ガールズ&パンツァー~RED FLAG~   作:弐式水戦

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第8章~第2回練習試合!VS知波単学園!~
第52話~海で遊びます!~


大洗女子学園の水着騒動から2日が明け、学園艦は、今回の試合会場である南の島へと向かっている。

試合当日の早朝であるためか、メンバーの表情が大会に臨む直前のようになっていた。

 

とは言え、杏からの連絡で、試合前に知波単学園戦車道チームと海で遊ぶ事が発表されたからか、何処と無く明るい雰囲気も漂っていた。

 

「へぇ~、そんな事があったのか、ソイツは災難だったな、祖父さん」

「笑い事じゃねえよ大河。もう少しで陸に置いてかれるところだったんだぜ?」

 

紅夜と大河は、先日の水着騒動の事を話題にしていた。

 

あの後、危うく乗り遅れると言うところで学園艦に乗り込んだ紅夜は、其所で待ち構えていたみほと静馬に捕まって散々説教をされた上に、みほからは『今度出掛ける時に付き合え』と、静馬からは『今日は家に泊まれ』と言われ、ある意味で気苦労が耐えない日であったのだ。

 

「でも、良かったんじゃない?あの《大洗のエトワール》の家に泊まるなんて、中学の男子が1度はやりたいとか言ってたわよ?」

 

2人の会話を聞いていた雅が話に加わってくる。

 

「その頃の静馬って《大洗のエトワール》とか言われてなかったよな?」

「そうだけど、男子にモテてたのは確かよ?何故か女子にもモテたらしいけど」

「我が副隊長が雲の上の人に見えてしまう件について」

 

そんな会話をしていると、桃の一声が掛けられ、メンバーが生徒会メンバー3人に注目する。

 

「えー、もうすぐ到着だから移動するよ~」

 

そうして、メンバーはウキウキと戦車に乗り込み、出発する。

今回は練習試合であるため、大会には出なかったレイガンやスモーキーも参加出来ると言う事を杏から伝えられ、そのメンバー10人が大喜びしたのはつい最近の事である。

 

 

 

 

 

 

 

それから数十分後、学園艦は島へと到着し、メンバーは島へと上陸していく。

そして、戦車を置いてやって来た彼女等を待っていたのは……………

 

『『『『『『『『海だぁぁぁぁぁ~~~~~~っ!!!』』』』』』』』

 

雲1つ無い、快晴の空のように青く澄んだ海だった。

 

「用意しておきました!」

 

そう言う優香里にメンバーが振り向くと、IS-2のエンジン部分にサマーベッドを置き、車体の側にビニールプールが用意されていた。

 

そうして、誰ともなくメンバーが海へと繰り出そうとするのだが、其所へ杏からの待ったが掛けられる。

 

「いやぁ~、せっかく海に来たんだから早く遊びたいのは分かるけどさぁ、今日は知波単学園の人とも遊ぶんだから、勝手に始めちゃダメでしょ」

 

杏がそう言うと、メンバーは渋々ながら了承する。

そうして待つこと20分、砂浜を歩いてくる音が聞こえた。メンバーがその音の主の方へと振り向くと、知波単学園の生徒が歩いてきていた。

 

「遅れてすみません。知波単学園戦車道チーム、只今到着しました」

 

そう言って杏の前に歩み出て、ヤマト式の敬礼をする黒髪の少女こそが、西絹代。紅夜のトラウマの種である。

その際、紅夜は現実逃避のためか、IS-2に凭れて転た寝しようとしていた。

 

そうしてみほが呼び出され、両チームの隊長同士の挨拶が交わされ、軽い交流が行われた。

その後、杏が前に立って言った。

 

「そんじゃ皆~!大変長らくお待たせしました!目一杯遊びまくれ~!」

 

その声を皮切りに、どのチームともなく水着姿になって海へと走り出す。

ある者は波と戯れ、またある者は砂で城や武将の像を作ったりしている。

 

 レッド・フラッグのメンバーも、達哉と雅が競泳を始めたり、深雪が恥じらいながら、大河に日焼け止めオイルを塗るように頼んでいたりと、彼等も彼等なりに楽しんでいた。

 

「皆若いなぁ、よくあんなにもはしゃぎ回れるモンだぜ……………」

 

水着姿になってパンツァージャケットの上部分をパーカー代わりに羽織った紅夜は、IS-2に凭れながら、海ではしゃぎ回る他のメンバーを見る。

其所へ、人影が1つ近づいてきた。

 

「こんにちは、兄様。久し振りね」

 

そう声を掛けられ、紅夜は声の主の方を向いた。

 

「……………綾?」

 

紅夜の視線の先には、緑色のハイレグ水着に身を包んだ黄緑色のロングヘアの少女、長門綾が立っていた。

 

