ガールズ&パンツァー~RED FLAG~   作:弐式水戦

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第20話~此処からがスタートです!~

夜7時近く、大洗の港に到着した一行は、帰ってくるのをずっと待っていたのか、孫柱に片足を乗せるという、昭和時代の刑事ドラマでありがちな決めポーズを取っている麻子を見つけた。

 

「遅い…………」

此方が来るのに気づいた麻子が言う。

一行は平謝りに謝りながら、学園艦に乗り込んでいく。

すると、其所には先程、紅夜と達哉にIS-2を退かすように言ったおかっぱ頭の女子生徒が居た。

 

「出港ギリギリよ?」

「すいません、園(その)さん」

「すみません」

「すまんな、そど子」

「その名前で呼ばないでって言ってるでしょう!?」

 

一行はその女子生徒、園みどり子に謝りつつ、階段をかけ上がる。

そして上に着くと町が見え、そして紅夜達が乗ってきたIS-2が見える場所に着くと、其所には1年生のDチームが居た。

 

「西住隊長……………………」

 

1年生を代表するように、梓が恐る恐る、前に出てきた。

 

「戦車を放り出して逃げたりして、すみませんでした!!」

『『『すみませんでした!!』』』

 

梓が頭を下げると、他の1年生も次々と頭を下げた。

 

「せ、先輩達、かっこ良かったです!」

「直ぐ負けると思ってたけど、頑張ってる先輩達を見て、私達も頑張ろうって思いました!」

「私も!もう逃げません!絶対に!」

 

1年生達が、其々の決意を言う。

 

それを見たみほは、優しく微笑んだ。

 

「許すのか?」

 

みほの横に立った紅夜が聞いた。

 

「うん。皆反省してるみたいだし、ああ言っているのに、無下には出来ないよ」

「そっか…………まあ、お前がそう言うなら、俺はそれに従うまでだな」

 

そう言うと、紅夜は1年生に近づいていく。

1年生は怒られると思っているのか、少し表情を強張らせる。

だが、紅夜は優しそうな笑みを浮かべながら言った。

 

「良いか?試合では絶対に、逃げちゃいけないなんてルールはねえから、自分の身の危険を感じたら直ぐに逃げりゃ良い。戦車道ってのは、言っちゃ悪いが殺し合い一歩手前の競技だ。安全性だって、絶対とは言えねえから大怪我する時もあるだろうからな」

「で、でも!」

 

梓はそう言いかけるが、紅夜が梓の肩に手を置いて言った。

 

「そう自分等を責めることはねえよ。まあ、もしお前等が、危険な状態になっても逃げねえってんなら、俺等がお前等を守ってやるさ」

 

そう言って、紅夜は達哉の方へと向かった。

 

その頃、みほ達Aチームは、みほに届いたという手紙を見ていた。

そして手紙と一緒にティーカップと紅茶の葉が添えられていた。

 

「凄いですよ、西住殿!聖グロリアーナは、好敵手と認めた相手にしか、紅茶を贈らないとか言われていますからね!」

「ん?どうした、何があった?」

 

達哉の方に向かおうとしていた紅夜が足を止め、みほ達に近づいた。

 

優香里から説明を受けた紅夜は、驚きに目を見開いた。

 

「つくづくスゲエな西住さんは。そんなトコに認められるとは」

「う、うん…………」

 

紅夜に言われたみほは、少し頬を赤く染める。

 

「おや?長門殿宛にもありますよ?」

「え、マジで?どれどれ…………」

 

優香里から手紙を受け取った紅夜は、早速内容を見ることにした。

 

『貴殿方との試合が出来なかったのは残念でしたが、過去の実績については、私の仲間から伺いましたわ。

貴殿方の過去の実績を聞いて、ますます貴殿方と試合がしたくなってきました。

公式戦で、貴殿方が出場し、私達と戦ってくださるのを心待ちにしております。

 

