪ですから多少無理が聞くだけですのでー。」

「自己紹介がまだだったわね。私は愽麗 霊夢っていうの。一応巫女なんだけど妖怪退治で生計を立てているわ。」

 一度後退し、距離をとった霊夢が自己紹介をする。それに答えるように門番が口を開く。

「私は『紅 美鈴(ホン メイリン)』。ここ、『紅魔館』のあるじ、『レミリア・スカーレット』お嬢様にお仕えする門番です!お嬢様に仇なすものは私が退治しますよー!」

 

 ここは通さないと言わんばかりの意気込みを見せる門番改め美鈴。

 ふぅっ…と、ひとつため息を霊夢が吐き出す。

「そう…それなら、私も『美味しいご飯を食べるために』お仕事をしましょっかねー。」

 そう呟いた霊夢は、左手の指で袂(たもと)の中のお札何枚かをはさみ、その手を前に突きだす。左手の甲にはお払い棒を握った右手が添えられる。

 両者がしばし睨み合う。

 次の瞬間、美鈴は「この状況を作った時点で自分が負けていた」ことに気付く。

 霊夢はお札からマスタースパークよろしく極太ビームを発射した。

「鬼畜ぅー!?」

 霊夢のビームは、飲み込んだ美鈴ごと紅魔館の門を吹き飛ばす。

「思いのほかあっさり真似できたわね…マスタースパークも大したことないわね。」

 あわよくばこの鬱陶しい館ごと破壊できれば…とは考えてはいたが、それほどの威力がないのであらば必要もないと霊夢は考えた。

「…住人に死なれても、それはそれで後味が悪いわね」

 どちらにせよ、霊力マスパーは封印するべきと思った。

 

 

 門番を始末して、早速紅魔館に足を踏み入れる。

 どうせ見つかるんだ。正面玄関から堂々とごめんくださいしようじゃないか。

「こんにちはー…」

 背丈の2倍以上ありそうな木の扉を押し開いて中に入ると、そこは大きな広間となっていた。入って正面には2階へと続く階段がある。

「無意味なほどに広い玄関ね…」

 返事もなければ人っ子一人いない広間に侵入、もといお邪魔する。

 

「…面白いところね。」

「ようこそ、『面白い館』へ」

「っ!?」

 霊夢の背後からクールでよく通る女性の声が聞こえた。

 背後をとられてしまったと考えた霊夢は、頭の中を臨戦態勢に切り替え前方へステップ、背後にいるであろう敵を捉えるべく空中で180度方向転換。

 しかし、確かに声は聞こえたのに、そこには誰もいない。

「…気のせい?何を緊張してるのよ…もう…」

「まったくですね。」

「ッ!」

 さっきまで誰もいなかった方向から、今ほどの声が聞こえてくる。

 まだ緊張を解かなかった霊夢は、振り返りざまに自身のお払い棒を瞬時に振り抜く。

 当てる気もなかった攻撃ではあるが、声の主の女性は綺麗なバックステップでそれを避け、十分に距離を取る。

「…」

「…」

 緊張を解かないまま、相手を観察する。

 つり目気味でしゅっとした顔立ち、服装は藍色を基調とした、ミニスカートのメイド服だ。メイド用カチューシャまでつけている。

 すらりと延びた細身の綺麗な足には、レッグ用の3連ナイフホルスターが両足に装着され、そのホルスター全てにナイフが納められている。

 

「ねぇ、あなたはこの館の召使いか何かでしょう?あなたの主人と話をしたいの。通してくれないかしら?」

 

「ご生憎、我が主は多忙でございますゆえ、お引き取りくださいませ。お出口は後ろにございますよ。」

「こちらこそご生憎、その『多忙』とやらのお話をしたいのよね。通してちょうだい?」

 

「あらお客様、お出口までの道案内が必要でございますか?お出口は後ろにございますよ?」

 

「いや、私が話したいのはあなたの主人で―――」

 

「お出口は、後ろです。」

 

「…」

 

「さあ、とっとと回れ右ですよ?」

 

