ガールズ&パンツァー~RED FLAG~   作:弐式水戦

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第3章~全国大会へ向けて~
第21話~2つの再会です!~


「う、ウメエ…………この喫茶店のケーキはうめえな…………」

「ああ…………こればっかりには同感だぜ」

 

抽選会が終わり、学園艦からの連絡を待つ間、生徒会チームは連盟への申請手続きをとるために本部へと向かったため、紅夜と達哉は真っ先に会場を抜け出し、戦車喫茶《ルクレール》で時間を潰していた。

 

真っ先に店に入り、頼んでいたケーキを頬張っていた2人は、そのケーキの美味さに感動していた。

そうして時間が経つにつれ、他校の女子生徒達がルクレールに入ってきた。

 

「お、他の学校の人がチラホラやって来たぜ?」

「皆、俺達と考えてる事は同じなんだな……………此処で暇潰ししようって魂胆が」

「魂胆って、人聞きの悪い事言うなよ…………」

 

達哉の言葉に、紅夜は苦笑いを浮かべる。

そうしている間に、みほ達Aチームも入ってきたが、変に合流しようとすると邪魔になるだけだと思った2人は、彼女等に気づいていないふりをする事にした。

 

「そういや、サンダースって金持ち学校なんだったよな?」

 

紅夜が言うと、達哉は口に運ぶケーキをフォークで取ろうとしていた手を止めると言った。

 

「ああ。おまけに戦車保有数も全国1位で、2軍やら3軍やらがあるらしいぜ?つーか紅夜、お前サンダースの学園艦には何回か遊びに行ったとか行ってたじゃねえかよ。おまけに、黒森峰とかプラウダとかにも行ったとか言うしさ」

「ああ、そういやそうだな……………にしてもその金、1割でも良いから此方に欲しいや」

「そんな卑しい事言うんじゃねえよ」

 

2人はそんな会話を繰り広げていたが、そうしていても、他校からの視線は突き刺さるばかりだった。

無理もない。今このルクレールには、紅夜と達哉を除けば、客は女性しか居ないのだから……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、紅夜達の席の近くに座っている、みほ達Aチームは…………

 

「ねぇ、アレって間違いなく…………」

「ええ、長門さんと辻堂さんですね」

「女子だらけの空間で、よくああやってのんびり出来るよな…………」

 

みほ達は既に気づいていたらしく、話している紅夜達の方を見ていた。

 

「あ、何やらゲームで遊び始めましたよ」

 

優香里が言うと、紅夜と達哉が3○Sを取り出して通信しているのが見えた。

 

「ねぇ、どうせだからあの2人も呼ばない?」

「え?」

 

沙織が言うと、それまでケーキに見惚れていたみほが顔を上げた。

 

「此方、比較的スペース空いてるからさ、麻子が此方に来れば、2人ぐらいは入れるんじゃない?」

「うん、そうだね」

 

そうして、沙織が2人を呼びに行こうとした時だった。

 

「…………副隊長…………?」

「え?」

 

不意に、その単語がみほ達の耳に入った。

声の主の方へと振り向くと、其所には黒森峰の制服を着た茶髪の女子生徒と、銀髪の女子生徒、そして黒髪の女子生徒が居た。

 

「ああ失礼、《元》副隊長でしたね…………」

 

黒髪の男性的な雰囲気を漂わせる女子生徒が、みほを小馬鹿にしたように言う。

 

「お姉ちゃん…………」

 

みほが小さな声で言うと、《お姉ちゃん》と呼ばれた黒森峰の制服を着た茶髪の女子生徒--西住 まほ--は、何の感情もこもっていない声で言った。

 

「まさか、まだ戦車道をしていたとは思わなかった」

 

そう言われ、みほは表情を暗くして俯く。

それを見た優香里は立ち上がると、彼女等に反駁するように言った。

 

