ガールズ&パンツァー~RED FLAG~   作:弐式水戦

38 / 161
第33話~試合後のお話です!~

「一同、礼!」

『『『『『『『『ありがとうございました!!』』』』』』』』

 

両チーム集合場所へと集まった、大洗、サンダースの戦車道チームは、互いに並んで礼を交わす。

その次の瞬間には、観客席から惜しみ無い拍手が送られる。

 

「す、凄い拍手ですね…………」

「いやぁ~、勝った~!」

 

離れた位置にある観客席からでも聞こえる拍手の音に圧倒され気味の華が呟き、沙織が伸びをしながら言う。

 

「まさか、シャーマン相手に勝てるなんて………私、今でも信じられません…………ッ!」

 

今の状況が未だに信じられないのか、優香里は自らの頬をつねり、これが現実であると改めて実感すると、感激の涙を流す。

「あーあー、そんなにも涙流しちまって…………ホレ、これ使えや」

 

嬉し泣きする優香里を見て、紅夜は苦笑いしながら近寄ると、ポケットからハンカチを取り出して渡す。

優香里はハンカチを受けとると、滝のように流れ出る涙を拭う。

 

「まあ、初勝利が嬉しいってのは分からないでもないんだがな…………ん?」

 

自分達が、初めて勝利を掴んだ時の事を思い出した紅夜が呟くと、先程ハンカチを取り出した方とは、反対側のポケットに入れてある携帯が振動したのを感じ、携帯を取り出して電源を入れる。

画面がつくと、其所には…………

 

『初勝利、おめでとう。隊長の座に恥じない戦いぶりだったわよ』

『よっ!流石は俺等レッド・フラッグの隊長だ!次の試合も勝利をもぎ取りな!』

 

静馬と大河からの、祝いのメッセージが書かれてあった。

 

「…………ありがとよ」

 

小さく呟き、紅夜はメッセージを返した。

 

「紅夜君」

 

メッセージを返し、携帯をポケットにしまうと、みほが近づいてきた。

 

「…………ありがとう。あの時、紅夜君が励ましてくれなかったら、私は何も出来なかったと思う」

 

顔を赤くしながら、みほは紅夜に礼を言う。

だが、紅夜は首を横に振って言った。

 

「何言ってんだよ西住さん。それは違うぜ?」

「え?」

 

違うと言い張った紅夜に、みほは目を丸くする。それを見ながらも、紅夜は言葉を続けた。

 

「たとえ、お前があの時指示を出せたのが、俺が励ましたからだとしても、それを他のチームに伝えて、サンダースのフラッグ車を撃破したのは……………………西住さん、お前等あんこうチームだろ?俺に感謝する前に、お前自身に胸張れや。西住さん、お前はスゲー奴だよ」

「あ、ありがと……………………」

 

紅夜にそう言われ、みほは少し赤かった顔を真っ赤に染め上げる。

それから紅夜は、達哉達ライトニングのメンバーと世間話を始めていた。

 

「…………」

 

みほは、顔を真っ赤にしたまま胸に手を当て、紅夜に熱の籠った視線を送る。

すると其所へ、みほを見つけたケイが近寄ってきた。

 

「貴女が、大洗の隊長さん?」

「え?あ、はい!」

 

みほがそう答えると、ケイは興味深そうにみほを見る。

 

「ふむふむ、今年の大洗の隊長さんがこの人ね……………………それで」

 

そう言いかけ、ケイはライトニングのメンバーと話している紅夜を指差して言った。

 

「彼がレッド・フラッグの隊長にして、貴女の王子様って奴ね?見た目女の子みたいだけど」

「お、王子様!?そ、そんなのじゃないですよ~!」

 

突拍子もないケイの発言に、みほは顔を赤くする。

 

「え~?だって貴女、彼にhotな視線を送ってたじゃない。明らかに恋するladyの顔よ?あれは」

「はうっ!?」

 

ケイに指摘され、みほは顔を真っ赤にして目を回す。

 

「お?よお、ケイさん。お疲れッス」

「ええ、貴方もお疲れ」

 

ケイに気づいた紅夜が、メンバーの中から抜けて近づいてくる。

互いに労い合うと、紅夜は顔を真っ赤にしているみほを見た。

 

「ん?なんで西住さんの顔真っ赤なんだ?」

「乙女には、色々あるものなのよ♪」

「はあ…………」

 

ケイはウインクしながら言い、紅夜は訳が分からないとばかりに首を傾げつつも、取り敢えずは納得しておく事にした。

 

「ところで、さっきの貴方達の戦いだけど…………」

 

ケイがそう言いかけると、先程まで顔を真っ赤にしていたみほが復活し、紅夜と共に、次の言葉を待つ。

 

