ガールズ&パンツァー~RED FLAG~   作:弐式水戦

134 / 161
第129話~救助に向かいます!~

 それは、ダージリンが紅夜に電話を掛ける少し前に遡る。

 

 

 

「……へぇ~、白虎隊の戦車にも付喪神が居るのか」

「そうなんだよ。でも、今のところは雪姫にしか会ってなくてな…………はぁ……他の皆は、何処で何してんだか……………」

 

 此処は、大洗女子学園が保有する学園艦の船尾。

 建ち並んでいた家々が見られなくなり、未開発の土地や森林が視野一杯に広がる道路を走る陸王の上で、紅夜と蓮斗は話していた。

 

 因みに蓮斗が居る理由は、今からさらに数十分前の事………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「暇だ……ツーリングにでも行こうかな」

 

 自室でベッドに寝転がり、暇をもて余していた紅夜は、ベッドから起き上がって机の引き出しから陸王のキーを取り出すと、クローゼットから取り出した靴下を履いてリビングに降り、黒姫達にツーリングに行く事を伝えた時、突然インターホンが鳴った。

 

「ん?誰だ?」

「静馬達じゃねぇの?」

 

 ドアの方を向いて呟く紅夜に、煎餅を頬張っていた七花が言う。

 

「まぁ、その辺りが妥当だが、出来れば輝夫のオッチャン辺りが来てくれた方が良いかな。お前等を紹介しておきたいし………まぁ、取り敢えず出てくるよ」

 

 そう言うと、紅夜は玄関へ向かい、ドアを開ける。

 

「ほーい、どちら様で…………え?」

「よぉ、紅夜!」

「暫くぶりです、紅夜殿」

 

 ドアを開けた先に居たのは、蓮斗と雪姫だった。

 陽気に右手を上げる蓮斗の隣で、雪姫は丁寧に一礼する。

 

「蓮斗に雪姫さんじゃねぇか。どうしたんだ?何か用事?」

 

 そう訊ねる紅夜だが、蓮斗は首を横に振って言った。

 

「うんにゃ、暇だったから遊びに来ただけ」

「あ、そうッスか………………まぁ、お前の事だから、そんな理由だろうと思ってたけどね………」

 

 あっさり言った蓮斗に、紅夜は苦笑を浮かべながらそう言った。

 

 

 

「そういやお前………………バイク持ってんだな。これ、陸王だろ?俺が死ぬ前は、よく走ってるのを見たぜ」

 

 不意に、蓮斗は駐輪スペースに置かれている陸王に気づいてそう言った。

 

「ああ、退院してから東京に帰ってな。2週間で大型二輪の免許取って、此方に持って帰ってきた」

「ほぉ~、それじゃあ卒業試験は一発合格って訳か」

「まぁな」

 

 紅夜がそう言うと、蓮斗はバイク本体と、分離された側車を交互に眺めて言った。

 

「これ乗りたい」

「言うと思った」

 

 陸王を指差して言う蓮斗に、紅夜は予想通りと言わんばかりの表情でそう言った。

 

「すみません、紅夜殿。ウチの主がこんな調子で」

「ははは、別に良いって。こんなの慣れてるからさ………それじゃあ、雪姫さんはどうすんだ?暫くコイツ連れ出すんだが」

 

 紅夜が蓮斗を指差しながら訊ねると、雪姫は玄関の奥の方へと顔を向ける。

 

「久し振りに、黒姫さんと話したいですね」

「そっか………まぁ同じ付喪神同士、話も合うだろ。それに、今は黒姫の他にも……」

「ええ、分かってますよ。リビングから、黒姫さんとは違った人の気配を2つ感じますから」

「………雪姫さん、スゲー」

「それ程でもありませんわ………では、お邪魔します」

「おう、ごゆっくり」

 

 そうして雪姫は家に上がり、ドアが閉まる。

 

「それじゃあ、ちょっくら側車取り付けるから待ってろ」

「ほーい」

 

 そうして、紅夜は家に入り、玄関の用具入れから工具箱を引っ張り出し、バイクと側車を繋げ、蓮斗を側車に乗せてエンジンをかけ、ツーリングに出掛けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

………………このような経緯を辿り、紅夜と蓮斗は今、学園艦船尾を目指す旅をしていた。

 

「それにしても、学園艦に未開発エリアがあるなんてな…………」

「ああ。俺も初めて此処を通り掛かった時には、結構ビックリしたのを今でも覚えてるよ」

 

