ガールズ&パンツァー~RED FLAG~   作:弐式水戦

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第120話~免許を取ってる最中では………………なのです!~

「いやぁ~、まさか本人確認のための書類忘れるとは思わなかったなぁ」

「おまけに証明写真も要るとか………完全に忘れてたぜ………………」

 

 教習所に向かったは良いものの、肝心の書類を忘れた2人は、一旦戻って書類を用意し直し、再び教習所へと赴き、申請の後の入校説明会や適性検査を受け終え、帰路についていた。

 

「にしてもまぁ、教習所が家から近くて良かったな」

「確かにな。遠かったら親父かお袋に送ってもらうか、チャリで行くしか無かっただろうし」

「おいおい、お前は歩きかチャリだぞ?俺だって働いてんだ、何時も送るなんて出来るかよ」

 

 車の中でそんな会話を交わしながら家に到着した2人は、幽香と黒姫に教習所での事を話すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、ゼッケン4番の人。始めてください」

「はい」

 

 それから数日が経ち、技能教習が始まった。

 学科教習では、主に交通ルールや標識などについて学び、この技能教習では、実際にバイクを動かすのだ。紅夜からすれば、待ち望んでいた教習である。

 自分の前に立っていた男性が、倒れていたバイクを起こそうとする。

 

 そう。この技能教習でバイクを動かす際、先ずは倒れているバイクを起こさなければならない。

 その重さも、数㎏なんて軽いものではなく、200~約300㎏と言う重さを持つバイクだ。

 

「(うへぇ~、スッゲー重そう………………)」

 

 バイクを起こそうとしている男性が悪戦苦闘しているのを見ながら、紅夜は内心でそう呟いた。

 その後、漸くバイクを起こした男性は、そのバイクに跨がってエンジンをスタートさせ、コースへと入っていった。

 

「良し………………では次、ゼッケン5番の人、お願いします」

「あ、はい!」

 

 遂に呼ばれ、紅夜が前に出ると、目の前でバイクがゆっくりと倒される。

 

「では、先程の人がやったように、この倒れたバイクを起こしてエンジンを動かして、コースの外周を廻ってきてください」

「了解です」

 

 担当する教官に返事を返し、紅夜は少し屈むと、左手で手前側のハンドルグリップを、右手でアシストグリップ握り、引き起こす体勢になる。

 

「(えっと、ちょっと前に親父から聞いたように)………………おらよっと」

「「「「ええっ!?」」」」

 

 何の苦も無くバイクを起こした紅夜に、その場に居た者全員が声を上げる。

 

「………………何コレ?滅ッ茶苦茶軽いじゃん」

 

 紅夜はそう呟きながらバイクに跨がると、先程の男性がやったようにエンジンをかけ、コースへと入っていく。

 カーブも難なくこなして戻ってくると、他の教習者や教官が呆然としていた。

 

「君………凄いね。それ、車重270㎏のバイクだよ?」

「え、そうなんですか?何か凄く軽かったんですけど」

 

 そう答え、紅夜はエンジンを切ってスタンドを立たせると、腕を広げてバイクの車体下部分を持ち、そのまま軽々と持ち上げてみせた。

 

「「「「ええっ!?」」」」

「滅茶苦茶軽いじゃないですかコレ。起こす時に反対側に倒しそうになりましたよ」

 

 驚く他の面々を他所に、これまた何の苦も無くバイクを下ろしながら、紅夜はそう言った。

 

 この場で言わせてもらえば、学園艦での生活で色々と鍛えていた紅夜は、1発25㎏のIS-2の砲弾を片手で持って、振り回しながら延々と走り回る上に、喧嘩慣れしているレッド・フラッグの男性メンバー6人を相手にして圧倒したり、全国大会では、準決勝でレンガ造りの壁に素手で大穴を開けたり、決勝戦では、数メートル離れたら戦車同士の間を、みほを抱き抱えたまま軽々飛び越えたりと、常人離れした身体能力を持っている。

 そんな紅夜からすれば、普通ならとても持てないような重さ持つバイクでもあっさりと持ち上げる事が出来てしまうのだろう。

 

 

 戻ってきた他の教習車に乗った面々も、持ち上げていたバイクを下ろす紅夜を見て目を見開いていた。

 

「え、えーっと…………では、ゼッケン8番の人は………………」

 

 そうして再開される実習を、紅夜はただ眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃、此処は大洗女子学園の学園艦。其所にある一軒家の前に、キャリーバックを傍らに置いた、1人の少女が立っていた。

 全体的に黄緑色で、へそが出たシャツに膝上のスカート。そして、ボタンやファスナーがつけられていないロングコートのような上着を着て頭にゴーグルをつけた、如何にも活動的な雰囲気を感じさせる少女だった。

