だが、本編では96話目なので複雑だ………………( ̄∇ ̄;)
《もくもく作戦》、《パラリラ作戦》と言った2つの作戦を連続で発動。また、単独行動を取らせていたカメさんチームの待ち伏せ攻撃により、黒森峰との差をつけて有利な位置を確保し、2輌の黒森峰戦車を撃破した大洗チームだが、まほがヤークトティーガーを投入した事により、じわじわと差を詰められて行く。
だが、其所でカメさんチームが黒森峰の戦車隊に単身で乗り込んで隊列を乱し、突然の出来事にパニックを起こしている隙に、大洗チームは黒森峰のバリケードを脱出し、撤退に成功。
それをエリカが追うものの、足回りの弱いティーガーⅡを振り回したせいか、足回りが壊れてその場で足止めを喰らう羽目になる。
必死になって修理するティーガーⅡの乗員達を背景に、大洗チームは次の作戦へ向けて行動を始めるのであった。
「快晴に加えて、見渡す限りの草原地帯………………試合じゃなければ、ピクニックでもしたいところだな」
辺り一面に広がる、自分の髪と同じ緑を眺めながら、紅夜はそう呟く。
「ピクニックか~、現役退いてからは全くやってなかったな」
「ああ。皆で集まって戦車動かした後も、昼飯はどっかのレストランで済ませるか、各自で家に帰って、飯食ってから再集合ってのが殆んどだったもんな」
その呟きを聞いていた翔と勘助が、そんな事を言い合う。
「2人共何の話してんだ?俺も交ぜろよ」
IS-2を操縦している達哉も話に入ってくる。
「いや、別に大した事じゃねえよ。ただ、この辺でピクニック出来そうだなって話をしてただけさ」
「成る程な………………まぁ、確かにこの辺は緑ばっかの草原地帯だもんな。俺等レッド・フラッグと大洗、それから黒森峰のチーム全員で遊べるんじゃね?」
「発想がかなり子供っぽいな。遠足じゃねえんだから………………だがまぁ、それが実現すれば、中々の光景になるだろうな」
「それを纏めりゃ、一種の理想郷(シャングリ・ラ)が出来上がるって訳だな」
口々に言うメンバーの言葉を、紅夜が『理想郷(シャングリ・ラ)』と言う一言で纏めると、達哉達はそれに頷く。
『あんこうチーム、左折します。ついてきてください』
其処へ、みほからの通信が入ってくる。
「左折?曲がったって見えるのは川だってのに……………まぁ良いや。達哉、あんこうチームが左折する。その後に続け」
「Yes,sir.」
左折して坂を下り始めたあんこうチームのⅣ号を追うようにして、IS-2も左折して坂を下り始める。
他のチームも後に続いて坂を下り、川の前で停車した。
「もしかして西住さん、この川を渡るつもりか?」
自車の隣に停車しているⅣ号のキューポラから上半身を乗り出したみほに、紅夜は訊ねる。
「うん。見たところ、川を渡れる橋は無さそうだから、此方の方が手っ取り早いからね」
そう答えたみほは、軽い戦車が流されないようにするため、上流側にレオポン、下流側にアヒルさんチームを配置するように指示を出す。
そうして並び替えを終えると、ゆっくりと川に入る。
横からの流れに揺られながらも、一行は川を横断する。そして半分まで来た時、異変が生じた。
ウサギさんチームのM3が、突如として動きを止めたのだ。
「桂里奈、どうしたの?早くしないと置いてかれるよ」
梓にそう言われ、桂里奈はアクセルペダルを何度も踏むが、M3はピクリとも動かない。
それどころか、エンジン音も力を失っていき、その音が完全に消えると共に、先程までの小刻みな振動も止まる。
それは、M3がエンストした事を現していた。
「?おい西住さん、M3が川の半分辺りから動いてねぇぞ」
「え?」
M3の異変に気がついた紅夜に言われたみほは、双眼鏡でM3の方を見る。
他の戦車が少しずつ動いているのに対し、M3は全く動いていないのだ。
「全車両、一旦止まってください!」