 そんな会話を交わしている時に、その電話は掛かってきた。

 

「にしても、こんだけ広い未開発エリアがあるんだ、戦車道での練習場所としても十分に使え………………ん?」

 

 蓮斗は、紅夜のズボンの左ポケットから聞こえてくるバイブ音で喋るのを止める。

 

「おい、紅夜。電話鳴ってるぞ」

「え、マジで?今出れねぇのに…………」

 

 そう言うと、紅夜は何かを思い付いたのか、ヘルメットのスクリーン越しに、視線を一瞬蓮斗の方に向けてから言った。

 

「なぁ、蓮斗。上手い具合にスマホ取り出して、俺がバイク停めるまで代わりに相手してくれねぇか?」

「別に今停めても良いと思うんだが………………まぁ良いよ、やっといてやる」

 

 そう言って、蓮斗は紅夜のズボンの左ポケットに手を入れると、器用にスマホを取り出して電源を入れ、かぶっているヘルメットをずらす。

 

「しっかし、誰からなんかな………………ほーい、どちらさん?」

『こ、紅夜さんですか!?私です、ダージリンです!』

 

 スマホの画面越しに聞こえてきたのは、ダージリンの切迫した声だった。

 

「(ダージリン?誰だそりゃ?)………あー、すまんが今、紅夜は電話に出れん状況にあってな、なんなら俺が代わりに聞くが…………」

『そんな………………では何時なら、紅夜さんは応じてくれますか!?』

「(代わりに聞くってのはスルーか……)………ちょっと待ってろ」

 

 蓮斗はそう言うと、スマホの画面を手で押さえて紅夜の方へ向いた。

 

「なぁ、紅夜。何かダージリンって娘から電話だぞ。お前に急ぎの用があるらしい」

「ダージリンさんが?」

「ああ。何か知らんが、スッゲー声が切迫してた。何かヤバイ事が起こってんじゃねぇのか?」

「その可能性が高いな………………良し、もうそろそろ良い頃だ、バイク停めるぞ。ダージリンさんには、もう少し待ってくれるように頼んどいてくれ」

「へーい」

 

 そうして、蓮斗が紅夜の言い分をダージリンに伝えている間に、紅夜は砂地に乗り入れて陸王を停め、エンジンを切る。

 

「サンキューな、蓮斗。後は此方でやっとく」

 

 紅夜はそう言って、蓮斗からスマホを受け取る。

 

「待たせて悪かったな、ダージリンさん。それで、何の用なんだ?」

『あ、はい。その………………今から、此方に来れますか!?』

「此方って………………もしかして、聖グロの学園艦にか?」

『そ、そうです!貴方にお願いしたい事が………!』

 

 ダージリンはそう言いかけるが、紅夜は微妙な表情を浮かべる。

 

「ソッチに行けるかって言われても………連絡船もねぇのに無理だろ」

『なら、学園の艦載ヘリをそちらに向かわせますわ!』

 

 どうやら相手には、兎に角紅夜を聖グロリアーナ学園艦に連れていかなければならないらしい。

 

「艦載ヘリって、無茶するなぁお前………」

 

 紅夜がそう呟くと、不意に、蓮斗の能力を思い出した。

 

「あ、ちょっと待っててくれ。逸早くソッチに行く方法を思い付いた」

 

 そう言うと、紅夜はスマホの通話を切らずに蓮斗の方へと向いた。

 

「蓮斗。確かお前って、瞬間移動使えたよな?それ使って、聖グロリアーナの学園艦に転移出来ねぇか?」

「ん?勿論出来るぜ?」

 

 側車のシートに凭れ掛かり、後頭部で手を組んでいた蓮斗が頷いて言う。

 

「それなら話は早いな、俺を聖グロリアーナ学園艦まで連れていってくれ。何か知らんが向こうさんが、俺が来るのをご所望らしい」

「ほぉ~う?態々相手から呼び出しの電話を貰うとは、モテるねぇ紅夜」

 

 冷やかすように言うと、蓮斗は額に指を当てる。

 

「まぁ了解だ、連れてってやるよ」

 

 蓮斗がそう言い終わる頃には、彼等と陸王はその場から消えており………………

 

 

 

 

 

 

 

 

「とうちゃーく!」

『『『『『『『ッ!?』』』』』』』

 

………………聖グロリアーナ女学院のグラウンドに来ていた。

 突然現れた2人の青年と1台のサイドカー付きバイクに、その場に居た聖グロリアーナの生徒が驚愕に目を見開いている。

 

