ガールズ&パンツァー~RED FLAG~   作:弐式水戦

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第148話~ちびっこ紅夜君、その4です!~

 大洗チームとレッド・フラッグによる祝賀会も、2日目を迎えた。

 杏の招待を受けた他校の面々がやって来て、紅夜争奪戦も熾烈さを増してきた頃、昼食時になったのを悟った男子陣は、女子陣が紅夜争奪戦に熱中している間に紅夜を連れ出し、昼食を摂るため、一旦建物を後にするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ~、上手く祖父さん連れ出せて良かったな」

「ああ、全くだ。あのままずっと紅夜争奪戦眺めてたら、昼飯食えねぇからな」

「昼飯どころか学園艦に乗り遅れたりしてな」

「止めろよ煌牙、縁起でもない」

 

 ファミレスに入ったレッド・フラッグ男子陣一行は、席へと誘導する店員の後に続いて歩きながら、そのような会話を交わしていた。

 安心したような面持ちで語る一行に、紅夜は首を傾げていた。

 因みに紅夜は今、大河に抱き抱えられている。

 高校生程の青年6人の中に3歳程度の子供が混じっていると言うのは、見ていて何とも言えないものだ。

 

「では、お客様方の席は此方になります」

「ああ、どうも」

 

 そうして、一行は席に座る。

 1つのテーブル席に7人も入らないため、テーブル席を2つ取り、其々チーム別に分かれて座る事にしていたのだ。

 

 全員が椅子に座ると、達哉はメニューを紅夜に渡した。

 

「さぁ、紅夜。今日はお兄さん達の奢りだ。何でも好きなの頼んで良いぞ」

「本当!?ありがとー!」

 

 嬉しそうに言うと、紅夜はメニューを開いて何を頼もうかと考え始める。それを微笑ましげに見ていると、翔が話し掛けてきた。

 

「なぁ、達哉。今思ったんだが………」

「何だ?」

 

 若干気まずそうに言う翔に、達哉は聞き返す。

 

「コレ、色々とマズイんじゃね?」

「と言うと?」

 

 そう訊ねる達哉に、勘助が口を開いた。

 

「俺等、女子陣には何も言わず、しかも紅夜連れて出てきた訳だから、帰ったら彼奴等、鬼の形相で待ち構えてんじゃないかなって事だよ」

「………あ~、成る程ね」

 

 彼等が言う意味を理解したのか、達哉は相槌を打ちながら言った。

 

 あの時、大河は女子陣が紅夜争奪戦に熱中している隙に、紅夜をこっそりと連れ出した。つまり紅夜争奪戦に熱中していた彼女等に言わせれば、景品を横からかっ拐われたようなものだ。紅夜が居ないと気づけばパニックになるだろうし、それで彼が居ない理由が、自分達が連れ出したとなればどうなるか、少なくとも考えたくはないだろう。

 

「まぁ、大丈夫だろ。昼飯の事も考えず、勝手に争奪戦やってた奴等が悪い」

 

 だが、達哉は特に気にしていない様子で答え、もう1冊のメニューを開いて眺める。

 

「そうだと良いんだがな」

 

 翔はそう言うと、注文するものを決めた紅夜から受け取ったメニューを眺める。

 

 そのような事もあり、全員が注文するものを決め、呼び出し鈴を押すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、食った食った」

「久し振りだからかな……中々美味かったな」

 

 昼食を終え、レストランを後にした一行は、宴会場までの道を呑気に歩いていた。

 

「にしても祖父さん、スッゲー幸せそうに食ってたな」

「ああ。念のために紅夜のスマホ持ってきて良かったぜ」

 

 自分達の前をよちよち歩いている紅夜を見ながら大河が言うと、達哉も頷きながら、ポケットから紅夜のスマホを取り出し、左右に軽く振る。

 

「何だ、撮ったのか?」

「ああ、本人は大して気にしてないみたいだからな。いざとなったらコイツを使わせてもらうさ」

「成る程、もし帰ってから女子陣が絡んできたら、祖父さんが幸せそうに飯食ってる写真で女子を買収するって寸法か……悪いやっちゃなぁ、お前」

「まぁまぁ、そう言うなって」

 

 苦笑混じりに言う大河に、達哉はニヤニヤと悪い笑みを浮かべながら言った。

 

 すると、不意に紅夜が歩みを止め、一同もそれに気づいて立ち止まる。

 

「……?紅夜、どうした?」

「………」

 