 彼女がその家を訪ねてきた理由は1つ………………その家に泊まるためだ。

 

「えっと…………此処が、兄様の家、なのよね……?連絡もせず来ちゃったけど、大丈夫かな………………で、でもでも!私は他人じゃない訳だし、そもそも妹だし、何の問題も無いわよね、うん!」

 

 1人で勝手に弁明して、その少女――長門 綾――は、紅夜の家のインターフォンを押した。

 

「………………」

『………………』

 

 だが、インターフォンの向こうからは、全く返事が返ってこない。

 

「あれ、居ない?もしかして兄様、未だ退院してないのかしら?………いや、そんな筈は無いわ。『1週間で退院する』って聞いたし、私がお見舞いに行った日で、もう既に3日目だし、帰ってないのがおかしいのよ、うん」

 

 またまた独り言を呟き、1人で勝手に頷く綾。

 

「もしかしたら寝てるかもしれないし、もう1回………もう1回だけ………」

 

 そう呟きながら、再びインターフォンを押す。

 

「……もしかして、出掛けてるのかn………………ん?」

 

 出掛けているのではないかと予想を立てた綾だが、家の中から微かに聞こえてきた物音に反応する。

 ドアの前に来ると、その音は大きくなり、ドタドタと慌ただしい足音が近づいてくる。

 

「フフンッ♪兄様ったら焦っちゃって。そんなに急がなくても良いのに」

 

 口ではそう言いながらも、頬を染めて口許を緩ませている時点で、喜んでいるのは丸分かりだ。

 そして、ドアが勢い良く開け放たれる事を予想して、2歩程後退する。

 その瞬間、綾の予想通り、ドアが勢い良く開け放たれた。

 

「(全く、兄様ったら。そんなにも私に会いたかったの?可愛いわねぇ。もう、もう♪)…「お帰りなさい、コマンダー!レッド1!」………………え?」

「………………あれ?」

 

 だが、ドアから現れた人物は、綾が期待していた人物ではなかった。

 

 恐らく静馬以上はあるであろう背丈に、ロングヘアーの金髪に加えて若干つり目気味の碧眼、整った顔立ち、スレンダーな自分とは対照的に、ナチス軍服のように見えるボディースーツの上からはっきり分かる豊満な胸。

 この状況で、綾は思ったであろう。

 

――誰だこの女は?――と………………

 

「「………………」」

 

 そして、両者の間で流れる沈黙。

 互いに、今の状況にどう対応すれば良いのか分からず、ただ立ち尽くすだけだ。

 そんな時だった。

 

「おーい、レッド2~。腹減ったから菓子貰うぜ~」

「ッ!?」

 

 家の中から、少なくとも綾の耳には全くもって覚えの無い女性の声が聞こえてきた。

 

「………………ハッ!?な、何なのよ貴女達は!?」

 

 此処で漸く我に返った綾は、レッド2を指差してそう叫んだ。

 無理もない。何せ暫くぶりに兄の元を訪ねてみれば、全く覚えの無い女性が現れ、おまけに未だ1人居るときたのだ、誰だってパニックを起こすものだろう。

 

「ええっ!?ちょ、それは此方の台詞…………「て言うか、家の中にもう1人居るわね!?ちょっとお邪魔するわよ!」……え?ちょっと!?」

 

 いきなり声を張り上げた綾に驚くレッド2を無視して、綾はズカズカと家の中に入っていく。

 

「全く!一体全体何がどうなってるのよ!?」

 

 玄関で靴を脱ぎ捨てた綾は、少女らしくもなくズカズカと足音を立てながらリビングへと向かっていき、ドアを勢い良く開け放った。

 

「うわビックリした!どうしたよレッド2?そんなズカズカ歩いて、何か嫌な事でも………え?誰お前?」

「………………」

 

 『それは此方の台詞だ』と言いたくなるのを何とか堪え、綾は目の前に映るレッド3を見据えた。

 背中辺りまで伸びるブロンドの髪に赤い瞳に加え、右目を覆う赤い眼帯。さらに、戦国時代の武将を女性にしたような服に身を包んでいた。

 

「単刀直入に聞くけど………………貴女達、何者なの?返答によっては警察呼ぶわよ?」

 

 そう言うと、綾は徐にスマホを取り出し、警戒の目を向けた。

 

「そもそも貴女達、此処が誰の家なのか分かってるの?少なくとも、兄様に貴女達のような同居人が居た覚えは無いのだけど?それに見たところ、貴女達はレッド・フラッグのメンバーでも、大洗女子のメンバーでもなさそうだし………………ねぇ、ホントに何者?」

「ちょちょちょ、ちょっと待て!矢鱈と凄んでくるけど、お前こそ誰なんだよ!?」

 

