今回、みほさんには盛大に暴走してもらいます。(←後でお仕置きも)
相変わらずガルパン要素が皆無となってしまいましたが、それなりに楽しんでいただければ幸いです。
それでは、どうぞ!
「キャーッ!紅夜君可愛い~!」
「ふえぇ~!みほお姉ちゃん怖いよぉ~~!」
「ちょっ、みぽりん落ち着いて!?紅夜君怖がって泣きそうになってるから!」
「もう泣いてる」
「西住殿!?お気を確かに!」
宴会場では、カメラモードにしたスマホのシャッターを一心不乱に押しまくるみほと、それに怯える紅夜、そして、みほを止めようとする面々と言った、何ともカオスな空間が出来上がっており、男性陣は完全に蚊帳の外にされており……
『『『……………』』』
最早ドン引きとも言えるような表情を浮かべ、涙目で怯える紅夜に内心で合掌を送りつつ、男性陣は事の成り行きを見守っていた。
「それにしても、西住さんがあんな事になるとは……ボコとか言うのが凄いのか、チビ紅夜が凄いのか………」
「ちょっ、達哉。何だよチビ紅夜って…」
腕を組んで壁に凭れ掛かりながら呟く達哉に、翔が苦笑混じりにツッコミを入れる。
「祖父さんがもみくちゃにされてたトコまでは未だ許容範囲内だったんだが、流石にアレはなぁ~」
胡座をかいてスマホを弄っている大河が、他人事のように言った。
「そういや達哉、紅夜の着替えはどうした?」
「ああ、これに入れてる」
不意に訊ねた新羅に、達哉は足元に置かれていた紙袋を持ち上げて答える。
「園さんが持ってたらしくてな」
「それはそれは、用意周到と言うか何と言うか……」
「ご都合主義?」
「それだけは止めろ」
そんな会話を繰り広げる男性陣を他所に、紅夜の周囲は異常な盛り上がりを見せている。
だが、それが良い意味でないのは確かだが………
「……俺、ちょっくらジュース買ってくるわ」
そう言って、達哉は紙袋を置いて出口へと向かう。
ドアを開けて出ると、溜め息混じりに閉めた。
「やれやれ、角谷さんもトンでもねぇモン持ち込んできやがったな。お陰で宴会場がカオスと化したよ…これを紅夜が覚えてたら、宴会終わってからどうなる事やら……」
そう言いながら、階段を下りる達哉。
1階に着き、出口へ向かおうとすると………
「あら?貴方は………」
「ん?」
不意に声を掛けられ、達哉は声の主へと視線を向ける。
視線の先には、ちょうど階段に向かおうとしていたダージリン達が居た。
「よぉ、ダージリンさん。久し振り。他の皆さんもお揃いで」
そう言って、達哉は右手を軽く上げて会釈した。
「お久し振りですわ。えっと、辻堂さん………でしたよね?」
軽く一礼して会釈を返して訊ねるダージリンに、達哉は頷いた。
「おう。名乗ったのは練習試合の時だけだったのに覚えてくれてたのか、コイツは光栄だな」
「フフッ、覚えるのは得意なので」
そう言って、ダージリンは淑女らしく微笑む。
「おっ、西住の姉さんも居るじゃねぇか。久し振り」
「ああ。こうして面と向かって会うのはルクレール………否、1回戦が終わってからか」
まほに気づいた達哉が声を掛けると、まほも軽く微笑んで返した。
「何?アンタ達知り合いなの?」
其処へ、ノンナに肩車されたカチューシャが口を挟み、達哉は彼女に視線を向ける。
「………」
「な、何よ?」
視線を向けられている事に気づき、カチューシャが言う。
達哉は、少しの間無言で彼女を見ていたが、やがて、左手に拳を作って右の手のひらにポンと打ち付けた。
「やっぱりな」
「…………?」
突拍子も無い言葉に、カチューシャは首を傾げる。
「お前、カチューシャさんだろ?準決勝で紅夜に泣かされた」
「なんでそっち方面の覚え方するのよ!?私には“地吹雪のカチューシャ”と言う二つ名があr……「いや、知らねぇし」……う~」