「フフ……………………エキサイティーングッ!!」

「はわわわっ!?」

「ぐえっ!?…………ぐっ…………ぐるじぃ…………放せぇ…………」

 

すると不意に、ケイは笑みを浮かべて、みほと紅夜をいっぺんに抱き寄せる。

みほは、突然抱き締められた事に真っ赤になって慌て出し、紅夜は潰れた蛙のような声を出し、苦しそうな表情を浮かべながら、ケイの腕を叩く。

 

「こんな試合が出来るとは思わなかったわ~~っ!!」

 

だが、紅夜の声がケイに届くことはなく、ケイは、より一層強く2人を抱き締める。

みほは、自分の体に紅夜の体が触れている事に気づいて顔をさらに真っ赤にし、紅夜は相変わらず、ケイの腕を叩く。

 

「あ、あの…………」

「ん?何?」

「うおわっ!?」

 

みほが声をかけると、ケイは突然腕を放し、逃れようとしていた紅夜は、そのまま勢いに任せて仰向けに倒れる。

そして地面に後頭部をぶつけ、目を回して気絶する。

そんな事を他所に、みほは話を切り出した。

 

「あの、5輌しか来なかったのは一体…………?」

「ああ、その事?」

 

特にどうでも良さそうな調子で、ケイは言った。

「貴女達と同じ車両数の戦車だけ使ったからよ」

「え?ど、どうして…………?」

 

みほがそう言うと、ケイは腕を広げ、高らかに言った。

 

「That's 戦車道!これは戦いじゃないの。道を外れたら、戦車が泣くでしょう?」

 

そう言うケイの顔は、求道士の顔だった。

だが、直ぐにその表情は、ばつが悪そうな表情になった。

 

「通信傍受機で盗み聞きなんてつまらない事をして、悪かったわね」

そう言いながら、ケイは後頭部を掻く。

 

「い、いえ。もし全車両で来られたら、間違いなく負けてました」

「あら、それはどうかしらね?」

「え?」

 

ケイが言うと、みほは首を傾げる。それを見て、ケイはニヤニヤしながら、起き上がる紅夜を指差して言った。

 

「どの道、彼が私達の戦車隊に単身で乗り込んでくるのは変わらなかったでしょうから、たとえ私達が全車両で向かっても、結果は変わらないと思うわ。なんたって、貴女のチームのために危険を冒して飛び込んでくるんだもの。危うく惚れるところだったわ♪」

 

ケイはそう言って、まだ意識がはっきりしていない紅夜の右腕に抱きつく。

 

「うおっ!?何だいきなり!?」

 

突然抱きつかれた紅夜は、ケイの行動に慌てふためく。

その反応を楽しんだからか、ケイは離れた。

 

「まあ何はともあれ、勝ったのは貴女達よ」

「あ…………ありがとうございます!!」

 

ケイが差し出した右手を、みほは両手で取って握手を交わす。

そして手を離すと、ケイは紅夜にも握手を求め、紅夜は快く受けた。

 

「それじゃあね、大洗の隊長さんと、隊長の王子様♪」

 

そう言うと、ケイは紅夜の頬にキスをする。

 

「…………ウェイ?」

「なっ!?」

 

紅夜は間の抜けた声を出し、みほは顔を真っ赤に染め上げる。

 

「それじゃ、バーイ!」

 

そうしてケイは、待たせているアリサの肩に手を置き、何やら囁く。その瞬間、アリサの顔から血の気が引いていき、それを見たナオミが呆れたように溜め息をつきながら、アリサの肩を、軽くポンポンと叩いていた。

 

 

 

 

 

その後、辺りは夕焼けに染まり、みほ達大洗戦車道チームのメンバーは、引き上げていくサンダースの戦車道チームを見送っていた。

 

「さあて、此方も引き上げるよ!記念にパフェでも食べに行く?」

「ほほう、パフェとな?」

「行くっ!」

 

沙織が言うと、達哉が興味深そうな声を出しながら話に加わり、麻子が何時もの物静かな様子からは考えられないような元気の良さで同意する。

 

「どうせだからさ、ライトニングのメンバーも一緒に行こうよ!」

「ん?」

「良いのか?」

「勿論!」

 

沙織の提案に、翔と勘助が自分達も加わって良いのかと訊ね、沙織が頷く。

そして、一行が出発しようとした時、突然猫の鳴き声が聞こえ始めた。麻子の携帯の着信音だった。

 

「麻子、誰からなの?」

「さあ…………私も知らない番号だ」

 

沙織の問いに、麻子は自分も知らないと答え、通話ボタンを押す。

 

「はい、もしもし……………………えっ?…………あ、はい」

 

其所で突然、麻子の表情に動揺の色が浮かぶ。

 

「麻子、どうしたの?」

「い、いや…………何でも、ない…………」

 

麻子はそう言いつつも、震えた手から携帯を落としてしまう。

 