 綾から溢れ出る殺気とも呼べるようなオーラに怯みながらも、レッド3はそんな疑問を投げ掛ける。

 

「私は長門綾。この家の主、長門紅夜の妹よ!」

「「ッ!?」」

 

 大声で名乗る綾に、2人は驚愕に目を見開いた。まさか、家主の妹がやって来るとは思わなかったのだろう。

 

「さぁ、私が名乗ったんだから、貴女達も名乗るのが筋と言うものよね?」   

 

 そう言いながら、ユラリユラリと近寄ってくる綾。

 心なしか2人には、綾の背後から、ドス黒いオーラと共に、大釜を振り回す死神の阿修羅が出ているように見えた。

 

「(ぐぅっ!何だコイツは!?気迫が、強すぎる………………ッ!)」

「(この女、コマンダーの妹だとか言ってたわね……隙の無い動き、このオーラ………戦車の付喪神である私達でも勝てる気がしないわ……)」

 

 顔中から滝のように冷や汗を流す2人を見ながら、綾は言った。

 

「我が家、長門家の家訓ではね、『身内の家の中に居る不審者には、お帰り願う前に礼儀を教えてやれ』とされているのよ………………挨拶も無しに人ン家に上がり込んで、挙げ句自分の家のように寛ぎやがって………………許されると思ってンのかオイ?」

「「~~~~~~ッ!!?」」

 

 口調がガラリと変わった綾の様子に、2人は恐怖に震える。

 

「さぁ、選べ………大人しく正体を話すか、此処で私に叩き潰されるか………」

「わ、分かった分かった!話すから、そのおっかねぇオーラ何とかしてくれ!」

 

 何時の間にか金属製の大型シャベルを持ち出して肩に担いでいる綾に、レッド3は涙目になりながら懇願する。

 そして綾がオーラをしまうと、相当殺気を当てられ続けたからか、恐怖のあまりに乱れていた呼吸を整え、レッド3は自分達の正体を明かすのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「“戦車の付喪神”………………ですって?」

「そうよ。因みに私は、レッド2《Ray Gun(レイガン)》ことパンターA型の付喪神よ」

「俺はレッド3《Smokey(スモーキー)》こと、シャーマン・イージーエイトの付喪神だな。一応レッド1《Lightning(ライトニング)》こと、IS-2の付喪神も居るんだが…………生憎と、今は出払っててな。何時帰ってくるのかも分からん」

「そう………………」

 

 それから少し経ち、漸く落ち着きを取り戻した2人は、綾と向かい合って座り、自分達の正体を明かしていた。

 

「それにしても、驚いたわ。付喪神なんてウィキペディアでしか見た事無いし、そもそも、そう言うのは空想上の存在だとばかり思ってたもの」

「まぁ、普通の人の意見からすれば、そうなるでしょうね………………まぁ取り敢えず、これで私達が不審者ではないって事は分かってもらえた?」

 

 レッド2がそう訊ねると、綾はコクりと頷いた。

 

「ええ、まぁ………………それもそうだけど、ごめんなさいね。いきなり怒鳴ったりして」

「気にすんなって。俺等も勝手に上がり込んでたんだからさ」

「言われてみれば、確かにそうだったわね………………」

 

 罰が悪そうな表情で謝る綾に、2人はそう答える。

 

「それで、えっと………………綾、で良いのよね?コマンダーは居ないけど、此処には何の用で来たの?」

「コマンダー?………ああ、兄様の事ね。此処には泊まりに来たのよ。でも、兄様が居ないんじゃねぇ………………それにしても、なんで帰ってきてないの?私の予想が正しかったら、もう退院して、この家に居てもおかしくないと思うんだけど………………もしかして、買い物とか?」

 

 綾の問いに、レッド3は首を横に振った。

 

「いいや、俺等の隊長は、未だ本土に居るよ。理由は俺等にも分からん。追い掛けてったレッド1からの連絡が無いからな」

「そう………………まぁ、取り敢えず1泊だけ泊まってくわ。荷物置いてくるから」

 

 そう言うと、綾は2階に上がってキャリーバックを置き、1階に降りた。

 

「兄様め……今度会ったら☆O☆HA☆NA☆SI☆しなきゃね………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぶえっくし!!」

「あら、ご主人様。風邪?それとも誰かに噂されてるとか?」

「さぁな、その辺りは全く分からん………………だが、取り敢えず風邪でも噂でもなく、ただ鼻が一時的に詰まっただけだと言う事を祈るよ」

 

 教習を終えた紅夜が帰ってきた長門家実家では、そんな会話が交わされていたとか違うとか………………




 面白そうだし、陸王も擬人化してみようかなぁ………………いや、流石に無理があるかなぁ~………
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