「…簡単に通れるわけもないとは思っていたけど、ここまで挑発してくるんだったらこてんぱんにしなきゃ気が済みそうにないわね…!」

 霊夢がわなわなと震える。

 

「何をおっしゃいますか。こてんぱんどころか、あなたが返り討ちに遭うだけですよ?」

 

「その言葉も含めてあなたが発言した言葉全てを後悔させてあげるわよ!どこからでもかかってきなさい!」

 

 霊夢が臨戦態勢に入る。

 するとメイドは、

「では…お言葉に甘えて。」

スカートの裾をつまみお辞儀をして、「目の前から消えた」。

 代わりに――

「ッ!?」

 

 視界の隅から隅までが霊夢に向かって飛んでくる数十ものナイフで埋め尽くされていた。

 

「ッ…!ッ!!」

 

 予想だにしないナイフの雨をお払い棒で必死に捌く。

 良質な木材から作られたありがたいお払い棒はこの程度ではびくともしない。しかし霊夢は突然の事態に対処できなかったためか、頬や腕に小さな切り傷が一つずつ出来ている。

 

「あなた一体何をしたの…?」

 

「私の能力は『時を操る程度の能力』。何人(なんぴと)たりとも私の時間からは逃れられない…」

 

「…なるほどね。そういうタネだったのね。」

 

「お分かりいただけたようで何よりでございます。ではお帰りくださいませ。」

 

「そういうわけにも…いかないのよね。こっちだって生活がかかってるのよ。あんたらにはやられてもらうわ。」

 

「そうですか。仕方ありません。では…」

 

 メイドがポケットから何かを取り出した。懐中時計だ。

 

「ご容赦ください。ここからは…私の『時間』です。」

 

……

………

 

 一方その頃、悠はというと…

 

「えぇと、ここの湖の…向こう岸…だったよな?…あの建物が…」

――謎の洋館。

 先日会った「射命丸 文」から教えてもらった、突如現れたという謎の洋館がうっすら見える。

 ついさっき博麗神社に突然現れた不審者からもらった情報通りに来たらここに来てしまった。

 

「てことは、あの中に霊夢がいて…霊夢は異変解決をあそこで?」

 

 考えられるのは、真上の「真っ赤な雲」はあの館が原因だろうということ、さらに霊夢もおそらくそこにいる。

 

「おれなんかが行って足手まといにならないといいんだけど…」

 

 止めていた足を一歩踏み出そうとして…

 

「ねぇぇーチルノちゃーん…」

 

 100メートル程度むこうの、湖のすぐ側。

 

「何だあのチビッ子…こんな日に…」

 

 子供のような人影が見える。

 

「…やっぱりやめよっかな…いやでも……い、いくかー。」

 不審者の視線を感じた気がしたので、引き返すことは止めた。なんだか博麗神社で遭遇したおっかないあの人が見ているかのようだ。まああのチビッ子どもに一声かけたところでそう時間は食わないだろう。

 悠はチビッ子たちに今日は早く帰るように言おうとしたが――

「…!?」

 

 10と数メートルの距離まで近づいて、慌てて身を草むらの中に伏せた。

 

(妖精…?)

 

「チルノちゃーん…はぁ…どうしたのー?チルノちゃーん起きてー!」

 

 体つきは幼女だが、背中から羽が生えている。

 

 さっきからしきりに叫んでいる妖精の背中には、いかにも妖精らしい羽が生えている。半透明な羽はガラス細工のようで、こんな天気でもきれいに見える。

 その妖精の足元には、いかにも頭の悪そうな妖精がうつ伏せに寝転がっている。意識を失っているのか、呼びかけられているにも関わらず反応がない。

 

(……)

 

 しかし、彼女らは目的にこれっぽっちも関わっていない。わざわざこちらから厄介事に首を突っ込まなくてもいいだろう。

 

(悪いな妖精キッズたちよ…おれは先を急いでいるんだよ…あばよ…)

 

 何かしら起こってからでは、特に一人では解決できない事態になってからでは取り返しがつかない。悠は関わることを止めた。

 

 抜き足差し足忍び―――

 

ゴッ!!