みほの指示で、M3に並びかけていた他の戦車が停車する。
「ライトニングだ。ウサギさんチーム、何があった?」
『な、長門先輩………どうしよう、私達………』
紅夜の呼び掛けに、梓からの不安げな返答が返される。
「大丈夫だ、落ち着け。先ずは何があったのかを言うんだ」
そう言われ、梓はM3がエンストした事を伝えた。
「マジかよ、こりゃあちょっとヤバいな…………分かった。取り敢えず西住さんに伝えとく。お前等はエンジンを再始動出来ないかやってみろ」
そう言って通信を切ると、紅夜はみほの方を向き、ウサギさんチームのM3がエンストした事を伝えた。
「そんな……こんな所で…………」
紅夜からウサギさんチームの異変を伝えられたみほは、そう呟いて狼狽える。
川に入って直ぐか、向こう岸に着く寸前にエンストするなら未だしも、真ん中でエンストされてはかなわない。
「うーっ、全然掛からないよ~!」
その頃ウサギさんチームでは、何とかしてM3のエンジンを再始動させようと躍起になっていたのだが、幾らレバーを動かしてもエンジンが再始動する兆しを見せないと言う状態に、桂里奈から悲鳴が上がる。
エンストすると言うまさかの事態は、1年生をパニックに陥れようとしていた。
現に、悲鳴を上げた桂里奈の両目には涙が溢れている。どうにもならない状態に怯えているのだろう。
「……こうなったら、仕方無い…………!」
その様子を見た梓は何かを決心したのか、みほへと通信を入れる。
「西住隊長、私達の事は良いから、先に行ってください!後で追い掛けますから!」
少なくとも、今のところはエンジンが再び動く兆しが見られないと悟った梓は、このまま自分達を置いて、先に行くように言う。
そんな声が通信機から聞こえてくる中、みほは判断しかねていた。
梓の言う通り、このままM3のエンジンが再始動するのを待っても仕方が無い。その上、下手をすれば追い掛けてくる黒森峰の戦車隊が追い付いて、今の状況などお構いなしに一斉攻撃を仕掛けてくるかもしれない。
そうとなれば、大洗の敗北は決定したも同然になるのだ。
そうしている間にも時間は過ぎ、川の流れがM3を横倒しにしようとばかりに、M3の側面装甲にぶち当たる。
「どうしよう、このままじゃM3が横転しちゃう!」
「それに、モタモタしてると黒森峰が来るぞ」
様子を見ていた沙織が言うと、麻子も付け加える。
「………………ッ」
みほは車長席に座り、膝の上に両手を置き、小刻みに震わせていた。
脳裏を過るのは、去年の試合………………雨で氾濫している川に沿った道を進んでいる途中、前方から奇襲攻撃を仕掛けてきたプラウダからの砲撃で、足場を失ったⅢ号戦車が土手をずり落ち、そのまま川に落ちる場面。
そして聞こえてくる、その時のⅢ号戦車の乗員からの悲鳴。
トラウマがフラッシュバックし、みほは目を固く瞑る。
それを見た沙織は、少しの間考えるような仕草を見せると、みほに声を掛けた。
「行ってあげなよ、みぽりん」
そう言われたみほは、目を見開いて親友の顔を見る。
沙織は無言のまま、ゆっくりと頷いた。
みほは意を決し、席から立ち上がると、優花里に声を掛けた。
「優花里さん、ワイヤーにロープを!」
「はいっ!」
みほからの指示を受けた優花里は目を潤ませ、嬉しそうに返事を返しすと、直ぐ様ワイヤーとロープを用意した。
そして、ロープを腰に巻き付けたみほは、Ⅳ号のエンジン部分に飛び乗って前方を見やる。
M3に辿り着くには、横に居る紅夜のIS-2や、ルノー、Ⅲ突、パンターやイージーエイトに飛び移らなければならない。
深く深呼吸すると、みほは少ないスペースで勢いをつけ、紅夜のIS-2へと飛び移ると、そのままルノーへと飛び移る。
通信手用のハッチから見ていた沙織は無線機を操作して、ある人物に呼び掛けた。
「紅夜君、聞こえる?紅夜君!」
『武部さん、そんなに叫ばんでも聞こえてるって』
