ガールズ&パンツァー~RED FLAG~   作:弐式水戦

36 / 161
第31話~カチコミ作戦です!~

さて、サンダースの援軍から逃げ回りつつ、先頭で逃走するサンダースのフラッグ車、M4A1を攻撃する、生き残った大洗の戦車隊の内の1輌の戦車--IS-2--、ライトニングチームでは、とある作戦が始まろうとしていた。

 

キューボラから上半身を覗かせて長い緑色の髪を靡かせ、後ろから砲撃を仕掛けてくるサンダースの援軍の戦車隊を赤く鋭い目で睨みながら、紅夜は車内のメンバーに声をかけた。

 

「さぁテメエ等、カチコミの時間だぜ?準備は良いか?」

「おうよ。ラフドライブの準備は万端だぜ」

「砲弾の装填も、既に完了だ」

「狙いさえ定まりゃ、何時でも撃てるさ」

 

紅夜の問いに、他の3人が答える。

その作戦の経験があるのか、メンバーの中の誰一人として、紅夜の作戦に異議を唱える者は居なかった。

全員の状態を確認した紅夜は、みほへと通信を入れた。

 

「んじゃあ隊長、ちっとばかりそっちを頼んだ」

『うん、分かったよ…………でも、本当にやるの?』

 

不安げに返事を返してくるみほに、紅夜は笑って言った。

 

「当たり前だ。取り敢えずは相手の戦力を潰す事が大事だからな…………そのための重戦車だと言っても過言じゃねえな」

『いや、過言だと思うし、そもそも重戦車って、そんな用途で使うのじゃなかったような気がするんだけど…………』

 

紅夜の発言に、みほは苦笑いしながらツッコミを入れる。

ツッコミを入れられた紅夜も、笑って言った。

 

「まあ細かい事は気にすんな…………じゃあ頼むぜ?隊長」

『うん…………気をつけてね』

「へーい、そっちもな~」

 

みほとの通信を終えた紅夜は、前を走るM4A1からの砲撃が止んだ瞬間、声を張り上げた。

 

「All right!作戦開始だ達哉!じゃじゃ馬を踊らせろォ!」

「よっしゃあ!」

 

達哉は返事を返し、アクセルペダルを思い切り踏み込むと、そのまま操縦レバーを操る。

IS-2は速度を上げてⅣ号の前に出る。そして、車体を激しく揺らしながらUターンする。

 

「うわっととと!?」

 

あまりの横Gに、紅夜は車内から投げ出されそうになった。

 

「どうだ紅夜ァ!ハッピーかァ!?」

「ふざけんなァ!!」

 

ハイテンションの達哉が叫ぶと、キューボラの縁に掴まって落ちないようにしていた紅夜が答える。

そのままIS-2は直進し、大洗の戦車隊と擦れ違う。

そして、38tの後ろを守っている最後尾のⅢ突と擦れ違うと、今度はⅢ突の後ろを守るように出ると、そのまま停車した。

 

「…………?ナオミはⅣ号を追って!後は停車!」

 

突然、自分達の前に立ち塞がったIS-2に疑問を覚えたケイが指示を出すと、ナオミが乗るファイアフライがIS-2の横を通り過ぎ、残った4輌のシャーマンが停車する。

そしてその場には、1輌のIS-2と、4輌のシャーマンが対峙すると言う光景が出来上がった。

 

「これで良いか?紅夜」

 

操縦レバーから手を離した達哉が言うと、先頭で停車しているケイのシャーマンを睨んでいた紅夜は答えた。

 

「ああ、良くやったぜ達哉。相変わらずのラフドライブをありがとよ…………全く、マジで振り落とされるかと思ったぜ」

 

紅夜は首をボキボキと鳴らしながら答える。

 

「さあて、後はアレだな…………」

「『相手は4輌一気にカチコミ大暴れだぜ!』…………ってか?」

「まあな」

「久々に戦車での乱闘だな、Hallelujah!」

 

呟いた勘助に翔が言葉を付け加え、達哉も呟く。

彼等4人の目は、最早暴れ出す時を今か今かと待ちわびている、狂戦士(バーサーカー)の目そのものだった。

 

