ガールズ&パンツァー~RED FLAG~   作:弐式水戦

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第32話~1回戦、決着です!~

「この丘の頂上の0920地点で、サンダースのフラッグ車を叩きます。麻子さん、急いで!」

「了解…………」

 

丘を駈け上るⅣ号では、みほが最後の作戦の内容を話していた。

双方共に走っている状態では命中が期待出来ないと悟ったみほは、丘の上で停車した状態で撃破することに決めたのだ。

だがみほは、何かを感じ取ったのか、突然叫んだ。

 

「ッ!停車!」

「ッ!?」

 

突然の事に驚きながらも、麻子はみほの指示に従ってⅣ号を横滑りさせ、無理矢理停車させる。

すると、Ⅳ号が進もうとしていた先に砲弾が着弾し、砂埃を巻き上げた。

 

「きゃあ!?」

「ッ!?一体何が!?」

 

着弾の衝撃がⅣ号を襲い、沙織と華が声を上げると、みほはキューボラから上半身を覗かせた。

その視線の先には、砲口から白煙を上げているファイアフライの姿があった。

 

「ッ!ファイアフライ!」

 

みほは、後方で砲口から白煙を上げているファイアフライを睨み付けた。

 

「IS-2の横をすり抜けてきたのか…………」

「麻子さん、急いで!」

「了解…………ッ!」

 

みほが叫ぶように言うと、麻子はⅣ号を急発進させる。

クラッチを蹴っ飛ばしてギアを上げ、アクセルペダルを思い切り踏み込み、丘の頂上を目指す。

 

「…………チィッ!」

 

スコープから覗いていたナオミは、砲弾を避けられた事に舌打ちをしながらも、ファイアフライを前進させ、Ⅳ号を追う。

 

「ファイアフライが次の弾を撃ってくるまで、この間で勝負を着けます!」

「はい!」

 

みほと華がそう言い合っている間にも、Ⅳ号は目的の、0920地点に到着した。

 

眼下には、サンダースのフラッグ車を追いながらも、後ろから追ってくる2輌のシャーマンから逃げる大洗の戦車隊が見える。

そんな時、IS-2が砲塔を後ろへと向け、後ろから追ってくる2輌のシャーマンのうち、1輌のシャーマンを撃破するのが見えた。

Ⅳ号は砲塔を旋回させてフラッグ車に照準を合わせようとするが、砲塔旋回だけでは間に合わないため、麻子が車体ごと旋回させる。

そうしている間にも、ファイアフライがⅣ号の後ろに付いていた。

 

「花を生ける時のように集中して…………」

 

そう呟きながら、華はスコープを覗いてフラッグ車へと狙いを定める。

 

「装填完了!」

「(貰った!)」

 

ファイアフライでは次弾の装填が完了し、ナオミは勝利を確信する。

そして、少しの沈黙の末に…………

 

「発射!」

 

華とナオミが引き金を引く。

 

「…………Feuer」

 

それと同時に、とある戦車の砲手も引き金を引く。

そして、3つの砲撃音が、草原地帯に響き渡る。

1つ目はⅣ号の、2つ目はファイアフライの砲撃音である。なら、最後の3つ目は…………?

 

そう、IS-2である。

IS-2から放たれた砲弾は、Ⅲ突の真上を通り過ぎ、38tの砲塔の直ぐ横を掠めていく。

そして、Ⅳ号から放たれた砲弾がM4A1のエンジン部分に被弾した次の瞬間、IS-2から放たれた砲弾がM4A1の防盾に命中し、爆発音が響き渡る。

そして、ファイアフライから放たれた砲弾も、Ⅳ号のエンジン部分に叩き込まれ、被弾による爆発音が其所からも響き渡る。

 

その様子がエキシビジョンでも映し出され、紅夜達大洗の戦車隊や、唯一生き残ったケイのシャーマン、の乗員達、そして観客席を沈黙が支配する。

 

紅夜はキューボラから出てくると、砲塔の上に立ち上がり、双眼鏡を取り出して目に押し当てると、黒煙を吹き上げながら停まっているサンダースのフラッグ車を睨み付ける。

操縦手用のハッチから出てきた達哉は、Ⅳ号とファイアフライが駈け上がった丘の頂上を見る。

勘助や翔もキューボラから出てくると、紅夜と達哉が見ている其々の方を見た。

そして暫くの沈黙の末に、M4A1から白旗が飛び出した。

 

『サンダース大学附属高校フラッグ車の行動不能を確認!よって1回戦は、大洗女子学園の勝利!!』

 

「「「「……………………WHOOOO-HOOOO!!!」」」」

 

大洗女子学園の勝利を告げるアナウンスが響き渡り、紅夜達ライトニングの面々は、暫く唖然として互いに顔を合わせ、次の瞬間には歓声を上げた。

 

「Gotcha!!やったぜ!」

「おお、勝ったぜリーダー!無名校の大勝利だぜ!Ha-ha!」

「「「「We fight!We fight!We fight!We fight!」」」」

 

