Emotoin monster ~感情の舞い~   作:夢見る座禅組

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反省も後悔もしています。遅くて申し訳ないです…


第8話 ここは紅魔館

「幻在『クロックコープス』」

 

 玄関正面の階段に立つ紅魔館のメイドが青に発光する球形の弾幕を放つ。

 即座に回避する霊夢だが、当然これで終わると考えるほど楽観視はしていない。

 予想通り、それで終わるはずもなく――

「ッ!」

 

 突如、霊夢に切っ先を向けまっすぐ飛んでくるナイフが視界の中に現れた。メイドは一切の投擲の動作は行っていない。また例の時間を止めるアレだ。

 自分に的中するコースのナイフだけを見据え、お祓い棒で的確に弾く。

 

「流石に簡単にはいきませんね…はぁ、掃除の手間がかかる…」

 

 メイドかぼやく。

 

「当然よ、博麗の名を背負っているもの。そう易々と倒れはしないわよ。」

 

「ただでさえ面倒ですのに、さらにイレギュラーが来るのですよね…お嬢様…」

 

 メイドが敵さま相手に愚痴をこぼすのはよいのだろうか。さっさと敵の排除にあたったほうが。

 とりあえず礼儀として何かしら返答でもしようと、霊夢が口を開く。

 

「そりゃあ、お疲れ様…と言いたいけれど敵にかける慈悲なんてあいにく持ち合わせていないわ。ごめんなさい。」

 

「そんな他人事のように…あなたのお仲間のことを言っているのですよ?なんとかしていただくことはできませんか…」

 

 心底面倒くさそうな顔でメイドが訴えてくる。

…あ、魔理沙か。

 

「そ、それは…まあ…謝るわ。あはは…確かに魔理沙の相手はいろいろと面倒よね。うんうん。」

 

 しかしメイドの返答は霊夢が予想していた同意の言葉ではなかった。

 

「…あの魔法使いですか?彼女でしたら先程侵入しました。」

 

(魔理沙のことじゃないの…?そしたらむしろ好都合かもしれないわね。そのイレギュラーさんのお陰で混乱の中突入できるわね。)

 

 

 さらに霊夢はメイドを煽る。

 

「お宅の門番さんはしっかり仕事をしているの?呑気なものね。」

 

 

「先程あなたに倒されたのですよ。」

 

「気持ち良さそうな寝顔でした!」

 

「それは何よりです。…次はどんな罰にすれば気が済むのかしら…もう…」

 

 しばらく話につきあってやってた霊夢だったが今回の目的は異変の解決。いち早く解決してさっさとのんびりまったりしたいところだ。

 

「わたし、もう行くわねー」

 

 相手にする時間も面倒なので入り口正面の階段をてくてくのぼって――

 

「なにしれっと通ろうとしているのですか。」

 

「あっちゃー」

 

 しっかりと腕を掴まれた。階段に構えているメイドの横を素通りは流石に許してもらえないようだ。

 

「ねぇー…お願いよ、行かせてちょうだい…」

 

「こちらとしては一刻も早くお帰り願いたいのですが?」

 

「なら力ずくでも通るまでよ!」

 

 掴まれた腕を振り払って階段からホールへ飛び退く。

 

「でしたらこちらも全力でお相手いたします。」

 

 相手の霊力と殺気が濃くなったのを肌で感じる。相手の眼には冷たい光が宿った。

 メイドはホルスターのナイフではなく、どこから取り出したのか大量のクナイを霊夢に向かって投擲し始める。だが先程までと同様に的中コースだけをお祓い棒で的確に捌けば問題ない。クナイはナイフより小さいため、大量にばらまかれると回避が難しくはなるが。的確に、ひとつ、またひとつ、時には二つまとめて。

 

「こんな目眩ましなんて!」

 

――待ちなさい私、嫌な予感がする。背中に何かを…無機質な殺意を感じる。

 

 メイドの方をチラリと見やる。

「……」

 メイドの表情は何一つ変わってない。ならば自身の勘に身を委ねるのみ。

 

「夢符『封魔陣』!」

 

 霊夢を中心に霊力の結界が広がっていき、全方位360度のクナイを弾き落とす。どういうカラクリか、背後からもクナイが迫ってきていたのだ。

 

「背中がガラ空きですよ?」

 

「…そういうの、先に言ってちょうだい。危うく一本取られるところだったわ。」

 

「しかしよく気付きましたね。」

 

「私の一番の武器は右手の棒なんかよりもよっぽど頼りになるのよ。」

 

 霊夢の勘は鋭い。何度も霊夢は勘に助けられている。

 

「先程のものは投げたものが壁に反射する手品でした。これでトドメを刺せないかと期待したのですが…やはりと言いますか…」

 

「厄介極まりないわね。完全に室内戦想定ってカンジね。」

 

 まあ当然ではある。彼女は主に仕えるメイド。主を守ってなんぼの仕事だ。室内戦を想定した上での弾幕構成は中々のものだ。改めて霊夢は敵の強さを噛み締めた。

 