「お言葉ですが、あの時のみほさんの行動は、間違ってはいませんでした!」

「部外者は引っ込んでてほしいね」

 

優香里の言葉を黒髪の女子生徒が一蹴すると、銀髪の女子生徒が悲しそうな視線を向ける。

そうしているうちに黒森峰の3人は歩き出したが、銀髪の女子生徒は立ち止まると、みほ達の方を向いて言った。

 

「1回戦、サンダース附属と当たるのよね…………?」

「は、はい」

 

その女子生徒が言うと、みほは小さな声で返事を返した。

 

「……………………相手がファイアフライを出してくるかどうかは分からないけど、可能性は十分に有り得るわ……………………気を付けた方が良いわよ」

「え…………エリカさん?」

 

みほはつい、現在の黒森峰副隊長--逸見 エリカ--の名を呼ぶ。

 

「まあ、無様な負け方をして、西住流の名を汚さないことを祈るよ」

「ちょっと、要!」

 

黒髪の女子生徒--謙譲 要(けんじょう かなめ)--が言うのをエリカが止めようとすると、その発言に怒った沙織と華が立ち上がった。

 

「ちょっと、何よその言い方は!?」

「失礼では!?」

 

そう2人は言うが、要は何処吹く風とばかりに言い返した。

 

「君達こそ、戦車道に対して失礼なんじゃないかい?無名校の癖にでしゃばって…………おまけに、男女混合チームまでも引き込むとは、どう言った了見なんだい?」

 

そう要が言うと、沙織と華は黙ってしまう。

 

「良いかい?この試合は、戦車道のイメージダウンに繋がるような学校は、参加しないのが暗黙のルールというものなんだよ。ましてや、《戦車道は女子の嗜好み》と言われている世の中で、男女混合チームが参加するなんてもっての外だ。よく連盟が許可したものだよ……………」

「…………強豪校が負けないように、示し合わせて作られた暗黙のルールとやらで負けたら恥ずかしいだろうな」

「…………ッ!き、君ねぇ……………」

 

流石に耐えかねたのか、毒舌で言い返した麻子に、要は眉間にシワを寄せた。

 

その中、歩み寄る影が1つ……………

 

「……………………なあお前等、何時までもンなトコでギャーギャー喚かれたら五月蝿ェし、何より邪魔なんだけど」

 

一触即発の雰囲気の中、かなり不機嫌そうな声が聞こえた。

その声に、みほ達Aチームと黒森峰の3人が一斉に、その声の主の方を向くと、其所には不機嫌そうな顔で、腕を組んで立っている紅夜が居た。

 

「あ、貴方は…………ッ!」

「ッ!」

 

紅夜の姿を視界に捉えたエリカとまほは、信じられないとばかりに目を見開いた。

 

「君かい?戦車道の業界に混乱を持ち込もうとしている輩の総督さんは」

「か、要!止めなさい!彼は!」

 

見下すような視線でものを言う要に、エリカは声を荒げる。

 

「《戦車道は女子の嗜み》…………これが戦車道業界においての基本なんだよ。それを、屈強で戦車など必要ない筈の男が乗り込んでくるなんて、世も末だね…………何だい?女性から戦車を取り戻したいと言うのかい?」

 

呆れたとばかりに溜め息をつき、要はヤレヤレと首を横に振る。

思い切りバカにしたような言い方に、Aチームからの鋭い視線が要に突き刺さるが、紅夜は怒る事なく、逆に小馬鹿にしたような調子で言い返した。

 

「さあ、どうだろうねぇ…………少なくとも、俺は男でも戦車道が出来るような世界になるだけで十分だと思ってるよ。こうやってレッド・フラッグとして活動してたら、何かと最初は異端として見られたからねぇ………良い迷惑だぜ。此方はただ純粋に、男性でも戦車道を学ぶ事によって、色々と可能性を導き出せるって事を証明したいだけだってのによォ……………まあ取り敢えず、テーブルの方へ寄れや。通行の邪魔だよ」