達哉が喜びの声を上げると、ライトニングの面々が高らかに、自分達の戦前の誓いでの言葉を連呼する。

そして一通りはしゃいだ後、彼等はIS-2に乗り込み、Ⅳ号とファイアフライが駈け上がった丘へと向かった。

 

 

 

 

 

全速力で丘を駈け上がってきたIS-2は、エンジン部分から黒煙を上げ、白旗が出た状態で停車しているⅣ号の隣に来た瞬間、達哉のフルブレーキで急停車し、紅夜が一番に、IS-2から飛び降りる。

 

「よお、隊長!やったな!俺等の勝利だ!」

 

IS-2から飛び降りた紅夜は、あんこうチームのメンバーに囲まれているみほに近づき、声をかける。

 

「紅夜君!」

 

みほは紅夜を視界に捉えると、紅夜に駆け寄った。

 

「やったね、紅夜君!」

 

はち切れんばかりの笑顔で言うみほに紅夜も笑みを浮かべた。

 

「ああ、やったな!お前等は見事にやり遂げたんだ!やってくれると思ってたぜ!」

 

紅夜はそう言って、みほの両肩に手を乗せて労い、砲手の華も同様に労う。

そう言い合っていると、達哉達がIS-2から降りてきて、あんこうチームに駆け寄ると、其々のメンバーを労う。

 

『『『『『『『『西住隊長ーーッ!長門せんぱーーいっ!!』』』』』』』』

「お?」

「あれは!」

 

突然聞こえた声に、紅夜とみほが振り向く。

その視線の先には、撃破され、回収されたアヒルさんチームとウサギさんチームの面々が手を振っている。

 

『『『『大洗ーーッ!!!』』』』

 

すると、反対側から生き残ったカバさんチームとカメさんチームが向かってきていた。

Ⅲ突の天板に乗ったエルヴィン、カエサル、左衛門佐が手を振り、38tから体全体を乗り出した杏が笑顔を浮かべ、ピースサインを送る。

 

それを見たみほと紅夜は互いを見やると微笑み合い、駆け寄ってきた仲間と互いを労い合うのであった。

 

 

 

 

 

 

「やったな、静馬」

「ええ。何だかんだ言っても、結局は勝っちゃうのね…………まあ、紅夜達が居るなら、こうなるのも予測出来なくもない事だけど」

 

試合終了を知らせるアナウンスが鳴り響き、観客席が熱気に包まれてから数分後、Ⅳ号が回収され、回収車の荷台で騒ぐ大洗のメンバーと、その隣を徐行するIS-2を映し出すエキシビジョンを見ながら、大河と静馬はそんな事を言い合っていた。

彼等が居る観客席では、もう既に帰り始める見物客がちらほらと出てきているが、それでも殆どの観客が残っており、熱気は、未だに治まる気配を見せない。

席に座り続ける者も、帰っていく者も皆、今回の試合の話で盛り上がっている。

まあ、長い間戦車道の大会に姿を現さず、今ではすっかり無名校となっていた大洗女子学園が、優勝候補の一角とされていたサンダースに勝利し、さらに大洗には、一時期姿を消していた戦車道同好会チーム、《RED FLAG》のメンバーすらも居るのだから、熱気が治まらないのも無理はない。

 

「まあ、取り敢えずはこれで、俺等の2回戦進出が決まったな」

「ええ。まあ、私達レッド・フラッグ全員が出られるのは決勝戦だから、準決勝では私達レイガンか、貴方達スモーキー、このどちらかが出られるのよね……………………はてさて、どちらになるのやら」

 

フェンスにもたれ掛かった静馬に、大河は笑って言った。

 

「準決勝に進んだとして、選ばれるのはお前等レイガンだろうよ。何たって静馬、お前はレッド・フラッグの副隊長なんだしさ……………チームとしては、お前が一番、紅夜から信頼されてるしな」

「…………それもそうね。何て言ったって、私は紅夜の幼馴染みなんだもの…………まぁ、それもそうなんだけど…………」

 

そう静馬は言いかけると、エキシビジョンに映し出されている、みほと親しげに話す紅夜を見て、頬を膨らませながら言った。

 

「女の子の中で、紅夜と一番親しいのは私なのに…………なんか、苦労して手懐けた犬を横からかっ拐われたような気分だわ」

「まあまあ静馬、落ち着けよ。取り敢えずは彼奴等を労いに行こうぜ。もう他の連中、先に行っちまったぞ」

 

そう言って、大河と静馬は先に歩き出したメンバーに追い付き、みほ達を労いに行った。

 

 

 

 

「…………まあ、あれは相手の油断もあっての勝利…………と言った感じですかね。IS-2の実力も確かに見えましたが、肝心の大洗自体は、ちょっとね……………」

 

黒森峰が陣取っている丘陵の上では、要がそんなコメントを溢していた。

 

「まあ、あれだけ見ればそう思うでしょうね…………でも見てなさい。何れは彼女等が実力勝ちするのを見られるだろうから……………」

そう言って、エリカは先に歩き出したまほを追いかけていった。

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