「ですが…」

 

 メイドが構えた。さあ来るぞ霊夢。気を引き締めろ。

 

「本番はここからですよ!奇術『幻惑ミスディレクション』」

 

 メイドが階段からジャンプすると同時に先程のクナイを扇状に投げつけてくる。壁や床に当たったものは反射して、空間をクナイで埋め尽くす。

 さらにメイド自身も移動しながらクナイを投げつけてくる。

 

 クナイを投げた後すぐさまメイドは瞬間移動をして、別の場所から大量のナイフを凄い勢いで投げつけてくる。

 クナイに気を取られればナイフに射抜かれる。ナイフに対処していたらクナイに蜂の巣にされる。

 全方位に意識を集中させる。右手のお祓い棒を振り抜いて直撃コースのクナイを確実に弾き落とす。頬を鋭利なクナイが掠め痛みが走るが、直撃するよりは幾分マシだ。

 左手の指には十数枚のお札。こちらに飛んでくるナイフにだけ霊力を溜めたお札を直撃させ、ナイフを撃墜する。

 そんなことをしてるとメイドがまたクナイを投げつけてくる。先程より密度が増した。目の前に迫るクナイをお祓い棒で横に振り払う。床で反射したクナイはバク転で交代して回避。その勢いで後ろに左足を一歩出しながら腰を無理矢理左側に捻り、左手の指に挟んだお札を、背後の壁に反射したクナイに投げつけて突き落とす。

 同じタイミングで瞬間移動で場所を移したメイドがナイフを投げつけてきたが、腰を左に捻った勢いで右手を左に振り抜き、ナイフを弾く。この時、無理矢理腰を捻ったことで回転運動が働いているが、その勢いを殺さずに左足で回し蹴りをして後続のナイフを靴のかかとで弾いて事なきを得る。ちなみに靴は厚底ブーツ。戦闘を想定しているので靴底に鉄を使い、靴底の表面は通常の素材で覆っている。外界から流れ着いたので耐久性も抜群!

 

「手こずらせてくれますね…メイド秘技『殺人ドール』!」

 

 メイドが何十本ものナイフをばらまき、霊夢の逃げ場をなくすように展開して飛んでくる。

 

「…っと」

 飛んできたナイフの何本かが突然進行方向を転換した。だが目は慣れてきたため冷静に対処すれば問題ない。

 

「ナイフの向きが突然変わった…?」

 

 進行方向が霊夢に向かっていないナイフは当然ながら壁や床に当たるが、クナイと同様に反射し、またしても狭い空間をかき混ぜる。

 お祓いを右に振り抜き、お札を左手から投げつけ、時にはアクロバティックにカポエィラ式側宙で足元のナイフを躱しつつ上半身を狙ったナイフを蹴り落とし――

……

………

「メイド秘技『殺人ドール』!」

 

 あの博麗霊夢という人間…なかなか侮れない。

 

「(さて…これからどうケリをつけましょうか…肉弾戦に持ち込むというのも…それでケリを無理矢理つける他ない……手慣れた室内戦に加え、大量のナイフとクナイ…こちらにいくつか分があるはずではあるものの…)」

 

 紅魔館のメイドで、霊夢と対峙している十六夜 咲夜(いざよい さくや)はこの時焦っていた。いや、「勝ち急いだ」と言った方が的確かもしれない。

 

「…」

 

『咲夜…くれぐれも無理はしちゃダメよ。時間を稼ぐだけでも充分なのだからね?』

 

 紅魔館の、そして咲夜のご主人様の「レミリア・スカーレット」には未来視の能力がある。そんな主人が「あなたなら勝てる」といったニュアンスを含まない言葉選びをした。つまり…

 

「…お嬢様のお手を煩わせるわけには…いかない…」

 

…行かせない。絶対に。

 

 咲夜の作戦はこうだ。まずはナイフの密度をできる限り濃密にする。相手がナイフを捌くことに夢中になっている間に瞬間移動で背後に回り込み、壁に反射したナイフと一緒に切りかかる。これで行くしかない。

「(まずナイフをばらまく!すぐさま移動!そして今ッ――)」

 ナイフに紛れて咲夜が霊夢に切りかかるが…

 

「なっ…!?」

 

 首もとにナイフを突き立てた瞬間、霊夢がお札となってバラバラになり、そのお札が咲夜の上半身を締め付け、足首を地面に繋ぎ止める。反抗させないための縄のように。逃げられないようにする鎖のように。

 

「このままじっくりいたぶるのが趣味かとも考えたけど、そうでもなかったのね?意外とせっかちさんね?」

 

「…ッ!!」

 

 振り返ると、そこには霊夢がいた。

……

………

「(このままじゃ埒があかないわね…いちかばちか、やってみるしか…)」

 メイドがアクションを起こす直前、霊夢はある作戦を決行することを決意した。

 ナイフの壁に隙を見つけ次第、今いるこの場にお札の分身をのこし(悠にも見せ、魔理沙に使用した手法)、メイドの意識の外へ逃げる。

 