「んじゃ、挨拶代わりに1発かましてやるぜ!」

 

スコープを覗いていた翔はそう言うと、照準を合わせていた1輌のシャーマン目掛けて主砲を発射した。

凄まじい音と共に放たれた122mm砲弾は、そのシャーマンの車体に叩き込まれ、そのまま有効と判定され、撃破を示す白旗が飛び出した。

 

「ッ!よくもやってくれたわね!全車、攻撃開始!Fire!」

『『『Fire!!』』』

 

ケイの指示で、残された3輌のシャーマンが一斉に砲撃を始める。

 

「連中が乗ってきやがった!此方も行くぞ!」

「「「Yes,sir!!」」」

 

紅夜が叫ぶと、達哉はアクセルペダルを思い切り踏み込み、向かってくる3輌のシャーマンに襲い掛かっていった。

 

 

 

 

 

『オオーッ!スゲー!』

『あんな激戦は初めて見るぞ!』

『良いぞ良いぞー!』

『やっちまえー!』

 

エキシビジョンに映る乱闘のような戦車戦に、観客が騒ぎ出す中、小高い丘陵の上では…………

 

「…………彼等は気でも狂ったのか?いくら性能でシャーマンに勝っているからって、3輌相手に単身で挑むなど…………長年戦車道をやっていた癖に、何も知らないんだな」

 

黒森峰では、要が紅夜達ライトニングの行動に、否定的なコメントを呟くが、それにエリカが口を挟んだ。

 

「分かってないのはアンタよ、要」

「…………どういう意味ですか?副隊長」

 

要はそう言うと、目を細めてエリカを見やる。

エリカは暫く目を瞑って黙っていたが、やがて口を開いた。

 

「…………確かにアンタの言う通り、アレだけ見れば、『初心者が自棄っぱちになって特攻してる』としか思えないでしょう。それに、あの様子から見て、彼等は今、興奮状態にある」

「ええ、そうとしか言えませんね…………それが何だと言うのです?」

 

そう言う要に、エリカは言葉続けた。

 

「並の人間なら、あんな興奮状態になれば最後、小さなミスを繰り返すばかりで本来の実力の半分も発揮出来ずにやられるがオチよ…………でも、彼等は違っているわ」

「何処が違うと?」

「…………彼等は長い間、戦車道をしていた。その間に、体に染み付いた其々の役割のセンスが、紙一重の所で戦車をコントロールしているのよ…………まあ彼等は、『キレればキレるだけ強くなる』…………って感じかしらね?まあ、見てれば分かるわ」

 

それっきりエリカは何も言わなくなり、エキシビジョンへと目を向けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ケイ率いるサンダースの援軍とライトニングとの熾烈な戦いは続いていた。

サンダースの戦車隊は、何としてもIS-2を撃破せんとばかりに砲弾を浴びせるが、達哉の操縦技術によって避けられ、仮に当たっても、頑丈な装甲に阻まれて撃破に至らないのだ。

 

「撃てェ!!」

「発射!」

 

紅夜の指示が飛び、また1輌のシャーマンに狙いを定めた翔が引き金を引く。

凄まじい音と共に放たれた砲弾が、シャーマンの側面に命中、有効と判定され、撃破を示す白旗が飛び出した。

 

「け、計算外よ……………………まさか、4輌がかりでも圧倒されるなんて…………ッ!」

 

2輌目のシャーマンが撃破され、ケイは苦虫を噛み潰したような顔で呟く。

ナオミのファイアフライが、Ⅳ号及び他の戦車の撃破に向かったため、4輌居たシャーマンは今、たった2輌に減少してしまっていた。

 

「くっ!…………こうなったら仕方ないわ!離脱よ!」

 

ケイが指示を出すと、2輌のシャーマンがIS-2から逃げるように走り出した。

 

「おい紅夜!奴等逃げ出しやがったぞ!」

 

操縦手用の窓から外の様子を見ていた達哉が叫ぶ。

 

「勘助!砲弾は後幾つ残ってる!?」

「13発だ!結構減っちまったが、翔の腕なら何とかなる筈だ!」

 

勘助はそう答え、翔を見る。

 