「何もない訳ないでしょう!?そんなに手ぇ震わせて!」

「なあ、冷泉。取り敢えずは話してみろよ。何があったんだ?」

 

沙織と達哉が、麻子を問い質す。やがて麻子は、ポツリポツリと口を開いた。

 

「おばぁが倒れて…………病院に運ばれたって…………」

「「「「「!?」」」」」

 

麻子が言葉を絞り出すかのように言うと、その場に居たメンバーの間に緊張が走った。

 

「ちょ、麻子!大丈夫!?」

「す、直ぐにその病院に行かないと!」

「学園艦に寄港してもらうしか…………」

「そりゃ流石に無理だ。撤収に時間がかかりすぎる」

 

沙織達は麻子を病院に連れていこうとするが、勘助が無理だと言い、その場で立ち往生した状態に陥る。

 

「じゃあ、どうすりゃ良いってんだよ…………」

「ッ!!」

 

紅夜が呟いた瞬間、麻子は突然靴や靴下を脱ぎ始めた。

 

「ちょ、ちょっと麻子!アンタ何してるの!?」

「泳いで行く!」

 

麻子は完全に我を忘れ、沙織に言い放った。

 

「無茶すんな冷泉さん!溺れ死ぬか鮫の餌になるがオチだ!」

 

そのまま制服をも脱ぎ捨てようとした麻子を、達哉が止めに入る。

 

「ええい、止めてくれるな辻堂!」

「止めるに決まってんだろうがアホンダラ!ちったぁ落ち着け!」

「そ、そうだ!角谷さんに頼んで艦載ヘリを飛ばしてもらえば良いんだ!」

「おおっ!!そりゃ名案だぜ勘助!早速角谷さんを…………って、今あの人何処に居るってんだよ!?」

 

麻子と達哉が取っ組み合いになる中、勘助が閃いた案に紅夜が賛成するも、その場に杏が居ないと言う状況に頭をかきむしる。

 

その時、彼らの後ろから声がした。

 

「私達が乗ってきたヘリを使って」

 

その声に、先程まで騒いでいたメンバーが振り向く。

其所には……………………

 

 

まほ、エリカ、要の黒森峰のメンバーが居た。

 

「お、お姉ちゃん!?」

「西住の姉(あね)さん…………」

 

みほと紅夜が唖然とするが、エリカが声を張り上げる。

 

「ホラ、急いで!」

 

エリカがそう言って、ヘリがあるのであろう方向へと走り出す。

 

「た、隊長!彼女等にヘリを貸すなど…………ッ!」

「これも戦車道だ、謙譲」

 

反論しようとする要を一言で黙らせ、まほはエリカを追い始める。

「ちょっと何してるの!早くしなさい!」

 

中々来ない事に気づいて戻ってきたエリカが叫び、一同は試合会場のヘリポートへと向かった。

 

 

 

 

 

一同がヘリポートに着くと、其所には黒森峰が所有する《フォッケ・アハゲリスFa223 ドラッヘ》が、操縦席に座るエリカによって離陸準備に入っていた。

みほ達あんこうチームがFa223に近づき、紅夜達ライトニングは其所から少し離れた場所で、事の成り行きを見守っていた。

 

「2人共、操縦頼んだ」

『お任せください、隊長』

『分かりました…………』

 

操縦席に座るエリカが答え、それに少し遅れて、副操縦士の要も渋々答える。

 

「早く乗って!」

「…………ッ!」

「あ、私も行く!」

 

まほが急ぐように言うと、麻子が先にFa223に乗り込み、それに少し遅れて、沙織も付き添いとして乗り込む。

 

「…………ありがとう」

 

そして、離陸を始めるFa223から離れるまほに、みほは礼を言った。

 

「…………ありがとな、西住の姉さん」

 

近づいてくるまほに紅夜が言うと、まほは立ち止まって言った。

 

「私はただ、仮を返しただけ…………」

「…………それでもだ………ホントに感謝してる」

「…………そうか」

 

微笑みながら感謝の言葉を述べる紅夜に、まほは淡々と答え、立ち去った。

その顔は、夕日のせいか少し赤く染まっていた。

 

 

 

 

 

後日…………

 

 

黒森峰は知波単学園との試合で当たり、まほが車長を務める《ティーガーⅠ》が、知波単学園の主力戦車--九七式戦車--による戦車隊を壊滅させ、はたまたとある学園の戦車隊も、T-34等のロシア戦車を使う学校、プラウダ高校に圧倒された。

また、イタリア戦車を使うアンツィオ高校も、マジノ女学院との試合に勝利し、聖グロリアーナ女学院も勝利を収める。

そんな調子で、1回戦は着々と進んでいき、遂に第63回戦車道全国大会の舞台は、2回戦へと突入していくのであった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。