 

「ぶぇっ!」

 

「だれっ!?」

 

 間抜けにも悠は木の根っこに足を引っかけてしまったのである!

 

「(ヤッベー襲われる!!こうなりゃ死んだフリだッ…!)……」

 

「…だれか…いるんですか?」

 

 叫んでいた方の妖精の忍び寄ってくる足音。

「……」

 

「だ、だれか、いま…だ、誰ですか!?」

 

 どうやら見つかってしまった。もうおしまいか。実に新鮮な生活だったよ。1週間だけだったけど。

 

「………(ガタガタガタ…)」

 

「…あ、あの……?」

 

「ヒェ…ごめんなさいごめんなさい……」

 

 しまいには震えだしてしまう悠。

 

「あ、あの、どこかお怪我でもなさ――」

 

「あぁー!!ごめんなさいごめんなさい!?!!?!」

 

「な、何もしませんから!襲いませんから!落ち着いてください!」

 

「ごめんなさいごめんなさい……え?」

 

「だいじょぶですよー…えへへ…」

 そう言って、妖精らしい羽の生えている方の妖精は苦笑いを浮かべた。

 

……

………

「わたし、人間のかたからは『大妖精』って呼ばれてるんです。」

「大妖精?妖精じゃなくて?」

「はい。妖精の中でも群を抜いて大きな力を持っているので…わたしと同じ種族――妖精の中でもわたしのように特徴がない子たちは他にもいるのですが、わたしのような『大』がつく妖精はいません。」

 

 落ち着きを取り戻した悠は、妖精らしい羽が生えている妖精改め「大妖精」から話を聞いていた。

 

「こっちではそれが常識なのか…?」

「あの、『こっち』とは…?」

「ここの世界だよ。幻想郷。」

 

 人差し指を地べたに向ける悠。

 しばし大妖精は思案顔を浮かべ、口を開いた。

「もしかして、お兄さんは外の方からやって来た方なのですか?」

「そうそう」

「それでおかしな反応をしたのですね。ふふっ」

「いやぁ、恥ずかしいところを見られちまった…」

 大妖精はおかしそうに笑った。

 

「あぁ、さっきの話だけど、大妖精は『大きな力を持っている』から、こうやってコミュニケーションを取ることができるわけなんだね?」

 

 悠の頭のなかには、霖之助とともに遭遇した妖精が色濃く残っているため、ついそういう風に考えてしまった。

 

「てっきり攻撃とかされると思ったよ。」

「いえ、わたしが少し変わり者なだけですのでそう覚えても問題はないと思います。」

 悠の考えを大妖精が肯定する。

 

「で、だ…足元のそっちは?」

「チルノちゃんのことですか?」

「チルノって名前なのか。妖精か何か?」

 

 足を伸ばして湖を眺めながら座っている悠と、その隣に座る大妖精。そのすぐ側には「チルノちゃん」が横たわっている。

 

「そっちの子は…大丈夫なの?」

「いつもの事ですので…あはは…」

 苦笑いを浮かべる大妖精。

 

「おまえらいつも何してるんだよ…」

「えっと、チルノちゃんは妖精の中でも特に大きな力を持っていまして、他の妖精からは尊敬と畏怖の眼差しを向けられるのです。チルノちゃんもそれをわかっているので、事ある事に色んな人に戦いを挑んでいるんです…」

 

「妖精の中では最強、みたいな?それなら今日負けたのはたまたまか?」

 

「あ、いえいえ、『いつもの事』というのは『やられて倒れる』というところまでがいつもの事でして…」

「いつもやられているのか…」

「妖精はどんなに強くても人間には敵いませんので。」

「へぇ、そうなのか。」

「他の子たちにおだてられて、すぐ調子に乗っちゃって…ほんとお馬鹿ですよね」

「そ、そうなのか…」

「どうしようもないお馬鹿ですよね」

「お、おう…」

「救いようのないお馬鹿ですよね!」

 