「そうだけど?……………って、何驚いた顔してるのよ?私が此処に居るのが、そんなにおかしい?」

「いや、そうじゃないんだけど……………なんで居んの?」

 

不満げな顔で聞いてくる綾に、紅夜はそう聞く。

 

「なんでって……………知波単学園で戦車道してるからよ。それに、『今日の試合でよろしく』って、この前ラインで伝えといた筈だけど?」

「ラインで?言われたっけ?……………あっ」

 

紅夜は、先日水着を買いに行った際、自分の水着を買い終えて適当に時間を潰そうとしていた時、綾からのラインを受け取った事を思い出す。

 

「その顔、忘れてたのね?」

「……………ああ、すっかり忘れてた」

 

紅夜が返事を返すと、綾は呆れたように溜め息をついた。

 

「全く、もう……………兄様、そんなのでこの先大丈夫なの?その歳でもう認知症になったのか、ハッキリ言って笑えないわよ?はぁ、これだから兄様は……………」

 

そう言って、綾はまた溜め息をつく。

だが、そんな綾を見て、紅夜は微笑んでいた。

 

「ちょっと、何笑ってるのよ?」

 

そう言って、綾は紅夜を睨むが、それでも紅夜は笑みを崩さない。

 

「いや、長らく会ってなかったが、何時も通り、しっかり者のお前だから安心してさ」

「ッ!だ、誰のせいよ………」

 

紅夜がそう言いながら綾の頭を撫でると、綾は一瞬体を強張らせるが、撫でられていると知るや、顔を赤くしてボソボソと呟く。

 

「それもそうだが……………」

 

紅夜はそう言って、綾を見る。

 

「な、何よ?」

 

未だに顔を赤くしている綾はそう聞き返すが、目線を逸らしては、様子を窺っているかのようにチラチラと紅夜に目を向ける。

まるで、何かを期待しているかのように……………

 

「いや、何でもない。思い違いか何かだ」

「そう……………」

 

紅夜がそう言って話を切り上げると、綾はそう返事を返し、落胆したような表情を浮かべる。

「私、ちょっと泳いでくるわ」

そう言って、綾はトボトボと海へ歩き出す。

 

「冗談だよ、綾。お前の水着、似合ってるぞ」

「ッ!」

 

自分が期待した言葉がやっと来たからか、綾は嬉しそうに振り返る。

 

「フフンッ♪当然でしょう?結構頑張って選んだんだから」

 

そう言って、綾は再び海へと歩き出すが、その足取りは、先程とはうって変わって非常に嬉しそうだった。

 

「何と無くだけど、こんな展開になるとは予想していたわ」

 

そう言って、今度はパーカーを羽織った静馬がIS-2の影から現れた。恐らく、紅夜が凭れている方とは反対側に隠れていたのだろう。

 

「よぉ、静馬。お前未だ泳ぎに行ってなかったんだな。もう他の連中は遊んでるってのに」

「泳ぎに行ってないのは貴方も同じでしょう?………………まぁ、ちょっと海に行く前に、やらなきゃいけない事があるから行ってないだけなのだけれど……………何故だと思う?」

 

そう言って、静馬はからかうような視線を紅夜に向ける。

 

「ふむ……………準備体操だな。やっぱ体操せず海に入って溺れたら笑い者だし」

 

紅夜は暫く考えた後、そんな答えを出して笑う。

だが、紅夜がそう言った途端、静馬は不機嫌になった。

 

「なんでそんな答えになるのよ?まあ、確かに準備体操も、泳ぐ前にやるべき事なんだけど、今の私には、そんなのどうでも良いのよ」

「どうでも良いのかよ……………まぁ良いや。それで?違うってんなら、何だってんだ?」

 

そう言われた静馬は、綾を上回る程に盛大な溜め息をついた。

 

「貴方、本気でそんな事言ってるの?相変わらず鈍い上に、場の雰囲気を考えないのね。そんなだから、この前みたいに西住さんに張り倒されるのよ」

「その話題は止めてくれ。出来れば思い出したくない」

 

そう言って、紅夜も溜め息をついた。

アウトレットでの買い物のプチ騒ぎ(?)の後、出港しかけていた学園艦に大慌てで飛び乗った紅夜は、ドックの上で待ち構えていたみほと静馬から散々説教を受け、それを許す条件として、先に静馬が出した条件を飲んだのだ。

それにみほが嫉妬して顔を背けてしまい。みほの機嫌を取るのに一苦労したのは、今の紅夜の記憶からしても、そう昔の事ではない。

 

「んで、結局のところ、答えは何なんだ?」

「貴方ねぇ……………今海で遊んでる子と私を見比べてみなさいよ」

 

そう言って、静馬は海で遊んでいるメンバーを指差して言う。それに従って、紅夜もそちらへと視線を向ける。そして視線を静馬へと戻す。

 