呼び掛けられたのは紅夜だった。
大きな声で呼び掛けられたからか、紅夜はIS-2のキューポラから上半身を乗り出した状態でフラフラと揺れている。
「お願い、みぽりんを手伝ってあげて!みぽりんと一緒に、1年生の皆を助けて!」
今の沙織には、その一言しか言えない。だが、何時もみほの………否、誰かの支えになっていた紅夜なら………………と、微かな望みを賭ける。
『………………Roger that.Leave it to me.(あいよ、任せな)』
そうして、通信は切られた。
「さてと、それじゃあ行くとしますかね………………お前等、ちょっとの間頼むぜ?」
「「「Yes,sir.」」」
キューポラの上に立った紅夜はジャケットを脱いで腰に巻き付けると、数メートルある戦車同士の間を軽々と飛び越え、Ⅲ突からM3へ移ろうとしていたみほの隣に並び立つ。
「よぉ隊長、手伝いに来たぜ」
「紅夜君!?どうして………………」
いきなりやって来た紅夜に、みほは驚愕の表情を浮かべる。
「お前のチームの無線手さんに頼まれたんだよ。『手伝ってやってくれ』ってな………………落伍者を見捨てる事が出来ねえんだろ?」
「………………うん」
その問いに頷くみほを見て、紅夜は微笑む。
「なら助けようぜ。ワイヤーで引っ張ってる内に動くかもしれねえしな」
紅夜はそう言うと、前方のM3と、車体後部に出てきている1年生グループを見る。
今2人が立っているⅢ突とM3との距離は、今までのよりも若干離れていた。
無理にでも飛び越えようとするみほを手で制すると、紅夜はみほを横抱きに抱き上げた。
「ッ!?」
突然抱き上げられた事に、みほは顔を真っ赤にする。
「あのまま飛び越えようとしても川に落ちるがオチだ。ちょっとの間の我慢だ」
そう言って、紅夜はみほを抱き抱えたまま、M3へと飛び移る。
「西住隊長!長門先輩!」
目尻に涙を浮かべながら、声をかけてくる1年生グループ。
紅夜がみほに視線を移すと、みほは腰に巻き付けていたワイヤーをほどく。
「これを皆で引っ張ろう」
そう言って作業を始めようとするが、其処で紅夜が待ったを掛けた。
「悪いが、これは俺にやらせてくれ」
「えっ?」
そんな紅夜に、みほは目を丸くする。
「流石に、こんな力仕事を女の子にやらせる訳にはいかねぇよ。下手すりゃ輝夫のオッチャンや蓮斗にドヤされちまう。『こう言う力仕事は男1人でやるモンだろォが!』ってな……」
そう言って、紅夜は苦笑を浮かべる。
「だから、ただのカッコ付けだと思いたきゃそれで良い。少なくとも、ワイヤーを引っ張るのは俺にやらせてくれ」
そして紅夜は、みほや1年生のメンバーが呆然としているのを他所に、Ⅳ号の車体後部で纏めて置かれてあるワイヤーを伸ばす。
それがピンと張り詰め、逆にM3にワイヤーの纏まりが出来ると、今度は八九式へ、最後にポルシェティーガーへと飛び移ると、車体後部のフックにワイヤーの先をくくりつける。
そんな時、砲塔を後ろに向けた戦車の砲撃音が聞こえてきた。
「おいおい、何が起こってんだ?」
そう呟いた時、紅夜のスマホがメッセージの着信を告げた。
くくり終えてからメッセージを開くと、それはレッド・フラッグのメンバーからのメッセージだった。
『今、大洗の連中と俺等で援護射撃してる!焦ってしくじったりすんじゃねぇぞ、紅夜!』
『さっすが祖父さんだ、我等レッド・フラッグの誇り高き隊長だぜ!』
『翔のスマホでのメッセージになるけど、やっぱり最高だよ、ご主人様!』
『相変わらず優しいのね………………そんな所も好きよ』
レッド・フラッグのラインで、メンバー全員からのメッセージが届いている。
「………………ありがとよ」
目頭が熱くなるのを感じながら、紅夜は一言――『ありがとう』――とメッセージを返し、スマホをズボンのポケットにしまうとM3へと舞い戻るのであった。