 

困った困ったと言いながら、紅夜は首をポキポキと鳴らす。

その態度に腹を立てたのか、要は紅夜を睨んだ。

 

「君、少し言い方や態度が傲慢すぎではないのかな?別に敬語を使えまでは言わないけど、その言い方や態度は如何なものかと思うよ」

 

そう言うと、紅夜は興味もなさそうな声で言った。

 

「《傲慢》という単語が、今の俺を表す言葉だとしたら…………昔よりも、少しは進歩したと思うぜ……………………それとだがお前…………」

 

そう言うと、紅夜は目付きを要以上に鋭くして言った。

 

「随分と、ウチの隊長にキツい事ほざいてくれやがったじゃねぇかよ……………………『ああ?』」『『『~~~ッ!?』』』

 

最後にドスの効いた声を出し、殺気すら出し始めた紅夜に、一同が押し黙る。

その殺気は店全体を覆い、賑やかな雰囲気を一気に沈める。

 

『隊長が黒森峰で何したのかは知らねえよ…………でもなぁ、それでこの学校を……………それに隊長をバカにして良い理由になると思ってンのかテメエ?おまけに、此方が良い気分でケーキ食ってたのに喧嘩おっ始めようとしやがって……………迷惑甚だしいぜ』

「ッ!」

 

要は言い返そうとするが、紅夜の鋭い眼光に当てられ、何も言えなかった。

 

「取り敢えずお前等、喧嘩するなら出ていけ。ケーキが不味くなる。それから要とか言う女、ウチや隊長をバカにしやがったツケは高くつくぜ?……………覚悟しときやがれ」

 

そう言うと、紅夜は化粧室へと向かっていった。

 

「おーおー、紅夜の奴、思いっきり言いやがったな……………それもそうだが俺、何か空気になっちまったな…………」

 

その場に残された達哉は、そうボヤいていた。

 

 

 

 

 

 

「悪い、待たせたな」

「いや良いさ、気にすんな。にしてもお前、珍しくキレたじゃねえか。他の連中怯えてたぜ?」

「マジかよ……………こりゃやっちまったな」

 

あれから1分程達、みほ達が帰った後、化粧室から戻ってきた紅夜は達也に詫びを入れたが、本人はヒラヒラと手を振りながら言った。

 

それから2人は、もう一品ずつケーキを頼もうとしたが、ふと窓の外を見た達哉が、ある2人の少女に気づいた。

 

「ん?……………おい、紅夜。アレ見ろよ」

「あ?」

 

外を見ると、其所には誰かを待っているように、ルクレールの出入口付近で立っているまほとエリカの姿があった。

 

「あの2人、お前を待ってるんじゃねえのか?」

「あー……………知らね、覚えねえもん」

「お前なぁ…………」

 

我関せずとばかりに言う紅夜に、達哉は呆れた声を出しながら言葉を続けた。

 

「あの制服、どう見ても黒森峰の制服じゃねえかよ。最後に試合した学校の事ぐらい覚えとけよ」

「黒森峰?ああ、確か最後に試合したよな、一応俺等が勝ったけど…………そういや、あの時俺が助けたのも、黒森峰の人だったな」

「あの2人がそうだっつの。つか、直接助けた訳じゃない俺が覚えててお前が覚えてないってどうなんだよ……………」

「知らねえよンな事」

 

そう言って紅夜は、ツッコミを入れる達哉を無視してケーキのメニューへと視線を移そうとしたが、そのメニューは達哉に取り上げられた。

 

「あれはどう見てもお前待ちだ。今度奢ってやるから、今日はこれまでだ」

「へーへー…………」

 

紅夜は不満げな声を出しながら立ち上がった。

そうして、2人は会計を済ませると、外に出た。

 

「じゃ、俺はお先に」

「達哉テメエ…………後で覚えてやがれ…………ッ!」

 