最後まで良い終える間も無く封殺され、カチューシャは不満げに頬を膨らませる。
それを突っついてやりたいと言う衝動に駆られるが、達哉はそれを何とか抑え、本題を切り出す事にした。
「こうして来たって事は、角谷さんからのメールを受けたのか?」
そう訊ねると、矢鱈とハイテンションなケイが躍り出た。
「Yes!アンジーから、『大洗の祝勝会の日、紅夜君に子供になる薬飲ませるから見においで~』って誘われたのよ!」
「そ、そっか………」
いきなりの登場に驚きながら、達哉はそう返した。
「おっ、西さんもか」
其処で、達哉は絹代に気づいて声を掛けた。
「ええ。ご無沙汰しております、辻堂さん」
絹代はそう言って、ヤマト式の敬礼をする。
「おう、久し振り………って、何だ、綾ちゃんは来てねぇのか」
「ええ。どうも都合が悪いらしく」
こう言う時にはすっ飛んできそうな綾が居ない事に気づいた達哉が言うと、絹代が残念そうな表情を浮かべながら答えた。
「そっか………まぁ、それはそれとしてだが」
そう言って、達哉は何とも言えないような表情を浮かべて2階に目を向けると、直ぐに視線を戻した。
「なぁ、取り敢えず一言だけ忠告しておくんだが………」
「あら、何ですの?」
全員を代表するかのように、ダージリンが問う。
「宴会場では、カオスな空間がお前等を待ってる……絶対に、場の雰囲気に飲まれてトチ狂った真似はしないでくれよ?」
「……?え、ええ」
「じゃあ、また後でな」
そう言って、達哉は今度こそ、出口へと歩いていった。
「……彼奴、何が言いたかったのかしらね?」
「それは、宴会場に着いたら分かる事ですわ」
まるで、この先何が起こるか全て見透かしているかのように言うと、ダージリンは先に歩き出す。
それを見た他の面々も続いて歩き出し、階段を上る。
そしてドアの前に来ると、ダージリンは意を決してドアを開け放つ。
「よぉ~!ダージリンに他の皆も!ホラホラ、早くおいでよ!こりゃ見物だよ~!」
ステージのリクライニングチェアに腰掛けた杏に言われ、彼女等は靴を脱いで宴会場に足を踏み入れる。
そして、ゆっくりと、紅夜を囲んでいるのであろう人だかりへ足を進める。
--一体、子供になった紅夜はどんな姿をしているのか?--
歩みを進める度に、早く彼の姿を見たいと言う思いが強まっていく。
そして人だかりが出来ている場所に着くと、必然的に肩車されているカチューシャが、最初に紅夜の姿を拝む事が出来るのだが…………
「………何アレ?」
『『『『………?』』』』
カチューシャからは、何とも微妙なコメントが放たれた。
そんなカチューシャのコメントを不思議に思った一行は、人だかりの中を掻き分けて進んでいく。
そして、いざ彼の姿を視界に捉えると、彼女等は唖然とした。
彼女等の視線の先では……
「うぇえ~~、怖かったよぉ~」
「よぉ~しよし、もう大丈夫だからね~」
少なくとも見覚えの無い、紺色に近い黒髪を持つ女に抱き締められて泣きべそをかいている紅夜と……
「もうっ!みぽりんのボコ好きは分かったけど、だからってアレはやり過ぎだよ!」
「そうですよ、みほさん!」
「アンタ、あれで紅夜がトラウマになったらどうなるか分かってるでしょうねぇ!?体バラバラにして臓器売買に売り飛ばすわよ!?」
「ご、ごめんなさ~~い!」
正座させられて、沙織と華、そして鬼の形相を浮かべ、手をボキボキ鳴らしている静馬からの説教を受けているみほの姿があった。
「………コレ、どういう状況?」
先程まであれだけハイテンションだったケイも、目を丸くしている。
「おっ、他校からのお客さんか」
其処へ、スマホを片手に持った大河が声を掛けてきた。
