ガールズ&パンツァー~RED FLAG~   作:弐式水戦

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第147話~ちびっこ紅夜君、その3です!~

 大洗女子学園の全国大会優勝を祝って、大洗チームとレッド・フラッグで開かれた祝賀会。

 大洗チームの出し物が全て終わり、レッド・フラッグの面々が出し物を披露する番になったのだが、彼等は出し物を考え付かず、杏が提案したロシアンルーレットをする事になる。

 だが、そのロシアンルーレットは、子供になる薬を紅夜に飲ませるために仕組まれた行事で、杏の思惑通り、紅夜は薬入りの栗饅頭を食べて子供になり、母性本能をくすぐられた女子陣が紅夜をもみくちゃにし始め、その場は一瞬にしてカオスと化した。

 さらに、杏はその事について他校の面々を招待しており、祝賀会2日目には、聖グロリアーナからダージリンとオレンジペコ、アッサムの3人が、サンダースからはケイとナオミ、プラウダからはカチューシャ、ノンナ、クラーラ。黒森峰からまほ、知波単から絹代が訪れ、彼女等は、紅夜が子供になったためによって起こったこの事態を目の当たりにして唖然とする。

 おまけとばかりに、とあるゴタゴタから紅夜を怖がらせ、挙げ句泣かせてしまったみほは説教を受け、午前11時、漸く祝賀会が動き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 午前11時を少し過ぎた頃、自販機で買ったメロンソーダを飲み干した達哉は、ゴミ箱に空のペットボトルを放り込み、スマホを片手に海風に当たっていた。

 

「あ~、こうやって海風に当たるってのも、風流だなぁ………」

 

 軽く伸びをしながら言うと、ポケットからスマホを取り出した。

 

「さて、宴会場ではどうなってんのか、誰かに聞くとするかな」

 

 そう呟き、達哉は電源を入れる。

 電源が入り、画面に一番に映し出されたのは、レッド・フラッグ男子陣からの不在着信の数々だった。

 

「え~っと、翔、勘助、大河、新羅、煌牙………ものの見事に、俺と紅夜を除いたレッド・フラッグ男子全員からだな」

 

 そう呟きながら、達哉は適当に選んだ大河のアイコンをタップし、電話を掛ける。

 数秒もしない内に、大河が応じた。

 

『おお、達哉か?やっと電話してきたか』

「気づかなくて悪いな、ちょっくら海風に当たってたんだわ」

 

 呆れ気味に言う大河に謝ると、苦笑が返された。

 

『海風に当たるってお前………何処の大人なんだよ。少なくとも17、18の餓鬼がする事じゃねぇな』

 

 苦笑を交えながら、大河はそう言った。

 

『まぁ、それはこの際置いておこう………んで、達哉。今何処に居るんだ?』

「建物の直ぐ傍の自販機の前だ。誰も来ねぇからずっとグダグダしてた」

『そっか、じゃあ今直ぐ戻ってこい。祖父さんが大分落ち着いたからな』

「………?」

 

 大河の言葉に、達哉は怪訝そうな表情を浮かべて首を傾げた。

 

「『落ち着いた』?何かあったのかよ?」

『それについては後で話してやるから、兎に角さっさと戻ってこい』

「ああ、分かったよ。じゃあ後でな」

 

 そう言って通話を切ると、達哉はスマホの電源を切ってポケットに捩じ込んで建物へと入り、宴会広間へと舞い戻るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「え~っと、大河は………………ああ、居た居た」

 

 広間へと戻ってきた達哉は、壁側で集まっている男子陣の中から大河を見つけ、近寄っていった。

 

「よぉ、お帰り達哉」

「ああ、翔」

 

 声を掛けてきた翔に返事を返し、達哉は大河に話し掛けた。

 

「それで大河よ、俺が居ない間に何が起こったのか、話してくれるよな?」

「おう、約束だからな」

 

 そう言って、大河は達哉が居ない間の出来事を話し始めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「…………てな事があってな」

「うへぇ~、ソイツはソイツは」

 

 話を聞いた達哉は、苦笑を浮かべながら言った。

 

「それにしても西住さん、確か『ボコられ熊のボコ』とか言ったっけ?それが絡むと思いっきり人が変わるんだな」

「『変わる』と言うより『狂う』って言った方が適切だろうな。本来のボコの姿に少しでも近づけるとか何とか言って、祖父さん痛め付けてから包帯巻いたり絆創膏貼ったりしようとしたぐらいだし」

「いやいやいや!ボコが好きだからって、普通其処までやらねぇだろ!マジでおっかねぇ話だなぁオイ!?」

 

 何とも無いように言う大河に、達哉は堪らずツッコミを入れた。

 

「はぁ~、ヤレヤレ……角谷さんも、トンでもない厄介事の種を撒いてくれやがったモンだぜ………んで、今は紅夜、どうしてんだ?」

 