そう紅夜が言った途端、達哉は一瞬、まほとエリカに目配せすると、目にも留まらぬ速さで立ち去った。

 

そうして、まほとエリカはゆっくりと、紅夜に近づいた。

 

「こう言う時って、『お久し振りです』って言えば良いんだっけか?」

「…………そ、そうだな…………」

「えぇ…………」

 

今も尚不機嫌そうな紅夜に怯えているのか、2人は声を震わせていた。

少しの沈黙の後、まほが恐る恐る話を切り出した。

 

「あの時、君に助けられた事には、本当に感謝している…………ありがとう」

「私からも礼を言うわ。あの時、貴方が来てくれなかったら、私と隊長は今頃、此処には居なかったと思うし」

 

2人がそう言うと、紅夜は目を瞑り、少ししてから再び見開いた。

その表情からは、先程の怒りなどの感情が一切消えた、穏やかな表情だった。

 

「いや、別に良いさ。それに元はと言えば、俺のIS-2でそっちのティーガーの後ろにゼロ距離射撃喰らわせたからだしな。それと不運が重なって、ああなっちまったんだ…………最低限の責任は取らねえとな…………」

「その責任が、火の中に飛び込んできて私達の救出?」

「何だよ、不満か?」

「まさか、そんな事はないわ。と言うより、命を救ってもらったのに不満を言うなんて、御門違いも良いところよ。バチが当たるわ」

 

そう言って、エリカは軽く微笑んだ。

其所へ、今度はまほが前に出てきた。

 

「それもそうだがウチの謙譲が、随分と失礼な事を言ってしまったな…………すまなかった。根は良い奴なんだがな……………やはり流派の人間は、大概がああ言う思想になるんだ」

まほが頭を下げると、紅夜は言った。

 

「いや、それももう気にしてねえよ。俺も言い過ぎた」

「それでもだ…………謙譲の事については、私の方からキツく言っておこう。だから取り敢えず、今回の事は水に流してくれないか?」

「…………ああ、そうしよう。西住さんにも、俺の方から伝えておくよ。んじゃ、気を付けてな」

 

そうして紅夜は帰ろうとしたが、まほが呼び止めた。

 

「待ってくれ」

「……………………どった?」

 

紅夜が振り向くと、まほはさっきより深く、頭を下げた。

 

「店であれだけキツく当たってからこんな事を言うのも、厚かましい事だとは分かっている。だが!…………みほを…………助けてやってくれ…………」

「私からも、お願いするわ…………」

 

そう言って、エリカも続いて頭を下げる。

 

紅夜は溜め息をつくと、何処からともなく取り出したメモ用紙に、これまた何処からともなく取り出したボールペンで、何やら番号らしきものを書き付けると、そのページのみを取ってまほとエリカの手に握らせた。

 

「これは…………?」

「俺の連絡先だ。月から土曜までは夕方5時以降、日曜は大概空いてるから、何かあったらその番号にかけてくれ。この際だし、お二人も何かあるなら、相談ぐらいなら乗るよ…………」

「良いの…………?」

 

エリカは不安そうな顔で言うが、対する紅夜は穏やかな表情だった。

 

「どうせだしな。……………それに2人は立場上、表立って西住さんを庇うような事は言えねえんだろ?流派の都合上」

「「ッ!」」

 

図星だったのか、2人はビクリと反応した。

 

「まあ、気が向いたらで良いさ。じゃあな」

 

そう言って、紅夜はまほとエリカの横を通り過ぎたが、それから2、3歩程歩いて立ち止まると、振り返る事なく言った。

 

「西住の姉さん……………お前の妹さんは、ちゃんと守って見せッから……………お前も出来る限りの事をしてやれよ」

 

そうして紅夜は、今度こそ2人の元を後にした。

 

その後には、紅夜への連絡先が書かれたメモ用紙を呆然と見ている、まほとエリカの姿が残された。

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