(すっごいキラキラしてるなー…)

 何故か嬉しそうに話す大妖精。

「でも、そんなところもすごくて…私なんかとは大違いで…」

「大妖精…?」

 

 

「ん…うぅ…だいちゃん…すぅ…」

 

「チルノちゃん…?」

「なんだ、寝てるだけじゃないか。安心したよ。」

 意識を失っていたチルノが突然寝言を呟いた。

 

「いつもの事ですけど、とりあえずは一段落ですね。」

 大妖精が安堵の表情を浮かべる。

 

「…大妖精とチルノは、仲がいいんだな。」

「どうしたんですか突然?」

 悠が大妖精に問う。

 

「チルノが言った『だいちゃん』ってのは、大妖精の事なんだろ?」

「仲がいいだなんて………わたしが、一方的に付きまとってるだけですよ。チルノちゃんがどう思ってるかなんて…」

 もしかしたら、チルノちゃんはわたしの事を――

 

「もし本当にチルノが嫌ってたら追い返すなり何なりするだろ?」

「そ、それは…」

「だってさ、『救いようのないお馬鹿』なんだろ?わざわざ本心を隠すような子じゃないんだろ、どうせ。」

「…なんで、そう思ったのですか?」

 

「みんなにおだてられて、調子に乗って、負け戦に自ら飛び込んで、こてんぱんになって、でもまた繰り返してしまって…そんな子が物事を深くまで考えて、裏の裏まで物事をよみきれるとは到底考えられないから。でも逆に言うと素直な証拠。好きなら好き、嫌いなら嫌いって言う子だと思うんだ。」

 

「…でも、わたし…いつもチルノちゃんを困らせてばかりで…」

「チルノの面倒を大妖精が見ないで誰が見るんだよ?他の妖精からは尊敬と『畏怖』の眼差し、なんだろ?チルノに何か言えるのは大妖精ぐらいなんじゃないの?」

 

 そんなに心配しなくても、チルノは大妖精の事を嫌ったりなんてしてないんじゃないかな?

 暗い表情で俯く大妖精に、自分の考えをぶつける。

 

「そ、そうですよね…」

 

「チルノが取り返しのつかないことをしてしまわないように監視するのも、いまこうやって一緒に居てあげることも、大妖精の大事な仕事だよ。」

 

「そうですよね…!」

 

 ここから見える「洋館」の方で、煌めく極太ビームが発射されるのがちらりと見えた。

 

「…あ!俺も用事があったんだよ!忘れてた!!悪いが先を急いでいるんだ!頑張れよみんなのお姉さん!あばよ!」

 

 急いで立ち上がり、そのまま目的地に向けて悠は走り出してしまう。

 

「…あ…あの!せめてお名前だけでも!…行っちゃった…」

 

 なんで最初から聞かなかったのだろうか。あの知らないお兄さんの名前は一体何というのだろう。

「…もし、今度会えたら、しっかりお礼しなくちゃ…」

 名前を聞いてないし、あっちはわたしの事を覚えているとも限らないし…

 

「また…お話ししたいな…」

「んぅ…だい…ちゃーん…?」

「あ…チルノちゃん…!」

 

 先程まで目を閉じていたチルノが大妖精をその視界に捉える。

 

「チルノちゃん、おはよう!」

「おはようだいちゃん!アタイ、また負けちゃった!」

「そうだね、次は勝てるかもね?」

 微笑ましそうに大妖精が朗らかな笑みを浮かべる。

 

「うん!アタイ、サイキョーだもん!」

 

「そんなことよりチルノちゃん聞いてよ!」

「そ、そんなこと…」

「実はさっきね―――」

 

 依然として、空は紅く染め上げられている。そんな不吉な日の、消え入る泡のような物語………。




投稿する前は「後書きであれとこれとそれと書かなくちゃ!」なんて思っていたのに全てすっぽぬけた…。
お、思い出したら追記しておきますねー…。

感想もお待ちしております。
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