 盛大に溜め息をついた後、達哉は紅夜がどうしているかと訊ねる。

 

「彼処だよ。他の学校の奴等にもみくちゃにされてる」

 

 大河がそう言うと、達哉はそちらへと視線を向ける。その先では大河の言う通り、紅夜はダージリン達に囲まれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ~、これがレッド・フラッグの隊長?」

「そう!可愛いでしょ~♪」

 

 黒姫に抱き締められている紅夜を興味深そうに眺めながら言うナオミに、杏は何故か誇らしげに言った。

 

「Ах,как мило он(ああ、何て可愛らしい)………」

 

 クラーラは恍惚とした表情を浮かべて呟き、他の面々も同意するかのように頷く。

 当の紅夜は、時折黒姫から顔を離してダージリン達の方を向くものの、直ぐ様黒姫の胸に顔を埋めてしまう。

 

「あらあら、恥ずかしがっちゃって……可愛いですわね」

 

 軽く微笑みながら、ダージリンが呟く。

 

「それには同感だけど、紅夜がちっちゃい頃ってこんなだったの?」

 

 そんなダージリンの傍らで、何時の間にかノンナから降りていたカチューシャがそう言った。

 

「さあ、どうでしょうね………それより私としては、彼を抱き締めている彼女の方が気になるのですが……」

「あ、それは私も思ってた。レッド・フラッグの新入りか?」

 

 絹代の言葉に、まほが賛同した。

 そんな2人の会話など意に介さず、黒姫は幸せそうな表情を浮かべて紅夜を抱き締め、撫で続けており、そんな紅夜も、心なしか黒姫に甘えているように見えた。

 

「…………」

 

 そんな中、1人ウズウズしていたノンナが黒姫に話し掛けた。

 

「あ、あの………」

「……何?」

「………ッ」

 

 声を掛けられた黒姫は、紅夜を撫でながらノンナへと視線を向けるが、何処と無く睨んでいるようにも感じられる視線に、ノンナは一瞬怯む。

 

「あっ…そ、その………」

 

 口ごもりながら、ノンナは少しの間、何か躊躇するような仕草を見せるものの、意を決して話を切り出した。

 

「す、少しの間だけ……彼を……抱かせて、もらえないでしょうか……?」

 

 何時もの彼女らしくもなく、ノンナは歯切れ悪くしながらも頼んだ。

 

「う~ん、私としては良いんだけどなぁ~……」

 

 そう言って、黒姫は紅夜へと視線を落とす。

 

「………………」

 

 暫し紅夜を見つめ、彼女は紅夜の両脇に腕を通し、軽く抱き上げると、ノンナの方に向かせた。

 

「………?」

 

 突然向きを変えられた事に、紅夜は目をぱちくりさせている。

 

「えっと………紅夜、君………?」

 

 紅夜の目の前でしゃがみ、おずおずと話し掛けるノンナ。

 

「お姉ちゃんは…誰……?」

 

 先程、暴走状態にあったみほに恐怖体験をさせられたためか、紅夜は警戒したような目でノンナを見る。

 

「私はノンナ。彼処に居る人に誘われて来たの」

 

 ノンナは、紅夜を恐がらせないよう、優しげな声色で答える。

 

「……」

 

 彼女の自己紹介を聞いても尚、紅夜は警戒心を解かない。

 終いには黒姫の後ろに回り、隠れてしまう。

 

「…………」

 

 姿が変わったとは言え、想いを寄せる相手に警戒心を向けられ、ノンナは悲しそうな表情を浮かべる。

 

「うわぁ~、随分と警戒されてるわね、私達」

 

 苦笑を浮かべながら、ケイがそう言った。

 流石に見かねたのか、黒姫は自分の背中にくっついている紅夜に話し掛けた。

 

「ご主じ……げふんげふん、紅夜君」

「なぁに?」

 

 そう言って、紅夜は黒姫を見上げる。

 3歳にまで退行している紅夜は、座っている黒姫よりも低い。そんな彼を抱き締めたくなるような衝動を何とか抑え、黒姫は続ける。

 

「そんなに恐がらなくても大丈夫だよ。このお姉ちゃん達、さっきのお姉ちゃんみたいに悪い人じゃないから」

「ええ!?何時の間にか私、そんな悪役にされてる!?」

 

 聞こえていたのか、みほから悲痛な声が飛んでくるが、黒姫はそれを無視した。

 

「それに、このお姉ちゃん達は、私のお友達なの。だから大丈夫」

 

 そう嘘を言って、黒姫はノンナ達に目配せする。

 

「そ、そうそう!ホラ、大丈夫だからおいで!」

 

 黒姫の意図をいち早く察したケイが、そう言って紅夜を誘う。

 

「黒姫お姉ちゃんの言う通りよ、紅夜君。大丈夫だから……おいで?」

 