 翔が訊ねるが、紅夜は無言のまま答えない。気になった翔は、紅夜の視線を辿る。

 その先には、休憩するにはもってこいな、小さな公園があった。

 

「(成る程、遊びたいのか……あの薬飲んでから、ホントに餓鬼になったんだな)」 

 

 内心そう呟いた翔は、紅夜に声を掛けた。

 

「………ちょっくら、遊んでいくか?」

「……!うん!」

 

 そう言われた紅夜は、パッと笑みを浮かべながら振り向き、元気良く頷いた。

 

「そっか………」

 

 そう言うと、翔は達哉達の方を振り向く。翔が何を言おうとしているのか察した5人は、何も言わずに頷き、先に歩き出した紅夜に続いて公園に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………!」

「ん?ミカ、どうしたの?」

 

 木々の影に隠す形で、自分達が駆る戦車――BT-42――の砲塔に腰掛けてカンテレを弾いていたミカが突然演奏を止めた事に気づいた、小柄な金髪の少女――アキ――が声を掛けた。

 

「……風がね、私に語り掛けてきたんだよ。『海沿いの道にある、小さな公園へ向かえ』ってね」

「小さな公園?なんで?」

 

 今度は赤茶色の髪をツインテールに纏めたミッコが訊ねる。

 

「面白いものが見られるからさ」

 

 そう言うと、ミカはBT-42から降りる。

 

「それじゃ、行ってくるね」

「え?ちょ、ちょっとミカ!?」

 

 アキの制止も聞かず、ミカはそのまま歩いていった。

 

「『面白いもの』、ねぇ………何が見れるんだか」

 

 他人事のように言いながらも、ミッコは興味ありげな表情を浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は変わって、此処は公園。

 ベンチに腰掛けた煌牙と新羅は、楽しそうに公園内を走り回る紅夜を眺めていた。

 

「にしても、随分久し振りだなぁ。公園で遊ぶなんてさ」

「ああ……」

 

 ベンチに深く腰掛けた煌牙が言うと、新羅も染々とした様子で頷いた。

 

「そういや紅夜って、元から足速かったのかな………ライトニングの奴等、全然追いつけてねぇぞ」

「ん?………あ、ホントだ」

 

 新羅がそう言うと、煌牙は新羅が指した方へと目を向ける。その視線の先では、紅夜が他のライトニングの面々と追いかけっこをしているが、紅夜以外の3人が、すばしっこく走り回る紅夜に翻弄され、ロクに追いつけていなかった。

 

「3歳になって、精神も餓鬼の頃の状態になっても、身体能力だけは健在なんじゃね?」

「あ~、何と無く有り得そう」

 

 新羅が呟くと、煌牙は賛同するかのように相槌を打つ。 

 そんな時、ヘトヘトになった3人が歩み寄ってきた。

 

「おーい、のんびり座ってばっかいねぇで、お前等も紅夜の相手してやってくれよ」

 

 矢鱈と疲れた様子で、達哉がそう言った。

 

「よぉ、達哉。翔に勘助も、随分疲れてるなぁ」

「そりゃ疲れもするっつーの。彼奴スッゲーすばしっこいんだぜ?捕まえたかと思ったら、急に向き変えて走り出すしよぉ………ったく、お陰で何度転けそうになったか」

 

 達哉は心底疲れた様子で言いながら、ベンチにどっかりと腰掛ける。

 翔と勘助も、煌牙達の傍まで来ると、そのまましゃがみ込んでしまった。

 

「あの達哉達でさえこうなるとはな………」

 

 そう言いながら、新羅は立ち上がって歩き出した。

 

「おい、煌牙。俺等も行こうぜ」

「あ?行くって何処に?」

 

 不意に誘われ、煌牙は首を傾げる。

 

「紅夜のトコに決まってんだろ。暇そうにしてるぞ彼奴」

 

 そう言うと新羅は、木に凭れている大河の周りを、構ってほしそうにうろちょろしている紅夜の方を指さした。

 

「彼奴未だ遊び足りねぇんだな」

「外で思いっきり遊びたい年頃なんだろうよ」

 

 煌牙が溜め息混じりに言うと、新羅はそう返して紅夜の方へと歩み寄っていった。

 

「ホラ、紅夜。俺等が遊んでやるぞ」

「わーい!」

 

 新羅が声を掛けると、紅夜は嬉しそうに駆け寄っていく。

 それを見た大河は、そのまま木に凭れたまま転た寝しようとするが、結局は新羅に巻き込まれ、紅夜との遊びに付き合っていた。

 

 

 