「あの………これは一体どういう状況なのでしょうか…?」
「ああ、それはな………」
先程まで黙っていたアッサムに訊ねられた大河は、事の経緯を語り始めた。
それは、1階に下りた達哉がダージリン達と鉢合わせした時の事、紅夜は相変わらず、みほによる撮影会の被写体にされていたのだが、ある時、みほはシャッターボタンを連打する指を止めた。
「う~ん、着ぐるみを着た紅夜君も良いけど、やっぽりボコの着ぐるみ着てるから、アレが必要だよね!」
旅の恥は何とやら、撮影しまくっている内にリミッターが外れたのか、みほは普段の彼女なら絶対見せないような黒い笑みを浮かべる。
そして、広間の隅に行って、置いてある鞄から包帯や絆創膏を取り出すと、気味の悪い笑みを浮かべながら戻ってくる。
「紅~夜君♪」
「ひぅっ!?」
その間に、他の大洗のメンバーに懐いていた紅夜だが、みほが戻ってきたため再び怯え出す。
「ねぇ、ちょっと紅夜君につけてほしいのがあるんだけど」
そう言って、みほは先程鞄から取り出してきた包帯や絆創膏を見せる。
それに加えてみほの黒い笑み………これは、今の紅夜を震え上がらせるには十分すぎる威力を持っていた。
「ボコってね?他の熊さんにボコボコにされるからボコられ熊って言うんだけど、やっぱり着ぐるみでも、もう少しリアリティーを出した方が良いと思うんだよねぇ~」
そして次の言葉が、紅夜を本気で泣かせる事になる。
「ちょお~っとだけ、ボコさせてくれないかな?」
「ッ!?」
その言葉に、紅夜は一瞬絶句する。
「ちょっ、みぽりん!それ駄目だって!元のみぽりんに戻って!」
「みほさん!お気を確かに!」
流石に看過しきれなくなり、沙織が割り込んでみほの肩を激しく揺さぶり、華も大声で呼び掛ける。
「……はっ!?わ、私は何を…?」
そうして正気に戻ったみほだが、時既に遅し………
「うぅ……グスッ…ひっく……」
完全に怯えきった表情で、紅夜がみほを見ている。
「ホラ見なよ!みほがやり過ぎるから紅夜君怖がってるじゃん!大体みぽりんは撮影する時から雰囲気怖すぎ!」
「うぅ……ご、ごめんなさい」
「私じゃなくて紅夜君に謝らなきゃ!」
そう言われ、みほは紅夜の方へと振り替える。
そして泣き止んでもらうため、謝ろうとした次の瞬間…………
「うぇぇえええええッ!!助けてぇぇぇええええッ!!!」
紅夜は、まるで火がついたように泣き出し、そのまま逃げ出す。
「ええっ!?ちょ、紅夜君!?待って!」
そう言って、みほはワタワタしながら追い掛けるものの、それは紅夜の恐怖心を余計に煽るだけ。
「助けてぇぇ~~~!黒姫お姉ちゃぁぁ~~~ん!!」
そう叫び、紅夜は黒姫の豊満な胸に飛び込んで泣き喚き、みほは沙織と華に正座させられ、途中から飛び込み参加してきた静馬も交えての説教を喰らっていたのだ。
「………と言う事があったのさ」
「そ、それはそれは……みほさん、恐ろしいですわ……」
「Wow……みほってボコが絡んだらshy girlからscary girlに変貌するのね」
大河の話が終わると、ダージリンやケイがドン引きしたような表情でコメントを溢した。
そんな会話が交わされる傍らでは、泣きじゃくる紅夜を黒姫があやし、沙織と華と静馬はみほを説教し、残りの面々は、暫く様子を見ていたものの、これ以上見ていても意味が無いと悟り、其々思い思いに過ごしていく。
「………取り敢えず、適当に寛げば?」
「ええ、そうしますわ」
おずおずと出された大河の提案に、ダージリン達は一先ず乗る事にした。
結局、沙織達の説教は、紅夜が泣き止んだ11時まで止まらなかった。
その頃、ジュースを買うために外に出た達哉は、メロンソーダの入ったペットボトルを片手に、海風に当たって過ごしていたとか………