ー追伸ー

先程の笑みは殿方らしくて素敵でしたが、無闇にその笑みを振り撒かない方が宜しくてよ?その笑みに惚れてしまう方が、現れてしまうかもしれませんから♪』

 

「………………………………何だこの追伸?つーかちょい待て。これどういう事?」

 

追伸の内容が理解出来ない紅夜は、ただ頭を捻っていた。

 

「じゃあ、もう遅いし帰ろうよ」

 

そうして、一行は帰り始める。

 

「紅夜、俺等もそろそろ行こうぜ」

「あいよ達哉……………………ん?」

「……………………」

 

紅夜はIS-2に乗ろうとしている達哉の元へ行こうとしたが、何か話したそうにしている華を視界に捉えた。

 

「悪い、先に乗って待っててくれ」

 

そう言うと、達哉は頷いてIS-2の方へと先に向かい、それを見届けた後、紅夜は華に近づいた。

 

「どうしたよ?お前は帰らねえのか?」

 

隣に来た紅夜が言うと、華がゆっくりと口を開いた。

 

「私の家から帰る際、お母様に呼ばれたのですよね?」

「…………ああ、気づいてたのか」

「勿論。あの時の家には、お母様しか居なかった筈ですから」

 

紅夜が言うと、華は軽く微笑みながら言った。

 

「それで、お母様とはどういった話を?」

 

そう華が聞くと、紅夜は少しの間を空けて言った。

 

「『不出来な娘ですが、これからも、よろしくしてやってください』って言われたよ」

「…………ッ!」

 

紅夜が言うと、華は驚愕に目を見開いた。

 

「お前の母さん、何だかんだ言いながらもお前の事、大切に思ってくれてたんだな。良い母さんじゃねえか」

「…………お母様……………………ッ!」

 

そう呟いた華の目から、大粒の涙が溢れた。

 

「あの人、戦車道とかは嫌ってるし、認めてもいねえ。だが、お前言ったよな?『お母様が納得するような花を生けることが出来たら、戦車道も認めてくれる』って」

 

そう言うと、華は頷いた。

 

「……………………頑張れよ、期待してるぜ。お前の生ける、『力強い花』ってヤツをな」

 

それだけ言って、紅夜は華にハンカチを渡すと、既にエンジンがかかっているIS-2の元へと走っていった。その後ろ姿を、華は見届けていた。

 

「ええ、長門さん。私…………頑張ります」

 

渡されたハンカチで涙を拭い、胸に両手を当ててそう呟いた華の声は、出港を知らせる学園艦の汽笛によって掻き消されてしまったが、それでも本人は、満足そうな表情を浮かべつつ、その頬は少し赤く染まり、キューボラから身を乗り出している紅夜を、熱の籠った目で見つめていた。

そして華は、少し先で待っているみほ達の元へと走っていった。

 

 

 

 

 

 

「なあ、紅夜。お前あれから五十鈴さんと、何話してきたんだ?」

 

IS-2に乗り込んだ紅夜は、操縦席に座る達哉に話しかけられた。

 

「ああ、まあアレだよ、ちょっとした世間話ってヤツさ」

「何だソリャ」

 

適当に答える紅夜に、達哉は苦笑いしながら言った。

 

「それよか紅夜、公式戦って何時だと思う?俺、一応角谷さんから聞いたんだけどな」

「さあな…………何時だ?」

 

そう言うと、達哉は少し言いにくそうにしながら言った。

 

「1カ月後だとよ」

「……………………マジで?」

「マジもマジ、大マジだ」

「そりゃ短すぎやしねえか?」

 

紅夜が言うと、達哉は眉を八の字にして言った。

 

「仕方ねえだろ、もう決まった事なんだからさ。後それから、明日角谷さんが、俺等レッド・フラッグも公式戦に出れるよう、連盟に掛け合ってくれるとさ」

「マジですか」

「ああ。上手くいけば良いんだがなぁ……………………」

「祈るしかねえよ」

 