 ノンナは、普段の彼女ならカチューシャ以外には絶対にしないような、優しげな声色で誘う。腕を広げ、何時でも来いと言わんばかりに構える。

 

「………」

 

 紅夜は少しの間、黒姫とノンナを交互に見ていたが、やがて、恐る恐るノンナに近づいた。

 ノンナは、紅夜が腕の届く所にまで来ると、背中に腕を回して抱き寄せ、黒姫に匹敵する豊満な胸に、紅夜の顔を優しく埋めた。

 

「ホラ、紅夜君………ぎゅう~」

 

 普段、『ブリザードのノンナ』と比喩されるクールさはすっかり消え失せ、ノンナは、まるで母親のように紅夜を抱き締めた。キャラ崩壊も良いところである。

 

 最初は借りてきた猫の如く固くなっていた紅夜だが、優しく抱き締められている内に安心感を覚えたのか、顔を擦り付け、甘えるような仕草を見せる。

 

「んんっ………」

 

 それがくすぐったかったのか、ノンナは僅かに身を捩る。

 

「ワ~オ。紅夜ったら、すっかり懐いちゃったわね。私も抱きたいなぁ~」

 

 微笑ましそうな表情に、『羨ましい』と言う色を含ませて、ケイがそう言った。

 

「隊長がやったら彼、窒息するんじゃないの?加減一切無しで抱き締めそうだし」

「失礼ね、私だって加減ぐらい出来るわよ」

 

 ノンナに甘える紅夜を見ながらナオミが言うと、ケイは不満げに言い返す。

 

「あら、そうかしら?確か全国大会の1回戦が終わって、大洗の人達に挨拶に行った時、どっかの誰かさんが、大洗の隊長さんとレッド・フラッグの隊長さんを一纏めにしてキツく抱き締めてたんじゃなかったかしら?おまけにその時、レッド・フラッグの隊長さんは凄く苦しそうだったけど…」

 

 そう言って目を向けるナオミだが、ケイは知らないと言わんばかりに目を逸らした。

 だが、心当たりはあるのか、口笛を吹いて誤魔化そうとしている。

 

「はぁ~、ヤレヤレ。これだから家の隊長は…………」

「アンタ、隊員に溜め息つかれた挙げ句、『ヤレヤレ』とか言われてるわよ」

 

 盛大に溜め息をつきながらナオミが言うと、それを見たカチューシャが何とも言えないような表情を浮かべ、ケイに言った。

 

「それにしても、ちっちゃい紅夜ってホント可愛いわね~」

 

 だが、当の本人は紅夜を撫で回したりして、2人の話など聞いてもいなかった。

 

「ちょ、ちょっと皆さん!長門先輩は家のチームなんですから!」

「そ、そうです!独占は駄目です!」

「早く返してください!」

「そういや黒姫!アンタさっきまでコマンダーを独り占めしてたわよね!?今度は私にやらせなさい!」

「ちょ、オイ!俺にもやらせろよ!」

 

 そうしていると、今まで蚊帳の外とばかりに放置されていた大洗チームの面々や、ユリア、七花が割り込んできて、他校VS大洗チームVS付喪神での紅夜の取り合いが勃発した。

 

 

 

 一方その頃………………

 

 

 

「…………なぁ、俺等完全にほったらかしにされてっけど………どうする?」

 

 大洗チーム、他校、付喪神と言った三勢力による、修羅場とも言えるような光景を眺めている男子陣では、大河がそんな事を言った。

 

「どうするも何も、どうにも出来ねぇってのが現状だな」

「全くだ、ああなった女は手がつけられん」

 

 そんな大河の呟きに、翔と煌牙が答える。

 

「…そういや、腹減ったな」

 

 そう言って、勘助は腹を軽く擦る。

 

「言われてみれば俺等、飯食ってなかったもんな」

 

 そう言って、勘助の意見に同意する達哉。

 それから訪れた数秒程度の沈黙で、男子陣の今後の予定が決まった。

 

「取り敢えず俺、彼処で震えてる祖父さん回収して来るわ。そっからファミレスで飯でも食おうぜ」

『『『賛成!』』』

 

 こうして予定を決めた男子陣は、早速行動を開始した。

 先ず、大河は女子達による戦場の真ん中で怯えている紅夜を回収し、先に宴会広間から出ていた残りの男子陣と合流して建物を後にし、近くにあったファミレスへと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、紅夜とレッド・フラッグの男子陣が居ない事に気づいた三勢力が、軽いパニック状態に陥ったのは余談である。




 争っていると別方向からかっ拐われる。正に、漁夫の利!



 さて、この話を見終わった皆さんの、紅夜に向けての台詞を当てて見せよう…………

『何をさらしとんじゃ!このエロ餓鬼がぁ!!(血涙)』だッ!!
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