 

 

 

「おーおー、俺等と追いかけっこしたばかりなのに、元気なモンだな」

 

 スモーキーの男子陣と追いかけっこをしている紅夜を眺め、勘助はそう呟いた。

 

「ああ。俺なんて見ろよ、汗だくだよ」

 

 そう言って、翔は額から流れ出る汗を拭った。それは勘助や達哉も同じ事で、3人は先程の自分達の如く紅夜に振り回されている大河達を眺めていた。

 

「あー、暑い……俺、ちょっくらジュース買ってくるわ」

「あ、それじゃ俺も」

 

 不意に勘助が立ち上がると、翔も続けて立ち、先に歩き出した勘助の後を追った。

 紅夜に振り回された疲れで立ち上がる気にもなれない達哉は、深々と腰掛けたベンチの背凭れに凭れ掛かっていた。

 そんな時だ。

 

「やあ」

「…………?」

 

 不意に、横から声を掛けられる。

 視線を声の主へと向けると、カンテレを抱えたミカが微笑みながら立っていた。

 

「隣、座っても良いかな?」

「ああ、良いぜ」

「ありがとう」

 

 軽く微笑みながらそう言って、ミカは達哉の隣に腰掛けると、カンテレを膝の上に置き、適当に弦を弾く。

 

「お前さん、変わった楽器持ってんだな」

「ああ、これはカンテレと言ってね。フィンランドの民族楽器なのさ」

 

 ミカが弾いているカンテレに興味を持った達哉が話し掛けると、ミカは答える。

 

「へぇ~。じゃあ、お前さんはフィンランドから来たのか?」

「いやいや、私は生粋の日本人さ」

 

 そう言うと、ミカは演奏を止めて達哉の方へと顔を向けた。

 

「自己紹介が未だだったね。私はミカ、継続高校戦車道チームの隊長だ」

「ほぇ~………あ、俺は辻堂達哉だ」

「そうか……よろしく、達哉」

「お、おう」

 

 いきなり名前呼びされた事に若干の戸惑いを覚えつつ、達哉は返事を返した。

 

「ところで達哉」

 

 それから少しの間を空けて、ミカが口を開いた。

 

「彼処に、子供相手に本気で走っている人が居るんだが、君の知り合いかい?」

「ん?……あ~あ」

 

 ミカが向いている方向を見た達哉は溜め息をついた。

 その視線の先には………………

 

「鬼さん此方、手の鳴る方へ~♪」

「待てコラァ!」

「お得意のフェイント攻撃は見切ったぞ祖父さん!」

「ぜってぇ取っ捕まえてやる!」

 

 無邪気に挑発しながら逃げ回る紅夜と、それを本気で追い回す3人の青年が居た。

 

「あ~らら、ムキになっちゃってまぁ……あれじゃ俺等の二の舞じゃねぇか」

 

 先程までの自分達と重ね、達哉はヤレヤレとばかりに首を振った。

 

「おーい達哉、お前の分も買ってきた………って、えぇ~………」

「彼奴等、3歳程度の餓鬼相手に何本気出してんのさ……」

 

 ちょうど帰ってきた翔と勘助も、そんな感想を溢したとか………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、宴会場では………

 

 

「う~ん、達哉君出ないなぁ………」

 

 スマホを片手に、達哉へと電話を掛けていた沙織がそう呟いた。

 

「此方も駄目ね。大河に電話してみたけど全然出ないわ」

 

 話に入ってきた深雪も、お手上げと言わんばかりの表情を浮かべている。

 

「カチューシャ、紅夜さんを勝手に連れ出したレッド・フラッグの男子陣に粛清を」

「いやいや、何言ってんのよノンナ………」

「カチューシャ様、ノンナ様の言う通りです」

「ちょ、クラーラまで!?」

 

 プラウダ組では、目が据わった2人にカチューシャがたじたじになり………

 

「それでね、ボコの着ぐるみ着た紅夜君はね………」

「あ、ああ………」

 

 みほは、紅夜の写真をまほに見せびらかしており……

 

「彼奴等…勝手に私の紅夜を連れ出しやがって……帰ってきたら覚えとけよ……!」

「静馬!?アンタ恐い!スッゴい恐いから!つーかアンタ、最近キャラ崩壊しまくりじゃない!何があったのよ!?」

 

 最近、紅夜とのスキンシップを取れていないからか、不機嫌な静馬が禁断症状を起こしており、それを見た雅がドン引きしていたりと、かなりカオスな空間が広がっていたとか……

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