そう言って、彼等は大洗女子学園の裏門に着くと、戦車を停めた。

 

「どうせ明日も練習なんだ、今日は戦車で泊まろうぜ」

「まるでキャンプだな」

 

そう紅夜が言うと、達哉は笑いながら言った。

 

「まあ、今の季節的には、掛け布団とかは要らねえさ。ほら、寝ようぜ」

 

そう言って、達哉は寝ようとしたが、それを紅夜が止めた。

 

「まあまあ、寝るのは少し待ちなよ達哉君」

「……………………な、何だよ?」

 

ただならぬ紅夜のオーラに、達哉は若干怯えながら聞いた。

 

「テメエ、試合の時によくも俺をペットボトルでぶん殴ってくれやがったなァ……………………」

「……………………そろそろ水に流さないか?」

「流すかァァァァアアアアアッ!!砲弾でケツバット喰らいたくないってんなら、今から俺の言う罰ゲームの内、何れか1つを選んで実行してもらうからなァ!!」

 

物凄い剣幕で言う紅夜に、達哉は若干怯えながら言った。

 

「な、なら…………その罰ゲームとやらを言ってみろよ」

「では……………………

その1、『明日の戦車道のミーティングの時、皆の前でIS-2の上で、褌一丁で《コマネチ》をやる』

その2、『お前が一番怖いと思っている人に夜な夜な電話かけて、『お前の母ちゃんデベソ~』ってイタ電する』

その3、『町のあちこちにスピーカーつけて大音量で、『辻堂達哉はガチホモだぁ~!』と叫ぶ』

……………………さあ、何れにするィ!?」

「……………………選べるかァァァァアアアアアッ!!」

 

そう叫ぶと、達哉は操縦手用のハッチを勢い良く開け、外へ飛び出していった。

 

「クックックッ…………………さァて達哉、処刑からは逃げられねぇぜぇ~?……………………待ァちやがれやゴルァァァァァアアアアアッ!!」

 

紅夜はIS-2の砲弾を1発外に持ち出すと、化け物のような怒鳴り声を其処ら中に響かせながら、あまりの速度に衝撃波さえ発生させる勢いで達哉を追い始めた。

 

その後、町中を亜音速で追いかけっこしている2人を見た通行人によって、『夜、砲弾らしきものを振り回している青年と、それから逃げる青年の幽霊が亜音速で学園艦の町を走り抜ける』という都市伝説が流れることになるのだが、それはまた別の話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして数日後、公式戦で当たる高校の抽選会が始まった。

 

「なんで男が此処に…………?」

「場違いじゃないの?」

「あ、私知ってるよ。ホラ、結構前に消えたっていう同好会チーム」

「じゃあ復活して、どっかに所属したってこと?」

「顔は良いけど、やっぱ場違いよねぇ~」

「ねぇ~」

 

レッド・フラッグ代表として来た、紅夜と達哉を見た瞬間、他の学校の女子生徒達からそんな小言が漏れる。

 

「うへぇ~、あんま歓迎されてねえな」

「仕方ねえだろーよ、そもそも男が戦車道やってる事自体が前代未聞なんだからよ」

 

そう言っている間に、大洗女子学園の代表として、みほが呼ばれる。

 

『大洗女子学園、8番!』

『『『『『『『よっしゃー!』』』』』』』』

 

大洗女子学園と当たる、サンダース大学附属高校の生徒達が喜ぶ。

 

「なあ達哉、アレどう思う?」

「さあな………恐らく、無名校との試合だから余裕で勝てるぜイェーイ!とか思ってんじゃね?」

「成る程、強豪VS無名だからこその、『あるある』ってヤツか………つーか、俺等レッド・フラッグはガン無視みてえだな」

「まあ、ソイツ等については適当に畳んでやれ的な感じだろ。それよか、よく俺等の出場に連盟の連中が文句言わなかったよな~」

「ああ、それは俺も同感だぜ」

 

そう思いながら、2人は事のなり行きを見守るのであった。

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