「あいよ、その13発で仕留めてやるぜ!」

 

スコープを覗きながら言うと、翔は親指を立てる。

 

「そんじゃあ最後の仕上げだ!あの2輌を吹っ飛ばすぞ!」

「「「Yes,sir!」」」

 

そうして、達哉がアクセルペダルを思い切り踏み込むと、IS-2は激しく車体を揺らしながら走り出し、逃げ出した2輌を追い始めた。

 

 

 

 

 

その頃、サンダースのフラッグ車を追っている大洗の戦車隊では、あんこうチームが最後の作戦を決行しようとしていた。

 

「この先に丘があります。その上から、相手のフラッグ車を叩きましょう」

 

車長の席に座るみほがそう言うと、装填手用のハッチから後ろを見ていた優香里が叫んだ。

 

「敵のファイアフライが接近してきます!それに、そのさらに後ろから、2輌のシャーマンが!」

「ッ!」

 

優香里が言うと、みほは驚愕に目を見開いた。

 

「まさか…………紅夜君達が…………?」

 

紅夜達がやられたと思ったみほが呟くと、突然、みほの無線機に通信が入った。

 

『よぉ』

「ッ!紅夜君!」

 

淡々とした一言に、みほが声を上げる。

 

『悪いな隊長、2輌逃がしちまった。今ソイツ等を追ってるとこだよ。意外と逃げ足の速い奴等だぜ』

「良かった!やられた訳じゃなかったんだね!」

『アッハッハッ!そう簡単に俺等がやられる訳ねえだろ。絶対に戻るって約束したのを忘れたのか?』

 

みほが言うと、紅夜は豪快に笑いながら言った。

 

『んで、どうだ?フラッグ車をぶっ潰す案は出たか?』

「うん。それがね…………」

 

みほは、思い付いた作戦を紅夜に話した。

紅夜は何一つとして異議を唱えることなく、みほの話を聞いた。

 

『りょーかい。だが、そうとなりゃ相手のファイアフライが黙ってねえぞ?追っ掛けてぶっ叩きに来るかもしれねえ』

「うん、それも承知だよ…………ねぇ、紅夜君」

『おう?』

「…………私達あんこうが居ない間、カバさんチームとカメさんチームをお願い」

『…………』

 

みほが言うと、紅夜は暫くの沈黙の末に、短く答えた。

 

『Yes,ma'am』

 

そう言って、紅夜は通信を切る。

そして、あんこうチームのメンバーがみほを見た。

その視線で、彼女等の思いを察したみほは頷く。

 

「さあ、皆!後少し、頑張りましょう!」

「「「おーーっ!!」」」

「おー…………」

 

沙織、優香里、華が答え、遅れて麻子も答える。

 

「麻子さん!このまま丘に向かってください!最後の作戦を決行します!」

「ほい…………」

 

麻子は短く答え、Ⅳ号を丘へと向かわせる。

 

「Ⅳ号は丘の方へと向かった。追え」

スコープ越しにその様子を見ていたナオミは、操縦手にそう命令する。

その指示を受けた操縦手も、Ⅳ号を追ってファイアフライを丘へと向かわせた。

 

 

「おーおー、始めたか…………よっしゃ!此方ももう一暴れだ!達哉!一先ず前の2輌は放っておけ!カバさんの援護に向かえ!」

「Yes,sir!」

 

丘へと向かっていく2輌を、双眼鏡越しに見た紅夜が指示を出すと、達哉はアクセルペダルを思い切り踏み込んでIS-2を全速力で走らせ、逃走する2輌のシャーマンをごぼう抜きにする。

 

「…………?相手が何もしてこない…………?なら、攻撃再開よ!」

 

キューボラから上半身を覗かせたケイが言うと、2輌のシャーマンが砲撃を再開する。

勿論、前を走る紅夜達のIS-2が真っ先に標的となるが、達哉は上手い具合に蛇行させて避けていく。

 

「さあて、試合も最終段階だ!盛り上がってきたァアーーッ!!」

 

紅夜がそう叫ぶと、それに答えるように、IS-2のエンジン部分から白煙が上がる。

試合も大詰め!勝負の行方や如何に!?

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。