「さてと、何か色々と見られてるが、この際気にしてられねぇな…………ダージリンさん、聞こえるか?」

 

 紅夜は周囲の状況に構わず、スマホを再び耳に当てる。

 

『は、はい!聞こえて、ますわ!』

 

 走っているのか、ダージリンの声が途切れ途切れに聞こえてくる。

 

「艦載ヘリを飛ばす必要はねぇよ、もう聖グロに着いた。今はグラウンドだ」

『わ、分かりました!』

 

 そうして通話が切れ、話を聞いていた生徒達は、突然現れた2人に戸惑いを見せながらも、ダージリンの知り合いであるためか警戒を解き、そのまま帰宅していった。

 

 

 

 

 

 

 

「はぁっ!はぁっ!……お……お待たせ…しましたわ………………」

 

 数分後、ダージリンがグラウンドに現れた。

 全力疾走してきたようで、辛そうに肩で息をしている。

 

「別に大して待ってねぇよ…………それで?俺を此処に呼んで、何の用なんだ?」

「はぁっ、はあっ………………ッ!」

 

 何とか乱れる呼吸を無理矢理整えると、ダージリンは紅夜へと視線を向け、声を張り上げた。

 

「お願いします!アッサムを………………友人を助けてくださいッ!!」

「………………は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……と言う事があって……………」

「成る程、そんな事が……」

 

 あれから、ダージリンはマシンガンの如く色々口にするが、友人を誘拐されたショックで気が動転しているのか、言っている事が滅茶苦茶になりかけていたため、先に彼女を落ち着かせ、2人は改めて、アッサムが誘拐されたと言う話を聞いた。

 

「警察に連絡はしたのか?」

「ええ、勿論しましたわ!練習前に、ウチの教官と2人の刑事が話しているのを聞いて、それで……それで…………あぁっ」

「うわっと!?」

 

 当時の事を思い出したらしく、そのまま地面に崩れ落ちそうになるダージリンの肩を紅夜が支える。

 そして、状況を察した蓮斗が席を空け、紅夜はダージリンを横抱きに抱き上げると、陸王のサイドカーのシートに座らせる。

 

「つまりお前は、連れ去られたお前の友人を助け出してほしいって事か」

「はい……警察の方々が捜索してくれていると思いますし、出来れば、そもそも住んでいる学園艦が違う貴方を巻き込みたくはなかった………でも………ッ!」

「『友人を一刻も早く助けるには、俺を巻き込むしか方法が無かった』………………ってか?」

「………………」

 

 紅夜がそう訊ねると、ダージリンはゆっくりと頷き、そのまま俯いてしまう。

 紅夜は暫くの間、無言でダージリンを見つめていたが、やがて小さく息をつくと、言葉を切り出した。

 

「その人が居るのは何処だ?」

「え?」

 

 その言葉に、ダージリンは顔を上げる。

 

「だから、その人が居るのは何処だって聞いたんだよ………………友人を助けたいんだろ?」

 

 そう言って、紅夜は軽く微笑む。

 

「く、詳しくは分かりませんが………………恐らく、この辺りが怪しいかと」

 

 そう言うと、ダージリンはスカートのポケットから学園艦の地図を取り出し、とある一点に指を当てて紅夜に見せる。

 

「どれどれ……ほう、昇降用ドック付近の建物か」

「ええ。今はもう使われていないので、監禁するとしたら、恐らく………」

「りょーかい。そんじゃあ、ちょっくら行ってくるわ………………蓮斗、頼むぜ」

「へいへい」

 

 そうして、紅夜がダージリンをサイドカーから下ろし、バイクに跨がると、蓮斗はサイドカーに飛び乗って瞬間移動の準備を始める。

 

「あ、アッサムの事、よろしくお願いします!」

 

 そう言って深々と頭を下げるダージリンに頷くと、紅夜は蓮斗の肩を軽く叩いて合図し、彼の瞬間移動で消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は変わって、此処は昇降用ドック付近の建物の一室。

 その部屋に縛られた状態で横たわり、ただ救援を待っているだけだったアッサムだが、突然、部屋のドアが開け放たれ、下卑た笑みを浮かべて入ってくる男を見て、自分の命運が尽きた事を悟る。

 

「(ダージリン様……申し訳ございません…………)」

 

 内心でそう言いながら涙を流し、アッサムは“運命の場所”へと運ばれていった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。