「(今!)」

 

「…」

 

「(よし、うまく切り抜けたわね…バレてもいないようだし…)」

 

 その後もメイドは霊夢の分身へナイフの弾幕で攻撃し続けている。

 メイドが瞬間移動し終わってナイフを投げつける…その隙に霊夢が不意をつくように攻撃を直接…

 

「…あら、そっちは分身よ…?」

 

 霊夢の分身に必死にナイフを放ちつつ、メイドが直接攻撃しようと動き始めた。

 ならば話が早い。分身はお札の集合体だ。霊夢の目からは少なくともお札の塊にしか見えない「分身」が攻撃を受け、「誤認させる力」がなくなってただのお札になったら、すぐさま新しく力を上書きする。一度でも力を込めたお札なら遠くからでも何となく操作できるものだ。

 

「…ッ」

 

 メイドが霊夢の分身に背後から接近し、うなじにナイフを突き立てる。その瞬間を狙い、お札に力を込める。

 霊夢のフリをしていたお札の塊メイドの直接攻撃によってバラバラに崩れ落ちる。同時に霊夢が力を込めたことで、崩れ落ちたお札が息を吹き返し、メイドを拘束する。

 

「なッ…!?」

 

 メイドの手、足、腕、ありとあらゆる武器にお札が絡み付いて身の自由を奪い尽くした。

 

「このままじっくりいたぶるのが趣味かとも考えたけど、そうでもなかったのね?意外とせっかちさん?」

 

「こ、この…!」

 

「無駄よ。観念しなさい。あー、あなたの主の元へ案内してもらえるのなら、それを解いてあげるわよ?」

 

「戯れ言をッ!!こんなものッ!!この…ッ!!!」

 

 なおもメイドは暴れる。罠にかかった獣のように。外れないということを知らないと言わんばかりに。

 

「無駄だって。霊力捕縛は無理矢理ひっぺがせるモンじゃないわ。」

 

 それでもメイドはもがき続ける。

 

「私は…!お嬢様のお役に!…いままで助けられてばかりだった私は!まだ…恩を!返せてない私は!今度こそお嬢様の…お役に…お役にッ!!」

 

 メイドが嗚咽混じりに訴えながら、もがく。なおも懲りず。「罠にかかったから逃げなきゃ」など関係なく、獣が本能に従って逃げようとするように。

 

--だがこいつは敵よ博麗霊夢。慈悲なんてかけちゃダメ。博麗の名にかけてトドメを刺すのよ。

 

「…神霊『夢想封印』!」

 霊夢がそう叫ぶと、霊夢の周囲にいくつもの色とりどりな、直径約50センチ程度の眩く光る弾幕が現れる。その全てが咲夜の頭部、腹部、背部から同時に吸い込まれ、直撃して眩い光となって爆ぜる。…せめて、意識を一瞬で刈り取ってあげられるように。

「がっ…ぁ…」

――お嬢様。

 

 

 力なく倒れるメイドの細身の長身へ駆け寄り、支える。拘束をすぐさま解き、その場にそっと寝かす。意識はないものの、呼吸はすぐに再開し始めた。

 

「………まぁ、あなたたちにも理由があるわけでしょうけど、そのお陰でこっちだって困ることがたくさんあるの。…でも、今の状況だとあなたたちにとっては困るから異変を起こしたのよね…お互い大変ね。」

……。

--玄関口正面のこの階段を登って、この異変をいち早く終わらせなければ。

 

 命を奪わないのは「殺すに値しない」と言う意思、それとわずかな慈悲。

 

 霊夢の異変解決への気持ちは「早く帰ってグータラする」から「難しい話なんて考えたくないから異変を終わらせる」に変わっていた。

 

……

………

 その頃、魔理沙はというと…

 

「霊夢のヤツが門番を門ごと排除するから私の出番がなかったぜ!」

 

 紅魔館の中を当てもなく突き進んでいた。

 

「ここは…食堂なんだぜ…今は誰もいないし用はないんだぜ。あ、でも…」

 

 キレイな盛り付けをされたレアのステーキをひょいッパクっ…

「やばっ!チョーうめー!あああ止まらないうっま…」

 

 さらに突き進むと、大きな扉の前にたどり着いた。

 

「なんだここ…?…ハッ!?お宝の予感!悪いことをしたこの館の主から慰謝料としてもらっていくぜ!!決して盗みではないんだぜ!!おじゃましー!」

 

 大きな扉を蹴り開くと、そこは…

 

「…なんだここ?図書館か?」

 

 そこは、人間の身長10人分でも足りないほどの本棚がいくつも並ぶ、部屋と呼ぶには大きすぎる空間が広がっていた。




ごめんなさい…文字列に起こすのが超絶面倒なだけで大まかなストーリーは頭のなかにはあるのです…ごめんなさい…

~追記~
ビビッと頭のなかに浮かんできたイメージを字面に起こしたら何故か咲夜さんのストーリーフラグがたってました。なぜでしょうか?
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