「あ、そういやお前、パーカー羽織ってんのな」

「やっと気づいたのね……………」

 

紅夜が漸く気づいた事に、静馬は安堵の溜め息をつく。

 

「それでだけど、私の水着……………見たい?」

 

そう言って、静馬は顔を赤くしながらパーカーのファスナーへと指をかける。

 

「ふむ……………俺だって健全な男子だし、見たくないと言えば嘘になるな」

「何が『健全な男子』よ……………私を抱き上げたり、私が膝枕したりしても平気だったくせに……………まぁ良いわ。その余裕そうな顔、直ぐに真っ赤にしてやるんだから!」

 

静馬はそう言うと、ファスナーを一気に下ろして豪快に脱ぐ。

 

「フフッ…どう?」

 

そう言って静馬が見せたのは、いたってシンプルな白のビキニタイプの水着。

何の変哲も無い、兎に角シンプルな水着だが、着ているのが静馬だからか、何とも言えない雰囲気が漂っていた。

 

「へぇ~、結構良いじゃん」

「あら、私の体見ても、何も感じないの?これでもスタイルには自信があるんだけど」

 

そう言って、誘惑するかのように紅夜に擦り寄るものの、紅夜は何の反応も見せなかった。

 

「あのなぁ……………ガキの頃はお前の家に何度も泊まりに行ったし、一昨日と昨日なんざ久々のお泊まりさせられて、夜なんて一晩中抱きつかれてたんだぜ?今更緊張するかってんだ」

「そう……なら、今度はもっと過激に攻めようかしら?」

「勘弁してくれ」

 

そんな話をしていると、静馬はハッとした表情を浮かべた。

 

「ん?どうしたよ静m……ッ!?」

 

突然、紅夜の視界が真っ黒になり、それと同時に、紅夜は誰かの手が、自分の顔を覆っている事を悟る。

 

「だぁ~れだ?」

 

紅夜の耳元で、そんな色気を含んだ声がする。

 

「……………」

 

誰だかは思い出せない。だが、何と無く聞き覚えのあるような声に、紅夜は冷や汗を流し始め、体もガタガタと震え始める。

 

「だぁ~れだ?」

 

紅夜の顔を覆っている人物が同じ事を訊ねながら、紅夜の背中に自らの体を押し付けてくる。

 

「ま、まさかとは思うが……………西さん……………か?」

 

そう言うと、紅夜の視界が急に晴れ、その視界に、静馬と、相変わらず海で戯れている、自分のチームや、大洗や知波単の戦車道メンバーを映し出す。

そして、油の切れたロボットの玩具のようにぎこちない動きで振り向くと……………

 

「お久し振りですね、旦那様」

 

黒いVネックの水着に身を包んだ絹代が、妖艶な笑みを浮かべて立っていた。

 

「アイエエエエエエッ!?西=サン!?西=サンナンデエ!?」

 

阿鼻驚嘆の叫び声を上げながら、紅夜は絹代を飛び越えてIS-2の砲塔に飛び乗ろうとするが、そんな事などお見通しと言わんばかりに、絹代は紅夜の直ぐ前に移動して抱きつく。

 

「逃げてはいけませんよ、旦那様……………さぁ、私と二人っきりの夏を過ごしましょう?」

「止めてくれェェェェエエッ!助けてくれェェェェエエエエエッ!!」

 

紅夜は必死に抵抗するが、何故かこの時ばかりは、絹代を引き剥がす事が出来ずにいた。

 

「西さん、ウチの紅夜を誘惑するのは止めていただけないかしら?彼も怖がってますわよ?」

 

そう言って、静馬が紅夜の背中に抱きついて引き剥がそうとする。

 

「あら、これは私と旦那様の問題なのですから、部外者は口を出さないでいただきたいですねぇ……………」

 

そう言い返し、絹代も負けじと引っ張る。

 

「ちょっと隊長に静馬!私の兄様に何してるのよ!?」

 

其所へ、騒ぎを聞き付けた綾が飛んできて声を上げる。

 

「ギャハハハハハハハハッ!!紅夜君モッテモテ~!ヒューヒュー!」

『『『『『いよっ!モテモテ隊長!重婚しちまえYO!ついでに爆ぜちまえ!』』』』』

「馬鹿野郎ォォォオオオオッ!コイツ等ァッ!何を言っている!?ふざけるなァァァァアアアアッ!!」

 

達也を筆頭に、紅夜を冷やかすレッド・フラッグの男子陣に、紅夜の怒鳴り声が降り注いだ。

 

 

 

 

 

 

 

その後、試合の準備をする時間になるまで紅夜の取り合いが行われ、その間にみほや優香里や華までもが参加し、紅夜争奪戦が勃発したのは余談である。

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